結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2010−300757(T2010−300757/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4824873号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示したとおりの構成よりなり、平成16年4月30日に登録出願、同年11月1日に登録査定、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同年12月10日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
本件商標は、第43類の指定役務「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」について継続して3年以上日本国内において、商標権者等が使用した事実がないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(1)「未在」店の経営者
「未在」は、請求人石原仁司(以下、「請求人」又は「石原仁司」という場合がある。)によって経営されており共同経営者等は存在しない。
被請求人株式会社ティーズ(以下、「被請求人」、「ティーズ」又は「商標権者」という場合がある。)も答弁書のいたるところにおいて、店の経営運営は、請求人が行っているとの記載があり、経営者が請求人であることを認めている(答弁書14頁上から15行目「『未在』の経営運営を行う請求人」ほか)。
甲第1号証の1は、請求人の経営する日本料理店「未在」の営業許可書である。また、甲第1号証の2は、請求人の製造する「おせち」に関するそうざい製造業の許可書である。甲第2号証は、「未在」を経営する石原仁司の確定申告書である。被請求人は、「未在」店の売上げ等の管理すら行っておらず、経営を行っているとはいえない。甲第3号証は、日本料理店「未在」の開店の挨拶状である。
被請求人から提出された乙第10号証は、請求人の関知しないもので請求人の許可を得ることなく、勝手に配布されたものと思われる。しかもそこには、ティーズの名前がない。店の経営は、請求人によって行われているためである。被請求人は、乙第1号証、乙第14号証で自白しているように、飲食店舗の大家にすぎず、甲第4号証の工事施工者の陳述書によると店の設計すべてが請求人の指示によって行われており、ティーズは一時工事費を立て替えて賃料として回収しているだけであることがわかる。すなわち甲第5号証に記載の賃料を被請求人から請求されて、請求人が支払っているのが現状である。
(2)請求人への使用許諾
被請求人から請求人への商標権の使用許諾の事実はない。その証拠に使用許諾についての何らの証拠も提出していない。請求人が本件審判代理人の事務所において自己の商標「未在」を出願するにあたり調査したところ、ティーズが勝手に自己の名で商標を取得していたことが判明したものである(甲第6号証)。判明後直ちに請求人は、この取消審判を提起し、同じく、被請求人から出願されている出願中の事件に対しても刊行物提出を行った。
被請求人の主張するように、被請求人から請求人へ使用許諾が行われている事実が無いことは、多くの証拠が証明している。
まず、使用許諾していれば、使用許諾契約書を交わし、使用料も決められるのが普通である。請求人が被請求人の商標権の存在を平成22年4月まで、知らなかったということが何より使用許諾がなされていない証拠といえよう。
さらに、使用許諾されているのであれば、具体的にどのような役務にどのように使用するかについての細かい取り決めがなされるはずであるが、そのような許諾態様や許諾役務について何らの取り決めもない。その商標のロゴ自体、請求人が被請求人に指示しているため、権利者となるべきは請求人であって、被請求人ではない。当然使用許諾されているのであれば、甲第5号証に当然商標使用料の記載が出てくるはずである。
(3)商標権者の使用といえるか
(ア)答弁書には、商標権者による本件商標の使用として、ショップカード(乙第9号証の2)、ホームページ(乙第15号証)、婦人画報の掲載記事(乙第22号証の1から12)、おせち料理(乙第24号証)を提出し、商標権者が本件商標を第43類の「飲食物の提供」に使用していると主張している。
しかしながら、円山公園所在の「未在」は、上記したように請求人の経営にかかるものであり、被請求人は、単なる店舗家屋の大家である。
したがって、ティーズは、未在の商標を使用して飲食物の提供行為を行っていない。商標権者の使用として、商標法第50条の取消審判の使用と認められるためには、そもそも自己の業としての役務の提供について自己の出所識別標識として登録商標を使用する必要があり、例えばショップカードの使用は、他人である請求人の経営する店舗「未在」について使用したものであるため、商標の定義の要件を満たさず、商標権者の使用とはならない。
さらに、乙第9号証の2のショップカードがティーズの代表者である遠山富美子氏によって配られたとしても、それは、友人としての遠山氏が請求人のために宣伝したもので、ティーズとしての商標権の使用ではない。ティーズは、「未在」という店舗を経営しておらず、飲食物の提供行為を行っていない。
むしろ甲第5号証の訴状の記載から明らかなように、本件商標権の取得行為と、このショップカードの使用行為をティーズのために行っているのであれば、著名な請求人の経営する店舗の名声にただ乗りする不正競争行為を構成する。
(イ)さらに、ホームページでの使用や婦人画報の掲載記事にあっては、登録商標が図形と文字の結合商標であるのに対し、その一部を使用しているにすぎないため、そもそも本件商標の使用とは認められない。
(ウ)おせち料理の販売についても文字しか使用されていない上に、商品商標の使用となり、役務商標の使用ではないため、本件商標の使用とは認められない。したがって、ティーズが本件商標の使用をしたものではない。
したがって、商標権者は、いずれの指定役務についても登録商標を使用していない。
(4)請求人から被請求人への不正競争に基づく訴訟の提起について
現在、被請求人は、勝手に未在のオーナーと名乗ったり、未在をプロデュースしたとの主張に対して、不正競争行為による差し止めと損害賠償、謝罪広告を求める訴えが京都地方裁判所に平成22年9月17日に提訴され(甲第7号証の1)、証拠説明書(甲第7号証の2)もまもなく提出の予定である。許諾関係があるのであれば、このような紛争状態となるはずもなく、請求人の承諾を得ずに勝手に被請求人名で申請したものであり、単なる代行者として、商標権を請求人に返還すべき立場にある。
また、請求人に対して善意で登録を取得したと主張するならば、事務管理として得た権利は本人に返還すべきである。そもそも請求人は、訴訟の証拠からも明らかなように、本件商標出願の相当前の平成11年ころから、高名な料理人として雑誌等で取り上げられていたものである。
(5)結論
以上により、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者が使用した事実もなく、商標権者が使用許諾した事実の存在もないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第35号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人(商標権者)並びに被請求人から使用許諾を受けている請求人によって、「飲食物の提供」について使用されている。
(2)飲食店を開設するまでの経緯並びに開設後の当該飲食店の運営、宣伝広告活動の経緯等
ティーズの代表取締役である遠山富美子(通称「高堂のりこ」、以下同じ。)は、大学時代に京都嵐山に所在する京都嵐山「吉兆」に女将修行をしていたときに料理長として勤務していた請求人である石原仁司と知り合って以来20年以上の付き合いがあり、石原仁司は、京都嵐山「吉兆」において30年余り修業を積んだ腕の良い料理人であったが、京都嵐山「吉兆」を退職後勤務した長崎県雲仙温泉の「旅亭半水盧」を退職していた石原仁司から遠山富美子は、飲食店の開設等について相談を受けた。日本料理店を開設し、当該店を一流に育て上げ将来的には当該店を発信拠点とする「おせち料理」や「おもたせ」と称する食品、日本料理店に使用する什器類等を販売するというビジネスプランを以前から持っていた遠山富美子は、これを機に飲食業界への参入を決意し、相談を受けた石原仁司と協力して飲食店の開設運営を計画し、飲食店の開設を決定した。
そこで、遠山富美子と石原仁司は、飲食店の開設場所、提供する料理内容等について話し合いを続けた結果、石原仁司は、開設する飲食店の経営・運営を行い、遠山富美子は、当該飲食店の宣伝広告活動等を行うことを互いに合意した。
その後、遠山富美子は、平成15年夏頃から有限会社西村良不動産に依頼して、飲食店の開設場所を検討模索した結果、京都府京都市東山区八坂鳥居前東入円山町に所在する、円山公園内に存在する建物を探し当て、当該建物をその当時京都市から公園施設設置権を有する鳥居増弘氏から建物と共にティーズ名義で買い受けた(乙第1号証)。ティーズは、平成15年10月17日に京都市から公園施設設置許可を取得し、現在に至るまで継続許可を受けている(乙第2号証)。ティーズは、当該円山公園内の建物を両者が希望する飲食店「未在」に相応しい構造とするための総改装工事を株式会社杉原明デザイン事務所に対して、平成16年3月8日に依頼した(乙第3号証)。
そして、ティーズは、電話加入権の取得(乙第4号証)、飲食店名称「未在」の適正使用及び独占使用を確保するために本件商標「扇図形付き未在」の商標登録出願・登録取得(乙第5号証)、飲食店「未在」の開設のための京都市保健所に対する飲食店営業許可を申請取得(乙第6号証)、当該飲食店内の警備システムの設置工事(乙第7号証)、インターネットドメイン名「mizai.net」の取得(乙第8号証)、ショップカード・名刺(乙第9号証)等のグラフィックデザイン・印刷を含む制作等を行った。これら円山公園内の建物の買取り、公園施設設置許可の取得等に要した費用は、全てティーズが負担した。
平成16年6月8日に飲食店「未在」を開店した後、遠山富美子は、「未在」の宣伝広告活動として挨拶状(乙第10号証)を友人らあてにFAX送信し、また、「未在」ブランドを世に広めるために出版社やデパート等に対するPR活動を行っている(乙第10号証並びに乙第22号証ないし乙第25号証)。
乙第9号証の1は、株式会社マルチノックスがフローティングアイランドジャパン株式会社あてに発行した請求書写しであり、上述したように、ティーズの関連会社であるフローティングアイランドジャパン株式会社が、石原仁司が運営する飲食店「未在」において飲食した客に配布される「未在 ショップカード」(乙第9号証の2)、飲食店「未在」の「高堂のりこ」及び「石原仁司」の名刺(乙第9号証の3、4)の印刷を株式会社マルチノックスに依頼した事実を示すものである。また、当該請求書の日付が平成17年11月30日となっているが、当該ショップカード(乙第9号証の2)、高堂のりこ(乙第9号証の3)及び石原仁司(乙第9号証の4)の名刺を入手した日は、飲食店「未在」が開設した平成16年6月8日前であることは、容易に推測できる。なお、当該ショップカードには、本件商標の扇図形及びロゴ化された「未在」が表示され、当該ショップカードは、飲食店「未在」で飲食をたしなんだ客に配布されていた。
乙第10号証は、飲食店「未在」の開店ご挨拶の案内状写しであり、平成16年7月に「高堂のりこ」が友人らにFAXにより約30部送信し、ティーズの代表取締役遠山富美子こと「高堂のりこ」が平成16年6月8日に開設した飲食店「未在」を宣伝広告した事実が明らかである。
乙第11号証の1ないし19は、ティーズの代表取締役遠山富美子が、石原仁司から飲食店の開設等について相談を受け、開設する飲食店の経営・運営は石原仁司が行い当該飲食店の宣伝広告活動は、遠山富美子が行うことを互いに合意した上で、石原仁司と協力して飲食店を開設することを決意し、ティーズの費用負担において飲食店の開設に必要な飲食店の確保、諸手続きを行ったことが事実であることを証明する陳述書である。
乙第14号証は、定期建物賃貸借契約の公正証書写しであり、平成16年6月14日付けで、賃貸人ティーズと賃借人石原仁司との間で京都市東山区八坂鳥居前東入円山町620番地1に所在する屋号番号(620番1の2)の定期建物賃貸借契約が締結された事実を示すものである。なお、賃貸借契約期間は、平成16年6月14日から平成23年6月13日までである。
乙第15号証の1は、飲食店「未在」のインターネットサイト写しである。
乙第20号証は、株式会社曽根造園が株式会社ティーズあてに発行した平成19年11月20日締切分請求書写しである。
上述したように、飲食店「未在」の経営・運営は、石原仁司が行い、当該飲食店の宣伝広告活動は、遠山富美子が行うことを互いに合意した上で、遠山富美子と石原仁司とが協力して飲食店「未在」が開設され現在に至っていることは疑う余地がなく、ティーズは、飲食店「未在」のために公園施設設置権を取得し、鳥居増弘氏から建物をティーズ名義で買い受け、当該建物の総改装工事を依頼し、飲食店営業許可を申請取得し、警備システムの完備、本件商標の商標登録出願・登録取得、ドメイン名の取得、電話加人権の取得、挨拶状、ショップカード・名刺等のグラフィックデザイン・印刷等、飲食店「未在」のインターネットサイトの立ち上げ、飲食店「未在」の建物等の修理工事及び飲食店「未在」の庭の工事等に掛かった全ての費用を負担し支払っている事実から、ティーズは、飲食店「未在」を実質的に保守管理し、ショップカード、名刺、インターネットサイト等により宣伝広告しており、一方、料理人として創作した料理を提供する石原仁司は、ティーズから本件商標の使用を許諾されている者であることは明らかである。
また、乙第22号証の1ないし12は、株式会社アシェット婦人画報社が発行した2008年4月号から2009年3月号までの雑誌「婦人画報」の京都市東山区円山公園内の「御料理 未在」の記事が掲載された抜粋ページ、表紙及び裏表紙の写しであり、ティーズの代表取締役遠山富美子は、株式会社アシェット婦人画報社の担当部署に対して度重なる営業をし続けた結果、当該雑誌において「茶懐石 未在」の紹介、及び「未在」料理が連続して1年間掲載された事実を示すものである。
乙第23号証の1ないし11は、株式会社アシェット婦人画報社がティーズに対して支払ったことを示す2008年4月から2009年3月に至る支払報告書写しであり、ティーズは当該雑誌に「未在」料理等に関する記事及び写真掲載について、株式会社アシェット婦人画報社から、その原稿料として毎月14万円を受け取っている事実を示すものである。よって、ティーズが料理店「未在」を雑誌による実質的な宣伝広告していることが明らかである。なお、ティーズは、雑誌「婦人画報」に掲載の「未在」料理等の撮影費用を石原仁司に対し支払っている。
乙第24号証の1ないし6から、ティーズが株式会社伊勢丹に対して「未在おせち」の販売商品として提案し、株式会社伊勢丹が「未在おせち」の販売商品として取り扱うことを了承した事実が明らかであり、また、株式会社伊勢丹が2008年10月頃から飲食店「未在」の提供するおせち料理を宣伝広告している事実が明らかである。
乙第24号証の7ないし10は、ティーズが株式会社伊勢丹に対して雑誌「おせち」に掲載広告された「未在」おせち料理を実際に販売した事実を示すものである。
(3)商標権者による本件商標の使用について
商標権者が飲食店「未在」の宣伝広告用として作成して飲食店「未在」に搬入されたショップカード(乙第9号証の2)は、飲食店「未在」において来客者に配布されていた。当該ショップカードには、本件商標の扇図形及びロゴ化された文字「未在」並びに当該飲食店の所在地図等が表示されており、本件商標が当該飲食店「未在」並びに当該飲食店「未在」において提供された料理について宣伝広告のために使用されているものである。また、平成20年7月頃にティーズは、当該ショップカードを2000枚追加の注文依頼し作成している(乙第9号証の10)。この事実からみても当該ショップカードは、少なくとも平成20年7月前後には、飲食店「未在」の宣伝広告用として使用されていたことをうかがうことができる。
ティーズが自己の費用負担で平成20年9月頃に飲食店「未在」のインターネットサイトを立ち上げた事実を示す乙第15号証から明らかなように、ティーズは、飲食店「未在」を平成20年9月頃からインターネットサイトにおいて広く宣伝広告している。
雑誌「婦人画報」2008年(平成20年)4月号から2009年(平成21年)3月号に連続して「御料理未在」の記事が掲載された事実を示す乙第22号証の1ないし12、並びに、ティーズが株式会社アシェット婦人画報社から記事の原稿料として毎月14万円を受け取っている事実を示す乙第23号証の1ないし11から明らかなように、ティーズは、料理店「未在」を実質的に雑誌による宣伝広告をしているものである。
なお、雑誌「婦人画報」に掲載された「未在料理」は、料理人として飲食店「未在」の経営運営を行う石原仁司が提供したものである。
株式会社伊勢丹が平成20年10月頃に発行した雑誌「おせち」に「未在のおせち」が広告された事実を示す乙第24号証の1、並びに当該雑誌「おせち」に広告された「未在」おせち料理をティーズが株式会社伊勢丹に対して販売した事実を示す乙第24号証の2ないし10から明らかなように、ティーズは、株式会社伊勢丹に対して「未在」おせち料理を宣伝広告させると共に実際に「未在」おせち料理を販売している。
なお、株式会社伊勢丹に対して販売された「未在」おせち料理は、石原仁司が創作したものである。
これらの事実から、商標権者ティーズが、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標若しくは本件商標と社会通念上同一の商標を「飲食物の提供」について使用していることが明らかである。
(4)商標権者から実質的に使用許諾された石原仁司による本件商標の使用について
飲食店を開設するまでの経緯等において上述したように、当該飲食店の経営・運営は、料理人である石原仁司が行い、当該飲食店の宣伝広告活動は、遠山富美子が行うことを互いに合意した上で飲食店「未在」は、開設されたものであり、本件商標は、当初から石原仁司及び商標権者のいずれもが使用することを前提とされたものである。したがって、石原仁司は、商標権者から本件商標の使用を実質的に許諾されていた者である。
雑誌「婦人画報(2008年4月号ないし2009年3月号)」(乙第22号証)、株式会社伊勢丹が平成20年10月頃に発行した雑誌「おせち」(乙第24号証)には、京都円山公園内「御料理 未在」、飲食店「未在」の料理、料理長「石原仁司」等が広告紹介されていることから、ティーズから使用許諾を受けている石原仁司は、「未在」を使用した「飲食物の提供」を行っていることは明らかである。
石原仁司は、少なくとも平成21年12月頃には飲食店「未在」において当該ショップカードを来客者に配布していた(乙第9号証の12)ことは明らかである。
また、石原仁司は、ティーズによってデザインされた「未在」の文字とラベル台紙に白抜きに表された「扇図形」とを組み合わせた商標(乙第26号証)が表示されたラベルが貼り付けられた清酒「製造年月08.2」(乙第27号証)を宣伝広告用贈答品として使用している。
そして、石原仁司は、「扇図形」を上段にし、横書の「未在」の文字を下段にして表示された商標が付された割烹着ないしは制服を飲食店「未在」店内において自分自身及び飲食店「未在」従業員が着用して来客者に対応している。被請求人は、その事実を示す資料として2005(平成17)年4月1日発行の雑誌「家庭画報」(乙第28号証)及び平成18年12月21日発行の雑誌「週刊文春」(乙第29号証)を提出する。これらの雑誌には、飲食店「未在」の記事と共に、飲食店「未在」店内において上記「扇図形」と横書き「未在」文字からなる商標が表示された割烹着を着用した石原仁司の写真が掲載されている。
これらの事実から、本件商標の使用許諾を受けている者である石原仁司が、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標若しくは本件商標と社会通念上同一の商標を「飲食物の提供」について使用していることが明らかである。
(1)商標権者による使用について
請求人は、弁駁書において、「円山公園所在の『未在』は、請求人の経営にかかるものであり、被請求人のティーズは単なる店舗家屋の大家である。」と述べているように、請求人が「未在」を経営していること及び被請求人が当該店舗家屋の大家であることに間違いはないが、両者は単なる経営者と大家の関係にあるものではない。被請求人は、飲食店「未在」のプロデューサーとして、店舗を開設する建物を取得して、そこで請求人に料理店をやらせることにしたのである。飲食店「未在」の開設準備、開設、その後の営業展開について、少なくとも本件審判請求日(平成22年7月8日)までは、請求人と被請求人(社長遠山富美子)は、飲食店「未在」の発展のために相互信頼の下協力して共に活動していた者である。請求人は主として料理の提供を行い、本件商標の登録名義人である被請求人は、「未在」のプロデュースを行うとともに、主として飲食店「未在」のPR活動等を行ってきたものである。
その事実は乙第11号証の1ないし19の陳述書の陳述内容からも明らかである。このような状況下において請求人と被請求人はいずれも本件商標を使用する必要がある者であったことは明らかである。そして、被請求人が商標権者であり、請求人は、被請求人から本件商標の使用を許諾された者であることに疑う余地はないものである。
(ア)ショップカード(乙第9号証の2)について
被請求人は、商標権者として飲食店「未在」のプロデュース及び宣伝広告活動を行ったものであり、ティーズ社長の遠山富美子は、飲食店「未在」のオープン時(平成16年6月頃)から少なくとも平成22年7月まで、本件商標が明示されているショップカード(乙第9号証の2)を複数人に配布している。
したがって、商標権者であるティーズが本件商標を「飲食物の提供」に関する広告的使用(商標法第2条第3項第8号)を少なくとも平成22年7月まで行っていた事実は明らかである。
(イ)ホームページについて
「未在」のインターネットサイト(乙第15号証の1)を被請求人が立ち上げたものであることは請求人も認めているところである。よって、商標権者であるティーズが本件商標と社会通念上同一の商標を飲食物の提供に関する広告的使用(商標法第2条第3項第8号)を行っていることは明らかである。
(2)使用権者による使用について
請求人は、弁駁書において、「被請求人から石原氏への商標権の使用許諾の事実はない。その証拠に使用許諾についての何らの証拠も提出していない。」と主張している。しかしながら、本件商標の登録日(平成16年12月10日)当時は、被請求人社長の遠山富美子と請求人とは、飲食店「未在」を成功させることを共通の目標とし親密な関係を維持しており、飲食店の経営料理の提供は請求人が行い、飲食店の広報活動は被請求人社長の遠山富美子がすることに互いに同意している(乙第11号証)。このような当時の経緯を考慮するに、遠山富美子が石原仁司に対し使用料を要求することは勿論のこと書面による使用許諾契約締結を要求することはなかったと想定するのが自然であり、一般取引社会においてこのような形態による使用許諾が認められている例は多数存在する。飲食店「未在」においては、石原仁司自ら或いは従業員によって本件商標が表記されたショップカードが飲食を嗜んだ客に対し配布されており、本件商標の使用を許諾された者(使用権者)による本件商標の飲食物の提供に関する使用であることは明らかである。石原仁司がショップカードを飲食店「未在」で飲食を嗜んだ客に配布していた事実は、請求人も認めているところである。
(3)請求人は、弁駁書において、「挨拶状(乙第10号証)は請求人の関知しないもので、請求人の許可を得ることなく、勝手に配布されたものと思われる。」と推測して主張しているが、遠山富美子は、間違いなく石原仁司の同意を得た上で友人らに送ったものである。送り先が友人らであることから、発送人「御料理末在 高堂のりこ」が「遠山富美子」と同一人物であり株式会社ティーズの社長であることは周知されており、「遠山富美子」や「株式会社ティーズ社長」の記載は省略したものである。
(4)結語
以上のとおり、本件商標「扇図形付き未在」若しくはこれと社会通念上同一の商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者並びに本件商標の使用許諾を受けた者(使用権者)によって指定役務「飲食物の提供」について使用されている。
被請求人の提出した乙各号証によれば、商標権者であるティーズが、指定役務「飲食物の提供」を行う飲食店等について、本件商標を使用して、その業務を行っている証左はどこにも見当たらない。
そして、飲食店である「未在」の店(料理屋)の経営、運営に関しては、以下の事実が認められる。
開店のご挨拶(乙第10号証)には、「・・・店のあるじである料理長の石原仁司さんは、・・・」の記載がある。
陳述書(乙第11号証の1ないし19)には、「・・・開設する飲食店の経営・運営は石原仁司が行い、遠山富美子は当該飲食店の宣伝活動を行うことを互いに合意した。・・・」の記載がある。
「婦人画報 2008年4月号ないし2009年3月号」(株式会社アシェット婦人画報社社発行:乙第22号証の1ないし12)には、「・・・京都・円山公園内『未在』・・・主人・石原仁司が尽くす一座建立のドラマ・・・」の記載がある。
「家庭画報 2005年4月号」(世界文化社発行:乙第28号証)には、「・・・円山公園。・・・昨夏ひっそりと開業した料理店『未在』があります。ご主人の石原仁司さんは・・・」の記載がある。
「週刊文春 平成18年12月21日発行」(株式会社文藝春秋発行:乙第29号証)には、「京都・円山公園/未在/石原仁司」の見出しのもと、「茶懐石の流れをくむ料理屋『未在』は、・・・石原仁司氏が2年前に創設した。」の記載がある。
「食べログ」と題するウェブサイト(乙第31号証の1)には、「・・・“茶懐石”料理店の頂点に君臨される店・・・御料理『未在』。」及び「その他:店主の名刺と店案内書。・・・」の記載があり、「石原仁司/御料理/未在/みざい」等の文字が記載された名刺の拡大写真及び店案内書の写しが添付されている(乙第31号証の2)。
また、被請求人は、平成22年10月8日付け答弁書において、「ティーズは、石原仁司に運営を任せる料理店の名称の適正使用及び独占使用を確保するため・・・」(5頁19行ないし20行)、「ティーズは、石原仁司に運営を任せる飲食店(屋号、日本料理 未在 所在地、京都市東山区八坂鳥居前東入円山町620ー1)の開設に当たり・・・」(5頁25行ないし27行)、「・・・石原仁司が運営する飲食店『未在』・・・」(6頁27行ないし28行)、「・・・開設する飲食店の経営・運営は石原仁司が行い・・・」(8頁13行ないし14行)、「・・・飲食店『未在』の経営・運営は、石原仁司が行い・・・」(10頁29行)、「・・・料理人として飲食店『未在』の経営運営を行う石原仁司が・・・」(14頁15行)と主張している。
そして、被請求人は、平成23年3月10日付け答弁書(2)において、「・・・請求人が『未在』を経営していること及び被請求人が当該店舗家屋の大家であることに間違いはない・・・」(第2答弁書2頁 7.答弁の理由の10行ないし11行)と主張している。
そうとすれば、被請求人の前記の主張及び被請求人が提出した乙第10号証、乙第11号証の1ないし19、乙第22号証の1ないし12、乙第28号証、乙第29号証並びに乙第31号証の1及び2によれば、請求人(石原仁司)が、飲食店「未在」の経営及び運営を行っているものとみるのが相当である。
そして、商標権者と請求人は、京都市東山区八坂鳥居前東入円山町620番地1の「建物」について、定期建物賃貸借契約を結んでいるとしても、商標権者が、飲食店「未在」の共同経営者であることを証明する書面の提出はない。
してみれば、被請求人は、商標権者が、飲食店「未在」の経営を行っていることを証明していないものであるから、商標権者は、請求に係る指定役務中、「飲食物の提供」について、本件商標を使用しているものということはできない。
他に、本件商標が、本件審判の請求の登録前3年以内に請求に係る指定役務について使用されていることを認めるに足る証拠はない。
したがって、被請求人は、商標権者が、請求に係る指定役務について、本件商標を使用していることを証明したものということができない。
本件商標の商標登録原簿を調査するに、本件商標権には、専用使用権及び通常使用権は、設定されていない。
陳述書(乙第11号証の1ないし19)には、「・・・開設する飲食店の経営・運営は石原仁司が行い、遠山富美子は当該飲食店の宣伝活動を行うことを互いに合意した。・・・」の記載があるものの、被請求人の取締役である遠山直樹氏(被請求人の代表取締役の夫)等の必ずしも中立とはいえない者が、同じ内容の定型文に署名捺印したものであって、いずれの根拠に基づいて陳述されたものか明らかではない。また、該陳述書は、請求人と被請求人が署名捺印し通常使用権許諾契約を締結したものではない。
通常使用権の許諾について当事者間に争いがある場合において、通常使用権が許諾されたといえるためには、通常使用権許諾契約書等の通常使用権を証明する書面が必要であると解するところ、請求人は、通常使用権者であることを否認しており、かつ、通常使用権を証明する書面の提出はない。
したがって、請求人が本件商標における通常使用権者ということはできない。
(1)被請求人は、「ショップカード」及び「ホームページ」の例を挙げて、「商標権者が、『飲食物の提供』について、本件商標を広告的に使用(商標法第2条第3項第8号)していた。」旨主張する。
しかしながら、前記1のとおり、商標権者が、「飲食物の提供」の役務を行っていることを証明できない以上、被請求人が提出する証拠は、商標法第2条第3項第8号の役務(飲食物の提供)に関する広告ということはできない。
なお、雑誌「婦人画報」の掲載記事(乙第22号証の1ないし12)は、被請求人が広告料を支払っているのではなく、原稿料を受領している(乙第23号証の1ないし11)ことから、この点においても、広告ということはできない。
(2)被請求人は、「ティーズが株式会社伊勢丹に対して『未在おせち』の販売商品として提案し、株式会社伊勢丹が『未在おせち』の販売商品として取り扱うことを了承した事実が明らかであり、また、株式会社伊勢丹が2008年10月頃から飲食店『未在』の提供するおせち料理を宣伝広告している事実が明らかである。」旨主張する。
しかしながら、被請求人が「未在おせち」の販売商品というように、おせちの販売は、商品の販売であって、本件審判請求に係る指定役務「飲食物の提供」ではない。
以上のとおり、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについて、本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
また、被請求人は、請求に係る指定役務について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
そして、請求人の取消しを求める指定役務は、本件商標のすべての指定役務である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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