Trademark Appeal Case
周知商標の混同と希釈化
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900121(T2012−900121/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5470607号商標(以下「本件商標」という。)は、「ホグスヘッド」の片仮名を上段に、「HOGS HEAD」の欧文字を下段に書してなり、平成23年8月10日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同24年1月11日に登録査定、同年2月17日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものとして引用する登録第2322044号商標(以下「引用商標」という。)は、「ホッグスヘッド」の片仮名を上段に、「HOGS HEAD」の欧文字を下段に書してなり、昭和63年11月29日に登録出願、第28類「酒類」を指定商品として、平成3年7月31日に設定登録、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同15年1月8日に指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
1 商標法第4条第1項第15号について
本件商標及び引用商標は、欧文字「HOGS HEAD」を含む態様からなるところ、「HOGS HEAD」の語は、特にウイスキーの関係では、「大樽」を意味するものとして使用されることが多いが、日本では、昭和63年に、引用商標の権利者である現サントリーホールディングス株式会社(以下「サントリー社」という。)が、いち早くこの言葉を自らのウイスキーのブランドに使用すべく引用商標について商標出願を行い、登録を得て、メインブランドの中の種別をブランド的に表すものとして、ラベル等に長年に渡り使用してきた(甲第3号証)。
サントリー社の引用商標を付した商品について、サントリー社によるニュースリリース、ウェブサイトや、サントリー社が経営するワインショップやウイスキーショップのメンバーによるブログにはもちろん、インターネット上のあらゆるオンライン通信販売サイトで扱われるとともに、個人によるブログにも数多く取り上げられており、その全てはメインブランドに加え引用商標を含む全体として取引されている(甲第3号ないし同第6号証)。
かかる状況から、引用商標がサントリー社のウイスキーのいわばサブブランドを示すものとして消費者の間に広く浸透していることは明らかである。
一方、本件商標は、引用商標「HOGS HEAD」を含む図形について、役務「飲食物の提供」について、登録されたものであり、実際には、横浜市の関内駅近くのバー「HOGS HEAD」の商標として文字とともに使用され、当該バーではウイスキーを含む様々な酒類が提供されているが(甲第7号証)、サントリー社と直接商品の取引関係はない。
上記のように「HOGS HEAD」がサントリー社のウイスキーを表示するものとして広く浸透している状況に加え、サントリー社では、「BAR−NAVI by SUNTORY」というウイスキー等のお酒を飲めるバーの検索サイトを開設しており、サントリー社と一定の取引のあるバーはこのサイトに掲載登録し、その情報を当該サイトを通じて発信し、広告宣伝、顧客集客活動をすることができるようになっている(甲第8号証)。
当該バー検索サイトは日本最大級のものであり、サントリー社がこのようなかたちで取引のあるバーとの連携活動を行っていることもまた広く知られている事実である。
かかる状況からは、本件商標に触れた需要者が、当該バーはサントリー社と取引があるものと考え、提携してそのホッグスヘッドウイスキーを置いているのだろうと、当該バーとサントリー社に何らかの業務上の取引関係があると誤認し、出所を混同するおそれは極めて高い。
以上より、本件商標は、需要者において商品及び役務の出所について誤認混同をまねく可能性が極めて高いものである。
よって、本件商標は、第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号について
上述のように、引用商標は、サントリー社のウイスキーを表示するものとして少なくとも日本国内における需要者の間に広く認識されているものである。
かかる状況において、数ある候補の中から、あえて引用商標を含む本件商標を考案・採択し、ウイスキーを含む酒類の提供というウイスキーとの関連性が極めて高い役務に使用することは、引用商標の名声にただ乗りする意図による可能性が極めて高く、当該使用により引用商標の出所表示機能が希釈化され、その名声等が毀損されることは明らかである。
以上より、サントリー社のウイスキーを表示するものとして少なくとも日本国内における需要者の間に広く認識されている引用商標を含む本件商標は、不正の目的をもって使用されるものであるといえる。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するので、その指定役務について登録が取り消されるべきである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)「混同を生ずるおそれ」について
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであると主張している。
しかして、ある商標が、同号で規定する「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かを判断するにあたっては、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」(最高裁判所第三小法廷 平成12年7月11日判決 平成10年(行ヒ)第85号)との最高裁の判示がされており、同号該当性の前提として、当該他人の表示(本件の場合、引用商標)は、周知著名性を有していることが必要であるというべきである。
そこで、以下、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者間において広く認識され、著名性を獲得していたかについて検討する。
(2)引用商標の広告宣伝の程度
申立人の提出した甲各号証には以下の記載が認められる。
ア 甲第3号証の1葉目は、No.9085(2005.4.6)と表示された、サントリー社によるウイスキー等に係るウェブサイトのニュースリリースであり、この下段には「THE CASK of YAMAZAKI ホッグスヘッド 1990」、「THE CASK of YAMAZAKI ホッグスヘッド 1993」との表示がされている。
イ 甲第4号証は、本件商標の登録出願後であり、かつ、登録査定前である2011年08月16日と表示された、サントリー社が経営するワインショップやウイスキーショップのメンバーによるウイスキー等に係る商品紹介のブログであり、ここには、「カスク オブ ハクシュウ ホッグスヘッド’98」との表示がされている。
ウ 甲第5号証の一葉目は、本件商標の登録査定後である2012年5月29日に掲載されたと推認される(この頁の「人気ランキング」の欄に「5月29日(火)更新」との表示がある。)、「枡屋酒店」のウイスキー等に係るオンライン通信販売のウェブサイトであり、「サントリー カスクオブ白州 ホッグスヘッド1998 56% 700ml」との表示がある。そして、同号証の三葉目は、「成城石井」による、本件商標の登録査定後である2012年5月29日に掲載された(この頁の左側上段に「05月29日(火)〜05月31(木)11:59」との表示がある。また、次頁の左側下段に「2012.05.25 2009年産プリムールワインに関するお知らせ」との表示がある。)、ウイスキー等に係る商品紹介のウェブサイトであり、「山崎蒸留所1999ホッグスヘッド:DR60201 700ml」との表示がされている。
エ 甲第6号証の一葉目は、2008年11月19日付けの、ウイスキー等の販売に係る大阪の酒販店「ワールドリカー・ブルータス」のブログ(商品紹介のウェブサイト)であり、ここには、「ザ・カスクオブ白州ホッグスヘッド1998」との表示がされている。
オ これ以外に、申立人からは、引用商標が使用された商品「ウイスキー」の広告、宣伝等の程度を示す証拠類は提出されていない。
(3)「フォッグスヘッド」の文字が使用された商品「ウイスキー」の販売数の程度
ア 甲第3号証の2葉目中段には、「THE(ザ) CASK(カスク) of(オブ) YAMAZAKI(ヤマザキ) ホッグスヘッド 1990 700ml 10,000円 55度 157本」、「同 ホッグスヘッド 1993 700ml 8,000円 54度 176本」との記載がされている。
イ 甲第6号証の1葉目下段には、「全国1,600本の限定販売!!」との記載がされている。
ウ このほか、「※ご注文の受付は、オンラインショップに限らせていただきます。」(甲第3号証2葉目下段及び4葉目下段)、「販売は終了してしまいましたが テイスティングでお楽しみいただけます!!」(甲第4号証1葉目中段)との記載がある。
(4)引用商標の周知著名性の程度
以上によれば、引用商標(「ホッグスヘッド」の標章)についての、サントリー社による広告宣伝の程度は、前記(2)に記載のものにすぎず、このほかに申立人からは、引用商標が使用された商品「ウイスキー」の広告、宣伝等を示す証拠書類は提出されていない。なお、前記(2)ウに記載のものは、本件商標の登録査定後のものであるから、これらは引用商標の周知著名性を示す証拠として採用することはできない。
また、「フォッグスヘッド」の文字が使用された商品「ウイスキー」の販売数は、前記(3)ア及びイで認定した本数でしかなく、むしろ、その記載全体からは、当該「ウイスキー」が大量に販売がされたとはいえない事情が推認されるところである。
(5)本件における「混同を生ずるおそれ」の有無
以上、申立人が提出した証拠方法によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が商品「ウイスキー」の取引者、需要者の間で、サントリー社の取扱いに係るものとして、広く認識され、著名となっていたとすることはできない。
してみれば、本件商標をその指定役務に使用しても、それがサントリー社の取扱いに係るものであるかのごとくその役務の出所について誤認、混同を生じさせるおそれがあるということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第19号について
前記「1」で判断したように、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、商品「ウイスキー」の取引者、需要者の間で、サントリー社の取扱いに係る商標として、広く認識されていたとはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 むすび
以上、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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