Trademark Appeal Case
略語と記述語の結合識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900391(T2011−900391/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5428563号商標(以下「本件商標」という。)は、「スマートBEMS」の文字を標準文字で表してなり、平成22年10月29日に登録出願、第9類「エネルギー消費量の削減を図るためのビル制御システム用コンピューターソフトウェア,太陽光発電装置の状況を通信ネットワークを用いて監視するための遠隔監視用電子計算機,電子応用機械器具及びその部品,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,蓄電池,太陽電池による発電装置,電気通信機械器具」、第37類「エネルギー消費量の削減を図るためのビル制御システムを搭載した建築物の建設工事,エネルギー消費量の削減を図るためのビル制御システムを搭載した建築物の建築工事に関する助言,その他の建築工事に関する助言,エネルギー消費量の削減を図るための建築設備の運転・点検・整備,その他の建築設備の運転・点検・整備,暖冷房装置の修理又は保守,バーナーの修理又は保守,ボイラーの修理又は保守,ポンプの修理又は保守,冷凍機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守,電気通信機械器具の修理又は保守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守」及び第42類「エネルギー消費量の削減を図るためのビル制御システムを搭載した建築物の設計,その他の建築物の設計,測量,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,エネルギー消費量の削減を図るための電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,その他の電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,エネルギー消費量の削減を図るための電子計算機の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,エネルギー消費量の削減を図るための電子計算機の貸与,エネルギー消費量の削減を図るための電子計算機用プログラムの貸与,省エネルギーに関するコンサルティング,建物内におけるエネルギー消費量の測定,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,計測器の貸与」を指定商品及び指定役務として、同23年6月23日に登録査定、同年7月29日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立の理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当するとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本件商標は、その指定商品・役務について識別力の低い語である「スマート」と、指定商品・役務の業界の取引者・需要者が一般的に使用している「ビルエネルギーマネージメントシステム(Building Energy Management System)」の略語「BEMS」からなり、全体として「スマート化した(コンピュータ制御の)ビルエネルギー管理システム」の意味として理解されるため、省エネルギー又はビルエネルギーに関係した商品・役務については、商品の品質・役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標は、「BEMS」の語を含むため、「BEMS」に関係しない商品・役務については、商品の品質・役務の質について誤認を生ずるおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2) 商標第3条第1項第6号について
本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しないとしても需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であり、 商標第3条第1項第6号に該当する。
3 本件商標に対して、平成24年2月28日付けで通知した本件商標の取消理由は、別掲のとおりである。
4 商標権者の意見
(1)本件商標に関して
ア 本件商標中の「スマート」の文字部分から、仮に「情報通信技術(ICT)を駆使した〜」の意味合いを理解すると、本件商標全体から「ICTを駆使した、建物全体のエネルギー設備をICTにより統合的に監視し、自動制御することにより、省エネルギー化や運用の最適化を行う管理システム」程の意味合いを想起させ、重複表現となり、当業者であれば多大な違和感を覚える。
本件商標に接する当業者は、本件商標の構成中の「スマート」の文字部分より、「ICTを駆使した〜」の意味合いを理解するよりむしろ、「洗練された(ないし「賢い」)BEMS(建物全体のエネルギー設備をICTにより統合的に監視し、自動制御することにより、省エネルギー化や運用の最適化を行う管理システム)」ほどの意味合いを想起するのが自然といい得る。
イ まして、本件商標の構成中の「スマート」の文字部分から、「(従来のBEMSに、より高度なICT等を付加し、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減等を効率的に行い、)ビル環境、ひいては地球環境の最適化を実現するといった、技術向上を図る」などといった具体的な意味合いを認識するとはいえない。
(2)他社の使用について
ア 甲20号証の5において、「“スマートBEMS”は、NTTファシリティーズの呼称です。」と記載されていることからみても、商標権者以外の者においても、「スマートBEMS」が特定の商品や役務の内容を表わす一般的な呼び名ではないと認識していたことが認められるものである。
イ 甲20号証の1ないし同28によれば、(株)東芝、大成建設(株)、(株)明電舎、(株)山武ビルシステムカンパニー、(株)NTTファシリティーズ(以下、「(株)」を省略する。)によって、「スマートBEMS」が使用されていることがうかがえる。
(ア)このうち、東芝、大成建設、明電舎については、明電舎が、横浜市が行った「横浜スマートシティプロジェクト」(以下、「YSCP」という。)へBEMSに関するワーキンググループとして参加したところ、明電舎から事業を受託したのが東芝、大成建設の2社である(甲20の6)。そして、委託企業である明電舎が、当該事業プロジェクト中のBEMS技術について「スマートBEMS」を使用したために、受託先の東芝、大成建設もこれに倣って使用しているに過ぎず、実質的には、明電舎の1社のみの使用とみなし得る。
(イ)甲第20号証の6、同9、同13、同18ないし20、同23及び同27は、いずれも「YSCP」に関する記事であり、上記同様に、明電舎が「スマートBEMS」を使用していることを示す証拠にすぎない。
(ウ)甲20号証の3は、一般社団法人新エネルギー導入促進協議会自身が「スマートBEMS」を使用しているのではなく、「YSCP」の提案が「次世代エネルギー・社会システム実証事業」として採択されたという審査結果を表わすに過ぎないものであるから、(イ)と同様に、明電舎が「スマートBEMS」を使用していることを示す証拠にすぎない。
(エ)甲第20号証の2、同15及び同22は、明電舎による使用例である。
(オ)甲第20号証の7は、「YSCPなどで実証する予定であり」の旨の記載があるとおり、「YSCP」における明電舎からの受託事業についての記載であるから(イ)と同様に、明電舎による使用例といい得るものである。
(カ)甲第20号証の8、同10、同14及び同17は、単に山武ビルシステムカンパニーの従業員が講師を務めるセミナーの案内であって、商品又は役務の内容を表わす一般用語として取引上普通に使用されている例には該当しないものである。
(キ)甲第20号証の1、同4、同12、同16、同21及び同26は、NTTファシリティーズによる使用例であるが、甲20号証の5において、「“スマートBEMS”は、NTTファシリティーズの呼称です。」と記載されているとおり、同社は、「スマートBEMS」を同社の特定のサービスを表示するものとして使用しているのであって、これらの証拠は、商品又は役務の内容を表す一般用語として、取引上普通に使用している例には該当しないものである。
ウ 以上のとおり、結局、「スマートBEMS」を、明らかに商品又は役務の内容を表す一般用語として使用しているのは、わずか明電舎の1社のみに止まるものである。
エ そうしてみると、申立人提出の甲各号証によっては、「スマートBEMS」が本件商標の指定商品又は指定役務の内容を表示するものとして、一般に使用されているものとは到底いえないものである。
よって、本件商標は、これをその指定商品及び指定役務について使用しても、単に商品の品質及び役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標には該当せず、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものではない。
(3)商標権者の使用について
ア 甲3号証の2、甲第8号証、甲第12号証の52、同131及び甲第19号証の記載は、いずれも「シミズ・スマートBEMS」の使用例であるが、商標権者は、「シミズ・スマートBEMS」の商標を文章中に使用する際は、括弧書きを用いて普通名称と見られないよう強調して使用してきたところであり、特に、甲第3号証の2の記載「ビル制御システム『シミズ・スマートBEMS』」、甲第8号証の記載「『シミズ・スマートBEMS』というBEMS(ビルエネルギー管理システム)」及び甲第19号証の記載「エネルギー制御システム『シミズ・スマートBEMS』」に顕著であるが、当該商標と普通名称とが併記されていることは、「シミズ・スマートBEMS」が商標権者のBEMSを表示するものとして使用されていることを示す証拠にほかならない。
よって、これら号証の「シミズ・スマートBEMS」の使用は、「スマートBEMS」が特定のシステムの内容を表すものとして使用されていたという証拠にはなり得ない。
なお、商標権者は、「シミズ・スマートBEMS」の表記を順次「スマートBEMS」へ切換えているところであり、自社のウェブサイトにおいても積極的に「スマートBEMS」の表示については、「(R)(実際は、○の中にR)」表示を付記するよう励行しているところである(乙1)。
イ 甲第12号証の128は、「日本技術情報センター主催」のセミナー案内であり、商品又は役務の内容を表す一般用語として取引上普通に使用されている例には該当しないが、当該証拠における記載は、日本技術情報センターの担当者が、参加企業のうち、商標権者及びNTTファシリティーズが、たまたま自社の商標として「スマートBEMS」を使用していたために、「スマートBEMS」を一般名称と誤解し、「スマートBEMS」が特定の商品又はサービスを表示するものであるかのような記載となっており、商標保護の観点から対応に苦慮しているところである。
ウ そこで、商標権者は、今後、本件商標「スマートBEMS」が一般用語であるかのような誤解をされることのないよう、文書により、東芝、大成建設、明電舎、NTTファシリティーズの各社及び横浜市に対し「スマートBEMS」を使用しないよう求め、登録商標の稀釈化及び一般名称化の防止に努めているところである(乙2)。
5 当審の判断
(1)本件商標について通知した上記3の取消理由は、妥当なものと認められる。
してみれば、本件商標をその指定商品・役務に使用しても「(従来のBEMSに、より高度な情報通信技術(ICT)等を付加し、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減等を効率的に行い、)ビル環境、ひいては地球環境の最適化を実現するといった、技術向上を図るビルエネルギー管理システム」なる意味合いを認識させるにすぎないものであるから、単に商品の品質及び役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものといわなければならない。
(2)取消理由に対する商標権者の意見に対して
ア 本件商標に関して
商標権者は、前記4(1)のとおり、取消理由における本件商標中の「スマート」部分の認定からすれば、本件商標から「ICTを駆使した、建物全体のエネルギー設備をICTにより統合的に監視し、自動制御することにより、省エネルギー化や運用の最適化を行う管理システム」程の意味合いを想起させる重複表現となり、違和感がある旨、主張している。
しかしながら、取消理由では、概略「従来のBEMSに、より高度なICT等を付加したBEMS」と認定しているのであって、違和感があるということはできない。
イ 他社の使用について
商標権者は、前記4(2)のイのとおり、東芝、大成建設、明電舎、山武ビルシステムカンパニー及びNTTファシリティーズにより、「スマートBEMS」が使用されているが、実質的に明電舎1社のみの使用と見なし得る旨、主張している。
また、同様に、甲20号証の3は、前記4(2)イの(ウ)のとおり、一般社団法人新エネルギー導入促進協議会自身が「スマートBEMS」を使用しているのではなく、明電舎が使用していることを示す証拠にすぎない旨、主張している。
さらに、前記4(2)イの(カ)のとおり、甲第20号証の8及び同10等は、単に山武ビルシステムカンパニーの従業員が講師を務めるセミナーの案内であって、商品又は役務の内容を表す一般用語として使用されている例には該当しない旨、主張している。
その他、前記4(2)イの(キ)のとおり、甲第20号証の1、同4、同12、同16及び同21は、いずれもNTTファシリティーズによる使用例であるが、前記4(2)アの記載(甲20の5)において、「“スマートBEMS”は、NTTファシリティーズの呼称です。」との記載から「スマートBEMS」が特定の商品や役務の内容を表す一般的な呼び名ではないと認識されているとして、甲第20号証以外の号証(前記の甲20の1、同4、同12、同16及び同21)における「スマートBEMS」の使用も同様(一般的な呼び名ではない)である旨、主張している。
しかしながら、本件商標と同一の「スマートBEMS」の各社による使用は、例え横浜市からの「YSCP」の提案による明電舎からの受託事業であったとしても、明電舎の他、実際に「一般社団法人新エネルギー導入促進協議会」、「山武ビルシステムカンパニー」、「東芝」及び[NTTファシリティーズ」等の各社において本件商標の指定商品・役務の品質(質)を普通に用いられる方法により実際に使用されている事実が存する(別掲の取消理由参照。)。
加えて、これらの各社による本件商標と同一の「スマートBEMS」の使用は、「BEMS」関連事業を企業の一使命として責任を持って当該技術の開発・技術動向及び今後の展開等を研究若しくは、推進している社による使用であることから、統一された理解、認識の下、該語の使用がなされているものであって、委託企業である明電舎が、「スマートBEMS」を使用したために、受託先の東芝、大成建設もこれに倣って使用しているに過ぎないとか、一般社団法人新エネルギー導入促進協議会における使用も「YSCP」の提案が「次世代エネルギー・社会システム実証事業」として採択されたという審査結果を表すに過ぎないとか、さらには、単に「山武ビルシステムカンパニー」の従業員が講師を務めるセミナーの案内につき、商品又は役務の内容を表す一般用語として取引上普通に使用されている例には該当しないとかということにはならない。
また、NTTファシリティーズによる使用に関しては、甲第20号証の5においてのみ、「“スマートBEMS”は、NTTファシリティーズの呼称です。」と記載されているにすぎず、それ以外の号証においては、何らのコメントも付されていないものである。
そのほか、「INPRESS BUSSINESS MEDIA CORPORATION」(甲20の1)、ダイキン工業(甲20の16)及び日経BP社(甲20の21)の各ネット情報、さらには、日経産業新聞(甲20の26)の記事においてもNTTファシリティーズが「スマートBEMS」に関するプロジェクトを始めたことの紹介や「スマートBEMS」を導入する事の発表の事実が存する。
したがって、上記各社又はメディア(但し、東芝による使用は、以下のウにおいて記載)が本件商標と同一の「スマートBEMS」を本件商標の指定商品・役務の品質(質)を普通に用いられる方法により実際に使用されている以上、実質、明電舎のみの使用によるものということはできない。
ウ 商標権者の使用について
商標権者自身が使用する「シミズ・スマートBEMS」は、商標権者のBEMSを表示するものとして使用されているものであり、この使用は、「スマートBEMS」が特定のシステムの内容を表すものとして使用されていたという証拠にはなり得ない旨、主張している。
しかしながら「シミズ・スマートBEMS」として使用する場合は、取引者、需要者をして「スマート」及び「BEMS」の両語の意味合い、さらには、他社の「スマートBEMS」の使用例と相俟って、「商標権者のスマートBEMS」という意味合いを認識させるものとみるのが相当であって、「商標権者のBEMS」を表示するものとはいい難いものである。
また、甲第12号証の128における「日本技術情報センター主催」のセミナー案内における記載は、日本技術情報センターの担当者が、参加企業のうち、商標権者及びNTTファシリティーズが、たまたま自社の商標として「スマートBEMS」を使用していたために、「スマートBEMS」を一般名称と誤解し、「スマートBEMS」が特定の商品又はサービスを表示するものであるかのような記載となって旨、主張している。
しかしながら、日本技術情報センターによる本件商標と同一の「スマートBEMS」の使用も、前記イと同様、「BEMS」関連事業を企業の一使命として責任を持って当該技術の開発・技術動向及び今後の展開等を研究若しくは、推進している部署を有する法人による使用であることから、たまたま一般名称と誤解し、使用したものということはできず、NTTファシリティーズ、東芝及び山武ビルシステムカンパニーによる使用のみならず、商標権者においても本件商標の指定商品・役務の品質(質)を表示するものとして実際に使用しているものといわなければならない。
なお、商標権者は、「シミズ・スマートBEMS」の表記を順次「スマートBEMS」へ切換えているところであるとともに、今後、本件商標「スマートBEMS」が一般用語であるかのような誤解をされることのないよう、各社及び横浜市に対し、「スマートBEMS」を使用しないよう求めている旨主張している。
しかしながら、登録異議申立の審理における判断時期は、登録査定時であることから、本件異議の審理結果は、かかる商標権者の行為により左右されるものではない。
エ 小括
したがって、前記(2)における判断のとおり、商標権者の主張はいずれも採用することができない。
(3)以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。