Trademark Appeal Case
家飲みの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900297(T2011−900297/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5411443号商標(以下「本件商標」という。)は、「家飲み」の文字を標準文字で表してなり、平成22年6月3日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同23年3月28日に登録査定、同年5月13日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由の要旨
1 商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、「家飲み」の文字を普通に用いられる方法で表示したに過ぎないため、これに接する需要者は、本件指定商品が「家での飲酒用の商品、家で飲酒される商品」程の意味合いしか認識せず、商品の用途、使用方法を一般的に表示したものと理解するに止まり、また、特定人による独占使用を認めるのを公益上適当としない商標であって、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第1項第6号について
本件商標は、「家飲み」の文字を普通に用いられる方法で表示したに過ぎないため、本件指定商品の使用場面・場所等の表示に過ぎず、さらに、商品の購買意欲をかき立てる宣伝文句程度にしか理解されず、これを指定商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
第3 本件商標に対する取消理由
1 「家飲み」の語の使用状況について
(1)本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出した新聞記事情報によれば、以下の事実が認められる。
ア 2007年9月1日付け毎日新聞西部朝刊には、「天ぶら通信・カシャリ:『男池鴨三郎博多』店主 杉岡健之さん(35)」の見出しのもと、「おかげですっかり“家飲み”派に。」の記載がある(甲21)。
イ 2008年8月20日付け産経新聞東京朝刊には、「【消費点描】ビアグラス ぜいたくな“家飲み”」の見出しのもと、「飲酒運転の厳罰化や外食の値上げに伴い、自宅でアルコールを飲む“家飲み”派が増殖中。」の記載がある(甲22)。
ウ 2008年9月15日付け産経新聞東京朝刊には、「【話題の本】『おつまみ横丁』編集工房桃庵編」の見出しのもと、「“家飲みブーム”で大ヒット」の項において、「ヒットの背景には、団塊世代の料理ブームや長引く景気低迷がある。サラリーマンの飲み代は減少傾向にあり、“家飲みブーム”が到来。」の記載がある(甲23)。
エ 2009年6月13日付け「フジサンケイビジネスアイ」には、「アサヒ・キリン 酎ハイ増産/夏の『家飲み』需要狙う」の見出しのもと、「ビール大手が、炭酸入りの『低アルコール飲料』の増産に相次いで乗り出す。節約志向の高まりを背景に、家庭で飲酒する『家飲み』の機会が増えるとともに需要が急拡大。」の記載がある(甲30)。
オ 2009年8月22日付け読売新聞東京朝刊には、「[最新シゴト事情]飲酒 家飲み『増えた』32%」の見出しのもと、「ライフネット生命が実施した『お酒に関する意識調査』で、家で飲む機会をたずねたところ、32.4%の人が『増えた』『どちらかというと増えた』と答えた。一方、外で飲む機会は、『減った』『どちらかというと減った』とする答えが51.5%に達し、『増えた』『どちらかというと増えた』は、わずか11.0%だった。」の記載がある(甲32)。
カ 2009年9月5日付け産経新聞東京朝刊には、「『3行レシピ』花盛り 手軽に調理、肴にピッタリ」の見出しのもと、「簡単なつまみ料理のレシピが受ける背景には、『家飲み派』の増加があるとみられる。」「ネットでは、3千円台までの低価格の『家飲み用ワイン』を扱う専用サイトも誕生。」の記載がある(甲9)。
キ 2009年9月22日付け産経新聞大阪朝刊には、「ハイボール人気で ウイスキー復権!! サントリー11年ぶり増産」の見出しのもと、「自宅での『家飲み』用にも缶入りハイボールのほか、ウイスキーと炭酸水のセット商品やハイボール専用炭酸水が登場。」の記載がある(甲11)。
ク 2009年10月21日付け日本食糧新聞には、「日本盛、『大吟醸1.8リットル紙容器』を冬季限定発売」の見出しのもと、「日本盛は、リーズナブルな価格で手軽に味わえる、ちょっとぜいたくな家飲み用のパック酒として、『大吟醸1.8リットル紙容器』を期間限定で発売する。」の記載がある(甲12)。
ケ 2009年11月13日付け読売新聞東京朝刊には、「家飲み派86% 05年より10ポイント増」の見出しのもと、「居酒屋などに寄らず自宅で晩酌を楽しむ『家飲み派』が86.2%に上る」の記載がある(甲36)。
コ 2009年11月23日付け産経新聞東京朝刊には、「【お財布術】『おもしろ割引』編 “訳あり”おいしく楽しむ」の見出しのもと、「最近は飲食店ではなく自宅で飲む『家飲み』派が増加。アサヒビールお客様生活文化研究所が昨年3月、約6000人に行ったインターネット調査でも8割を占めた。」の記載がある(甲37)。
サ 2010年1月5日付け中日新聞朝刊には、「お値打ち考 デフレの向こうに(1)ペットボトルワイン『形』にこだわらない」の見出しのもと、「ペットボトル入りボジョレはスーパーの西友や一部の酒販店も販売した。・・・『(二〇〇九年は)ボジョレの当たり年と言われていたし、容器が変わっても味は変わらず、満足した。いつもの瓶じゃないと寂しいけど、家で飲むならペットボトルワインは安くていい』」「一般のワイン市場では、『家飲み用』で大容量の紙パックやペットボトル入りが幅をきかせているのが実情。国産の販売量に占める割合をみるとメルシャンは紙パックが34%、サッポロはペットボトルが20%を占める。今や、瓶入り、コルク栓は『晴れの日用』の高級品。両社は『経済性で選択する消費者が増えた』と分析する。瓶入り以外の需要増は日本酒も同じ。出荷量に占める比率は二〇〇七年、紙パックとペットボトルの合計が51%に達し、瓶入りを初めて逆転(日刊経済通信社調べ)した。」の記載がある(甲14)。
シ 2010年4月29日付け読売新聞東京朝刊には、「[ワタシ的消費](2)缶詰バー 2千円でご機嫌(連載)」の見出しのもと、「不況で節約傾向が強まり、外食を控えてス−パーなどで買った食材や酒を家で仲間と楽しむ『家飲み』ファンが増えている。」の記載がある(甲52)。
ス 2010年6月30日付け東奥日報朝刊には、「商品ニュース/▽300ミリリットル詰め『稲之助』発売」の見出しのもと、「十和田市などの酒店有志でつくる『酒縁研究会』は、オリジナルブランドの特別純米酒『稲之助』に、土産用や家飲み用として要望があった少量の300ミリリットル詰めをシリーズに加え、発売した。」の記載がある(甲15)。
セ 2010年11月16日付け朝日新聞東京地方版/東京には、「ボージョレ・ヌーボーは『家飲み』 アサヒビール調査、女性に人気高く/東京都」の見出しのもと、「2人に1人が18日のボージョレ・ヌーボーの解禁を心待ちにし、その多くが『家飲み』を考えている。」の記載がある(甲63)。
(2)申立人の提出した雑誌及び雑誌記事情報によれば、以下の事実が認められる。
ア 2005年7月11日付けの「AERA記事情報」には、「あなたの結婚偏差値 果てしない願望を抑えて欲しい」の見出しのもと、「遊び方も変わり、家飲み中心になりました」の記載がある(甲19)。
イ 雑誌「dancyu(ダンチュウ)2007年1月号」には、「家飲み焼酎の“定番”を探す/その日の気分で無手勝流!だから”家飲み”は面白い」の見出しのもと、「わが家の“家飲み”にお薦めの数々の焼酎を紹介。」の記載がある(甲6)。
ウ 雑誌「酒販店経営 夏号 季刊2007」には、「販売研究/家飲み/需要を開発!!/スーパーに負けるな!!/楽しい晩酌・食中酒・小酒宴を提案しよう!!」の見出しのもと、「“家飲み”が注目されている。・・・飲酒運転の厳罰化などの環境変化によって、家で飲んだほうが気楽だし安い、という風潮が出たとしても不思議はない。」の記載がある(甲20)。
エ 雑誌「dancyu(ダンチュウ)2008年12月号」には、「“家飲み”最適ワインを探せ!」の見出しのもと、「家で飲むならおいしくて安いのは当たり前。その上でパスタやハンバーグ、昨夜の残りのきんぴらといった自由な食卓にも、余裕で付き合える包容力のあるワインを見つけたい。」の記載がある(甲24)。
オ 2009年12月1日発行の「週間エコノミスト記事情報」には、「[2009年の経営者]メルシャン/編集長インタビュー」の見出しのもと、「キリンビールの調査では、景気後退が深刻になる前の、昨年7〜9月と今年の同期を比べると、自宅でワインを飲む人が約12%も増えています。景気の悪化で、内食化傾向が強まり、同時に、家飲みが増えたことが背景にあると見ています。」の記載がある(甲39)。
カ 平成22年1月1日発行の雑誌「潮/2010年1月号」には、「流行語辞典」の見出しのもと、「家飲み(うちのみ)」の項には、「ビジネスマンが会社帰りに友達同士でバーや居酒屋に行くのではなく、自宅に友達を招いて飲んだり食べたりする飲み会。費用がかからず、時間や周囲の人たちを気にすることなく過ごすことができる気軽さから二十代、三十代の人たちに広がっている。」の記載がある(甲46)。
(3)申立人の提出したインターネット情報によれば、以下の事実が認められる。
ア 2003年11月16日付けの「Piccoli’s yaplog!」のウェブサイトにおいて、「家飲み用ウイスキー」の見出しのもと、「家飲み用にバランタインを買ってきました。」の記載がある(甲76)。
イ 2006年6月13日付けで更新された「All About」のウェブサイトにおいて、「季節を楽しむ逸品/自分時間を堪能する『家飲み』アイテム」の見出しのもと、「レストランや居酒屋ではなく『家飲み』もたまにはいいものですよ。」の記載がある(甲81)。
ウ 2009年11月6日付けの「J−CAST会社ウォッチ」のウェブサイトにおいて、「不況で『家飲み』が定着?4人に3人は『お酒は自宅や友人宅で』」の見出しのもと、「調査会社のマイボイスコムは2009年10月23日、『お酒の飲用』に関する調査結果を発表した。回答者はインターネットコミュニティ『MyVoice』の登録メンバーのうち、20代以上の男女13102名。それによると、回答者のアルコール飲用者に、お酒を飲む場所について聞いたところ、『自宅や友人宅など、家で飲むことが多い』と答えた人は62.1%、『どちらかというと家で』をあわせると76.0%にも上った。一方、『バーや居酒屋など、外で』(どちらかというとを含む)は22.9%。不況の影響もあって外食産業の売上高は落ち込んでいるが、いわゆる『家飲み』(家で一人で飲んだり、友人を呼んで飲み会をすること)は盛んになっていることが分かる。」の記載がある(甲84)。
エ 2010年1月12日付けの「YAHOO!辞書JAPAN」のウェブサイトにおいて、「家飲み(いえのみ)」の項には、「会社帰りにバーや飲み屋などで、同僚などと一緒に飲むのではなく、近所の友人や学生時代の友人などを自宅に招いて飲んだり食べたりする、いわゆる家庭パーティ。バーなどで飲む場合は周囲に気を配ったり、終電の時間などを気にしなければならないが、家で飲む場合には費用を抑えることもできるし、時間や周囲を気にする必要はなく、気軽に飲むことができる。」の記載がある(甲3)。
(4)以上の事実を総合すれば、「家飲み」の文字は、「自宅で酒を飲むこと」を意味する語として、2003年11月ころには使用されており、飲酒運転の厳罰化、不況による節約志向の高まり、家で飲んだ方が費用を抑えやすいこと、時間や周囲を気にする必要がないこと、気軽に飲めることなどから、2009年ころの調査結果によれば、自宅で酒を飲む人が約8割近くまでに盛んになってきていることも相まって、該語は、遅くとも本件商標の登録査定前の2010年ころには、酒類を取り扱う業界及び需要者において、広く知られるようになっていたと認められる。
2 商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、「家飲み」の文字を標準文字で表してなるところ、上述したとおり、該文字は、登録査定時において、「自宅で酒を飲むこと」を意味する語として、指定商品を取り扱う業界及び需要者において、広く知られていたことに加え、自宅(家)で飲むのに適したアルコール飲料等が、「家飲み」用の商品として、現実に取引されている実情よりすれば、これをその指定商品に使用するときは、取引者、需要者をして、「家飲み」用の商品であることを認識させるものであって、単に商品の用途、品質等を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を有しないものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
第4 取消理由の通知に対する商標権者の意見
商標権者は、上記第3の取消理由に対して、指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
本件商標についてした上記第3の取消理由は、妥当なものと認められるから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 むすび
以上のとおり、本件商標についての登録は、商標法第3条第1項第3号に違反し登録されたものであるから、申立人のその余の申立て理由について検討するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。