Trademark Appeal Case
容器形状の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第16593号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第3類「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」を指定商品として、平成9年5月26日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、その商品の収納容器(包装)の形状の一形態を表したものと容易に認識させる立体的形状よりなるものであるから、これをその指定商品について使用しても、単に商品の収納容器(包装)の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。なお、本願商標の立体的形状をもって需要者に強い印象、記憶を与えるものとは認め難く、この立体的形状部分のみが独立して周知・著名であって、自他商品の識別機能を有するに至っているものと認めることはできない。」旨認定して本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地裁 昭和52年12月23日言渡 昭和50(ワ)3035号)との判示がなされており、これと同旨の判示をした判決はこの他にも多数存するところである。
したがって、前記(1)の解釈は、本件独自の見解でないことは明らかである。
(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲に示すとおり、側面において逆さU字状のキャップと扁平な容器本体からなり、液体等を収納する容器の形状としての一形態を表したものとみるべきであって、これを指定商品に使用しても、取引者、需要者は、単に液状の商品の収納容器と認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
請求人は、本願商標におけるキャップ部の形状・容器本体とキャップの嵌合部の見え方、並びに、これらと扁平な容器との調和感のある形状は、通常の化粧品容器が一般的に採用している形態ではなく、顕著な特徴であって、その形態の異同を以て他の化粧品との区別をすることができる旨主張する。
しかしながら、本願指定商品(特に化粧品)を取り扱う業界においては、特にその収納容器に特徴をもたせたものを採択し、販売していることが一般に行われているところであって、この特徴は、商品の機能(使い易さ等)や美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲のものというべきである。
しかして、本願商標は、前記認定のとおり、キャップ部の形状及び容器本体とキャップの嵌合部の形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。
したがって、前記特異性をもって、指定商品の収納容器の一形態を表示するものであるとの認定及び本願商標に対する取引者、需要者の認識に係る原審の判断を覆すには足りないというべきである。
(4)また、請求人は、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得している旨主張し、甲第2号証乃至同第57号証を提出している。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
また、使用に係る商品が出願に係る指定商品の一部である場合は、使用に係る商品に指定商品が限定されない限り、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることはできないものである。
そこで検討するに、まず、請求人の提出に係る甲第2号証乃至同第21号証(商品カタログ及び日本の化粧品総覧)をみると、男性用化粧品を1982年から1998年までに継続的に使用し、本願商標に係る「男性化粧品」の包装容器の形状が明示されていることは認められるとしても、該カタログの表紙には「SHISEIDO」のロゴマーク及び該形状の掲載頁の左上には「AUSLESE/アウスレーゼ」の文字及び該化粧品総覧には「アウスレーゼ」の文字及び「資生堂アウスレーゼ」の文字、また、包装容器そのものには「SHISEIDO」のロゴマーク及び「AUSLESE」の文字、図形及び着色されている部分よりなる商標が表されてなることが認められる。甲第23号証、同第25号証乃至同第26号証、同第28号証(テレビ放送の広告)をみると、1982年、1986年、1988年及び1990年において、社標と「AUSLESE」の文字との組み合わせの画面、「資生堂アウスレーゼ」の文字とともに男性化粧品の包装容器の形状及び該包装容器そのものに「AUSLESE」の文字、又は「アウスレーゼ」の文字を表した画面を放送していることが認められる。
次に甲第32号証乃至同第57号証(雑誌等による広告)をみると、男性化粧品の包装容器の形状が認められるとしても、これらには、「資生堂アウスレーゼ」、「SHISEIDO」、「AUSLESE」及び「アウスレーゼ」の文字、ロゴマーク、図形が単独に、或いは、組み合わされて表示されていることが認められる。
そして、その他の甲号証については、本願商標が示されていないものや全体の形状が表されていないものと認められるが、例えば、甲第22号証は1980年6月から1999年3月における「アウスレーゼ」の広告についてのものと認められる。
以上のことよりすれば、男性化粧品を1980年から1999年までに継続的に使用し、本願商標に係る「男性化粧品」の包装容器の形状が明示されていることは認められるとしても、テレビ放送及び雑誌等における宣伝広告中に表された立体的形状は、「男性化粧品」の包装容器の形状そのものを表したものであって、「AUSLESE」、「アウスレーゼ」及び「資生堂アウスレーゼ」等の文字からなる商標、又は音声によって、それぞれ商品の出所が識別されているものとみるのが商取引の実際に照らして自然というべきであり、包装容器そのものに図形部分、「AUSLESE」の文字、或いは「SHISEIDO」のロゴマークを表してなるものは、立体的形状と文字、図形の平面商標より構成されており、本願商標と使用に係る商標が同一のものとはいえず、また、これらの文字、図形部分より立体的形状部分が需要者に強い印象、記憶を与えているとも認め得ず、さらに、請求人の主張を証する公的機関や同業組合等による客観的な証明等もないから、これら甲各号証によって本願商標それ自体が自他商品の識別標識として認識されたとするには十分とはいえないものである。
したがって、本願商標が使用により識別力を有するに至っているものと認定することはできないというべきである。
4 結 論
してみれば、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、使用による識別性を得ているものとも認められないから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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