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Trademark Appeal Case

通称・品種名の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2011−15742(T2011−15742/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「土佐一」の文字を標準文字で表してなり、第31類「しょうがの球根,その他の種子類,木,草,芝,ドライフラワー,しょうがの苗,その他の苗,苗木,花,牧草,盆栽」を指定商品として、平成21年12月18日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、『土佐一』の文字を標準文字で書してなるところ、指定商品との関係において、該文字は『高知県で生産されている大しょうが』の通称として知られている。そうとすれば、これをその指定商品に使用しても、『土佐一しょうがの球根,土佐一しょうがの苗』程の意味合いが容易に理解、認識されるから、単に商品の品質を表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋(要旨)

当審において、別掲2に記載のとおりの「しょうが」の通称、品種名に関する新聞記事、書籍及びインターネット情報を見いだしたところ、かかる事実を開示する証拠調べ通知をするとともに、請求人が、審判請求の理由において、使用状況に係る証拠を提出する準備がある旨主張することについて、当該主張を具体的に明らかにし、証拠を提出するようにとの審尋を行い、請求人に対し意見を述べる機会を与えた。

4 審尋に対する請求人の意見(要旨)

前記3の審尋に対し、請求人は、平成24年5月14日付け意見書において、要旨、以下のように回答した。

(1)証拠調べ通知について

ア 審尋において指摘された事実そのものについては、請求人も認めるが、当該事実は「土佐一」を「しょうが」の「品種」と認定しており、誤った事実である。しかも、当該事実はいずれも商品「しょうが」(野菜)に関するものであって、「しょうがの球根,その他の種子類等」の本願商標の指定商品に関する情報ではない。よって、審判請求書において主張したとおり、当該事実から「土佐一=しょうがの球根、その他の種子類等の通称=品質表示」とする認定は合理性を欠いている。

イ 仮に、「土佐一」が広く取引者・需要者の間において事実上「品種」として認識されていることを根拠として、商品「しょうが」についての識別力を否定するのであれば、「土佐一」が商品「しょうが」の慣用商標と言えるレベルまで認識の度合いが高くなければならないが、かかる事実はない。取引者・需要者において「土佐一」が商品「しょうが」の登録商標(第4920982号)であることは、インターネット上(IPDL)から容易に確認できるところ、当該登録商標の登録日は6年程前であるから、審尋における指摘事項の存在を前提としても、この間に識別力を喪失していない。

ウ よって、拒絶査定の判断は事実認定及び当該事実認定に基づく商標法の適用の双方において錯誤を有するものであり、合理性に欠けている。

(2)出願人の使用状況に係る審尋について

ア 請求人は、「種しょうが」(本願指定商品の「しょうがの球根」)を生産・販売する法人であり、審判請求後、請求人は使用の事実を拡大しているが、商標法第3条第2項の要件事実を立証することは現状では困難である。 しかしながら、出願人が「種しょうが」を生産・販売していること、及び本願商標「土佐一」を識別標識として使用し、現に識別力を発揮していることも事実であり、徐々にその認知度合いは高まっている。

イ 本願商標「土佐一」は、その機能を大きく発揮し、出願人のみが自他商品の識別標識として使用しているものであって、法の目的とする商品流通秩序の維持確立に多大の貢献をしている、本来保護されるべき商標である。また、現実に使用されており、出願人は本願商標の商標権による保護を強く切望している。なお、使用状況については、必要に応じて証拠を提出し、必要な立証を行う準備がある。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について

本願商標は、前記1のとおり「土佐一」の文字を標準文字にて表してなるものである。しかして、「しょうが」について、本願商標を構成する「土佐一」の文字が、その通称ないし品種名を表示するものとして、取引上一般に用いられていることが原審の開示する別掲1の事実及び当審における前記3の審尋(証拠調べ通知)で開示した別掲2の事実から明らかである。

また、本願商標は、標準文字により表されたものであって、その構成態様に何ら特徴のあるものではなく、普通に用いられる方法で表されてなるものである。

そうすると、本願商標「土佐一」に接する取引者、需要者は、本願商標を「しょうが」の通称ないし品種名を表したものと容易に認識するというべきである。

しかして、本願の指定商品「しょうがの球根」(種しょうが)は、「しょうが」の生産者が、これを入手して、これ自体を作付け、栽培し、「しょうが」として収穫するものであって、「しょうがの球根」(種しょうが)と「しょうが」とは同一のものというのが相当であり、かつ、「しょうがの球根」(種しょうが)の需要者と「しょうが」の生産者は同一である。

そうとすれば、前記のとおり、「土佐一」が「しょうが」の通称ないし品種名であると取引者、需要者に一般に認識されている以上は、本願商標を「しょうがの球根」(種しょうが)等の「しょうが」の種苗に相当する指定商品について使用しても、「土佐一」という品種の「しょうが」の種苗であるとの商品の特性を記述したものと認識されるにすぎないというべきである。

してみれば、本願商標は、その指定商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものであるから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。

また、これを前記の「しょうが」(土佐一)の品種以外の品種に係る「しょうがの球根」等の「しょうが」の種苗に相当する指定商品について使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるといわなければならない。

よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

(2)審判の請求の理由に係る請求人の主張について

ア 請求人は、原審で開示した事実について、「土佐一」を「しょうが」の「通称」として記載しているものと「しょうが」の「品種」として記載されているものとがあるから、原審で開示した事実から得られる「情報」は錯綜している旨主張する。

しかしながら、原審及び当審において開示した事実(別掲1及び2)からは、「土佐一」の名称で、他の品種の「しょうが」とは区別できる「しょうが」(土佐一)が生産されていることが認定できるのであって、前記の事実に係る書証において「通称」と表記されたり、「品種」と表記されたりするなどの表記の差異によって、前記(1)の認定が左右されるものではない。

イ 請求人は、原審で開示した事実は、いずれも商品「しょうが」(野菜)に関するものであって、「しょうがの球根,その他の種子類等」の本願商標の指定商品に関する情報ではないから、原査定は、合理性に欠けている旨主張する。

しかしながら、前記(1)のとおり、「しょうが」と「しょうがの球根」(種しょうが)については、両者が同一のものというのが相当であること、また、両者の需要者、生産者が一致することからすれば、「土佐一」が「しょうが」の通称ないし品種名である以上、「土佐一」を「しょうがの球根」(種しょうが)等の「しょうが」の種苗に相当する本願の指定商品について表示するときは、当該商品を取引者、需要者が、「しょうが」(土佐一)の種苗であると一般に認識するというのが自然である。

ウ 請求人は、原査定が、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当すると認定しているが、同号には「通称」であることを理由として同号に該当する旨の規定は何ら存在しない。したがって、拒絶査定は、同号を恣意的に拡大して解釈しており、商標審査における合理性を担保していない旨主張する。

しかしながら、本件の争点となる商標法第3条第1項第3号の条文中に「通称」の文言が存しないとしても、同号は、自他商品の識別標識として機能しないものを例示したにすぎないものであることは、商標法第3条の規定に照らして明らかである。

また、裁判例においても、要旨、「法3条は、商標登録の要件を定めたものであって、同条1項は、自己の業務に係る商品又は役務についての識別力あるいは出所表示機能を欠く商標を列挙するものであるところ、その規定の体裁及び内容等からみて、同項1号から5号までの規定は、『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標』を例示的に列挙するものであり、同項6号の規定は、同項1号から5号までにおいて例示的に列挙されたもの以外に、『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標』を総括的、概括的に規定しているものと認められる。」のように判示されている(東京高等裁判所平成17年1月26日判決、平成16年(行ケ)第369号)。

エ 請求人は、「通称」とは「一般に通用している名前。とおりな。また、正式な名称ではないが、世間で普通に呼んでいる名。」(広辞苑 第5版)であり、正式の名称、即ち普通名称,一般名称として認識されていない語のことである。したがって、商品「しょうが」(野菜)においても、「土佐一」の語は普通名称、一般名称ではないことが世間に認知されている旨主張する。

しかしながら、「通称」の意味として請求人の主張のような辞書の記載があるとしても、前記(1)のとおり、「土佐一」は「しょうが」の通称ないし品種名として取引者、需要者に一般に認識され、使用されているものである。

しかるところ、本件の争点となる商標法第3条第1項第3号は、前記ウのとおり、自他商品識別力のないものを例示して列挙したものにすぎず、また、同号に該当するか否かは、正式な名称であるか否かにより左右されるものではなく、需要者の一般の認識を持って判断されるものである(最高裁判所第一小法廷昭和61年1月23日判決 昭和60年(行ツ)第68号 参照)。

オ 請求人は、「土佐一」は、「しょうが」の登録商標(登録第4920982号)であるから、「土佐一」の語が「通称」として一般的に認知されているとの原査定は、合理性がない。原審の認定手法に従えば、「しょうがの球根,その他の種子類」などを指定商品とする本願商標の識別力は認められるべき旨主張する。

しかしながら、既登録の商標が存在するとしても、本願商標が、商標法所定の登録要件に該当するか否かは、査定時又は審決時において本願商標の構成態様とその指定商品との関係から個別かつ具体的に判断がなされるべきものであるから、請求人の挙示する登録商標が存在するからといって、本件の審理が左右されるものではない。しかして、本願商標については、前記(1)のとおり判断するものである。

カ 請求人は、原査定中、意見書の主張についての説示について、るる論難する。

しかしながら、本件の審理は、原審の説示の正否の判断を目的とするものではなく、本願商標が商標法に規定する商標登録の要件との関係で商標登録を許容できるか否かを審理することを目的とするものである。しかして、本願商標については、前記(1)のとおり判断するものである。

キ 請求人は、自身が「種しょうが」を生産・販売する法人であり、請求人及びその代表者に関する記事が雑誌に掲載されている(第1号証)ところ、請求人が「種しょうが」を生産・販売していること及び本願商標「土佐一」を識別標識として使用し、現に識別力を発揮している旨主張する。

しかしながら、請求人の主張に係る証拠(第1号証)には、その取扱いに係る「種しょうが」に「土佐一」という商品名を付けている旨の記載(52頁)があるとしても、他方、当該証拠には、取引があるのは高知市近隣の農家が26件ほど、インターネット経由の取引が30件ほどと、決して多くはない旨の記載(54頁ないし55頁)もあるところである。

そうすると、当該証拠のみから、本願商標「土佐一」が自他商品識別標識として機能していると認めるに足りないものである。

また、請求人は、別掲2(3)セに示したとおり、その運営に係るインターネットウェブページにおいて、要旨、土佐一生姜は品種としては「大生姜」になるが、昔から高知県内のある農家が種子用生姜として、優良な個体を選び抜きながら栽培してきたものを他の農家にも分け与えてきたものが拡がっていき、通称「土佐一」と呼ばれている旨の記載をしているところ、かかる記載からは、「土佐一」が請求人に係る「種しょうが」の商標として認識されているものとは認められない。

加えて、前記4の意見書において、請求人は、本願商標の使用の事実に係る審尋に対し、商標法第3条第2項の立証は困難である旨主張し、同項に係る使用に関する証拠方法を何ら提出していない。

してみれば、本願商標が自他商品識別標識として機能するものということはできない。

ク 請求人は、商標法第3条第1項第3号の登録適格性は、現実の取引の実際に即して判断されるべきところ、原審の認定はあまりに形式的過ぎて、取引の実情を無視したものである。もちろん、商品の質の誤認を生じるものでもない旨主張する。

しかしながら、原査定は、本願商標及びその指定商品に関する事実(別掲1)を踏まえて、判断をしたものであることが原査定の記載から明らかである。また、本件の審理も原審において開示した事実(別掲1)及び当審において開示した本願商標及びその指定商品に関する事実(別掲2)を踏まえて、前記(1)のとおり判断するものであって、取引の実情に即して判断をなしたものである。

ケ 請求人は、本願商標は、請求人のみが自他商品の識別標識として使用しており、本願商標は、法の目的とする商品流通秩序の維持確立に多大の貢献をしている本来保護されるべき商標である。また、現実に使用されている。使用状況については、必要に応じて証拠を提出し、必要な立証を行う準備がある旨主張する。

しかしながら、前記(1)のとおり、本願商標が指定商品の品質を表示するにとどまるものであって、自他商品識別標識として機能するものではない、すなわち、商標として機能するものではないから、請求人の主張は、その前提を欠くものである。また、本願商標は、商品の品質の誤認を生ずるおそれのあるものであるから、需要者の利益を損なうおそれのあるものである。

そうとすれば、本願商標が、商標法の目的(第1条)に合致して保護されるべき商標であるということはできない。

また、請求人は、商標法第3条第2項の要件事実である商標の使用による識別力の獲得に係る事実を立証できないことを自ら前記4の意見書において述べ、当該要件事実に係る証拠方法の提出もないものである。

そうとすれば、本願商標が前記(1)のとおり、商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項の要件を備えるものでない以上、本願商標が自他商品の識別標識として機能するものということはできない。

以上のとおり、請求人の主張は、いずれも理由がなく採用することができない。

(3)当審における審尋に対する意見書に係る請求人の主張について

請求人は、前記4のとおり、審尋に対する意見書において、その主張をなすものであるが、その要旨は、前記(2)の審判請求の理由における主張と同旨であるところ、前記(2)のとおり、かかる請求人の主張は、いずれも理由がなく採用できない。

なお、請求人は、前記4の意見書(2)イにおいて、本願商標について、商標法第3条第2項の要件事実について立証することは現状では困難であるとしながら、再度、審判請求の理由(前記(2)ケ)と同様の主張(本願商標の使用状況について立証の準備がある旨)を繰り返している。

しかしながら、本願商標が前記(1)のとおり、商標法第3条第1項第3号に該当する以上、同法第3条第2項の要件を備えるものでなければ、本願商標について、商標登録の余地はないというべきである。

しかるところ、請求人は、審尋に対して、商標法第3条第2項についての立証は困難として、何ら証拠方法を提出していないものである。

したがって、本件について、再度、請求人に本願商標の使用状況についての立証を促すことなく、その審理を進めたものである。

(4)結語

以上からすれば、本願商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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