Trademark Appeal Case
著名図形商標の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900080(T2011−900080/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5374017号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成22年4月23日に登録出願、第9類、第35類及び第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として同年11月5日に登録査定、同年12月3日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第11号及び同第15号に該当するとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
1 申立人の引用する商標
(1)国際登録第771264号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、2001年5月21日にドイツ国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、2001年(平成13年)11月7日に国際商標登録出願、平成15年1月10日に設定登録されたものであり、第16類、第35類、第36類、第39類ないし第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、その商標権は現に有効に存続しているものである。
(2)登録第4100208号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成6年12月19日に登録出願、第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として同10年1月9日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
(3)登録第4298461号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)のとおりの構成からなり、平成6年12月19日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として同11年7月23日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
2 商標法第4条第1項第7号について
引用商標2及び3は、申立人が使用する世界的に著名な商標であり、特にドイツをはじめとする欧州ではリサイクルを推奨する公的な要素を含むマークとしても広く知られている(甲第4号証ないし甲第11号証)。また、ドイツをはじめとする欧州向けに引用商標2又は3が付された商品は、我が国にも多数輸入されており、欧州の商品を取扱う小売店では、当該商標が付された商品が多数販売されていることから(甲第17号証ないし甲第27号証)、リサイクル業界だけでなく我が国における一般の需要者、取引者をして著名な商標であると認識されている。
よって、引用商標2及び3のマークと関係のない我が国の一民間企業に対して、これと類似する図形を含む商標に商標登録を認めることは、欧州、特にドイツ国民の感情を害し、我が国とドイツ国の国際信義に反するものであって、両国の公益を損なうおそれが高いものといえる。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当する。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1は、共に欧文字部分と分離して看取され得る図形を配した商標である。そして、両者の図形部分を対比すると、いずれも2種類の矢印で太極図を模したところに特徴を有する図形であり、両商標は、その全体構成において構成の軌を一にする類似のものである。
したがって、これらを時と所を異にして隔離的に観察した場合、これらより受ける印象は共通性の強いものとなり、相紛れるおそれがあるというべきである。
また、本件商標の指定役務中第36類の指定役務と引用商標1の第36類の指定役務とは、同一又は類似のものである。
4 商標法第4条第1項第15号について
上記2のとおり、引用商標2及び3は、リサイクル業界だけでなく我が国における一般の需要者、取引者をして著名な商標であると認識されている。 本件商標と引用商標2及び3は、図形部分が独立して自他商品(役務)の識別標識としての機能を果たし得るものであり、両者の図形部分を対比すると、いずれも2種類の矢印で太極図を模したところに特徴を有する図形であって、これらの商標は、その全体構成において構成の軌を一にする類似のものである。
したがって、本件商標は、引用商標2及び3と出所混同を生じるおそれがある。
第3 本件商標の取消理由
商標権者に対して平成23年10月25日付けで通知した本件商標の取消理由は、次のとおりである。
1 申立人の提出に係る甲各号証によれば、次のとおり認められる。
(1)甲第4号証は、「ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト−緑の再生マーク誕生から20年」と称するウェブページの写しと認められるところ、該ウェブページの内容は2010年12月24日に掲載されたといえるものの、その1ページには、「緑の再生マーク誕生から20年」の項に、「環境先進国と言われるドイツ。ごみの分別、再利用にいち早く取り組んできたのが、そのゆえんだ。中でも商品を入れている包装材や容器の回収・再生を促す『緑のマーク(Der Grune Punkt)』(注:「Grune」中の「u」にはウムラウト記号が付されている。以下同じ。)は、ごみリサイクルのシンボルとして、各国の手本にもなっている。」と記載され、「包装廃棄物政令」の項には、「『緑のマーク』誕生のきっかけは、1991年に発効された『包装廃棄物政令』。増え続けるごみの山を減らすため、そして限りある資源を再利用するため、産業界、包装関連業界、流通業界に対し、パッケージ類の回収および再利用を義務付けたものだ。・・・・法令が発効される直前の1990年、代行業者として『デュアル・システム・ドイチュラント(DSD)』社が設立された。」と記載されている。また、2ページには、「緑のマーク Der Grune Punkt」として、色彩が異なるものの引用商標2と同一視される標章(以下、色彩が異なるものを含め「同一視される標章」という。)が表示され、「緑のマークに対する住民の関心やごみに対する意識は、この20年で大きく変わった。世論調査によると、同マークの知名度は98%。デュアル・システム開始からしばらくはDSDが独占状態にあったが、知名度の上昇、回収・再生率の増加に伴い、現在では全部で9社が競合、総従業員25万人を抱える市場に発展している。」「・・・・今日では欧州26ヶ国が『緑のマーク』システムを導入。米国、アジア、アフリカでも導入を検討、計画している国が増えている。」等と記載されている。
(2)甲第5号証は、大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館のホームページから抜粋した「改訂版環境先進国ドイツ 環境技術から市民のくらしまで」と題する書面の写しと認められるところ、その30ページには、各種グラフと共に引用商標2と同一視される標章が表示され、31ページに「環境面でも経済面でも効率の良い包装材リサイクルを財政的に支える商標としてグリューネプンクトの制度は既に22のヨーロッパの国々に導入されています。2004年5月にはEUに10ヶ国が新規に加盟しましたが、そのうちの大半が導入を決めていますし、そのほかにもブルガリアなどはすでに導入しています。」等と記載されている。
(3)甲第6号証は、デルビス株式会社のホームページの写しと認められるところ、「ドイツのリサイクル事情」の見出しの下、「ドイツでは、すでに1991年の『容器包装物の回避に関する法令』で、容器包装の製造・利用・販売事業者に一定率のリサイクルを義務づけています。この政令により、事業者は(1)デポジット制度により自ら容器包装を回収し、再資源化する。(2)国の認定機関であるDSD(DualSystemDeutschland)に費用を払って、回収、再資源化を委託する。の2つのうちどちらかを選択しなければなりません。・・・・費用を払った事業者はグリューネブンクト(緑のマーク)を自社製品容器に付けることが許可されます。・・・・包装材使用メーカーの90%以上がDSDと契約しています。」等と記載され、引用商標3と同一視される標章が表示されている。
(4)甲第7号証は、平成13年10月26日開催の産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会第4回企画ワーキンググループに提出された参考資料の写しと認められるところ、「欧州における緑のマークの広まり(PRO EUROPE)」の見出しの下、「・・・・1995年に設立されたのが”Packaging Recovery Organisation Europe s.p.r.l.”(PRO EUROPE)である。1995年に、デュアル・システム・ドイッチェランド社(DSD)は、ドイツ連邦共和国を除く欧州連合の全域を対象として一般ライセンスの形で自らの商標であった『グリューネ・プンクト(緑のマーク)』を使用する権利をPRO EUROPEに対して与えた。・・・・PRO EUROPEに参加する各国のリサイクル機関の数は増加し、現在では欧州連合加盟国、非加盟国合わせて13ヶ国のリサイクル機関がPRO EUROPEに参加している。」等と記載され、「緑のマーク」を採用している国及びその国におけるリサイクル機関の一覧表が掲載されている。
(5)甲第8号証は、環境省廃棄物・リサイクル対策部作成の「平成15年度 容器包装廃棄物の使用・排出実態体調査及び効果検証に関する事業報告書(効果検証に関する評価事業編)」の写しと認められるところ、「3 諸外国における容器包装の回収・リサイクルに関する状況」の「3−2ドイツ」の項に「ドイツにおける廃棄物管理」「包装廃棄物政令」(3.4ページ)、「デュアルシステム(Dual System)」(3.6ページ)及び「デポジット制度」(3.16ページ)などについて、図表やグラフを用いた説明とともに、引用商標3と同一視される標章が付された容器などの写真が掲載されている。
(6)甲第9号証は、「スチール缶リサイクル協会」のホームページの写しと認められるところ、これには2002年9月発行の雑誌「STEEL CAN AGE」(Vol.8浅井愼平号)の内容が紹介されており、「リサイクル先進国として新たな課題も抱えるードイツ」の見出しの下に、「ドイツは1991年の『包装廃棄物政令』の施行以降、環境政策のお手本としてヨーロッパ諸国はもとより日本にも大きな影響を与えてきた。・・・・包装商品の事業者責任をグリーンドット(賦課金)によってDSD(デュアル・システム・ドイッチェランド)社に肩代わりさせるシステムはさまざまな媒体で紹介されてきた。」等の記載とともに、引用商標3と同一視される標章が付された商品の写真が掲載されている。
(7)甲第10号証は、尼崎市のホームページから抜粋した「進むリサイクルへの取り組み」と題する書面の写しと認められるところ、そこにはドイツでのリサイクル事情が紹介されており、「包装廃棄物政令(Verpackungsverordnung)とは?」の項には、「ドイツでは1991年に『包装廃棄物政令』(日本の『容器包装リサイクル法』に該当)が公布されました。」等と記載され、「緑のマーク(Der Grune Punkt)」の項には、「・・・・包装材の回収と再利用を代行するための会社、デュアル・システム・ドイッチェランド(Duales System Deutschland、以下DSDとします)が1990年に設立されました。・・・・DSDは、包装材に対して『緑のマーク(Der Grune Punkt)』をつける権利を各企業に有償で与えており、このマークの付いた包装廃棄物を無料で回収し、リサイクルを行っています。」等の記載ととともに、引用商標3と同一視される標章が表示されている(2ページ、3ページ)。
(8)甲第17号証ないし甲第27号証の写真には、引用商標2又は3と同一視される標章が付された化粧品、コンタクトレンズ、ホットプレート、印字用インクリボン等の各種商品(包装容器)が写されている。
2 上記1によれば、「緑のマーク(Der Grune Punkt)」と呼ばれる標章(別掲(5)参照)は、1991年から現在に至るまで、ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国において広く使用され、包装廃棄物のリサイクルを推奨するいわば公的なマークとして、ヨーロッパ諸国民の間に広く浸透しており、本件商標の登録出願の時及び登録査定時には既に、我が国においてもリサイクル業者はもとより廃棄物処理やリサイクルに関心を有する者の間に広く認識されていたものと認められる。
そして、近年の環境問題に対する意識の高まりを考慮すれば、リサイクル等に関心を有する者は少なくないといえる。
してみれば、引用商標2及び3は、上記「緑のマーク」と色彩は異なるが同一視できる構成からなるものであって、上記「緑のマーク」を表したものとして認識されるものと判断するのが相当である。
3 他方、本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、全体がやや図案化されているとはいえ、「c」と「i」の文字の間に配された図形(以下「本件図形」という。)は、その特異な形状から、看者の注意を強く惹き、独立して看取されるものというのが相当である。
そして、本件図形と引用商標2及び3の図形部分とを比較すると、両者は黒地円内に湾曲する矢印状の図形を白抜きで表した構成を共通にし、細い円輪郭の有無に差異を有するにすぎず、極めて近似したものといえる。
そうすると、本件図形は、看者をして引用商標2及び3又は上記「緑のマーク」を想起することが少なくないものというべきである。
してみれば、本件図形は、ヨーロッパにおいて、包装廃棄物のリサイクルを推奨する公的マークといえる「緑のマーク」と同一視される引用商標2及び3と極めて近似するものであり、かつ、上記「緑のマーク」を想起させるものといわなければならない。
4 以上からすると、本件図形をその構成中に含む本件商標は、これを上記「緑のマーク」との関係が認められない我が国の一企業に対し、商標登録を認め、その使用を独占させることは、ヨーロッパ諸国に定着している廃棄物リサイクル制度を混乱せしめ、ヨーロッパ諸国、特にドイツ国民の感情を害するばかりでなく、我が国とドイツとの国際信義に反するおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものというべきである。
第4 取消理由に対する商標権者の意見
1 申立人に係る商標について
申立人に係る商標(引用商標2及び3並びに「緑のマーク」)がドイツをはじめとする欧州で広く使用されている点については異論がない。しかしながら、該標章が我が国において「資源ごみの回収」等の役務につき従前から実施されているのであれば格別、本件商標の登録出願時及び登録査定時点でそのような役務が我が国で行われていた事実はなく、我が国においてはごく一部の輸入商品に該標章が貼付されているのを看取する場合に限られている。
また、我が国においてリサイクルに関心を有する者は少なくないが、そのような者が他国におけるリサイクルに係る標章についてまで広く認知していたとするのは、妥当ではない。
上記実状にかんがみると、たとえ我が国でのリサイクルヘの関心の高まりを考慮したとしても、該標章が我が国において広く認識されていたとはいえない。
2 本件商標の構成について
本件商標は「ネオコイン」の称呼からなる商標であり、その構成中の図形部分はその他構成要素に比して突出した大きさではなく、全体として一様に変形が施され統一感のある構成からなるといえる。そのため、図形部分のみが特に看者の注意を強く惹くものとはいえない。
また、矢印をモチーフとした円状の図形においては、構成上の制約からある程度同様の図形に収束するものであり、需要者、取引者においては、上記差異をもって両者を区別することは困難ではない。
してみれば、本件商標から引用商標2及び3並びに「緑のマーク」を想起させるものとはいえない。
3 公序良俗違反について
本件商標に係る商標権者はいわゆる総合スーパーを運営している法人であり、我が国において広くリサイクルを推進する事業をはじめ、地球温暖化を防止すべく多岐にわたる事業を展開しているのは広く知られている。
このような者が本件商標の登録を行うにあたり、公序良俗違反に該当するような商標をあえて選択する意図はない。
第5 当審の判断
1 本件商標について通知した上記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわなければならない。
2 取消理由に対する商標権者の意見について
商標権者は、引用商標2及び3並びに「緑のマーク」が、我が国において広く認識されていたとはいえない旨、本件商標から引用商標2及び3並びに「緑のマーク」を想起させるものとはいえない旨及び商標権者は本件商標の登録を行うにあたり公序良俗違反に該当するような商標をあえて選択する意図はない旨主張している。
しかしながら、上記第3 1のとおりの実情からすれば、「緑のマーク」は1991年からドイツをはじめとするヨーロッパ諸国において広く使用され、包装廃棄物のリサイクルを推奨するマークとしてヨーロッパ諸国民の間に広く浸透しており、本件商標の登録出願の時及び登録査定時には既に、我が国においても広く認識されているものであり、該「緑のマーク」と極めて近似した図形をその構成中に含む本件商標は、看者をして引用商標2及び3又は「緑のマーク」を想起させるものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標の登録を認めその使用を独占させることは、特にドイツ国民の感情を害するばかりでなく、我が国とドイツとの国際信義に反するおそれのあるものであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものといわなければならない。
3 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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