結論テキスト
審判費用は,請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2011−890102(T2011−890102/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5429881号商標(以下「本件商標」という。)は,「RecoCheck」の欧文字を標準文字で表してなり,平成22年11月2日に登録出願,第9類,第35類,第36類,第38類,第39類及び第41類ないし第45類に属する別掲1のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同23年6月30日に登録査定,同年8月5日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
請求人が本件商標を無効にすべきものとして引用する登録商標は,以下のとおりである。
(1)登録第5355661号商標(以下「引用商標1」という。)は,「レコチョク」の片仮名を標準文字で表してなり,平成20年10月30日に登録出願,第9類,第16類,第35類,第38類,第39類,第41類,第42類及び第45類に属する別掲2のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同22年9月24日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
(2)登録第5357652号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,平成22年3月30日に登録出願,第9類,第16類,第35類,第38類,第39類,第41類,第42類及び第45類に属する別掲4のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同年10月1日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
なお,引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは,単に「引用各商標」という。
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第36号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,欧文字で「RecoCheck」と表記してなる構成よりなるものである。
これに対して,請求人の引用商標1は,片仮名で「レコチョク」と書してなり,また,引用商標2は,別掲3のとおり図形の中央部に片仮名で「レコチョク」と書した構成よりなるものである。
本件商標は,「RecoCheck」の欧文字から「レコチェック」の称呼が生じる。一方,引用各商標は,上述の構成から「レコチョク」の称呼が生じる。両商標は,需要者に対して最も強い印象を与える第1音目と第2音目の「レコ」の発音を共通に有しており,これに続く第3音目も「チェ」と「チョ」という非常に近似した発音である。なお,本件商標の第4音目は促音「ッ」を有しているものの,両商標の最後の発音は「ク」で終わっている。
上記のように,両商標は中間音に差異を有するのみであるので,本件商標と引用各商標は,称呼において類似するものといわざるを得ない。
また,観念においては,本件商標及び引用各商標はいずれも造語であるから,何ら観念を生じさせるものではなく,比較することができないものである。
したがって,本件商標と引用各商標とは,外観が相違するとしても,称呼が類似する。
また,本件商標の指定商品又は指定役務は,引用各商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似のものを含むものである。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用各商標の周知著名性
請求人は,2001年7月の創業であり(当時の社名は「レーベルモバイル株式会社」),同年11月に携帯電話の着信音として利用できる楽曲データを配信する着信メロディサイトをスタートさせ,2002年12月からは30秒程度の比較的短い楽曲データである「着うた」の配信サービスを開始,2004年11月からは,より長い時間の楽曲データである「着うたフル」の配信サービスを開始,さらに,2008年12月からは,世界初の携帯電話機向け高音質配信サービス「着うたフルプラス」を開始するなど,楽曲データを配信するウェブサイト及びその配信サービスを行い,引用各商標を請求人及びそのサービスを表示する商標として使用してきた(甲第4号証ないし甲第6号証)。
携帯電話で市販のCDなどの音楽を着信音として楽しめるこのサービスは,高性能携帯電話の普及とともに爆発的に普及し,2006年10月には,請求人が提供する同サービスを利用した「着うた」,「着うたフル」の合計ダウンロード数は5億ダウンロードに達し,2008年10月には,世界で初めて10億ダウンロードに達している(甲第7号証)。
そして,請求人が提供するサービスのユニークユーザー数は,月間約1000万人であり(甲第8号証),ダウンロード数は1年間で1億2ないし3千万件となっている。これにより,携帯電話向け音楽配信業界内シェアは「着うたフル」で8割以上,「着うた」で6割以上に達していると推計され(甲第10号証),請求人は同業界のシェアナンバーワンであるとの記載が多く見受けられる(甲第11号証ないし甲第13号証)。
また,請求人は,スマートフォン向けサービスとして,「レコチョク」アプリを配信しており,スマートフォンでも音楽のダウンロード及び視聴が可能となっている(甲第14号証)。具体的には,2010年4月1日よりAndroid搭載スマートフォンでダウンロードできる「レコチョクアプリ」を通じて音楽配信サービスを開始し(甲第15号証),2011年6月20日からは「レコチョク」の名称で音楽ダウンロードアプリを提供しており(甲第16号証),両アプリのダウンロード数は合計で100万ダウンロードを超えている。
さらに,請求人は,CDなどの発売に先駆けて携帯電話へのダウンロードが行える先行配信,CDでは発売されない楽曲の独占配信,ダウンロード数のランキングである「レコチョクアワード」の発表(甲第17号証),テレビドラマといった音楽以外のコンテンツ配信などを行い,テレビCMの放送(甲第18号証)や音楽情報テレビ番組「レコ★Hits!」の提供(甲第19号証及び甲第20号証)などの活動を行っている。
そして,遅くとも本件商標の登録出願日である平成22年(2011年)11月2日までには,引用各商標は請求人の提供する役務を表示するものとして周知著名になっている。
イ 請求人の商品又は役務との混同を生ずるおそれ
このような中,被請求人は,実際に本件商標を使用したサービス「RecoCheck(レコチェック)」(iPhone用アプリ)の開始を2011年2月1日に発表し,同年4月4日にはAndroid用アプリのサービスを開始している(甲第21号証及び甲第22号証)。
しかし,このサービスの発表が開始されるや否や,その名称が引用各商標に類似していることから,インターネットを通じて短い文章を投稿できるサービス「ツイッター」には,両名称についての混同の可能性について言及した以下のような投稿が,「RecoCheck(レコチェック)」のサービス開始に関する発表後の数日の間に,様々なユーザーによってなされている(甲第23号証ないし甲第35号証)。
「“レコチェック”って“レコチョク”に似てるなあ・・・」(甲第23号証),「レコチョク関連のサイトかと思った。」(甲第24号証),「最初レコチョクかと思った」(甲第25号証)。
なお,この「ツイッター」はパソコンのほか携帯電話からも投稿を行えることから,上記の投稿をしたユーザーは,レコチョク及びレコチェック双方のサービスの潜在的需要者であるといえ,上記投稿からは,これらの需要者が両商標を「似ている」と強く感じることが如実に現れている。
ウ 上述のとおり,引用各商標は日本全国で広く使用され,周知となっている。
したがって,本件商標がその指定商品又は役務に使用された場合,かかる商品又は役務が請求人の商品又は役務であるか,あるいは請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業の営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある。
さらには,引用各商標を使用してサービスを提供している請求人は,「mag@mail.recochoku.jp」や「mag.snd@mail.music.recochoku.jp」のメールアドレスから配信楽曲やキャンペーンの情報に関するメールマガジン(甲第36号証)を送信しているところ,当該ドメイン名には欧文字で「recochoku」が使用されており,請求人若しくは同人が提供するサービスであることを強く印象付けるものとなっている。
「recochoku」を本件商標と対比すると,大文字,小文字の差異はあるものの,全9文字のうち第1文字目から第6文字目までが同一の欧文字で構成されており,外観上極めて近似している。そうすると,少なくとも当該メールマガジンの購読者である需要者は,本件商標の指定商品又は指定役務が請求人若しくは引用各商標と何らかの関係があると誤認することは必定であり,請求人の商品又は役務と混同が生じるおそれがある。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は,引用各商標が周知著名となった後に登録出願されたものであり,また,請求人所有の周知・著名商標と類似する称呼からなるものである。
したがって,本件商標は,引用各商標の顧客吸引力を利用するものであり,又は顧客吸引力を希釈化させる等,不正な目的で使用するものといわざるを得ず,商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号に違反してなされたものであるから,同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とされるべきものである。
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第34号証を提出した。
請求人は,本件商標が「レコチョク」の文字を表してなる引用商標1及び白黒で横に長い図形中に「レコチョク」の文字を記載してなる引用商標2と,外観において相違するとしても,称呼において類似することから,商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張する。
しかしながら,商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は,「商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり,商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である」(最高裁昭和39年(行ツ)第110号)と判示されており,称呼のみが重要視されるわけではない。
また,そもそも,本件商標は,引用各商標とは称呼において彼此聞き誤るおそれが無いものであり,のみならず外観・観念においても相違するものであるから,引用各商標とは非類似の商標であり,商標法第4条第1項第11号にも該当しないというべきである。
ア 本件商標について
(ア)本件商標の称呼・観念・外観について
本件商標は,横書きの欧文字で「RecoCheck」と記載してなる商標であり,「R」と「C」が大文字で表示されていることから,「Reco」の文字と「Check」の文字とを結合させた商標であることが理解できるものである。
そして,本件商標は,ユーザーが今いるスポット(場所や店舗など)に関するお薦め情報(価格・評価・コメント)を友達同士で共有できるスマートフォン用のアプリであり,日本人に一般的に広く馴染まれている英単語の「Recommend」と「Check」の2語を語源とする被請求人の造語商標であるところ,前半部分の「Reco」の文字部分は,英単語の「Recommend」が「レコメンド」と発音されることから,「レコ」の称呼が自然に生じるというべきである。また,後半部分の「Check」の文字部分は,「チェックする」等の意味で非常に馴染みがある英単語「Check」を極めて容易に理解させることから,本件商標に接した需要者は,当該文字部分を「チェック」とのみ称呼するというべきである。
よって,本件商標の構成態様からは「レコチェック」という称呼が生じるというべきである。
さらに,観念については,本件商標を構成する「RecoCheck」の文字は,特定の意味を有さない言葉である。しかしながら,本件商標の使用実績に鑑みれば,本件商標からは,「被請求人の位置情報サービスサイト『RecoCheck』」との観念が生じるというべきである。
(イ)本件商標の使用実績について
本件商標は,被請求人の位置情報サービス(以下「本件サービス」という。)の名称として,2011年2月から使用されている(乙第1号証)。被請求人の本件サービスは,ユーザーが今いるスポット(場所や店舗など)に関するお薦め情報(価格・評価・コメント)を友達同士で共有できるスマートフォン用のアプリであって,ユーザーがスポットの訪問履歴を記録することを「チェックイン」と呼んでおり,「チェックイン」後にお薦め情報を投稿したり閲覧したりすることが可能であり,かかる機能を通じて,会員へのインターネットを介した位置情報サービスを提供しているものである。また,2011年6月からは,被請求人が運営する情報提供サービスサイト(以下「本件サイト」という。)「ホットペッパーグルメ」,「ホットペーパービューティー」,「じゃらん」,「ポンパレ」等と連携し,上記の本件サイトに掲載されているクーポンや口コミを,現在地情報を元に簡単に見つけることができる機能を追加し,本件サービスはスマートフォンユーザーの間でますます好評を博しているものである(乙第2号証)。さらに,本件サービスは,「グルメ」「最寄駅」「ビューテイ」など22項目と「クーポンが使える店」「周辺スポットランキング」等で周辺情報を絞り込むことを通じて,さまざまな角度から周辺情報を得ることができる機能が拡大し,ますます便利なサイトになっている。
また,昨年の11月から通信大手NTTドコモと協業し,「RecoCheck」からNTTドコモ電子マネー「iD」対応の店舗の検索ができるようになり,今年3月には,「iD」に対応したRecoCheck登録店舗の検索を「iD」アプリから行えるようにする(乙第3号証)。本件サービスについては,2011年2月のサービススタート当時のみならず,上記の機能拡大時にも,大手コンピュータ・ネット雑誌「週間アスキー」の電子版「週アス+」(乙第4号証)や,その他のインターネット関連の情報サイト「INTERNETWatch」(乙第5号証 2011年2月1日,乙第6号証 2011年6月11日),「andronavi」(乙第7号証 2011年5月19日),「ITmedia ニュース」(乙第8号証 2011年2月1日,乙第9号証 2011年11月22日),「Tech Crunch japan」(乙第10号証 2011年2月1日)等に掲載され,また,日経ビジネス(乙第11号証 2011年2月7日),毎日新聞(乙第12号証 2011年2月16日),朝日新聞(乙第13号証 2011年9月9日)日経コンピュータ(乙第14号証 2012年1月5日)等の大手ビジネス新聞・雑誌に掲載されており,インターネット情報提供サービスの分野において,本件サービスに対する人気及び注目度が高いことが理解できるものである。
本件サイトは,2011年度のApple社が選ぶベストアプリ「iTunes 2011 Rewind」にも選ばれた(乙第15号証)。
このように,使用開始からわずか1年弱の間に,本件商標は,被請求人が提供する位置情報サービスの名称として,取引者・需要者の間に広く認識されるに至っているというべきである。
イ 引用各商標について
引用商標1は,片仮名の「レコチョク」からなり,「レコチョク」の称呼が生じる。また,引用商標2は,白黒の横に長い四角の図形中に「レコチョク」の文字を記載してなるが,当該図形部分はありふれたものであり,自他商品識別力を有する部分ではないので,「レコチョク」の文字部分が引用商標2の要部となるというべきである。したがって,引用商標2に関しても,当該文字に相応して「レコチョク」の称呼が生じる。
また,引用各商標を構成する「レコチョク」の文字自体は,特定の意味を有さない言葉であるが,甲第4号証及び請求書(第21頁)によると,請求人の標章「レコチョク」は,請求人が運営する音楽配信サイト「レコード会社直営♪」の愛称であったもので,2009年頃から請求人の統一サービスブランドとして使用が開始されたものである。具体的には,請求人の音楽配信サイト「レコード会社直営」が需要者の間では「レコチョク」との略称で浸透していたことに由来するものであるとのことである(乙第16号証及び乙第17号証)。
さらに,「レコチョク」へのサービスブランド統一後においても,請求人は,請求人の音楽配信サイト「レコチョク」のホームページでは,「レコード会社直営の『着うた(R)』(「(R)」は○の中に「R」が表示されている。以下同じ)。『着うたフル(R)』サイト!」と表示しており(乙第18号証),音楽業界でも,請求人の音楽配信サイト「レコチョク」を「レコード会社直営」の文字を並べて紹介しており(乙第19号証),個人ブログにおいても,「レコード会社直営レコチョク」と記載されているものである(乙第20号証)。
上記のとおり,請求人の標章「レコチョク」は,請求人の音楽配信サイト「レコード会社直営♪」の略称として需要者の間で浸透していた言葉であることに由来する。また,「レコチョク」にブランドを変更した現在においても,請求人自身や音楽業界の関係者が,請求人の音楽配信サイト「レコチョク」を「レコード会社直営」の文字と並べて紹介しているものである。かかる取引実情を踏まえると,引用各商標に接する取引者・需要者は,「レコチョク」が「レコード会社直営」という意味を有する言葉であり,請求人の業務に係る音楽配信サイト「レコード会社直営のレコチョク」という観念を想起する場合が多いというべきである。
ウ 称呼上の非類似性
(ア)本件商標と引用各商標の称呼について
上記のとおり本件商標からは,「レコチェック」という称呼が生じる。一方,引用各商標からは,「レコチョク」の称呼が生じる。
そこで,両商標の称呼を対比すると,中間の「チェッ」と「チョ」の音で相違するが,両音は母音(「e」と「o」)を異にするものであり,さらに,本件商標の「チェッ」の音は促音を伴い強調されて発音されることから,前の「レコ」の音と後の「ク」の後と比べて,一層明瞭に発音される。
したがって,中間音といえども上記の「チェッ」と「チョ」の音の差異が両称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえず,また,構成音数が5音(促音を含む)対4音と相違し,かつ,いずれも非常に短い称呼であることとも相まって,両商標を一連に称呼するも,全体の音感が異なり,彼此相紛れるおそれはないものというべきである。
(イ)特許庁の併存登録例・審決・異議決定例
特許庁における過去の登録例においても,称呼上,中間の「チェ」と「チョ」の音で相違する商標が併存して登録されている(乙第21号証ないし乙第28号証)。
かかる中間部分の拗音で称呼上相違する商標が多数併存して登録されていることからも,本件商標が引用各商標とは称呼上類似しないことは明らかである。特に,本件商標においては,上記のとおり,中間の「チェッ」の音が促音を伴い強調して発音されることから,本件商標を一連に称呼した場合であっても,引用各商標と語感が全く異なり,互いに聞き誤るおそれはないものというべきである。
また,語頭と語尾の音が共通し中間音が相違する商標について,称呼上明確に聴別しうると判断した審決例及び異議決定例が多数存在する(乙第29号証ないし乙第34号証)。
(ウ)小括
上記のとおり,本件商標からは「レコチェック」との称呼が生じ,引用各商標からは「レコチョク」との称呼が生じ,中間の「チェッ」の音と「チョ」の音で相違するものである。両音はともに拗音であるが,母音が異なっていることからその音感に明らかな差異を有する。さらに,本件商標の発音中「チェッ」の音は促音を伴うために,「チェッ」の音は,前の「レコ」の音と後の「ク」の音よりも強く明瞭に発音されるから,かかる特徴に照らせば,本件商標と引用各商標は,互いに聞き誤るおそれはなく,称呼上類似しないことは明らかである。
さらに,上記のとおり,特許庁の審査においても,中間の拗音で称呼上相違する商標が多数併存登録されており,さらに,中間の1音又は2音で相違する商標が審決及び異議決定において非類似と判断されていることを踏まえて考えると,なおさら,本件商標は引用各商標と非類似の商標と判断されるべきである。
エ 外観上の非類似性
上述したとおり,本件商標は,欧文字の「RecoCheck」を横一連に記載してなる。一方,引用商標1は片仮名の「レコチョク」の文字を表わしてなり,引用商標2は白黒の横に長い図形中に「レコチョク」の文字を記載してなる。本件商標と引用商標1とを対比すると,欧文字と片仮名という文字の種類において異なり,引用商標2との関係では,白黒の横に長い図形の有無という点でも相違するものである。
したがって,両商標は,通常の注意力を有する需要者を基準に考えれば,互いに見誤ることはあり得ないというべきであり,外観において,全く別異の商標として区別し得ることは明らかである。
オ 観念上の非類似性
本件商標「RecoCheck」の文字は,特定の意味を有さない言葉であるが,前述の本件商標の使用態様に鑑みれば,被請求人が提供する位置情報サービスの名称「RecoCheck」という観念が生じるというべきである。
一方,引用商標1は「レコチョク」の文字から構成された商標であり,引用商標2は,白黒の横に長い図形に「レコチョク」の文字を記載した構成された商標である。引用各商標を構成する「レコチョク」の文字自体は,特定の意味を有さない言葉であるが,前述の「レコチョク」の文字が採択された経緯や使用態様に鑑みれば,引用各商標からは,「レコード会社直営」或いは「レコード会社直営の音楽配信サイト『レコチョク』」との観念が生じるというべきである。
したがって,引用各商標と本件商標とは,観念上も明確に区別することが可能な非類似の商標というべきである。
カ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用各商標と称呼において彼此聞き誤るおそれが無いものであり,のみならず外観・観念においても相違するものである。また,実際の取引において,本件商標は被請求人が提供する位置情報サービスの名称「RecoCheck」として使用され,一般需要者に広く知られているものであるから,本件商標の指定商品及び役務に使用された場合であっても出所について引用各商標と誤認混同されるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標は,引用各商標と非類似の商標というべきであるから,商標法第4条第1項第11号には該当しない。
請求人は,引用商標が平成22(2010)年11月2日までには,請求人の提供する役務を表示するものとして周知著名になっており,本件サービスが2011年2月1日に開始されるや否や,本件サービスの名称と引用各商標との混同の可能性について言及したような投稿が「ツイッター」で掲載されていることから,本件商標がその商品及び役務に使用された場合,請求人と関係のある者の業務に係る商品及び役務であると誤信されるおそれがある旨主張する。
しかしながら,ツイッターでの投稿記事は,匿名で書き込まれる様々なつぶやきであるから,請求人が提出した投稿記事は,どのような人物のどのような経緯で投稿した記事であるのか不明であり,信用性の点で問題がある。したがって,「ツイッター」上の漠然とした内容の投稿記事のみを根拠として,本件商標が引用各商標と混同のおそれがあるとの主張は根拠の欠けるものであり,またこのような主張が認められるとすれば第三者による商標採択の幅を余りに狭めることとなり不当である。
そもそも,本件商標が請求人の本件サービスに使用されて1年が経過するが,上記のとおり,請求人の「RecoCheck」は,Apple社の2011年度の最も優れたアプリに選ばれるほどの人気アプリとなっており,インターネットユーザーの間で請求人の「レコチョク」のサービスとの誤認混同も生じていないものである。したがって,本件商標がその商品・役務に使用された場合であっても,引用各商標に係る商品・役務と誤認混同されるおそれはなく,よって,商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
なお,請求人は,同人の「レコチョク」のサービスに関する情報を配信するメールマガジンに掲載されるドメイン名に欧文字の「recochoku」が使用されていることから,少なくとも当該メールマガジンの購読者である需要者は,本件商標の指定商品が請求人又は引用各商標と何らかの関係があると誤認すると主張する。
しかしながら,請求人は,欧文字の「recochoku」の周知著名性については何ら主張・立証していないし,そもそも,当該メールマガジンでは請求人が同人の「レコチョク」サイトのドメイン名を表示しているのであるから,かかる使用態様において,需要者が被請求人の「RecoCheck」と誤認混同するおそれはありえない。
請求人は,本件商標は周知・著名な引用各商標と類似する称呼からなるものであるから,引用各商標の顧客吸引力を利用するものであり,又は,顧客吸引力を希釈化させる等,不正な目的で使用するものといわざるを得ず,商標法第4条第1項第19号に該当すると主張する。
しかしながら,本件商標は,上記のとおり,引用各商標と全く別異の商標であり,引用各商標の顧客吸引力を利用するものでもなく,又は,顧客吸引力を希釈化させるものでもない。実際の取引においても,引用各商標が,明るいピンク色の,ゴシック体に近似したフォントデザインで片仮名の「レコチョク」との態様で使用されているのに対し,本件商標は,マリンブルーの色のやや丸文字のフォントデザインで欧文字の「RecoCheck」の態様で使用されている。このように,取引において,両商標は,文字のフォントデザイン・色・文字の種別において全く別異の商標として需要者の間で知られているものである。
したがって,本件商標が引用各商標の顧客吸引力を利用するものでもなく,又は顧客吸引力を希釈化させるものでもないことは疑いがなく,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
以上述べたとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号のいずれにも該当しないものである。
(1)本件商標について
本件商標は,前記第1のとおり,「RecoCheck」の欧文字を表してなるところ,該文字は,辞書等に成語として掲載されていないものであるから,特定の語義を有しない造語といえるものである。
そうとすると,我が国において一般に親しまれている英語読みに倣い,「レコチェック」の称呼が生じ,特定の観念は生じないものである。
(2)引用各商標について
引用商標1は,前記第2(1)のとおり,「レコチョク」の片仮名を表してなり,引用商標2は,別掲3のとおり,黒地の右向き横長矢印状の図形内に「レコチョク」の片仮名を白抜きに表してなるものである。
そして,引用各商標は,その構成文字に相応して「レコチョク」の称呼を生ずるものであり,また,特定の語義を有しない造語といえるものであるから,特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用各商標の類否について
ア 称呼について
本件商標から生ずる「レコチェック」の称呼と引用各商標より生ずる「レコチョク」の称呼とは,前者が5音で後者が4音の音構成に差異があるばかりでなく,両者はともに短い音構成からなる中で,その中間の「チェ」の音と「チョ」の音とは,母音(e)と(o)を異にし,加えて前者が促音を伴うことにより「チェッ」の部分が強く称呼されるものといえることからすれば,それぞれ一連に称呼してもその語感,語調が明らかに異なり,両者は,互いに聞き誤るおそれはない称呼上十分に区別し得るものである。
イ 外観について
本件商標と引用各商標の外観については,前記(1)及び(2)のとおり,本件商標は,「RecoCheck」の欧文字を表してなるのに対し,引用商標1は,「レコチョク」の片仮名を,引用商標2は,別掲のとおり,図形内に「レコチョク」の片仮名を表したものであるから,両者は明らかな差異を有するものであり,その外観を見誤ることはないというべきである。
ウ 観念について
両商標は,上記のとおり,いずれも特定の観念を生じないというのが相当であるから,観念については比較することはできない。
エ まとめ
上記のとおりからすれば,本件商標と引用各商標とは,その称呼,外観及び観念のいずれの点よりみても相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではない。
請求人が提出した甲第4号証ないし甲第20号証によれば,請求人は,携帯電話向けコンテンツ配信を事業内容とする会社であって,2001年11月に携帯電話の着信音として利用できる楽曲データを配信する着信メロディサイトをスタートさせ,2008年11月には,旧名称,レーベルモバイル株式会社名による運営サイトにて,世界初「着うた(R)」「着うたフル(R)」累計10億ダウンロード突破したものであり,2009年2月1日から社名を変更し,2010年には,Android OS搭載の携帯向け「音楽配信サービス」を4月1日よりスタートさせ,2011年6月20日には,スマートフォン向け音楽ダウンロードアプリ「レコチョク」配信開始したこと等が認められる。
そして,請求人は,自身の業務である「携帯電話向け音楽の配信」に関する役務について,引用商標1又は色彩を用いた引用商標2を使用しているものであり,報道関係社に対するプレスリリースやインターネット情報等からすれば,引用各商標は,請求人の業務に係る「携帯電話向け音楽の配信」を表すものとして,当該役務の需要者の間において広く知られていたものと認められる。
引用各商標は,前記2のとおり,本件商標の登録出願時及び査定時において,請求人の業務に係る役務を表示する商標として,需要者の間に広く知られていたものと認められる。
しかしながら,本件商標と,引用各商標とは,前記1に記載のとおり,外観,称呼及び観念のいずれからみても十分区別し得る別異の商標であって,商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても,請求人の引用各商標を想起,連想させるものではないというのが相当であり,請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品又は役務であるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
また,請求人の提出に係る証拠を勘案しても,例えば,本件商標権者が引用各商標の顧客吸引力を利用する,又は,顧客吸引力を希釈化させる等,不正の目的をもって本件商標を出願し,登録を受けて使用しているなどと認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
してみれば,本件商標は,引用各商標の出所表示機能を希釈化させ,請求人の名声等を毀損させる目的,その他の不正の目的をもって使用するものということができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当しない。
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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