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Trademark Appeal Case

図形商標の要部と外観類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2011−900378(T2011−900378/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5430912号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5430912号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成23年3月2日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年7月12日に登録査定、同年8月5日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第121号証(枝番号を含む)を提出した。

(1)引用商標

申立人の引用する商標は、別記の登録商標23件及び申立人の現実の使用に係る3本線商標(甲第27号証ないし甲第52号証、甲第54号証ないし甲第64号証、甲第83号証、甲第84号証、甲第96号証ないし甲第112号証及び甲第115号証ないし甲第121号証に掲載の各種スポーツシューズに使用されている商標。登録異議申立書に添付の別紙1ないし別紙3参照)である。

なお、以下、これらをまとめて「引用商標」という。

(2)具体的理由

ア 商標法第4条第1項第15号について

(ア)本件商標は、別掲(1)のとおり、仮想垂直線に対して左方向にやや傾け、ほぼ同幅で長さが異なる黒塗りの細長の長方形5つを、そのうち長さが最も長いものを中央に配置し、その両側にそれぞれ各2つを、当該長方形の幅とほぼ同幅の間隔をもって配置し、当該左端及び右端の各2つの長方形はそれぞれの向かい合う二辺のうち長さの長い二辺が同一線上、短い二辺が互いに平行に向き合うよう間に僅かなスペースを置いて配置したものである。

(イ)引用商標は、いずれも、台形様図形等(以下「ストライプ」という。)を3本並べた構成からなるもの(以下「3本線商標」という。)であり、申立人の製造販売に係るスポーツシューズをはじめとするスポーツ用品に継続使用され、申立人の業務に係るこれらの商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び査定時には取引者、需要者の間で広く認識されていたものである。

(ウ)これらの3本線商標には、様々な異なるデザインが採用されている。特に、申立人の現実の使用に係る3本線商標には、各ストライプが2色以上で部分的に塗り分けられていたり、上下に分断する物理的な切れ目を有するものであるなど、視覚上、3本線を構成する各ストライプが2つ以上の小さなパーツから構成されたデザインとして看取されるものも数多く存在する。

(エ)本件商標が使用される指定商品は、申立人が過去60年以上の長年にわたり3本線商標を継続使用しているスポーツシューズと同一又は類似のものであることが明らかである。

(オ)本件商標の指定商品の取引業界では、商標を靴の甲の側面に表示する態様を採用することが行われており、また、その場合、商標部分、靴本体の地色、爪先、紐通し部分、靴底等の周辺パーツを異なる色で着色して配色することが一般に行われている。したがって、このような取引の実情に照らせば、本件商標がその指定商品に使用される場合には、甲の側面に付されて、商標部分の色が靴の地色や周辺パーツの色と配色されることが容易に推認されるものであり、この場合、本件商標は、視覚上、2つ短めの細長長方形(2つのパーツ)を並べて構成された左端及び右端の各1本のストライプと、単体の細長長方形から構成された中央の1本のストライプからなる3本のストライプ(3本線)として容易に認識される。

(カ)そうとすれば、本件商標が実際にその指定商品に使用された場合には、引用商標、とりわけ申立人の現実の使用に係る3本線商標に採択されている構成と極めて酷似した外観印象を呈するものであり、「3本線」の商標として認識理解されることが明白である。よって、本件商標は、引用商標(特に申立人の現実の使用に係る3本線商標)と極めて類似性の高いものである。

(キ)申立人の登録及び使用に係る3本線商標の構成には、多種多様なデザインが存在することが引用商標の各構成から明らかである。また、これらは、細部のデザインが異なるものであっても、全体として観察した場合に「3本」のストライプを並べた構成の図形として看取されるものであり、需要者は、3本線がいかなるデザインで構成されているものであるかに関わらず、「3本線」の存在を目印にこれが使用されている商品が申立人の製造販売に係る商品であることを認識理解している。したがって、本件商標の構成と引用商標の個々の構成の細部のデザインにおける相違点は、本件商標が指定商品に使用された場合に、申立人の業務に係る商品と出所混同のおそれを否定することができる程度に大きな相違点とはいえない。

(ク)本件商標の指定商品の最終需要者は一般の消費者である。また、当該指定商品は、その用途、価格、使用環境や洗浄等による消耗・劣化等の可能性という観点からみて、長期間にわたり最初に購入したものを使用継続するものというよりは、比較的短期間で買い替える可能性が高いものであるから、通常の需要者の注意力の程度はさほど高いものとはいえない。

(ケ)平成16年(行ケ)第85号判決で説示された第4条第1項第15号の規定の適用基準に照らし、本件商標と引用商標の類似性の程度が極めて高いこと、本件商標の指定商品と申立人が引用商標を使用する商品が同一又は類似のものであること、当該商品の取引の実情、並びに当該商品の需要者において普通に払われる注意力が高いものとはいえないことを参酌して総合的に考察すれば、本件商標が指定商品に使用された場合には、「3本線」の商標として認識理解されることにより、申立人又は申立人と組織的又は経済的な関係を有する者の取り扱いに係る商品と誤信され、その出所について誤認混同を生ずるおそれが高いことが明らかである。

(コ)同第15号の規定は、いわゆる狭義および広義の出所混同を防止する趣旨にとどまらず、著名商標へのフリーライド、さらには「フリーライドのみならず、ダイリューションなどをも防止する趣旨であると解される」(平成16年(行ケ)第85号判決)ものである。前述のとおり、本件商標が指定商品に使用された場合には、申立人が実際に使用している3本線商標のデザインうち、特に別紙3に例示するデザインのものと外観印象が極めて似たものとなり、これに接した取引者、需要者は、直ちに申立人及びその著名な3本線商標を付したスポーツシューズを想起、連想することが明らかである。したがって、本件商標をその指定商品に使用する行為は、申立人の3本線商標、3本線商標を付した申立人のスポーツシューズの顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。また同時に、そのような行為により、申立人の商品出所表示として著名な3本線商標の出所表示力が希釈されることが明らかである。

(サ)以上のとおり、本件商標が指定商品に使用された場合には、申立人の業務に係る商品と出所混同を生じるおそれが高いことが明らかであり、また、本件商標の使用は引用商標の顧客吸引力にフリーライドし、引用商標の出所表示機能を希釈(ダイリューション)するおそれが高いものである。

イ 商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、申立人の長年の営業努力によって築かれた引用商標の信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、本件商標が指定商品に使用されたときには、世界的な著名商標である引用商標の出所表示機能が希釈化され、申立人が経済的及び精神的損害を被ることが明らかである。

したがって、本件商標は、社会一般道徳及び国際信義に反するものといわざるを得ず、公の秩序を害するおそれがある。

3 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第15号について

ア 本件商標

本件商標は、別掲(1)に示すとおり、仮想垂直線に対しやや左に傾けた黒塗りの長方形を中央に配し、その右側に、上部のものが短く、下部のものがやや長い中央の長方形と同幅の2つの黒塗りの長方形を縦一列に配置し、左側に、上部のものが長く、下部のものがやや短い中央の長方形と同幅の2つの黒塗りの長方形を縦一列に配したものであって、中央の長方形と左右の長方形は等間隔で並行であるが、左側と中央の頭部をずらし、中央と右の頭部を僅かにずらして3つの頭部を不規則なものとなるように、5個の長方形を配したものである。そして、当該図形は、特に親しまれたものとも認められないから、特定の称呼や観念を生じないものである。

イ 引用商標

(ア)引用商標1及び2の構成中の図形部分は、別掲(2)のとおり、左に行くに従い順次短くなる3つの黒塗りの縦長台形様図形を、仮想底辺で下部がそろい、頭部が一直線になるように、左に傾斜させて配したものである。

引用商標3ないし5は、別掲(3)のとおり、左右の縦線を鋸の歯形状にした輪郭線で描いた3つの台形様図形を左方向に僅かに傾け、左に行くに従い順次僅かに短くなるようにし、仮想底辺で下部が揃い、頭部が一直線になるようにしたものである。

引用商標6及び7並びに引用商標8及び9の図形部分は、別掲(4)及び(5)のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた、左右の縦線を鋸の歯形状にした同じ長さからなる3本の黒塗り縦長の平行四辺形様図形を極めて狭い間隔をもって仮想底辺に揃うようにしたものである。

引用商標10ないし13の図形部分及び引用商標14ないし17は、別掲(6)及び(7)のとおり、左方向にやや傾けた黒塗りの3つの台形様図形を、右端のものを最も長くし、左に行くに従い順次短くなるようにし、仮想底辺で下部が揃うようにしたものである。

引用商標18は、別掲(8)のとおり、右に傾斜させ、上底と下底が二本線で表された3つの台形様図形を描き、それらが右下に向かって順次短くなるようにした図形からなるものである。

引用商標19ないし22は、「THE BRAND WITH THE 3 STRIPES」の文字からなるものである。

引用商標23は、別掲(9)のとおり、立体商標であるところ、その靴の左右の側面に表示された図形部分は、左面では左に行くに従い順次短くなり、右面では右に行くに従い順次短くなる3つの黒塗りの縦長台形様図形を、仮想底辺で下部が揃い、頭部が一直線になるように、それぞれ左右に傾斜させて配置したものである。

(イ)周知性

申立人提出の証拠(甲第26号証ないし甲第121号証)及び同人の主張によれば、申立人の歴史は1920年のスポーツシューズの開発に始まること、3本線からなる標章(スリーストライプス、Three Stripes)が申立人の商標として採択使用されたのは1949年であること、3本線を表示したスポーツシューズはオリンピックの様々な種目の選手に使用され続けてきたことが認められる。また、申立人の取扱いに係るスポーツシューズ、スポーツウエア等のスポーツ用品には、3本線を基調としたマークが使用されており、これら商品がサッカーのワールドカップ大会などの国際的競技大会等においても使用され、サッカーの日本代表チームユニフォームにも採用されていることが認められる。

我が国における申立人の営業活動は、遅くとも1971年ころに使用権者であった株式会社デサントによって開始され、1999年から現在に至るまでは、申立人の日本法人であるアディダスジャパン株式会社によって営業活動が継続されてきたことが認められる。そして、申立人は、本件商標の出願前発行のカタログやスポーツ関連の雑誌等に、3本線の入ったスポーツシューズ等を掲載し、3本線(台形様図形)を基調とした商標を自己の業務に係る商品と結びつけてきた事実を認めることができる。

以上によれば、3本線(台形様図形)を基調とした引用商標1ないし17、23及び24は、本件商標の出願前から、我が国においても、申立人の業務に係るスポーツ用品、特に、スポーツシューズをはじめとする靴を表示するものとして、需要者の間で広く認識されるものとなっていたと認められるものである。

ウ 本件商標と引用商標の類否

本件商標と引用商標は、それぞれ、前記ア及びイのとおりの構成からなり、両者の図形部分を比較しても、本件商標が長短の長方形5個を組み合わせたものとして印象付けられるのに対し、引用商標の図形部分が3本の長短の台形様図形を組み合わせたものとして印象付けられるものであることから、外観から受ける印象は全く異なるというのが相当であり、時と所を異にして離隔的に観察しても、外観上相紛れるおそれはないというべきである。

また、本件商標と引用商標19ないし22とは、外観上相紛れるおそれのないこと明らかである。

さらに、本件商標は、特定の称呼及び観念は生じないから、引用商標と比較することができず、称呼及び観念において相紛れるおそれはないというべきである。

してみると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれからみても類似する商標とはいえない別異のものとして看取されるものである。

エ 出所混同のおそれ

上記イ(イ)のとおり、申立人の使用に係る3本線(台形様図形)を基調とした商標は、本件商標の登録出願前には既に、申立人の業務に係るスポーツシューズをはじめとする靴を表示するものとして、需要者の間で広く認識されるものとなっていたと認められる。

しかしながら、上記ウのとおり、本件商標と引用商標とは、十分に区別し得る別異の商標というべきものである。

してみれば、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用しても、これに接する需要者が引用商標を連想・想起するとは認められず、当該商品を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく誤信するとは言い難いから、商品の出所について混同するおそれはないものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。

(2)商標法第4条第1項第7号について

上記(1)ウのとおり、本件商標と引用商標とは別異の商標というべきものである上、申立人提出の全証拠によっても、本件商標が引用商標の信用力・顧客吸引力にフリーライドしたり、引用商標の出所表示機能を希釈化させるなど不正の目的をもって採択され、使用されるものであるとは認められないから、本件商標は、これを指定商品に使用しても、社会一般道徳及び国際信義に反するものとはいい得ず、公の秩序を害するおそれがある商標には当たらないものであると判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとはいえない。

(3)まとめ

以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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