Trademark Appeal Case
ナイロンの普通名称と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2011−20102(T2011−20102/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,「AQナイロン」の文字を書してなり,第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),肥料,高級脂肪酸,写真材料,試験紙,原料プラスチック」を指定商品として,平成22年12月8日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『AQナイロン』の文字を書してなるところ,『AQ』の文字と『ナイロン』の文字とは異なる種類の文字なので,分離されて認識される。そして,「AQ」の文字部分は,欧文字のわずか2文字にすぎず,それのみでは,自他商品の識別標識としての機能を有する部分とはいえない。また,『ナイロン』の文字部分は,本願指定商品との関係では『ナイロン樹脂』の普通名称といえる。そうとすれば,本願商標を,その指定商品中,ナイロン樹脂に係る商品に使用する場合には,自他商品の識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものというべきであって,結局,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。また,本願商標は,その構成中に顕著に「ナイロン」の文字を有してなるものであることから,ナイロン樹脂に係る商品以外の商品に使用する場合には,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるので,商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は,前記1のとおり,「AQナイロン」の文字を書してなるところ,「AQ」は欧文字,「ナイロン」はカタカナというように,異なる種類の文字を用いて書されているから,「AQナイロン」全体での語義は理解されないことも相まって,「AQ」の文字部分と,「ナイロン」の文字部分の,2つの文字部分から構成されていると,極めて容易に把握されるものといえる。
そして,このうち「ナイロン」の文字は,以下のとおり認定した事実によれば,本願商標の指定商品中「原料プラスチック」の分野においては,「ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)」を指称する語として,広く知られている実情があるといえる。
(1)「プラスチックの基礎 プラスチック・プラスチック加工の用語集」と題するウェブサイト(http://www.kda1969.com/words_pla/words_pla_5n_02.htm)
「ナイロン(Nylon)」の見出しで,「ナイロン樹脂。米デュポン社の商品名であるが,ポリアミド系繊維(樹脂)の一般名として使われるようになった。」と記載されている。
(2)2006.09.29 日刊工業新聞 20頁
「宇部興産,ナイロン樹脂値上げ」の見出しで,「宇部興産は10月2日出荷分からナイロン樹脂・・・を値上げする。原燃料価格の上昇に対応するため。ナイロンの値上げは今年2回目。」と記載されている。
(3)「kotobank」に係るウェブサイト(http://kotobank.jp/word/%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%89%E6%A8%B9%E8%84%82)
「ポリアミド樹脂」の見出しで,「ポリアミドからなる一連の熱可塑性樹脂の総称。一般名ナイロン。」と記載されている。
(4)「株式会社KDA」に係るウェブサイト(http://change.kda1969.com/change/material_p.htm)
「PA(ポリアミド)樹脂」の見出しで,「一般的にナイロンと呼ばれています。」と記載されている。
次に,ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)の取引の特徴についてみるに,以下のとおり認定した事実によれば,ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)は,その機能・性能に基づいて「グレード」が設けられ,それに欧文字2字が用いられ,商品を管理している実情があるといえる。
(5)2008.10.15 化学工業日報 4頁
「東洋紡,高機能ナイロン樹脂のグレード拡充,軽量・薄肉化に寄与」の見出しで,「東洋紡は,軽量化や薄肉化に寄与できる高機能ナイロン樹脂のグレードを拡充した。・・・このほど,新たに5シリーズをラインアップした。特殊強化材をコンパウンドした『JFシリーズ』は,低反り性・高強度・剛性に優れた特徴を持つ。・・・ 長繊維ガラス強化ナイロン樹脂の『KBシリーズ』は,耐衝撃性が従来品の約2・7倍。・・・JF・KBシリーズは薄肉化,強度に優れていることから金属代替も図れるとしている。材料の軽量化に繋がる新素材として,『NBシリーズ』『NCシリーズ』のサンプルワークも進めている。NBシリーズは,オレフィンをアロイ化したもので,配合比率はナイロン70%,オレフィンが30%。比重は汎用ナイロン樹脂1・14に対し,1・07。加えて,低吸水といった特徴も有する。また,充填剤フィラーを粒子化し,混ぜ込んだナノコンポジットナイロンのNCシリーズも,比重がフィラー20%入りナイロン樹脂1・25に対し,1・15と軽量性に優れているほか,高耐熱性でもあるという。」と記載されている。
(6)2005.12.01 日刊工業新聞 13頁
「デュポン,ハロゲンフリーのナイロン樹脂に難燃グレードを追加」の見出しで,「デュポン・・・は,高機能樹脂の芳香族ナイロン樹脂『ザイテルHTN』にハロゲンフリー難燃グレード『NHシリーズ』を追加し,1日発売する。新規有機リン系難燃剤の採用によりハロゲンフリーでの難燃化を実現。」と記載されている。
(7)「東洋紡績株式会社」に係るウェブサイト(http://www.toyobo.co.jp/seihin/xj/enpla/nylon/grade.htm)
「高機能ナイロン樹脂」である製品「グラマイド」を紹介するウェブサイトで「主要グレード一覧」として「NB−1700」「NB−2700」「TY−561GZ」「TY−591GZ」「TY−791GT」などと記載されている。
(8)「帝中株式会社」に係るウェブサイト(http://www.teichu.co.jp/index.htmlの「ナイロン樹脂」→「テイチュー・ナイロン」のウェブサイト)
「テイチュー・ナイロンの主なグレード」「NH8001」「NH8101」「NF8015」「NF8030」「NF8140」と記載されている。
(9)「ユニチカ株式会社」に係るウェブサイト(http://www.unitika.co.jp/plastics/nylon/nylon6/index.html)
「ナイロン樹脂 ナイロン6」「グレード一覧」の見出しで,「EX−1020K」「EX−1222」「CX−2500」などと記載されている。
(10)請求人に係るウェブサイト(http://www.toray.jp/plastics/products/amilan/grade/index.html)
「グレード一覧 ナイロン樹脂 アミラン」の見出しで,「CM1007」「CM1017」「HF3074G−15」「HF3074G―30」「SP−500」「SP−10」「TR−1」「TR−2」などと記載されている。
そうすると,本願商標は,その指定商品中「ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)」に使用されるとき,「ナイロン」の文字部分が「ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)」を,「AQ」の文字部分がポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)の商品を管理するための記号・符号として用いられている欧文字2文字の1類型を理解させるにとどまるから,全体としても,自他商品の識別標識として機能するものとはいい難い。
してみれば,本願商標は,その指定商品中「ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)」に使用されるとき,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものというべきである。
また,本願商標中「ナイロン」の文字部分は,その多くの部分を占めているから,一見して着目されやすく,かつ,「ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)」を指称する語として広く知られているのであるから,本願商標は,「ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)」以外の「原料プラスチック」に使用されるときは,あたかもポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)であるかのように,商品の品質について,誤認を生じさせるおそれがあるものといえる。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当し,かつ,同法第4条第1項第16号に該当するものというのが相当である。
4 請求人の主張について
(1)請求人は,本願商標は外観上まとまりよく一体的に構成されており,全体から生ずる称呼もよどみなく称呼できるから,一体不可分のものであって,本願商標を殊更「AQ」の文字部分と「ナイロン」の文字部分とに分離して把握しなければならない理由はない旨,主張する。
しかしながら,本願商標は,前記3で述べたとおり,「AQ」の文字部分と,「ナイロン」の文字部分の,2つの文字部分から構成されているものと極めて容易に把握されるというべきである。
したがって,上記請求人の主張は,採用できない。
(2)また,請求人は,「AQ」の欧文字2文字が商品の品番・型番として現実に使用されている事実は見当たらないから,本願商標中の「AQ」が,商品の品番・型番として認識されることはない旨,主張する。
しかしながら,「AQ」そのものが,商品の品番・型番として現実に使用されている事実はないとしても,前記3で述べたとおり,ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)の取引の特徴として,その機能・性能に基づいて「グレード」が設けられ,それに欧文字2字が用いられ,商品を管理している実情があるのであるから,本願商標がその指定商品中「ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)」に使用されるとき,本願商標に接する需要者は,「AQ」の文字部分を,商品を管理するための記号・符号として用いられている欧文字2文字の1類型であると認識するにとどまるというのが相当である。
したがって,上記請求人の主張は,採用できない。
(3)さらに,請求人は,他の登録例を挙げ,これらの商標が登録されている以上,本願商標も登録されるべきである旨,主張する。
しかしながら,登録出願に係る商標が商標登録の要件を具備しているか否かは,当該商標の構成態様と,指定商品の取引の実情等に基づいて,個別具体的に判断されるものである。
そして,本願商標については,前記3のとおり,その構成中「ナイロン」の文字が,本願商標の指定商品中「原料プラスチック」の分野においては,「ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)」を指称する語として,広く知られている実情があること,ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)の取引の特徴として,その機能・性能に基づいて「グレード」が設けられ,それに欧文字2字が用いられ,商品を管理している実情があることから,上記判断のとおりとなったものである。
したがって,請求人の上記主張は,採用することができない。
5 結語
以上のとおりであるから,本願商標が商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして,本願を拒絶した原査定は,妥当であって,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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