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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2012−890031(T2012−890031/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5441186号商標(以下「本件商標」という。)は,「Cache」の欧文字を標準文字により表してなり,平成23年6月21日に登録出願,第44類「美容,理容」を指定役務として,平成23年8月30日に登録査定,同年9月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録5118976商標(以下「引用商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成19年4月25日に登録出願,第44類「美容,理容」を指定役務として,同20年3月14日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし同第4号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号該当について

本件商標は,「Cache」の欧文字を横書きしてなるのに対し,引用商標は,「cache−cache」の欧文字を横書きし,その下段に「カシュ カシュ」の片仮名を小さく表したものであり,外観全体としては明確な差異があり,外観における類似性はないものと認められる。

本件商標は,仏語や英語で「隠し場」や「隠し場所」の意味を有する。これに対して,引用商標は,本件商標をハイフンを挟んで前後に並べたものであり,その前後の「cache」の欧文字から本件商標と全く同一の観念が生ずることは明らかである。また,引用商標が中央のハイフンを挟んで前後に「cache」の欧文字を繰り返し表したものであるため,引用商標に対する観念の同一性は更に強められるとみるのが自然である。

また,引用商標は,仏語で「かくれんぼ」の意味を有するが,引用商標は,「cache」という合成語要素からなるものであるため,観念上も類似することは否定できない。

したがって,本件商標と引用商標とは,観念が共通する類似のものとみるのが妥当である。

本件商標は,「カシュ」あるいは「キャシュ」の称呼を生ずるものと考えられるが,いずれの称呼を有するとしても,本件商標は,引用商標の欧文字部分の「cache」と全く同一であり,かつ,「cache」が中央のハイフンを挟んで前後に独立した態様で表されていることから,引用商標は,「カシュカシュ」あるいは「キャシュキャシュ」という連続的称呼だけではなく,本件商標と同様に「カシュ」や「キャシュ」という省略した称呼をも生ずることは明らかである。また,欧文字の下段に繰り返し付された「カシュ」の片仮名も,これらの前後に一文字分の視覚的に明確なスペースがあけられていることから,「カシュ」という本件商標と同一の省略した称呼をも生ずることがあるとみるのが自然である。

また,特に現代社会では,比較的長い名称や用語を簡略化して短く称呼する傾向が強いことから,引用商標についても需要者が略して「cache」だけを称呼するとみるのが自然であり,引用商標がその半分に相当する本件商標と同一の省略的称呼を生ずることは明確である。

さらに,本件商標と引用商標の指定役務である美容においては,需要者として多数を占める比較的年齢層の若い女性の間で,引用商標を半分に略して日常,本件商標と同様に称呼することがあるのは明確であり,しかも引用商標は本件商標と同一の「cache」の欧文字が二度重複した態様となっていることから,この半分に略して称呼することは全く否定できない。

したがって,本件商標と引用商標とは,称呼において類似することは明らかである。

前述したとおり,本件商標と引用商標は,少なくとも「隠し場」という観念を共通にすると共に,「カシュ」や「キャシュ」といった称呼も共通にする類似の商標であり,両商標の指定役務も同一である。

2 むすび

以上のとおり,本件商標と引用商標が類似であることは否定できず,また両商標は同じく第44類「美容,理容」を指定役務とするものである。

そして,特に美容業界などにおいて,実際に相紛らわしいことが明らかな本件商標の登録を認めておくことは,取引秩序の維持による健全な産業の発達と需要者の利益を保護するという法目的を阻害することになる。

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反するものとして同法第46条第1項の規定により,無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし同第38号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)外観

本件商標が「Cache」の欧文字が標準文字として横書きに表されたものであるのに対し,引用商標が上下二段の文字からなり,上段に「cache−cache」の欧文字が,下段に「カシュ カシュ」の片仮名が,欧文字部分より小さく,当該欧文字部分の後半部分に表されたものであるので,外観において両者は顕著に相違する。

(2)観念

本件商標は,これを仏語として認識した場合には,「隠し場所」,「隠れ場所」などの観念を生じ,英語として認識した場合にも,「(隠し場の)貯蔵物」,「隠し場」などの観念を生じ得る。

これに対し,引用商標は,片仮名部分により「カシュ カシュ」と称呼が特定されていることから,需要者は,「cache−cache」の欧文字部分を「かくれんぼ」の意味を有する仏語であると認識し理解するものと解される。

そして,仏語の「cache−cache」は,合成語の一種であり,また,最小の表意単位である単一の記号素として扱われるものである。

すなわち,仏語において,「cache」と「cache−cache」は,異なる単語として明確に区別されており,意味についても明確に相違する。

さらに,「cache−cache」が日本国内において「かくれんぼ」の意味を有する語として広く使用されている語であることは,乙第6号証ないし乙第15号証に示す「Cache−Cache」,「Cache Cache」などの名称の飲食店や雑貨店などが,雑誌やウェブサイトにおいて紹介されていることからも明らかである。

そうすると,引用商標においても「cache−cache」の欧文字部分は,「かくれんぼ」の意味を有する仏語として需要者が認識し理解するものと解するのが自然であり,当該欧文字部分から需要者が「cache」のみを認識し理解すると解するのは取引上不自然であるといえる。

したがって,引用商標は,「かくれんぼ」の観念のみを生じ,「隠れ場」や「隠し場所」などの観念と混同を生じることはない。

なお,「cache−cache」のような合成名詞は,仏語において多数見られ,例えば,「chou」は「キャベツ」の意味を有する単語であるのに対し,「ChouChou」又は「Chou−Chou」は「お気に入り」の意味を有する単語であり,また,「押す」の意味を持つ「pousser」と「人力車」の意味を持つ「pousse−pousse」,「首」の意味を持つ「cou」と「カッコウ」の意味を持つ「cou−cou」などにおいても,両者の意味は日常的に明確に区別されている。

これらの例から分かるとおり,仏語においては,既存の語がハイフンで結合されることにより,新たに別異の意味を有するものとして作り出された単語が存在し,これらの単語は既存の語とは明確に異なる意味,観念を持って使用されている。

本件においても,「cache」と「cache−cache」は,外観の相違が強く認識される結果,需要者がそれらの観念の異同を判別する際には,その違いを明確に認識するものと解されるから,本件商標と引用商標の間の観念において出所の混同は生じ得ない。

(3)称呼

本件商標は,「Cache」の欧文字よりなるものであるから,「カシェ」,「カシュ」,「キャッシュ」などの称呼を生ずるものといえる。

他方,引用商標は,上記のとおり,「cache−cache」の表音と認められる「カシュ カシュ」の文字により称呼が特定されていることから,「カシュカシュ」の称呼のみを生ずるものといえる。

そうすると,本件商標から生ずる「カシェ」,「カシュ」,「キャッシュ」などの称呼と,引用商標から生ずる「カシュカシュ」の称呼との間には,構成音数などが相違するという顕著な差異が存在するから,両者は称呼上,明確に区別することができる。

よって,本件商標と引用商標は称呼においても非類似である。

これに対し,請求人は,引用商標から「カシュ」や「キャシュ」という省略した称呼も生ずる旨主張するが,本件の指定役務である美容などにおいては,役務の提供に際して用いられる化粧品と同様にファッション性が重視され,その主要な需要者が女性であることもあって,化粧品と同様に,仏語をもって商標が採択されている傾向にあるといえるから,引用商標は,「かくれんぼ」の意味を表す仏語に即した発音をもって称呼される他ないと解するのが自然であり,需要者が「カシュ」と簡略化して称呼することはない。

また,請求人は,需要者として多数を占める比較的年齢層の若い女性の間で「cache−cache」を半分に略して本件商標と同様に称呼することがあるのは明確である旨主張するが,請求人は,「cache−cache」を「カシュ」と略して用いているといった取引の実情を示す証拠を何ら示しておらず,独自の見解を述べるに過ぎない。

さらに,乙第19号証ないし乙第38号証に示すとおり,単一の言葉からなる商標と当該言葉が繰り返して構成される商標が登録された例や非類似と判断された審判・異議申立例が多数存在する。

(4)以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観及び称呼において顕著に相違し,観念においても両者の出所の混同を生じ得るほどに類似するとまではいえないから,本件商標がその指定役務において使用された場合に,引用商標との間で役務の出所に誤認混同を生じさせるおそれはなく,両商標は類似しない。

2 むすび

以上のとおり,本件商標と引用商標は類似しないのであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく,本件商標の登録は,同法第46条第1項の規定により無効にされるべきではない。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標は,前記第1のとおり,「Cache」の文字を標準文字により表してなるものであるところ,これは,「隠し場(所)」などの意味を有し,「キャシュ」と発音される英語(甲4「研究社 新英和大辞典」)又は,「隠し場所」などの意味を有し,「カシュ」と発音される仏語(甲3「小学館 ローベル仏和大辞典」)と認められるから,本件商標は,その構成文字に相応して,「キャシュ」又は「カシュ」の称呼を生じ,「隠し場所」の観念を生ずるものとみるのが自然である。

他方,引用商標は,前記第2のとおり,「cache」の欧文字2つをハイフンで繋いだ「cache−cache」を上段に表し,その後半部の「cache」の文字の下に,その構成文字の幅内に小さく表した「カシュ カシュ」の文字を配してなるものであるところ,「cache−cache」は,「かくれんぼ」の意味を有し,「カシュカシュ」と発音される仏語(甲3「小学館 ローベル仏和大辞典」)であるから,引用商標からは,それぞれの構成文字に相応し,「カシュカシュ」の称呼及び「かくれんぼ」の観念を生じるものとみるのが自然である。

そこで,本件商標と引用商標の類否についてみると,本件商標が「Cache」の欧文字のみからなるのに対し,引用商標は,「cache−cache」のハイフンを含む欧文字と「カシュ カシュ」の片仮名とを二段に表してなるものであるから,両商標の外観は明らかに異なるものである。

次に,称呼についてみると,本件商標から生じる「キャシュ」又は「カシュ」の各称呼と引用商標から生ずる「カシュカシュ」の称呼とは,構成音数の差,相違する各音の音質の差,音構成の差などにより,それぞれを一連に称呼した場合においても,判然と聴別し得るものである。

また,本件商標が「隠し場所」の観念を生ずるのに対し,引用商標は,「かくれんぼ」の観念を生ずるものであるから,両商標は,観念においても明らかに異なるものである。

したがって,本件商標と引用商標は,その称呼,観念及び外観のいずれからみても,相紛れるおそれのない非類似の商標であるから,たとえ,その指定役務が同一又は類似のものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(2)請求人の主張について

請求人は,「本件商標は,引用商標の欧文字部分の前後部分と全く同一であり,かつ,引用商標は『cache』がハイフンを挟んで前後に独立した態様で表されているから,本件商標と同様に『カシュ』などという省略した称呼をも生ずる。また,現代社会では,比較的長い名称や用語を簡略化して短く称呼する傾向が強いことから,引用商標も需要者が『cache』だけを称呼するとみるのが自然であり,さらに,本件商標と引用商標の指定役務である美容においては,需要者として多数を占める比較的年齢層の若い女性の間で引用商標を半分に略して称呼することがある」などとして,引用商標から『cache』の部分を抽出して,本件商標と引用商標が称呼及び観念を共通にする類似の商標である旨主張する。

しかしながら,前記のとおり,「cache−cache」は,全体が一体となって仏語の単語を表すものであって,下段に付記された「カシュ カシュ」の文字はその仏語の読みを表したものと無理なく認識し得るものであり,かつ,被請求人の主張のとおり,「cache−cache」又は「カシュカシュ」は,日本においても飲食店などの名称に使用されている語であって,まったくなじみのない語とはいえないから(乙6〜15),引用商標から「cache」又は「カシュ」の部分を抽出し,本件商標と比較することは,不自然であって相当ではない。

また,現代社会では,比較的長い名称や用語を簡略化して短く称呼する傾向があり,特に,本件商標に係る指定役務の需要者である比較的年齢層の若い女性が長い商標を省略して認識し,使用することがあるとの請求人の主張も,ただ述べるだけで,その主張を裏付ける証拠の提出はない。

したがって,請求人の前記主張は,いずれも採用することはできない。

2 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項により,無効にすることはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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