Trademark Appeal Case
地名と普通名称の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2011−27665(T2011−27665/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「東京牛乳」の文字を縦書きしてなり、第29類「牛乳」を指定商品として、平成22年7月13日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、東京都産の牛乳を容易に看取させる『東京牛乳』の文字を縦書きで普通に用いられる方法で表してなるから、これをその指定商品に使用しても、本願商標に接する取引者・需要者は、単に、上記意味を認識するに止まり、該商品の産地・販売地、品質を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、「東京牛乳」の漢字を普通に用いられる方法で縦書きしてなるところ、該文字は、日本の首都である「東京」の文字と、指定商品である「牛乳」の文字を結合してなるものであるから、全体として「東京において生産又は販売される牛乳」であることを容易に認識させるものである。
してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「東京において生産又は販売されている牛乳」であること、すなわち、商品の生産地、販売地を表示したものと認識するにすぎず、自他商品の識別機能を有するものとは認められない。
したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものと判断するのが相当である。
2 商標法第3条第2項について
(1)請求人は、本願商標は、その指定商品「牛乳」について使用をされた結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識できるものになっているから、商標法第3条第2項の要件を具備している旨主張し、証拠方法として、第1号証ないし第285号証を提出している。
(2)請求人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下のとおり認められる。
ア 請求人は、平成18年9月に本願商標を付した商品「牛乳」(以下「本件商品」という。)の発売を開始し、現在も継続して本件商品を販売している(第1号証ないし第9号証、第119号証ないし第121号証 他)。したがって、本願商標の使用期間は、本件商品の発売から現在にいたるまでの6年余にすぎない。
イ 「東京都酪農業協同組合/東京牛乳」のウエブサイトには、本件商品の写真とともに、「東京牛乳は、多摩地域の酪農家発、東京都民の方にお届けする産地指定牛乳です。」、「『東京牛乳』は、多摩地域の牛乳だけで作る“TOKYO ブランド”で、農林水産省が提唱している『地産地消』※の東京版です。」、「※地産地消=地域の消費者ニーズに即応した農業生産と、生産された農産物を地域で消費しようとする活動を通じて、農業者と消費者を結びつける取り組み。」との記載がある(第2号証)。また、本件商品は、東京都地域特産品認証食品に認証されている(第86号証)。そして、平成23年9月2日付け「読売新聞」に掲載されている本件商品の記事において、「現在は、多摩地区や23区内のスーパーや百貨店を中心に、埼玉、山梨など6都府県で販売されている。」との記載がある(第147号証)。したがって、本件商品は、地産地消、すなわち地域の消費者ニーズに即応した農業生産と、生産された農産物を地域で消費しようとする活動を通じて、農業者と消費者を結びつける取り組みを目的としており、その流通地域もほぼ東京都及びその近県にとどまっている。
ウ 本件商品の平成22年の販売実績は、1L換算で約141.4万本である(第83号証)。本件商品の生産量は明らかではないが、本件商品を含む東京都の平成22年の生乳生産量1万1811tは、全国の生産量(約772万t)の0.2%である(第78号証)ことからすれば、本件商品の生産量及び販売実績は、ともに全国の牛乳の生産量及び販売量に対してわずかであるといわざるを得ない。
エ テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のメディアで本件商品が紹介されている(第91号証ないし第143号証、第147号証ないし第164号証、第166号証ないし第168号証、第259号証、第261号証、第262号証及び第264号証)。しかしながら、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のメディアにおける本件商品の紹介も、大半が1回に限られ、反復継続して紹介されたものではなく、また、新聞、雑誌における本件商品の紹介記事等も、そのほとんどは「東京牛乳」が地産地消の商品である等の一般的な紹介を行うもので、請求人の業務に関する商品であることを明確に示す記載も多いとはいえないから、「東京牛乳」が地産地消の商品であることの認識を得ることができるとしても、請求人の業務に係る商品であることを認識するに至っていることを明らかにするものとはいえない。
オ 各種イベントにおいて本件商品の展示、即売、試飲が行われている(第170号証ないし第210号証、第265号証ないし第267号証、第269号証及び第271号証)。しかしながら、その各種イベントは、ほぼ東京都内で開催されたものであり、また、その各種イベントの参加者の詳細については不明である。
カ 平成23年8月1日付けで「東京牛乳」をグーグルで検索すると約10万6000件がヒットし、それから似たページを排除した有効件数は810件である。そして、そのうち550件が本件商品に係るものであり、うち81件が記事中に(本願商標の使用者として)請求人を特定する記載がある(なお、当該件数は、第11号証から把握できる件数と相違するが、請求人の主張である81件を採用した。)(第10号証及び第11号証)。しかしながら、そのインターネットにおける記事は、その閲覧の頻度等が明らかではなく、本件商品とその出所が明記される等、本件商品が請求人の業務に係る商品であることを明確に示す記載は、本件商品に係るウェブサイト550件の2割にも満たず、多いとはいえない。
キ 本件商品を原材料に使用した菓子等の商品が販売されている(第144号証ないし第146号証、第165号証、第214号証ないし第242号証及び第273号証ないし第第285号証)。しかしながら、本件商品を原材料に使用した菓子等の商品が販売されているとしても、そのほとんどが、東京及びその近県で限定的に販売されているものであり、また、その商標の使用は、本願商標をその指定商品「牛乳」に使用しているものとはいえない。
(3)前述の本件商品の取引の実情等からすれば、本願商標は、東京都及びその近県の取引者、需要者の間で、ある程度その存在が知られるようになっているといえるとしても、その指定商品「牛乳」について使用をされた結果、全国的に広く、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものになっていると認めることはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標は、本来なら地域団体商標登録を受けるべきところ、諸般の事情により、地域団体商標の登録を受けることが困難な状況であり、既に形成された一定の市場や、協力者の志気の向上、地域興しとしての今後の戦略等からも商標権の確保が不可欠なものである旨主張している。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号及び同条第2項の適否にあたり、そのような事情を考慮することは相当とはいえない。
(2)請求人は、商品「牛乳」に関し「都道府県名+牛乳」の名称は、一般的な記述的表示として自由に使用が可能であるにも拘わらず、北海道など一部の都道府県名を除けば、一般的な標記として都道府県名は使用されていないことからも、本願商標は、取引上何人も必要な名称とは認め難く、また、取引者がその使用を欲するものであるとも考え難いから、本質的に自他商品識別機能を有している旨主張している。
しかしながら、食品を取り扱う業界では、「地名」と「商品名」を結合させた表示が品質(産地)表示として、普通一般に使用されているものであり、牛乳も同様の事情であることは、請求人の提出した証拠からも明らかである(第81号証)。そして、例えば、北海道については、「北海道牛乳」のように「都道府県名+牛乳」の表示が商品「牛乳」の生産地を表示するものとして多数使用され(第79号証)、さらに、別掲1のとおり、福岡、栃木、愛知、山口(やまぐち)についても、商品「牛乳」の生産地を表示するものとしてして「都道府県名+牛乳」の表示が使用されている。また、別掲2のとおり、宮崎、京都、高知、広島(ひろしま)については、商品「牛乳」の生産地を表示するものとして「都道府県名+の牛乳」の表示が使用されているものである。
そうとすれば、都道府県名は、商品「牛乳」の生産地を表示するものとして一般に使用され、生産地として認識されるものといえる。
そして、「東京牛乳」の表示も請求人以外の者によって、過去に使用されていた実情(甲第12号証及び甲第13号証)があり、また、請求人以外にも東京において酪農を行っている者がいることからすれば、「都道府県名+牛乳」の構成からなる「東京牛乳」の表示は、取引に際し必要適切な表示として、何人もその使用を欲するものとは考え難いということはできない。
(3)請求人は、本願商標は、各種メディアにおける露出等、本願商標の周知性を立証する多数の証拠や本件商品の取引の実情を考慮すれば、全国的な需要者の間に広く認識されるに至っていると認められるから、使用の結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができる旨主張している。
しかしながら、本願商標の使用状況や取引の実情を考慮しても、前述のとおり、未だ全国的に広く認識されるに至っているとは認められないものと判断するのが相当である。
(4)したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当であって取消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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