Trademark Appeal Case
匠の技の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2011−12909(T2011−12909/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第8類「手動利器」を指定商品として、平成20年1月29日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『匠の技』の文字を書してなるものであるところ、『匠』は、『手仕事をする職人』を意味し、『技』は、『技術』を意味するものであるから、『匠の技』の文字は、その構成全体から容易に「職人の技術によってつくられた商品」程の意味合いを想起させ得るものであり、また、本願商標に係る指定商品を取り扱う分野においては、『匠の技』と指称される伝統的技術の継承が行われ、かつ、当該技術によりつくられた商品の販売にあたり、当該商品が前記意味合いに照応するものであることを表示するものとして『匠の技』の語を用いる場合が少なからずあるというのが実情であるところ、これらを踏まえれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、これを自他商品の識別標識として看取、把握するというよりはむしろ、当該商品が『職人の(伝統的)技術によってつくられたもの』であることを表示したものとして認識するにとどまるというのが相当である。そうすると、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断をして、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、別掲のとおり、「手先や道具を使って物を作る職人」の意味を有する「匠」の文字と「技術」の意味を有する「技」の文字(いずれも株式会社小学館発行「大辞泉 増補・新装版」参照)とを格助詞の「の」で結びつけた「匠の技」の文字よりなるものであるところ、これよりは、容易に「職人の技術」程の意味合いを看取するものである。
しかして、本願指定商品に含まれる包丁やはさみ等の刃物類の分野においては、職人の間で伝統的技術の継承がなされ、当該技術によって作られた商品の製造・販売が行われており、そのような職人の技術によって作られた商品について、「匠の技」の語が多くの者によって取引上普通に使用されている実情のあることは、平成23年3月28日付け拒絶査定で示した新聞記事情報及びインターネット情報に加え、以下の新聞記事情報及びインターネット情報からも裏付けられるところである。
(1)新聞記事情報
ア 2010年4月18日付け読売新聞・東京朝刊 29頁には、「[
匠の技
]鉄を打ち吹き込む命 熱く歴史刻む=東京」の見出しのもと、「鉄のにおいが充満する葛飾区立石の八重樫打刃物製作所。みけんにしわを寄せた4代目・・・の険しい表情が、燃えさかる炎に照らされ浮かび上がる。・・・15歳から父の手伝いを始め、江戸時代から続く鍛冶技術を受け継いできた。・・・すべてオーダーメードで、『切れ味が良く、長持ちする』という常連客が新しい客を紹介してくれ、包丁、カミソリ、彫刻刀、ナイフなど様々な注文が舞い込む。・・・」との記載がある。
イ 2010年2月23日付け中日新聞・朝刊 16頁 TV解説面には、「フジで28日 『お墨付き〜』 伝統文化を再発見」の見出しのもと、「二十八日放送のフジテレビ『お墨付き!!にっぽん遺産2』(午後4時5分=テレビ西日本制作)は、失われつつある日本の伝統文化を再発見し、未来に残そうという紀行バラエティーの第二弾。今回は『食文化』『
匠(たくみ)の技
』『暮らし』の三つを取り上げる。・・・福岡市からは山本太郎が、野菜や魚など一本で何でも切れるといわれる博多包丁や大相撲の土俵ぐわを唯一作る鍛冶職人を訪ね、七十年間受け継がれる
匠の技
を伝える。」との記載がある。
ウ 2009年10月5日付け山形新聞・朝刊 22頁には、「ネット13・
匠の技
(12・完) 青森県弘前市 城下町のかじ屋」の見出しのもと、「日本刀のような風格の包丁。木の枝をしっかり固定し、断面も滑らかに切り落とす剪定鋏(せんていばさみ)−。青森県弘前市で主に作られる津軽打刃物(つがるうちはもの)の技は、藩制時代から城下町に集積したかじ屋の手で培われた。少量多品種の生産体制で切れ味良い丈夫な品を一つ一つ生み出している。弘前藩の刀かじ『二唐(にがら)家』の流れをくむ二唐刃物鍛造所・・・は包丁を中心に製造。・・・鋏を手掛ける田澤手打刃物製作所・・・経営者・・・は『切れ味と刃こぼれしないところに誇りを持っている』と語る。」との記載がある。
エ 2006年3月6日付け日本工業新聞新社・FujiSankei Business i. 4頁には、「【BeautyWorld】切れ味にこだわる 手仕上げ、理美容師愛用の逸品」の見出しのもと、「
匠の技
、刃物−。世界に誇る日本製刃物のクオリティーは、平安時代に確立された日本刀の製造技術に由来します。・・・この日本の伝統技法を用いてつくられている刃物のひとつが『着鋼鋏(ちゃっこうばさみ)』です。大阪府摂津市にある内海(うつみ)では、昔ながらのすばらしい切れ味とともに、形容しきれない使い心地の良さに定評のある着鋼鋏を、熟練職人がひとつひとつ丁寧につくり上げています。こだわりの使い心地を求める理美容師をはじめ、多くの技術者に愛用されている逸品です。」との記載がある。
オ 2006年6月28日付け産経新聞・大阪夕刊 12頁には、「【はじまりは堺(1)】堺打包丁 古墳時代から伝わる『
匠の技
』の凄さ」の見出しのもと、「・・・堺市北庄町にある池田刃物製作所。半世紀以上にわたって、真っ赤な鉄を一流の包丁生地へと鍛えている池田さんは『火』の大切さについて語った。『堺打刃物』とくれば、言わずと知れた大阪・堺市の誇るトップブランド。板前などプロの料理人が使う包丁の九割以上が堺製といわれる。古墳時代にまでさかのぼる『
匠の技
』は、職人たちによって今も脈々と受け継がれている。」との記載がある。
カ 2003年6月7日付け神戸新聞・朝刊 26頁には、「道の駅みき金物展示館 竹野から高齢者ツアー180人 開館4年最高記録」の見出しのもと、「道の駅みきの『三木金物展示館』に六日、城崎郡竹野町の高齢者大学『竹野学園』の一行百八十人が観光バス五台で訪れ、伝統工芸の播州打刃物など“
匠の技
”に触れるとともに、包丁、カマなどの買い物を楽しんだ。」との記載がある。
(2)インターネット情報
ア 岩井刃物工場のウェブサイトにおいて、「700年の伝統 磨きぬかれた
匠の技
越前打刃物・・・伝統工芸 越前打刃物 岩井刃物工場」の見出しのもと、「・・・
匠の技
風紋 鉄とハガネを幾重にも重ねて鍛造することにより相互作用により強度・耐靱性に優れ、長期に渡って使用しても刃部の歪みがでにくく、刃こぼれもし難くなっています。又、切れとは関係ありませんが、一本一本の違う紋様、同じ物は二点と出来ない面も特徴です。」及びSHOPPING MEMUとして「・・・風紋包丁、家庭用包丁・・・業務用・特殊包丁、工芸用刃物、鋏(生花鋏・刈込鋏等)・・・」との記載がある。(http://e-hamono.net/)
イ 株式会社ベルーナが提供するオンラインショップ・ベルーナネットにおいて、「本砥ぎ仕上げ!国産ステンレス一体型包丁」の商品の説明として、「【国産特選!
匠の技
】《新潟県》日本を代表する金属製キッチン用品の産地。確かな技術力が冴える名品をご紹介。」との記載がある。(http://belluna.jp/interior/01/010401/d/NEDF/01818/goods_detail/)
ウ 株式会社ディー・エヌ・エーが運営する総合オンラインマーケット・ビッダーズにおいて、「生粋【
匠の技
】極上積層狩猟刀130mm・・・野鍛冶鍛錬の『ほんまもん』・・・肥後相良の鍛冶職人、川村氏は利器材(工場にて機械で作られたハガネと鉄の複合材料)を一切使わず、軟鉄にハガネを手付けすることにこだわり続ける昔ながらの生粋の野鍛冶です。猪・鹿が多く狩猟が大変盛んな地元で、猟師たちの生の声を聞き彼らのために作った実用狩猟刀です。極軟鉄積層材の上に青紙鋼(ハガネ)を乗せその上に極軟鉄積層材を乗せて3枚重ねにします。それを炉にて真っ赤にあかめて、ハンマーにて激しく叩き伸ばし鍛接火造りしています。・・・」との記載がある。
(http://www.bidders.co.jp/item/155316043?e=rss_lite)
エ 楽天のオンラインショップ「趣味と暮らしのびっくし箱!NKS」において、「
匠の技
プロの技術者が砥石による本格的な刃付けを施し、鋭い切れ味を長く持続させます。片岡製作所 M-1205 Brieto-M12 PRO 牛刀 210mm【メーカー直送品】【同梱/代引き不可】【KATAOKA/ナイフ/包丁】」、「
匠の技
プロの技術者が砥石による本格的な刃付けを施し、鋭い切れ味を長く持続させます。片岡製作所 M113-S Brieto-M11 PRO デポット加工 両刃本刃付 sandwich knife サンドウィッチナイフ 160mm
【メーカー直送品】【同梱/代引き不可】【KATAOKA/ナイフ/包丁】・・・」との記載がある。(http://item.rakuten.co.jp/tnp3103/c/0000002211/)
オ 田上金物店のウェブサイトにおいて、「商品紹介」の見出しのもと、「
匠の技
が光る至高の一本 正藤・・・和食・洋食・中華の業務包丁を正藤ブランドとして製造・販売を行っております。現在では約15社の熟練された鍛冶職人とタイアップし、磨きぬかれた
匠の技
で創られたこの正藤ブランドは日本国内のみならず海外からも大きな評価をいただいております。・・・他では絶対に手に入らない、
匠の技
が光る至高の1本をどうぞお確かめください。」との記載がある。
(http://www.tanoue-kanamono.jp/item/index.php)
カ 楽天のオンラインショップ「菊一文珠四郎包永(きくいち もんじゅしろう かねなが)」において、「刀鍛冶の伝統を受け継ぐ打ち刃物。
匠の技
から生まれる鮮やかな切れ味の包丁は、プロの料理人も愛用。サービスで銘切り お名前が入ります」との記載がある。(http://www.rakuten.co.jp/kikuichi-e-hamono/)
キ ハサミ・板金機械工具総合メーカー・株式会社直徳のウェブサイトにおいて、「金切鋏 金印 厚 柳刃・・・ハサミ(鋏)鍛冶職人衆・・・直徳の「
匠の技
・和の力」の結晶の逸品!靭性を高くした熱処理が施されているため、直徳・柳刃特有のハゼ部の切り込みや、回し切りをする時に刃切れや刃がねの丈夫さにご満足頂けるものと確信をしております。ステン材やアルミ材の厚板切断にご利用下さい。直線切りやアール切り、細部の切込みなどに最適です。」との記載がある。(http://naotoku.co.jp/category01/items5.html)
してみれば、「匠の技」の文字よりなる本願商標は、これをその指定商品「手動利器」に使用しても、「職人の(伝統的な)技術によって作られた商品」であることを認識させるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
これに対し、請求人は、原審及び当審において甲第1ないし12号証を提出し、「匠の技」の文字からなる既登録商標の例を挙げて、本願商標も同様に登録されるべき旨主張している。
しかしながら、出願に係る商標が登録要件を具備するか否かの判断は、当該商標の構成態様とその指定商品との関係に基づいて、個別具体的に判断されるべきところ、本願商標が、その指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないことは、上記のとおりである。また、請求人指摘の登録例に係る指定商品・指定役務は、本願に係る指定商品とは別異のものであるから、本願商標についての前記判断が、請求人指摘の登録例によって左右されるべき事情も見いだし得ない。よって、請求人の主張を採用することはできない。
また、請求人は、当審において甲第13ないし17号証を提出し、本願商標は、出願人製品の個別ブランドとして広告され続けてきた旨、また、甲第18ないし20号証を提出し、少なくとも手動利器の分野においては、本願商標は出願人製品のブランドとして認識されている旨主張している。
そこで、甲第13ないし20号証についてみるに、まず、甲第13ないし15号は、2001年1月の週刊誌(「週刊新潮」、「週刊文春」、「週刊ポスト」の各誌)において、「SEKI EDGE」という名称の「手作り・つめきり」の広告中に、「グリーンベル」の文字とともに、「匠の技」の文字が縦書き(白抜き)で使用されているもの、甲第16号証は、2006年1月25日まで有効のカタログ「Petite BelleMaison2005年秋冬号」において、「ステンレス製高級毛抜き」の商品の包装において「GREEN BELL JAPAN」、「鍛造加工 本手造り」の文字とともに、「匠の技」の文字が縦書きで使用されているもの、甲第17号証は、東都生活協同組合及び東京南部生活協同組合の2003年(注文日:6月30日(月)〜7月4日(金))のちらし(「e−mon」ビューティー&コスメティック誌)と思しき資料において、「ステンレス 化粧はさみ」、「ステンレス製 高級つめきり」、「ステンレス製 高級毛抜き(先斜め)」等に商品について、「GREEN BELL」、「熟年のスペシャリストが、ひとつひとつ丹念に仕上げた逸品です。」の文字とともに、「匠の技」の文字が縦書きで使用されているものである。
次に、甲第18及び19号証は、請求人の主張によれば、前者は2005年3月18日に東急ハンズ心斎橋店で、後者は2004年12月1日に京王百貨店新宿店で、それぞれ撮影された店舗内の売り場の写真であり、前者は、「つめきり」について、「鎌倉時代に刀鍛冶が誕生した関市の名匠たちが残した卓越した伝統を受け継ぎ、熟練のスペシャリストがひとつひとつ丹念に仕上げた逸品です」の説明文とともに「匠の技」の文字が使用され、後者は、「つめきり」、「はさみ」等について、「伝統の技に培われた本物の切れ味」の説明文とともに「匠の技」の文字が使用されており、また、甲第20号証は、浦安在住の一主婦のインターネット上の絵日記(2005年6月10日)において、黒っぽいパッケージに入っていて「匠の技」と書いてあるグリーンベルの「ステンレス製 高級つめきり」と「最高級煤竹耳かき」を購入した旨の記載があるものである。
そうすると、結局、上記各証拠は、今から10年以上昔の週刊誌(3誌)、6年前のカタログ(1つ)及び9年前のちらし(1つ)において、「SEKI EDGE」、「グリーンベル」又は「GREEN BELL」の文字とともに、「匠の技」が使用されているもの、7ないし8年前に撮影された百貨店等の店舗内の売り場の写真(2枚)、7年前の一主婦のインターネット上の絵日記にすぎないものである。
してみれば、請求人の提出に係る甲第13ないし20号証の証拠をもってしては、本願商標が使用により識別力を有するに至ったものということはできないから、請求人の上記主張は採用することができない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとの原査定は妥当なものであって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。