Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900065(T2012−900065/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5457441号商標(以下「本件商標」という。)は、「Slim」「up」及び「Slim」の文字を別掲(1)のとおりの構成に表してなり、平成23年6月2日に登録出願、第5類、第29類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同年10月17日に登録査定、同年12月16日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標はその指定商品中第5類、第29類及び第30類に属する別記に記載の指定商品について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人が引用する商標
申立人が引用する商標は次のアないしオ(以下、アないしエをまとめて「引用商標」という。)のとおりであり、引用商標の商標権は現に有効に存続しているものである。
ア 登録第3250114号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 スリムアップシュガー
指定商品 第1類 人工甘味料
出願日 平成6年7月28日
設定登録日 平成9年1月31日
イ 登録第4068988号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 スリムアップシュガー
指定商品 第30類 角砂糖,果糖,氷砂糖,麦芽糖,ぶどう糖
出願日 平成6年5月19日
設定登録日 平成9年10月17日
ウ 登録第4405142号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 スリムアップ
指定商品 第1類 人工甘味料
出願日 平成11年8月16日
設定登録日 平成12年8月4日
エ 登録第4521169号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 スリムアップ
指定商品 第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成10年8月7日
設定登録日 平成13年11月9日
オ 申立人が使用する商標(以下「使用商標」という。)
商標の態様 スリムアップシュガー
(平成17年から採用している態様は別掲(2)のとおり 。)
使用する商品 砂糖加工品(甘味料)
(2)具体的な理由
ア 「スリムアップシュガー」の周知性について
申立人は、平成6年に、商標を「スリムアップシュガー」とする商品「砂糖加工品」の販売を開始し、その後、継続して現在まで、顆粒状及び液状のものを販売している。
この間、販売開始当初は、ブロック体で「スリムアップシュガー」を表していたが、平成17年に別掲(2)の書体を採用し、現在に至っている。
ところで、申立人は、家庭用低カロリー甘味料のトップメーカーであり、平成19年の家庭用低カロリー甘味料市場は106億円であったが、そのうち「スリムアップシュガー」製品のシェアは17%を占めている。
さらに家庭用低カロリー甘味料のうち、砂糖を原材料とする「砂糖加工品」については、「スリムアップシュガー」製品は、他の追随を許さない商品である。
また、申立人は、「スリムアップシュガー」の販売開始当時から、ダイエット層への訴求に集中投資をして、CMタレントとして女優を採用し大々的に広告宣伝を行ってきた。特に、音声を利用した宣伝広告を大々的に行ってきた結果、「スリムアップシュガー」を2回繰り返した「スリムアップシュガー、スリムアップシュガー」は我が国一般需要者にとって、聞き覚えのある商品広告のフレーズとして浸透していると思料する。
このように、「スリムアップシュガー」は、低カロリー甘味料の商標として、取り分けダイエットが気になる人をターゲットにした商品の商標として、我が国の需要者、取引者にとって、広く知られているものである。(甲第11号証の1ないし14)
イ 本件登録異議の申立てに係る経緯
商標権者は、本件商標の出願に先立ち、ア)商標登録第4889789号、イ)商標登録第5334037号、ウ)商標登録第5380131号及びエ)商標登録第5421772号の4件の商標を登録している(甲第12号証ないし甲第15号証)。
これらの内、ア)ないしウ)は、いずれも「スリムアップスリム」を横一列に表してなるものであって、少なくとも、申立人の引用する周知商標「スリムアップシュガー」を使用する商品「砂糖加工品」に関連する商品、及び申立人の最大の主力商品である「調味料」を指定していなかった。また、エ)については、本件商標と同一の構成をその構成要素の一としているが、指定商品は、いわゆる健康食品に限定されていた。
しかし、本件商標については、申立人の周知商標「スリムアップシュガー」を使用する商品に類似する第5類「乳糖」、及び当該「スリムアップシュガー」の要部である「スリムアップ」の登録商標に係る指定商品に類似する商品を指定している他、申立人の最大の主力商品である第30類「うまみ調味料」をも指定しているのである。
申立人は、出願人が横一列に表された片仮名文字「スリムアップスリム」をいわゆる健康食品について使用することについてはあえて異議を唱えなかったが、それが更に「S1im up」を顕著に表し、かつ、申立人の使用する「砂糖加工品」と類似関係に立つ商品である第5類「乳糖」を指定商品とした本件商標については、断固として、登録異議を申し立てる次第である。
ウ 商標法第4条第1項第11号について
(ア)引用商標
引用商標は、上記(1)アないしエのとおりであり、そのうち「スリムアップシュガー」の文字からなる引用商標1及び2は、その構成中「シュガー」の文字がその指定商品の普通名称又は品質表示と認識、把握されるものであるから、その構成中「スリムアップ」部分が独立して識別力を発揮するものである。
ところで、「スリムアップ」の文字が、「細い」又は「やせる」等を意味する英語「slim」と、「上方へ」等を意味する英語「up」に由来し、その表音であることは容易に認識、理解できるところであるが、それらを結合した「slim up」なる英語は、存在しない。
したがって、「slim up」「スリムアップ」は、本来、何ら特定の意味合いを看取せしめない造語であると言っても過言ではなく、極めて強い識別力を有するものである。
(イ)本件商標と引用商標
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、その全体構成が一つの識別標識として認識されるかのごとく思われるが、同一の書体で表された「Slim」の欧文字が平行移動させてなる構成である結果、単に「Slim」部分が強調された構成であると認識、理解されること、及び下段に表された「Slim」の語自体、「やせる」等の意味合いを有するにすぎず、さほど識別が強くないこと等から、ベースラインが揃っている部分である「Slim up」部分が独立して識別力を有する場合も決して少なくない。
ましてや、上段の「Slim up」部分から生ずる称呼「スリムアップ」は、申立人の周知商標「スリムアップシュガー」の要部から生ずる称呼「スリムアップ」と、また申立人の周知商標「スリムアップシュガー」の要部を構成要素とする引用商標3及び4から生ずる称呼「スリムアップ」と同一である。
なお、本件商標の全体称呼である「スリムアップスリム」と、申立人の周知商標「スリムアップシュガー」を比較したとしても、本件商標から生ずる称呼は、申立人の周知商標の要部である「スリムアップ」の称呼を含むものである。その結果、本件商標に接する需要者、取引者は、申立人の周知商標「スリムアップシュガー」を容易に想起し得るものである。
このような判断こそが外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合した全体的な考察に基づく類否判断であると思料する。
そして、特許庁の「商標審査基準」において、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」とされているのは、まさに、このことを具現化した基準であると考えられる。
また、第5類「乳糖」は引用商標1ないし3の指定商品に、第30類の本件登録異議の申立てに係る指定商品は引用商標4の指定商品に類似する。
加えて、特許庁の審査基準においては、第1類「人工甘味料」や第30類の「糖類」と、いわゆる健康食品は相互に類似しないと推定されているが、申立人の製造、販売に係る商品「砂糖加工品」と、いわゆる健康食品とは需要者層及び用途が一致するものである。
したがって、本件商標の指定商品中第29類の本件登録異議の申立てに係る指定商品は、引用商標の指定商品中の「砂糖加工品」と類似するものである。(注:「いわゆる健康食品」とは「第29類の本件登録異議の申立てに係る指定商品」をいうものと解し、また「砂糖加工品」は引用商標の指定商品中に含まれるとの主張と解した。)
(ウ)以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
エ 商標法第4条第1項第15号について
さらに、仮に「砂糖加工品」がいわゆる健康食品に類似しないとしても、本件商標の指定商品中第29類の本件登録異議の申立てに係る指定商品(注:「いわゆる健康食品」は「第29類の本件登録異議の申立てに係る指定商品」と解した。)について使用された場合、申立人が商品「砂糖加工品」について永年継続使用した結果、周知な商標となった「スリムアップシュガー」との間で商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(3)結び
以上述べたとおり、本件商標は、その指定商品中登録異議の申立てに係る指定商品について商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
3 当審の判断
(1)使用商標の周知性
申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、申立人は平成6年から現在に至るまで、ダイエットが気になる者をターゲットとする甘味料に「スリムアップシュガー」の文字からなる商標を付して製造・販売していることが認められ、また、平成19年の家庭用低カロリー甘味料市場は106億円であって、そのうち「スリムアップシュガー」製品のシェアは17%であったと認めて差し支えないから、商標「スリムアップシュガー」(使用商標)は、本件商標の登録出願の日前から申立人の業務に係る商品「甘味料」を表示する商標として、摂取カロリーを気にする者の間で、ある程度認識されていたものと認めることができる。
しかしながら、周知性の証左が申立人作成の冊子のみであること、広告の具体的内容・頻度などが確認できないことなどから、使用商標は、本件商標の出願時(及び査定時)に、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されている商標と認めることはできない。
さらに、使用商標は常に「スリムアップシュガー」の文字が一体として使用されていることから、なおさら、その構成中「スリムアップ」の文字部分のみが需要者の間で広く認識されている商標と認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲(1)のとおり、「Slim」「up」及び「Slim」の文字をデザイン化し全体としてまとまりよく一体に表されているものであり、該文字から生じる「スリムアップスリム」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、その構成中「Slim up」の文字部分が独立して自他商品識別標識として認識されるというべき事情も見いだせない。
してみれば、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「スリムアップスリム」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものといわなければならない。
そうすると、本件商標はその構成中「Slim up」の文字が独立して識別力を有することを前提に、その上で本件商標が引用商標と類似するとする申立人の主張は採用することができない。
また、本件商標と引用商標とは、外観においてはその構成態様から相紛れるおそれのないこと明らかであり、称呼においては本件商標から生じる「スリムアップスリム」と引用商標から生じる「スリムアップシュガー」「スリムアップ」との比較において、語尾における「スリム」と「シュガー」の差異、又は「スリム」の有無の差異を有するから、その差異により充分聴別し得るものである。さらに、観念においては比較できない。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであり、かつ、他に出所の混同を生じさせるおそれがあるなど、両者が類似するというべき理由は見いだせないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するということはできない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
使用商標及びその構成中の「スリムアップ」の文字が、本件商標の出願時(及び査定時)に、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されている商標と認めることはできないこと上記(1)のとおりであり、また、本件商標と使用商標とは、上記(2)と同様に外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうとすれば、商標権者が本件商標を登録異議の申立てに係る指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者をして使用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものということはできない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中登録異議の申立てに係る指定商品について商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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