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Trademark Appeal Case

商標使用事実の証明

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2011−300616(T2011−300616/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3155624号商標(以下「本件商標」という。)は、「STアソシエイツ」の文字を横書きしてなり、平成4年9月29日に登録出願、第35類「経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,財務書類の作成又は監査若しくは証明」を指定役務として、同8年5月31日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

1 請求の趣旨

請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務のうち「経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供」について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、甲第1号証を提出した。

2 請求の理由

(1)本件商標は、その指定役務のうち「経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

(2)審判事件弁駁書における主張

ア 乙第1号証は、税理士証票であり、被請求人が税理士であること及びその業務に係り本件商標を使用していることを証明するにすぎず、被請求人が本件商標を「経営の診断及び指導」に使用していることを証明するものではない。

イ 乙第2号証は、「事務所通信」と題された、単なる機関誌(印刷物)と認められ、税理士である被請求人が顧客をつなぎ止める目的で顧客に送付しているものであり、被請求人が実際に「経営の診断及び指導」を行っていることを証明するものではない。

なお、同証拠には、「経営 売上アップヘの取り組みをチェックしよう」「経営 ピンチをチャンスに!売上アップを目指そう」とのタイトルの記載は認められるが、それらの内容は、単なる事実、実際に起こった事件・事例の紹介、質問事項の列挙であり、何ら経営情報に値するものとは認められない。

したがって、乙第2号証によっては、本件商標が「経営の診断及び指導」について使用されたことは証明されない。

ウ 乙第3号証は、被請求人が、前述の「事務所通信」を株式会社TKCから購入していることを示す請求書であるが、「事務所通信」は、上記のとおり、単なる客観的事実が記載された機関誌(印刷物)にすぎないから、これをもって、本件商標が「経営の診断及び指導」について使用されたことは証明されない。

エ 乙第4号証の証明書の作成名義人は、被請求人が所属する税理士の団体(TKC全国会)とその構成員という仲間同士の間で作成されたものであって、同団体は、何ら公益性のない株式会社であるから、その信ぴょう性は低い。

なお、被請求人は、上記証拠に添付された「経営分析報告書」の表紙及びその目次の記載をもって、「本件商標『STアソシエイツ』が記載された『経営分析報告書』を、少なくとも2007年から現在に至るまで顧客に送付している事実が証明されている。」と主張している。

しかしながら、同「経営分析報告書」の表紙には、「提供 STアソシエイツ」の文字は認められるが、同表紙は、乙第5号証に記載された株式会社TKCが主催する税理士の団体(TKC全国会)が提供するサービスである「TKCコンピュータ会計システム」を利用した際に得られる内容と同一であると認められる。

つまり、株式会社TKCが主催する税理士の団体の会員になれば、同「経営分析報告書」のテンプレート(雛型)を使ったサービス「TKCコンピュータ会計システム」が利用できるものと認められるが、この記載をもって、被請求人が「経営の診断及び指導」を行っているとは証明されない。

オ 乙第5号証に係るウェブサイトは、被請求人が所属している団体(株式会社TKCが主催する税理士の団体「TKC全国会」)が提供しているサービスについて記載しているものと認められる。

同記載は、同団体が提供しているサービスにすぎず、その団体に所属しているメンバーが提供しているものではない。よって、同記載をもって同団体のメンバーと考えられる被請求人が「経営の診断及び指導」を行っているとはいえない。

カ 乙第6号証に係るウェブサイトは、被請求人が所属している団体が提供しているものと認められる。また、同ウェブサイトには、「税理士は、税務申告の作成や税務相談に応じるだけの存在ではありません。・・・『経営改善計画』や『経営承継計画』を策定して、・・・」との記載があると認められる。

しかしながら、同記載は、あくまで同団体が掲げている理念にすぎず、同団体の構成員たる被請求人が、その理念に従い業務を提供しているとは限らない。

したがって、乙第6号証によっては、本件商標が「経営の診断及び指導」について使用されたことは証明されない。

キ 乙第7号証は、税理士である被請求人が経営する(税理士)事務所に係る封筒であると認められる。

しかしながら、同封筒は、「税務相談、税務代理」を業として行う税理士である被請求人の(税理士)事務所の名称が単に印刷されたものであり、被請求人が税理士の業務に係り「遠賀町役場税務課」から税務に関連した必要書類を取り寄せる際に使用されたことはうかがわれるが、同封筒からは被請求人が同封筒を「事務所通信」又は「経営分析報告書」を送付した事実は何ら証明されない。

同封筒をもって、本件商標を「経営の診断及び指導」に使用しているとはいえない。

ク 結び

以上より、乙第1号証ないし乙第7号証によっては、本件商標が「経営の診断及び指導」について使用されたことは証明されない。

(3)口頭審理陳述要領書における主張

ア 被請求人は、新たに、乙第8号証ないし乙第10号証を提出し、その内容を説明しているが、新証拠による商標の「使用」が、商標法第2条第3項各号のいずれの行為に該当するかについて何も述べていないので、新証拠では本件商標の「使用」の事実は証明されない。

イ 乙第8号証の証明願は、被請求人と密接な関係を有する委嘱者(顧客)が作成した書類であり、公平な証明を期待できないし、客観性を欠き、被請求人(受嘱者)に有利な内容の記載であることは容易に想像できる。つまり、同証明願は、証拠としての価値(証明力)に欠ける。また、同証明願は、利害に関係しない第三者の作成でなるものではない。

以上より、請求人は、同証明願は証拠として採用されるはずのないものと考える。同証明願が証拠として採用できない以上、本件商標が「経営の診断及び指導」に使用されたことは証明されない。

ウ 被請求人は、「被請求人は顧客との間に税務相談、財務相談についても委嘱契約書(監査)を交わし、業として顧客の税務相談、財務相談に乗っており月額報酬を受けている。」旨述べているが、「経営の診断及び指導」(35B01)と「税務相談、財務相談」(36J01)とは異なる役務である。したがって、「税務相談、財務相談」について本件商標が用いられたとしても、本件商標が「経営の診断及び指導」について「使用」されたことの証明にはならない。

エ 被請求人は、「月例経営分析表(変動損益計算書・要約貸借対照表・資金移動図表)」及び「事務所通信」を委嘱者(社長)に渡して、経営に関する指導・経営に関する相談に乗った旨述べているが、商標法第2条第3項の如何なる「使用」がなされたかを明らかにしていない。

加えて、「月例経営分析表(変動損益計算書・要約貸借対照表・資金移動図表)」は、財務書類に該当する。したがって、同書類の作成は「財務書類の作成」に該当し、本審判請求に係る役務「経営の診断及び指導」とは異なる。

さらに、「事務所通信」は、これに経営に役立つ情報が多々掲載されているとしても、通知書において、「商標権者(の税理士事務所)が顧客などに配布する機関紙とみるのが自然であり、これにより独立して商取引の目的たる役務『経営の診断及び指導』を提供したとは認められない。」と判断されている。

以上より、被請求人の上記主張によっては、本件商標が、「経営の診断及び指導」に「使用」されたことは証明されない。

オ 被請求人は、「ワンポイントメモ」(乙第8号証)を使用して具体的な経営に関する相談に乗っている旨述べているが、当該「ワンポイントメモ」には「平成21年5月26日」と記載されているが、この日に同書面が作成されたかは疑義がある。「ワンポイントメモ」は、ワープロソフトを使用して作成されたものと考えられるので、日付の編集は容易だからである。

また、被請求人は「ワンポイントメモ」を使用して経営に関する相談に乗ったという事実は証明願をあわせることで証明される旨述べているが、前述のとおり、証明願の記載は信用できない。

さらに、被請求人は、「ワンポイントメモ」の日付は被請求人の手帳(乙第10号証)の記載と整合する旨述べているが、手帳にはその持主を特定する記述はなく被請求人の所有とは断定できない。仮に、被請求人の手帳であるとしても、被請求人がその依頼人(株式会社若草)を訪れたこと及び依頼人に経営に関する相談に乗ったことは証明されない。手帳に予定が書いてあることと実際にそのとおり行なったこととは別だからである。

以上より、「ワンポイントメモ」を使用して具体的な経営に関する相談に乗っている、という被請求人の主張は客観的証拠に裏付けられておらず、採用できない。

カ 乙第8号証の「委嘱契約書(監査)」には、「第2条(委嘱業務の範囲)」の(6)に「経営コンサルティング」は規定されているが、契約書に規定されていることと、それが履行されたこととは別のことである。

したがって、委嘱業務として「経営コンサルティング」が規定されていることで、被請求人が「経営コンサルティング」(経営の診断及び指導)を行なったことは証明されない。

(4)平成24年6月7日受付けの上申書における主張

ア 被請求人は、新証拠たる乙第8号証によって示される商標の使用は、商標法第2条第3項第4号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当する旨主張しているが、乙第8号証の証明願は上記(3)イのとおり信用性を著しく欠くため、証拠とはならない。

したがって、新証拠たる乙第8号証の証明願によっては、商標法第2条第3項第4号の「使用」があったとは証明されない。

イ 被請求人は、「月例経営分析表」及び「事務所通信」を利用して、実際に「経営の診断及び指導」を提供している旨述べているが、商標法第2条第3項第4号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」とは、「『その役務を提供するのに直接的に必要な物』という意味」と解される(『注解 商標法〔新版〕上巻』株式会社 青林書院 平成17年12月2日発行 97頁参照)。

そして、「月例経営分析表」は、財務書類に該当するので、「経営の診断及び指導」に直接的に必要な物ではない。

したがって、本件商標が付された同書類を利用しても、本審判請求に係る役務「経営の診断及び指導」に本件商標が使用されたとは認められない。

なお、被請求人は、「月例経営分析表」には「『経営指標』の項目があり、『経営指標』の内容を参考に、被請求人は、顧客に直接『経営の指導』を行っている旨述べているが、「経営指標」に記載されているのは、「月例経営分析表」の勘定科目に記載された数字に基づき自動的に算出されたデータに過ぎないように思える。「経営の指導」を提供した、というには、上記データに基づき、どうしたら企業の経営状況がよくなるかについて助言・指導すること等、が必要と考える。しかしながら、上記「経営指標」の内容は、客観的データを提示するに過ぎない。

したがって、「月例経営分析表」に「経営指標」項目があっても、同書類は財務書類の範ちゅうに属するものである。

また、「事務所通信」は、上記(3)エのとおり判断されているうえ、「経営の診断及び指導」に直接的に必要な物ではない。

したがって、本件商標が付された同書類を利用しても、本審判請求に係る役務「経営の診断及び指導」に本件商標が使用されたとは認められない。

(5)平成24年6月27日付け上申書のおける主張

ア 商標法第2条第3項第3号について

被請求人は、事務所通信に、「経営の指導に関する事項」が記載されているので、これらは商標法第2条第3項第3号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」に該当する旨述べているが、事務所通信は、ビジネスに関する客観的事実が記載された単なる機関紙と認められるので、同号でいう「物」に該当しない。事務所通信の本来的性格は機関紙であり、使用態様(仮に、被請求人の主張のとおり、機関紙を活用して経営相談等をしていたとしても)により本来的性格は変化しない。

以上より、事務所通信への本件商標の記載は、商標法第2条第3項第3号の「使用」に該当しない。

イ 商標法第2条第3項第4号について

商標法第2条第3項第4号の「使用」は、実際に「役務を提供する」ことである。

被請求人は、新証拠(乙第11号証ないし乙第13号証)を提出しているが、これらは「経営の診断及び指導」を行なったことを直接証明するものではない。

したがって、実際に「経営の診断及び指導」を行なったことを直接証明する証拠は、依然として乙第8号証の証明願のみであり、これは上記(3)イのとおり証拠としての価値に欠ける。

以上より、「経営の診断及び指導」が実際に行なわれたことは証明し尽されていないので、商標法第2条第3項第4号の「使用」は認められない。

ウ 商標法第2条第3項第8号について

商標法第2条第3項第8号の「使用」が認められるためには、標章を付した取引書類を「頒布」することが要件である。

ここでいう「頒布」とは、同号に並列して掲げられている「展示」及び「電磁的方法により提供する行為」と同視できる態様のもの、すなわち、標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれることをいうと解されている(平成22年(行ケ)第10012号参照)。

これを本件についてみると、被請求人は、事務所通信を「購入」したことを主張・立証しているに過ぎず、実際に「配布」したことを証する客観的証拠は提出していない。

また、乙第8号証において事務所通信を株式会社若草の代表取締役に届けたとあるが(請求人は、同号証の信用性に疑問を有しているので、事務所通信が株式会社若草に届けられたことを認めていない。)、一人のみに届けることは、商標法第2条第3項第8号の「頒布」に該当しない。

以上より、商標法第2条第3項第8号の「使用」は認められない。

エ 被請求人提出証拠について

(ア)乙第4号証及び乙第11号証について

被請求人は、乙第4号証の経営分析報告書の内容、及び具体的な取引事実を記載した経営分析報告書(乙第11号証)を提出している。

しかしながら、乙第11号証はほとんどの部分が黒塗りされているので、具体的内容を十分知りえない。実際に被請求人の依頼人用に作成された経営分析報告書(乙第11号証の原本)が存在するかも疑わしい。

また、乙第4号証には「事務所通信」及び「請求書データベース」の各写しが添付されているが、実際に「経営の診断及び指導」に関する業務を行なっていることを証する証拠は添付されていない。

したがって、実際に被請求人が「経営の診断及び指導」に関する業務を行なっていることを確認せず、乙第4号証の証明書が作成されたことは否定できず、更に、その作成者は、被請求人と利害関係を有する。

したがって、乙第4号証の記載内容の信ぴょう性に疑念を感じるのは当然であり、本質的に反論である。

(イ)乙第8号証について

請求人は、本件商標がその指定役務「経営の診断及び指導」に使用されていることは認めていない。

「経営の診断及び指導」について本件商標が使用されていることの証明は乙第8号証に基づいている。乙第8号証は信ぴょう性を欠くため証拠とならない。したがって、同号証によっては、「経営の診断及び指導」についての本件商標の使用は証明されない。

請求人は、客観的証拠に基づいて意見を述べている。

被請求人の提出証拠は、客観性を欠くため証拠とならない。そのため、本件商標が「経営の診断及び指導」に使用されたことは認められない、というのが請求人の一貫した主張である。

被請求人は、「ワンポイントメモ」は平成21年5月26日に使用された旨述べているが、実際の使用を直接証明する証拠は乙第8号証の証明書であるが、同証明書は上記のとおり証拠としての信ぴょう性を欠く。したがって、ワンポイントメモを使用して経営の診断及び指導がなされたことは証明されない。

「ワンポイントメモ」には「STアソシエイツ」の文字は表示されているが、その記載は単に同書類の文責を表示しているに過ぎない。

(ウ)乙第10号証について

請求人代理人は乙第10号証の原本を確認したが、同原本にはその所有者を特定できる記載(例えば、氏名)はなかった。請求人代理人が確認できたことは、同号証の原本が存在することだけである。

(エ)乙第13号証について

乙第13号証の株式会社若草宛の請求書(控)によっては、被請求人の「経営コンサルティング」について対価が支払われたか否かは分からない。

(6)まとめ

以上より、本件商標が、その指定役務中「経営の診断及び指導」について使用(商標法第2条第3項第3号、第4号及び第8号)されたことの証明はなされていない。

第3 被請求人の主張

1 答弁の趣旨

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証(枝番号を含む。)を提出した。

2 答弁の理由

(1)本件商標の使用の事実

ア 乙第1号証(税理士証票)

乙第1号証は、被請求人(商標権者)である江里口正治が、税理士としての仕事をする際に常に携帯し、必要に応じて呈示しなければならない「税理士証票」の写しである。

ここには、被請求人の氏名とともに、税理士事務所として「北九州市小倉北区・・・STアソシエイツ」と本件商標が記載されており、昭和60年11月30日に発行されて以来、現在に至るまで継続して使用している。

イ 乙第2号証の1〜3(事務所通信)

乙第2号証は、被請求人が毎月顧客に配布している「事務所通信」である。

ここには、いずれの表紙にも本件商標が記載され、使用者「江里口正治税理士事務所」が記載されている。

また、「2010年12月号」には「経営 売上アップヘの取り組みをチェックしよう」、「2011年1月号」には「経営 ピンチをチャンスに!売上アップを目指そう」と記載されていることから、本件審判請求に係る指定役務「経営の診断及び指導」について本件商標を使用していることがわかる。

ウ 乙第3号証の1〜3(請求書データベース)

乙第3号証は、乙第2号証「事務所通信」を毎月編集、印刷している「株式会社TKC」から被請求人宛に発行された電子請求書のデータベース画面をプリントアウトしたものである。

これらにより、「事務所通信 2010年12月号」についての費用が平成22年11月12日付で請求され、「事務所通信 2011年1月号」についての費用が平成22年12月12日付で請求され、「事務所通信 臨時増刊 平成23年からの扶養控除特集」についての費用が平成23年1月12日付で請求されていることがわかる。

エ 乙第4号証(証明書)及び乙第5号証(インターネット上のウェブサイト情報)

乙第4号証は、「株式会社TKC」による証明書である。

これにより、被請求人が本件商標が記載された「経営分析報告書」を、少なくとも2007年から現在に至るまで顧客に送付しているという事実が証明されている。

この「経営分析報告書」は、当該証明書に添付する表紙コピーの目次や、乙第5号証のインターネット上のウェブサイト情報に示すように、「10期比較要約貸借対照表」「10期比較自己資本グラフ」「10期比較経営分析表」「10期同業他社(BAST)比較生産性分析グラフ」などで構成されている。個別の内容詳細については業務上知り得た顧客の情報に当たるため開示することはできないが、TKCコンピュータ会計システムを利用し、それぞれの顧客の最新業績に基づいて、安全性、収益性、生産性、成長性に関する同業者比較と時系列分析を行い、経営動向と課題について報告されているので、本件審判請求に係る指定役務「経営の診断及び指導」について本件商標を使用していることがわかる。

同時に、乙第2号証「事務所通信」は、株式会社TKCが毎月発行するものであり、乙第3号証「請求書データベース」は、当該「事務所通信」に係る請求書であるという事実も合わせて証明されている。

オ 乙第6号証(インターネット上のウェブサイト情報)

乙第6号証は、被請求人が所属する「TKC全国会」に関するインターネット上のウェブサイト情報である。

被請求人が当該「TKC全国会」に所属していることは、乙第4号証「証明書」において証明されている。この中に「税理士は、税務申告の作成や税務相談に応じるだけの存在ではありません。・・・中小企業の血脈ともいえる資金繰りに関する支援を行い、また、会社を元気にするために、経営者とともに『経営改善計画』や『経営承継計画』を策定して、その実行にあたっても経営者の親身な相談相手となる“企業のビジネスドクター”ともいうべき存在です。」と記載されていることから、当該「TKC全国会」に所属する税理士である被請求人が本件審判請求に係る指定役務「経営の診断及び指導」を行っていることがわかる。

カ 乙第7号証(封筒)

乙第7号証は、被請求人が遠賀町役場税務課から必要書類を取り寄せる際に同封し、返信時に用いられた「封筒」である。あて先として貼り付けられたあて名ラベルには、「北九州市小倉北区・・・ STアソシエイツ」と本件商標が記載されている。また、郵便切手に捺印された消印には「22 7.1 福岡 遠賀川」の文字があることから、平成22年7月1日に本件商標を使用していることがわかる。

さらに、封筒自体にも本件商標の文字が直接印刷されており、被請求人は、この封筒を乙第2号証「事務所通信」や乙第4号証に添付された「経営分析報告書」などを顧客に送付する際に使用しているので、本件審判請求に係る指定役務「経営の診断及び指導」について本件商標を使用していることがわかる。

キ 結び

以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により指定役務中「経営の診断及び指導」について使用していることが明らかである。

(2)口頭審理陳述要領書における主張

ア 答弁の理由の補足

(ア)乙第8号証(証明書)

被請求人が委嘱契約書(監査)を交わした株式会社若草の社長からの証明であり、被請求人が、少なくとも平成20年から平成23年2月まで毎月、株式会社若草を訪問し、直接社長に経営の指導及び相談の役務を行っている事実を証明している。

(イ)乙第9号証(事務所通信 平成22年索引)

事務所通信に経営に関する情報が多数掲載されている。

(ウ)乙第10号証(被請求人の2009年DIARYの5月分コピー)

5月26日の欄に被請求人が株式会社若草を訪ねた事実が判るメモが記載されている。

イ 請求人の主張に対する反論

請求人は、被請求人が提出している書類からは、本件商標を、その指定役務のうち「経営の診断及び指導、市場調査、商品の販売に関する情報の提供」について、使用していることは証明されていない旨弁駁している。

しかしながら、今回新たに提出する乙第8号証に添付する「委嘱契約書(監査)」に示すように、被請求人は顧客との間に税務相談、財務相談についても「委嘱契約書(監査)」を交わし、業として顧客の税務相談、財務相談に乗っており、月額報酬を受けている。また、この委嘱契約書においても本件商標を使用している。

そして、乙第8号証の「証明願」の第3.に記載されているように、委嘱契約書(監査)を交わした株式会社若草を、少なくとも本件審判請求の登録前3年以内である平成20年から平成23年2月の間毎月訪問している。その際には、「月例経営分析表(変動損益計算書・要約貸借対照表・資金移動図表)」(乙第8号証)の前月分、及び乙第2号証で例示した「事務所通信」を社長に直接手渡して、月例経営分析表の内容及び経営に必要な情報を直接口頭で説明し、経営に関する指導を行なうと共に、経営に関する相談に乗っている。この毎月顧客に渡す「月例経営分析表」及び「事務所通信」も本件商標の名前で発行している。

確かに、乙第4号証にその表紙を添付した「経営分析報告書」及び「月例経営分析表」は、「TKCコンピュータ会計システム」を利用した際に得られる内容である。そして「TKCコンピュータ会計システム」を利用して得られた「月例経営分析表」には、収益性、運転資金、生産性、安全性等の同業黒字企業、優良企業との比較、当期実績と前年同期実績との比較、業績向上のための改善ポイントなど経営の診断・分析に関する様々なデータが掲載されており、被請求人はこのデータを利用して顧客の経営分析・診断等を行い、この結果を持って、毎月顧客を訪ね、会社社長に直接、経営の問題点等を指摘すると同時に、その改善策等に関する指導を行っているし、社長からの経営に関する相談に乗っている。

また、本件商標の名前で毎月発行される乙第2号証の「事務所通信」には経営に役立つ情報が多々掲載されていることは、今回提出の乙第9号証の「事務所通信 平成22年索引」からも明らかである。この「事務所通信」は、確かに客観的な事実が記載された機関誌(印刷部)であり、TKC全国会が発行し、被請求人が購入したものである。しかし、被請求人は顧客に事務所通信を単に渡すのでは無く、事務所通信を活用して経営に関する相談や指導を行っている。

さらに、乙第8号証の「証明願」の第4.及び乙第8号証の平成21年5月26日付け「ワンポイントメモ」から明らかなように、被請求人は通常は口答で社長からの経営の相談に乗っているが、相談の内容が複雑な場合には「ワンポイントメモ」を使用して具体的な経営に関する相談に乗っているし、この「ワンポイントメモ」にも本件商標を使用している。

そして、平成21年5月26日に株式会社若草を訪ねて相談に乗った事実は、被請求人の2009年DIARY(乙第10号証)の5月26日の欄に「027/14:00」と記載されていることから更に証明される。この「027」は被請求人が株式会社若草の会社コード「7505/027」を省略して記載したものであり、株式会社若草の会社コードが「7505/027」であることは、乙第8号証に添付する月例分折表の株式会社若草の会社コードが「7505/027」であることから分かる。

また、「証明願」の第5.からも、少なくとも本件審判請求の登録前3年以内である平成20年から平成23年2月までに、株式会社若草に対して具体的な経営の指導を行っていることが明らかである。

ウ これまでの全主張の要約

被請求人は、本件商標を使用した乙第1号証の税理士証票、及び乙第4号証の証明書に示すように、TKC全国会に所属する税理士登録した税理士であり、乙第8号証に添付する委嘱契約書に示すように顧客との間に平成元年より現在まで、税務・財務相談に関しての継続委任契約を結んでおり、この委嘱契約書にも本件商標を使用している。

そして、被請求人は乙第8号証の証明願第3に示すように、少なくとも平成20年から平成23年までの間、毎月、その一例を添付する月例経営分析表のデーターを利用して顧客の経営分析・診断等を行い、顧客にその内容の説明及び、経営の指導の役務を行っており、この月例経営分折表にも本件商標を使用している。

また、被請求人は乙第2号証、乙第4号証、乙第9号証に示すように経営に関する様々な情報が記載された「事務所通信」を利用して、少なくとも平成20年から平成23年までの間、顧客に対して、経営の診断及び指導の役務を行っており、この「事務所通信」にも本件商標を使用している。

さらに、被請求人は、少なくとも平成20年から平成23年までの間、顧客への相談内容が複雑な場合には、乙第8号証にコピーを添付する「ワンポイントメモ」を使用して、経営の診断及び指導を行っており、この「ワンポイントメモ」にも本件商標を使用している。

したがって、被請求人は、本件商標「STアソシエイツ」を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において指定役務中「経営の診断及び指導」について使用していることが明らかである。

(3)平成24年6月7日付け上申書における主張

ア 被請求人は、役務「経営の診断及び指導」を提供するに当たり、その提供を受ける者たる顧客に対し、本件商標が付された「月例経営分析表」及び「事務所通信」を利用している。この行為は商標法第2条第3項第4号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当する。

そして、実際にこの「事務所通信」が役務「経営の診断及び指導」を提供するに当たり利用されていることは、乙第8号証により証明されている。また、乙第10号証は、2009年5月26日に被請求人が乙第8号証に係る顧客を訪ねた事実を示すものであり、乙第8号証を補強するものである。

イ 補足として、乙第1号証ないし乙第7号証によって示される商標の「使用」は、商標法第2条第3項第4号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当する。

乙第1号証及び乙第3号証ないし乙第7号証は、単独で本件商標の「使用」を証明するものではないが、各号証を総合してみることで、商標法第2条第3項第4号に該当する「使用」を行っていることが認められる。

ウ 請求人の主張について

(ア)乙第8号証の信用性について

被請求人が本件商標を用いて役務を行ったことを証明するには、役務の提供を受ける者たる顧客の証明が必要である。顧客が被請求人に有利な内容の記載をする義務はなく、被請求人が顧客と契約していたことをもってして、客観性を欠くとはいえない。加えて、乙第8号証の証明書及び委嘱契約書には顧客の押印がなされており、証拠能力を確実に有するものである。

(イ)「経営の診断及び指導」と「税務相談、財務相談」について

「経営の診断及び指導」と「税務相談、財務相談」とは異なる役務であるが、委嘱契約書の第2条「委嘱業務の範囲」では、「会計指導及びコンサルティング」及びその一項として「経営コンサルティング」の記載がある。「経営コンサルティング」は役務「経営の診断及び指導」にあたり、そのことは請求人も認めている。

(ウ)「財務書類の作成」と「経営の診断及び指導」について

「月例経営分析表」の表及び図の部分は財務書類にあたるが、「月例経営分析表」(変動損益計算書・要約貸借対照表)には「経営指標」の項目があり、この「経営指標」の内容を参考に、被請求人は、顧客に直接「経営の指導」を行っている。これは「経営の診断及び指導」に該当する。

(エ)「事務所通信」による役務の提供について

「事務所通信」に経営に役立つ情報が多々掲載されていることのみをもってして、指定役務についての「使用」にはあたらないが、被請求人は本件商標が付された「事務所通信」を顧客に届け、その内容及び経営に必要な情報を直接口頭で説明し、「経営の診断及び指導」を行っているのである。

(4)平成24年6月18日付け上申書における主張

ア 被請求人は、顧客に対し、本件商標が付された「事務所通信」(乙第2号証の1ないし3)を配布している。乙第2号証の1及び2には「経営の指導に関する事項」が記載されているので、少なくともこれらは、商標法第2条第3項第3号及び第4号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」に該当する。そして、これらは2010年12月号及び2011年1月号として発行されたものである。(なお、日本語での記載なので、これらが日本国内で発行されたことは当然である。)

イ 乙第3号証の1及び2から、乙第2号証の1に係る「事務所通信」60部及び乙第2号証の2に係る「事務所通信」55部を被請求人が購入したことが分かる。この「事務所通信」は従前からの被請求人の顧客に配布していると共に、新規顧客の開拓のために利用している。

したがって、乙第2号証の1、2に示す「事務所通信」は、商標法第2条第3項第3号、第4号及び第8号(事務所通信は一つの広告媒体の役目を果たす)にいう「使用」である。

なお、当然のことながら、被請求人は「経営の診断及び指導」をサービスで行っているものではなく、本件商標を使用して行う有料の役務である。

ウ 乙第4号証の「経営分析報告書」及び「証明願」について

(ア)経営分析報告書の内容は、経営の診断及び指導に関する事項である(乙第11号証)。特に、この「経営分析報告書」のうち、収益性、運転資金、安全性についての「10期比較経営分析表」、及び自己資本比率、経常利益増加率等についての「10期比較企業格付推移グラフ(定量格付)」は、10年間の動きを比較検討しており、銀行資金借入に関しての重要な表であり、この表を用いて、顧客に資金の借り入れに関する指導を行っている。

したがって、乙第11号証の経営分析報告書を使用して行う役務は、税務相談ではなく明確に「経営の診断及び指導」に関する役務であり、乙第4号証(及び乙第11号証)は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物となる。経営分析報告書の表紙に「STアソシエイツ」が付されているので、商標法第2条第3項第3号及び第4号の「使用」となり、表紙に記載された日付から審判請求登録前3年以内の使用が認められることは明らかである。

(イ)乙第4号証の証明書の信ぴょう性について

この証明書に添付されている経営分析報告書の表紙、事務所通信(2010.12)、請求書デ一タベースは真正な書類であり、これらのことが事実であることを株式会社TKCが証明したものである。内容が事実であるので、乙第4号証が信ぴょう性がないとする請求人の主張は形式的で、到底容認できるものではない。

エ 乙第8号証の「委嘱契約書(監査)」「月例経営分析表」「ワンポイントメモ」について

乙第8号証は、被請求人が、毎月、顧客を訪問し、直接社長に経営の診断及び指導を行っている事実を証明した書面である。

請求人は、乙第8号証は被請求人が役務「経営の診断及び指導」について本件商標を使用していることを暗に認めながら、信ぴょう性がないとして乙第8号証を否定しているが、被請求人は、乙第8号証の内容が真実であり、乙第8号証に添付した書類を用いて、被請求人が本件商標を役務「経営の診断及び指導」に使用していることを以下に説明する。

(ア)委嘱契約書(監査)

この書類は、被請求人が顧客との間に交わした業務についての委嘱契約書であり、第2条(6)に「経営コンサルティング」と記載され、第4条に月額報酬が記載され、本件商標「STアソシエイツ」が第3頁の受嘱者(乙)の欄に記載されている。また、本契約書の契約締結日は平成1年9月29日であり、第3条(1)に「本契約締結の日から解約の時までその効力を有する。」と記載されている。そして、乙第8号証の証明願の第1項によって現在まで継続して契約があることが証明されている。

(イ)月例経営分析表

これは平成21年4月分の顧客の月例経営分折表であって、下部の経営指標の欄には、収益性、運転資金、生産性、安全性等の同業黒字企業、優良企業との比較、当期実績と前年同期実績との比較、業績向上のための改善ポイントなど経営の診断・分析に関する様々なデータが掲載されており、被請求人はこのデータを利用して顧客の経営分析・診断等を行い、この結果を持って、毎月顧客を訪ね、会社社長に直接、経営の問題点等を指摘すると同時に、その改善策等に関する指導を行っているし、社長からの経営に関する相談に乗っている。

なお、これらのデータは、基となるデータを被請求人が用意して株式会社TKCに提供し、同社がコンピュータを使って作成したものであるが、使用の主体は被請求人にあることは明確である。

(ウ)ワンポイントメモ

ワンポイントメモは平成21年5月26日に使用されたもので、内容は経費削減のために役員報酬を改定することの提案で、経営の診断及び指導に該当し、これには本件商標が使用されている。そして、この書類の作成日は平成21年5月18日であって、このことは乙第12号証から裏付けされている。

オ 乙第10号証

乙第10号証のダイアリーの原本を、口頭審理において審判官と請求人に一時渡しており、内容を確認してもらっている。したがって、乙第10号証の手帳が被請求人の所有とは断定できないという請求人の主張は否認されるべきである。

カ 乙第12号証

2枚目の「ワンポイントメモ」と「詳細なファイル情報」により、1枚目の「ワンポイントメモ」(乙第8号証のワンポイントメモと同じ)の最終保存日時が2009年(平成21年)5月18日13時6分であること、ファイル名が「メモH21」であること、及び作成者が「sta_office」であることわかる。3枚目で、被請求人のフォルダに、ファイル名が「メモH21」で、更新日時が2009年(平成21年)5月18日13時6分であり、さらに作成者が「sta_office」である文書ファイルがあることから、このファイルが2枚目に示す「ワンポイントメモ」の文書ファイルであることは明らかである。

「ワンポイントメモ」に標章「STアソシエイツ」を付す行為は商標法第2条第3項第3号に該当し、この「ワンポイントメモ」を用いて役務「経営の診断及び指導」を提供する行為は商標法第2条第3項第4号に該当する。

第4 当審の判断

1 被請求人提出の証拠、同人の主張及び職権調査によれば、次のとおりである。

(1)乙第1号証は、「税理士証票」であり、そこには、「(税理士事務所)」の記載の下に住所と「STアソシエイツ」の記載、登録番号及び「(氏名) 江里口正治」の記載がある。

(2)乙第2号証の1ないし3は、被請求人が毎月顧客に配布しているとする「事務所通信」の2010年12月号、2011年1月号及び「平成23年からの扶養控除特集」と題する臨時増刊号(発行時期の記載は見あたらない)であり、これらの表紙にはいずれも「STアソシエイツ」及び「江里口正治税理士事務所」の記載があり、「経営 売上げアップへの取り組みをチェックしよう」「経営 ピンチをチャンスに!売上アップを目指そう」のタイトル、チェック項目及び事例の紹介や扶養控除の説明が記載されている。

(3)乙第3号証の1ないし3は、「株式会社TKC」から発行されたとする「請求書データベース」であり、それらには、「ご請求日」欄に「平成22年11月12日」ないし「平成23年1月12日」、「ご請求先」欄に「江里口税理士事務所 御中」及び「商品名等」欄に「事務所通信(名入有)12月号」「事務所通信(名入有)1月号」「臨時増刊 H23〜扶養控除特集 名有」の記載がある。

(4)乙第8号証は、2012年4月27日付けの株式会社若草代表取締役社長の証明書であり、そこには、同社が商標権者との間で平成元年9月29日に、添付された「委嘱契約書(監査)」を交わし、以後継続して商標権者から財務の相談を受けている旨、商標権者は当該契約に基づき、平成21年5月26日に、添付された「月例経営分析表」を同社長に届け、会社の問題点・今後の改善点等について口頭で解説・提案した旨、商標権者は少なくとも平成20年から平成23年2月まで毎月同社を訪問し「月例経営分析表」等を同社長に届け、経営に関する指導を行うとともに経営に関する相談に乗った旨、同じく同社の経営診断及び指導を行っている旨が記載されている。

そして、証明書に添付された「委嘱契約書(監査)」には、「第2条(委嘱業務の範囲)」に「会計指導及びコンサルティング」の項の下「(6)経営コンサルティング」、「第3条(契約の期間)」に「(1)本契約締結の日から解約の時までその効力を有する。」の記載がある。また、文末には「平成1年9月29日」の記載があり、「委嘱者(甲)」として株式会社若草の代表取締役の記名押印及び「受嘱者(乙)」として「STアソシエイツ」の記載と商標権者の記名押印がある。

同じく証明書に添付された「月例経営分析表(変動損益計算書)」には、左上に「商号 株式会社 若草 (7505/027)」、右上に「平成21年4月分(期首から1か月)」「STアソシエイツ 提供」の記載がある。そして、下段の表には「経営指標」として「収益性」の項に「1 対前年比売上高比率」「2 限界利益率」などの欄があり、「売上高が減少しています。・・・幸い限界利益率は改善されています。営業部門を強化し、貴社の強みを活かした販売活動を展開して下さい。」「限界利益は企業の『可処分所得』です・・・貴社の場合、限界利益率を1%改善すると・・・」などのように、それぞれの欄に「業績向上のための改善ポイント」としてコメントが記載されている。さらに「月例経営分析表(要約貸借対照表)」には、同様に「商号 株式会社 若草 (7505/027)」、「平成21年4月分(期首から1か月)」「STアソシエイツ 提供」の記載があり、下段の表には「経営指標」として「運転資金」「生産性」「安全性」の各項にそれぞれ欄があり、各欄に「業績向上のための改善ポイント」としてコメントが記載されている。

(5)乙第10号証は、2009年の日記(DIARY)であり、表紙には「STアソシエイツ」の文字とともに、電話番号及びFAX番号が記載されている。

そして、5月12日の欄には「027」、5月26日の欄には「027/14:00 OP&署名」の記載がある。

(6)乙第13号証は、「江里口正治税理士事務所」が株式会社若草にあてた「請求書(控)」であり、その右上には「コード 027/No.001」「平成22年12月1日(平成22年11月2日〜平成22年12月1日)」の記載、その下の同事務所の住所の記載の次に「STアソシエイツ」の記載があり、中段の表の「日付」が「12.1」の行には、「区分」欄に「ご請求」、「細目(商品)名」欄に「月次報酬」、「摘要(数量×単価)」欄に「12月分」、「報酬額」欄に「−−−(黒塗りされている。)」と記載され、下段には「ご請求額を下記の口座より12月27日に振替させていただきます・・・」の記載があり、銀行名、口座番号とともに「株式会社 若草」と記載されている。

(7)上記(1)ないし(6)からすれば、次の事実を認めることができる。

ア 商標権者(被請求人)は税理士であり、その事務所を「江里口正治税理士事務所」と称し、「STアソシエイツ」の標章を事務所の別称のように用いている(上記(1)(2)(4)ないし(6))。

イ 商標権者は株式会社若草から平成元年9月29日に、経営コンサルティングを含む会計指導及びコンサルティング業務を受託した。そして、その関係は平成24年4月ころまで継続していたと推認することができる。(上記(4)(6))

ウ 会計指導及びコンサルティング業務を遂行するに当たっては、その基礎となる財務関係のデータは不可欠であることから、商標権者は、そのデータとして「月例経営分析表(変動損益計算書)」及び「月例経営分析表(要約貸借対照表)」(以下、まとめて「月例経営分析表」という。)を用いているとみるのが自然である。

エ 「月例経営分析表」に「商号 株式会社 若草 (7505/027)」、「請求書(控)」に「コード 027/No.001」とあり(上記(4)ないし(6))、両者は「027」の数字を共通にしていることから、日記(乙第10号証)に株式会社若草を「027」と省略して記載した旨の被請求人の主張は、何ら不自然なところはなく、これを否定すべき事情も見いだせない。

そうとすれば、商標権者は、2009年(平成21年)5月12日及び同月26日に、少なくとも株式会社若草の役職員と会ったとみて差し支えない。

オ そして、証明書の記載内容、「月例経営分析表」の「株式会社若草」「平成21年4月分(期首から1か月)」の記載(上記(4))、及び日記の5月26日の欄の「027/14:00 」の記載(上記(5))を総合してみれば、商標権者は、平成元年9月29日に締結した「委嘱契約書(監査)」に基づき、平成21年5月26日に株式会社若草(代表取締役社長)に対し、乙第8号証に添付の「月例経営分析表」を用いて、会計指導及びコンサルティングを行ったと推認できる。

2 判断

(1)上記1(7)オの商標権者が会計指導及びコンサルティングを行ったと推認できる平成21年5月26日は、本件審判の請求の登録(平成23年7月26日登録)前3年以内である。

(2)乙第8号証に添付の「月例経営分析表」の下段の表に記載された「業績向上のための改善ポイント」のコメントなどの内容は、会社経営に関するものといえ、また「委嘱契約書(監査)」の委嘱業務の範囲に「経営コンサルティング」が含まれている(上記(4))ことから、商標権者は、上記1(7)オの会計指導及びコンサルティングを行う際に、「経営コンサルティング」も併せて行ったとみるのが自然である。

そして、「経営コンサルティング」は、本件審判の請求に係る指定役務中「経営の診断及び指導」の範ちゅうに含まれること明らかである。

(3)「月例経営分析表」に表示された「STアソシエイツ 提供」の文字は、該分析表の提供元が「STアソシエイツ」であることを表したものであるから、その構成中「STアソシエイツ」の文字(以下「使用商標」という。)が、該分析表の出所表示としての機能を果たしているものと認められる。

そして、該「STアソシエイツ」の文字(使用商標)は、「STアソシエイツ」の文字からなる本件商標とその構成文字を共通にするから、使用商標は本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。

(4)してみれば、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内においてその請求に係る指定役務中「経営の診断及び指導」の範ちゅうに含まれる役務「経営コンサルティング」の提供に当たり、その提供を受ける者(株式会社若草)の利用に供する物(月例経営分析表)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標(使用商標)を付したものを用いて当該役務を提供した(商標法第3条第3項第4号)ということができる。

(5)請求人は、乙第8号証の証明願は被請求人と密接な関係を有する委嘱者(顧客)が作成した書類であり、公平な証明を期待できず客観性を欠き、証拠としての価値(証明力)に欠けること、「委嘱契約書(監査)」に委嘱業務として「経営コンサルティング」が規定されていることと実際に「経営コンサルティング」を行なうことは別であること、「月例経営分析表」は、「経営の診断及び指導」に直接的に必要な物でないし、また「経営指標」の内容は客観的データを提示するに過ぎないから、財務書類の範ちゅうに属するものであること、及び乙第10号証の手帳はその持主を特定する記述はなく被請求人の所有とは断定できないことなどを理由として、本件商標の使用は証明されていない旨主張している。

確かに、乙第8号証の証明書は商標権者の顧客の作成に係るものであるが、該乙号証はその内容が添付の書面や他の乙号証(乙第10号証など)と整合しており、内容に不自然な点が見られず、記名押印がなされていること、「月例経営分析表」が財務書類の範ちゅうに属するものであるとしても、それに記載されている「業績向上のための改善ポイント」のコメントなどの内容は会社経営に関するものといえること、及び乙第10号証の手帳に持主を特定する記述はないが、それ自体不自然なことでないことに加え、被請求人提出の乙各号証及び同人の主張を総合してみれば、上記のとおり判断するのが相当であるから、請求人の主張は認めることができない。

3 まとめ

以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者がその請求に係る指定役務中「経営の診断及び指導」の範ちゅうに含まれる役務「経営コンサルティング」について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したというべきである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきではない。

よって、結論のとおり審決する。

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