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Trademark Appeal Case

称呼類似と不正競争

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2011−300979(T2011−300979/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4583329号商標の商標登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4583329号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成13年9月21日に登録出願され、第17類「ゴム製オーリング,ゴム製シール材,ゴム管,ゴム製弁材」を指定商品として、同14年7月5日に設定登録されたものである。

なお、本件商標は、請求人の株式会社森清化工によって登録出願され、かつ、同人名義で設定登録されたものであり、その後、平成20年2月18日に特定承継によって本権が株式会社森清商事に移転され、さらに、同24年6月18日に登録名義人の表示を変更する旨の申請がされた結果、被請求人である桜シール株式会社が、その権利者となっているものである。

第2 引用商標

請求人が引用する登録第4237900号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(B)のとおりの構成からなり、平成9年5月14日に登録出願、第17類「ゴム製オーリング,ゴム製シール材,ゴム管,ゴム製弁材」を指定商品として、同11年2月5日に設定登録され、その後、同20年12月16日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

第3 請求人の主張の要点

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第13号証(枝番を含む。)を提出している。

1 請求の理由

(1)請求人について

請求人の株式会社森清化工(以下「森清化工」ということがある。)は、昭和26年1月に設立され、昭和40年4月よりゴム製オーリングの製造を開始して以来、ゴム製オーリングの製造及び販売会社として「オーリングのモリセイ」としてオーリング業界内で周知のメーカーである。

平成22年9月の決算でオーリングを含めた工業用ゴム製品製造の業種において、全国及び東京都内で上位10%の位置にある(甲第3号証の1)。ゴム製オーリングを製造販売している企業に限れば、オーリング売上金額より概算して国内約4割のシェアを有している。

また、請求人は、昭和62年(1987年)頃より各販売代理店や各販売店備え置きのための請求人の商品専用カタログの作成・頒布を開始しているが、平成20年(2008年)以降は毎年4975部のカタログを作成して、モリセイ規格として各販売代理店等に配布しており、ゴム製オーリングを取り扱う販売業者のほとんどすべての業者に請求人のカタログが置かれている実情にある(甲第3号証の2及び3)。

特に、技術的には、先端分野のLSI製造機械向けオーリングとして、国内で成立した特許2件、米国、欧州、韓国、台湾で成立した海外特許合計4件(欧州各国を含めると9件)を請求人が保有している(甲第3号証の4ないし9)。

請求人が製造するプラズマエッチング用オーリングは、従来の他社製オーリングと比較して、プラズマ環境下においてオーリングから発生するダストの量が極めて少なく耐久性に優れるため、エッチング装置の点検補修の時期が極めて短くなり、半導体デバイスや液晶基板の製品歩留まりが向上する。このため、プラズマエッチング装置のプラズマに暴露される部分のオーリングとして95%以上のシェアがあり、国内外のエッチング装置メーカーにプラズマエッチング用オーリングを「モリセイ」ブランドで納入している。

このように、請求人は、技術的に優れた企業として顧客の間に知られている企業であり、また、請求人の製品は、プラズマエッチング用など高品質製品を販売していることから、特に品質の優れた製品であると顧客の間で認識されているものである。

請求人は、オーリングを直接製造販売すると共に、国内約300社及び海外10社の販売会社を通じて販売している。

(2)請求人と株式会社森清商事の関係について

株式会社森清商事(以下「森清商事」という。)は、昭和63年4月に設立された会社であって、請求人とは資本関係がない別個の会社であり、上記国内約300社の販売会社の中の単なる一つの販売会社である。

(3)本件商標と引用商標について

本件商標は、当初、請求人により登録出願され、請求人を権利者として平成14年7月5日に設定登録されたものである。その後、平成20年2月18日に、森清商事に移転されたものである(甲第1号証の2)。

請求人は、引用商標の商標権者である(甲第2号証の1及び2)。引用商標は、昭和40年頃より請求人によりゴム製オーリングに使用されてきた商標である(甲第3号証の2)。

本件商標と引用商標とは、指定商品が同一で、「モリセイ」の称呼を生じる類似の商標であり、両商標は、相互に抵触する。

(4)不正競争の目的について

森清商事は、平成23年3月頃より、請求人が製造したものでない他社製品であるゴム製オーリングに本件商標を付して、請求人に無断で販売及び広告を始めている(甲第4号証の1ないし3)。

甲第4号証の1は、森清商事のラベルと、請求人のラベルが付された状態を示す写真であり、甲第4号証の2は、その分析結果を示す技術報告書である。森清商事は、本件商標を付して請求人が製造したものでない他社製オーリングを販売している。

甲第4号証の3は、平成23年10月3日にダウンロードした森清商事のWeb上のホームページ第1頁であり、「Oリング専業メーカー/株式会社森清化工」の表示が見られる。

請求人は、森清商事に対して、請求人が製造したものではない他社製品を森清商事が販売することについて異議を申し立てるものではないとしても、本件商標を付して他社製品を販売することを認めているものではない。

請求人が製造したものではない他社製品の品質は、請求人が保証できないばかりか、本件商標が付された製品は請求人が製造したものと需要者は誤認混同する。

さらに、ウェブ上の宣伝広告において、本件商標を付して、請求人のカタログを掲載していた行為(甲第4号証の4)は、請求人と森清商事とが資本的にも一体の会社であると、取引者・需要者に誤認混同をさせるものであり、森清商事は、請求人によって築かれた「モリセイ」に化体された信用を利用しているといわざるを得ない。

なお、ウェブ上の本件商標は、小さい楕円のマークが赤色に着色されているが、商標法第70条にいう「その登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるもの」に該当する。

また、甲第4号証の4に掲載されていた請求人のカタログは、平成23年10月19日現在には削除されている。これは、森清商事が不正競争の目的を有していたといわざるを得ない。

よって、請求人以外の他社製品であるゴム製オーリングを「モリセイ」の称呼が生じる本件商標を付して販売する森清商事の行為は、請求人のオーリングが有する「モリセイ」に化体した信用を利用して森清商事が利益を上げていることに該当する。

(5)混同について

上記森清商事の行為により、ゴム製オーリングの取引者・需要者は、以下の事例に見られるように、請求人と森清商事とが資本的にも一体の会社であると誤認混同をしており、本件商標が付されたゴム製オーリングはすべて請求人が製造したオーリングであると認識している(甲第5号証の1ないし3)。

(ア)オーリングの需要者である株式会社日本ロックより技術的問い合わせが請求人にあった。請求人より購入販売店の確認を株式会社日本ロックにしたところ、森清商事のインターネットオンラインで購入したが、技術的内容なので請求人に問い合わせてきたとのことであった。株式会社日本ロックは、請求人と森清商事とを同一会社と認識している。少なくとも関連会社と認識している(甲第5号証の1)。

(イ)オーリングの販売者である株式会社鳥羽洋行より、見積もりの回答がなく困っているとのメールが請求人にあった。森清商事経由で見積もり内容が請求人に届いていると株式会社鳥羽洋行は思っていた。株式会社鳥羽洋行は、請求人と森清商事とを同一会社と認識している。少なくとも関連会社と認識している(甲第5号証の2)。

(ウ)オーリングの需要者である東北三吉工業株式会社より、森清商事あてのFAXが請求人にFAX誤送信されてきた。東北三吉工業株式会社は、請求人と森清商事とを同一会社か又は関連会社と認識している(甲第5号証の3)。

(6)むすび

上述したように、請求人が取得した本件商標は、森清商事に移転され、移転された結果、同一の商品オーリングについて使用する類似の二つの登録商標(本件商標と請求人が所有する引用商標)が異なった商標権者に属することになった。

一方の商標権者である森清商事は、「モリセイ」の信用に便乗して利益を得る目的で、本件商標を付して請求人製造以外のゴム製オーリングを販売した。この行為は、すなわち不正競争の目的に該当する。

森清商事によりなされた行為により、本件商標を付したゴム製オーリングは、請求人が製造した製品であると取引者・需要者に誤認混同されている。

よって、被請求人が所有する本件商標は、商標法第52条の2の要件をすべて充足し、その登録を取り消されるべきである。

2 弁駁の理由

被請求人は、請求人以外の者の製造に係るゴム製オーリングについての本件商標の使用が(1)不正競争の目的がないこと、(2)混同を生じていないこと、を理由に商標法第52条の2の規定に該当する理由は存在しないと主張している。

しかしながら、被請求人の主張は、以下の理由により失当である。

(1)不正競争の目的がないことについて

商標法第52条の2は、連合商標制度等の廃止に伴う誤認混同防止のための担保措置の1つとして設けられた取消審判であり、この審判において、「不正競争の目的」を要件としたのは、次の理由による。

「需要者間に混同が生じるような事態に至っている場合には、類似商標を有する両当事者の少なくとも一方が、混同状態を放置することにより何らかの利益(例えば、片方が周知であるので他方がその名声にフリーライドしようとしている等)を得ようとしていることが想定され、『不正競争の目的』が認定されるものと考えられること、及びこれを要件としない場合には、利益を害されている側(名声をフリーライドされている側)の商標まで『混同』を理由に取り消されかねず、妥当性を欠く結論となるおそれがあるからである。なお、不正競争の目的があるかどうかは、使用の動機、使用の目的、使用の実態、周知性の程度、混同の有無等の要因を総合勘案して個々具体的に判断することになる。・・・両当事者が互いに取消審判を請求し合う事態もあり得るが、その場合でも、両商標の周知度等を勘案の上、いずれの商標権者がその信用を害されるのかを判断することにより、『不正競争の目的』を有する商標権者を認定し、その者の登録を取り消すこととなる」(甲第6号証:工業所有権法(産業財産権法)逐条解説[第18版]1388頁)

ゴム製オーリングは、スペースシャトルチャレンジャー号の爆発事故が固体ロケットブースターの円筒状部材間に装着されたオーリングにあるといわれているように、機械部品同士をシールするための重要な要素部品である。そのため、オーリングを使用する需要者はオーリングメーカー名、品番、型番等を指定(「チェンジコントロールの取り交わし」ともいわれている。)して購入するのがオーリング業界における商慣習として行なわれている。

上記商標法第52条の2の趣旨及びオーリング業界の取引の実情に基づき、以下、被請求人の主張内容に対し項目ごとに弁駁する。

(ア)被請求人と請求人との関係について

被請求人は、請求人と被請求人とが姻戚関係にあることから、「製造は森清化工、販売は森清商事」というような、いわば「モリセイグループ」といえる特別な関係にあり、取引者・需要者においても、被請求人と請求人とはグループ会社のような組織的又は経済的に関連ある会社であると認識されていたと主張している。

姻戚関係にあることから、請求人が被請求人に「森清」商号の使用などの便宜を図ってきた経緯もあり、取引者・需要者が「モリセイグループ」と認識していた事実はある。

しかし、両者は、直接の資本関係のない別法人である。請求人からみれば、被請求人は国内約300社及び海外10社の販売会社の中の1つであり、「モリセイグループ」と主張していたのは被請求人側である。過去に「モリセイグループ」として「モリセイ」の信用を害する行為を被請求人が行なうごとに、請求人は、「モリセイグループ」を主張しないよう被請求人に伝えてきた。例えば、平成10年に発生した取引上の不具合に対して両者間で覚書を取り交わし、この覚書に対する被請求人の見解書も存在する(甲7号証の1及び2)。

上記覚書において、請求人は、「請求人の被請求人以外の取引先に比較し優位性、特異性を有しているような表現をしてはならない」として、被請求人が「モリセイグループ」を主張しないよう取り交わしている(甲7号証の1第5項)。

(イ)本件商標の使用及び譲渡の経緯について

被請求人は、「本件商標を被請求人のハウスマークとして、被請求人が販売する商品に付して使用してきている。」と主張している。

しかし、「これらの商品に本件商標を付して販売を行っている。」(答弁書第4頁下から第2行目)、「本件商標を他社製のゴム製オーリングにも付して販売している」(同第5頁第7行目)と被請求人が自認しているように、被請求人が本件商標をオーリングの商標として使用してきたことは事実である。

(ウ)本件商標の使用状況について

被請求人は、「被請求人は、設立以来、ゴム製オーリングについては請求人の製品のみを、その他の製品については、他社製の製品を販売してきたが、平成23年(2011年)6月頃から、ゴム製オーリングについても、他社製の製品の販売を開始した。・・・そして、被請求人は、他の取扱商品と同様に、本件商標を他社製のゴム製オーリングにも付して販売しているものである。」と述べ、本件商標を他社製のゴム製オーリングにも付して使用していることを自認している。

本件商標と請求人所有の引用商標とは、指定商品が同一で、共に「モリセイ」の称呼を生じる類似の商標であり、両商標は、相互に抵触する。

引用商標は、請求人が昭和40年頃よりオーリングの製造を開始して以来、請求人製造のオーリングに付して使用してきた商標である(甲8号証の1及び2)。

また、被請求人は、創業以来平成23年6月頃までは、ゴム製オーリングについては請求人の製品しか販売してこなかったと主張するが、被請求人の該主張は事実ではなく、被請求人は、これまでにも請求人が製造していない他社製のオーリングに本件商標を付して販売してきたことがある。甲第7号証は、その際の謝罪に際しての請求人と被請求人との間で取り交わされた書面である。

この点はおくとしても、少なくとも被請求人の主張を前提としても、被請求人は、これまで対外的には被請求人の扱うゴム製オーリングはすべて請求人の製造した製品であるとして販売してきたものであり、顧客に対する関係でも被請求人の販売するゴム製オーリングはすべて請求人の製造したものであるとの信頼の上で取引関係が継続していたものである。

こうした経緯がありながら、被請求人は、平成23年6月頃より、大々的に顧客に無断で他社製のゴム製オーリングに本件商標を付して販売を始めた。この行為は、「森清化工製」と指定された取引先に対して虚偽の製品を納入させる行為にほかならず、各顧客に対する重大な背信行為であり、そのため各顧客は、多大な迷惑を被る事態となっている。かかる事態が生じたのは、ひとえに業界の信頼が「請求人の製造したゴム製オーリングである。」との点にあったが故であり、ゴム製オーリングに関しては、被請求人自身の信用などなかったことは明らかである。

そうである以上、被請求人が設立以来の使用により化体したと主張するゴム製オーリングに対する「モリセイ」の信用とは、請求人の製品に化体した信用であり、被請求人は、自ら「モリセイグループ」と称して、この信用にフリーライドしようとしたものであることは明白である。

(エ)宣伝広告について

被請求人は、「販売代理店が取り扱うメーカーの製品パンフレットをホームページで掲載することは、一般的に行なわれている。」と主張している。

被請求人提出の乙第1号証には「モリセイ O−ring」として請求人の製品パンフレットが、乙第2号証には「Oリング」として請求人の製品パンフレットが、「オイルシール」として(株)NOKの製品パンフレットが、乙第3号証には請求人の関西総代理店として請求人の製品パンフレットが、乙第4号証には請求人の正規代理店として「MORISEI O−ring」の技術情報及び製品情報がそれぞれ掲載されている。これら乙第1ないし第4号証をみても、オーリング業界において、請求人がいかに周知であるかが分かる。

被請求人は、本件商標を掲載すると共に、「オーリング専業メーカー/株式会社森清化工」ヘリンクできるようにホームページを作成していた。被請求人の販売するゴム製オーリングはすべて請求人の製品であると取引者・需要者に認識させる意図で掲載していたことは明らかである。

(オ)他社製品の販売について

被請求人は、「被請求人と請求人は姻戚関係にあるとしても、別法人であって、どのような商品を取り扱うかは、本来、被請求人の自由である。」と主張している。

しかし、別法人であるから、どのような商品を取り扱うかは被請求人の自由であるとしても、その商品の取り扱いに出所の混同を生じる商標を付することは、商標法の法目的に反する行為である。

特に、被請求人の場合は、多くの取引先からは「森清化工製」であることが指定されていたにもかかわらず、取引先に無断で他社製のゴム製オーリングに本件商標を付し、請求人の製品と誤認させた上で納品していたものである。この事実が発覚した後、被請求人は取引先に謝罪して回っているようであるが(甲第9号証)、右事実は、被請求人が意図的に請求人の信用にフリーライドしたもの以外の何物でもない。

(カ)引用商標は周知でないことについて

連合商標制度等の廃止に伴う誤認混同防止のための担保措置の1つとして設けられた商標法第52条の2の取消審判において、「不正競争の目的」を要件としたのは、(a)混同状態を放置することにより少なくとも一方が何らかの利益を得ようとしていることが想定される場合に認定され、(b)利益を害されている側の商標まで「混同」を理由に取り消されるのを防ぐためである。すなわち、本件商標と引用商標とを対比したとき、使用の動機、使用の目的、使用の実態、周知性の程度、混同の有無等の要因を総合勘案して個々具体的に「不正競争の目的」が判断される。ここでの「周知性の程度」は、両商標を対比して、いずれかがより周知であるかを判断すべきである。両商標の使用期間、販売実績、カタログ配布枚数、請求人の代理店数など比較しても、本件商標よりも引用商標の周知度が高いことは明らかである。

また、被請求人自身、これまで大量に請求人のカタログを受け取り(右カタログには当然ながら引用商標が付されている。)顧客に配布しており、被請求人独自のカタログを配布していた事実も無い。現在、被請求人から請求人に対しては、在庫としてあるカタログの引き取りまで請求されているところであるが(甲第10号証)、この一点をもってしても、本件商標には何らの周知性もなく、請求人の引用商標が周知であることの何よりの証拠というべきものである。

(キ)その他について

被請求人は、「被請求人には、請求人の引用商標との関係で、特にあやかろうという意図は存在しない。」と主張している。

上述したように、被請求人が姻戚関係を理由に、「モリセイグループ」と称して「モリセイ」の信用を害する行為を起こすごとに、被請求人は請求人の商標権を侵害しないこと、請求人の他の取引先に対して被請求人が優位性、特異性を有している表現をしないこと、等について覚書を取り交わしている事実がある(甲第7号証の1)。また、被請求人自身、「モリセイ」の優位性について認識していた(甲第7号証の2)。

加えて、被請求人は、顧客に他社製のゴム製オーリングを納品するに際して、顧客には無断で製品を切り替えている。

これらの事実からみても、被請求人は、請求人の信用にフリーライドする意図を有することが明らかであり、請求人の信用の上で商取引を行おうとする意図を有することも明らかである(甲第7号証の2)。

(2)混同の有無について

被請求人は、「商標法第52条の2が想定する出所の混同とは、全く無関係の権利者に、相抵触する登録商標が移転された場合に生じる出所の混同である。」と主張する。

しかし、被請求人と請求人とは、資本関係のない別法人である。このことは、被請求人も自認している。

ところで、廃止された連合商標制度の趣旨は、商標権者が自己の登録商標に類似する商標を出願した場合、ほかの登録要件を満足すれば、商標法第4条第1項第11号に該当することなく登録されるが、その登録された類似の商標を移転すると出所の混同を生じるため、営業と共に移転する場合を除いて、分離移転を禁止したものである。

連合商標制度の下においても、組織的又は経済的に関連する者と認識されていれば、別法人であっても分離移転が認められていたわけではない。商標法第52条の2の取消審判は、連合商標制度の廃止に件う誤認混同防止のための担保措置の1つとして設けられた制度であり、商標権の自由移転に伴う、取引者・需要者による出所の混同を防止する制度である。

請求人は、被請求人が「モリセイ」の称呼を有する本件商標を請求人以外の者が製造したオーリングに付して販売することによる出所の混同を防止したいのである。

請求人は、上述したように、オーリングが産業界において重要な要素部品であることに鑑み、請求人以外の者が製造したオーリングが「モリセイ」の名の下に販売されているか否かについて調査した。平成23年9月5日から同年11月25日における調査の結果を示す(甲第11号証の1)。また、請求人は、オーリング販売会社から具体的に出所の混同防止を依頼されている(甲第11号証の2及び3)。

上記調査の結果、被請求人が「モリセイ」の称呼を有する本件商標を請求人以外の者が製造したオーリングに付して販売している事実があるため、請求人は、「モリセイ」の商標権を守る上でやむを得ず被請求人への商品の供給を停止し、その旨をホームページに公表した(甲第12号証の1及び2)。また、顧客への迷惑を最小限にするべく、「顧客問い合わせ対応リスト」を作成して個別に対処している(甲第13号証の1ないし33)。

上記対応リストにも記載されているように、問い合わせてきた顧客の大部分は、本件商標を付したオーリングはすべて請求人製造のオーリングと認識しており、請求人以外の者が製造したオーリングと請求人製造のオーリングとが出所の混同をしていることは明らかである。

(3)まとめ

以上弁駁したように、請求人と被請求人とは資本関係の全くない別法人であるにしても、姻戚関係にあること等から、請求人は、被請求人が「モリセイグループ」と称することを一部容認してきた面がある。

被請求人は、「モリセイグループ」と称し、「モリセイ」に化体している信用を認識し(甲第7号証の2)、この信用に依拠して事業を継続してきた。

このような被請求人が請求人以外の者が製造したオーリングに本件商標を付することは、「モリセイ」の信用にフリーライドしようとする「不正競争の目的」を被請求人が有していたといわざるを得ないし、昭和40年頃から約半世紀にわたって継続して使用されたことにより、オーリング製造・販売者として請求人が守ってきた「モリセイ」に化体している信用を破壊することであり、許されることではない。

また、甲第8及び第9号証にみられるように、具体的な出所の混同を生じている。

第4 被請求人の答弁の要点

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1ないし第7号証を提出している。

1 不正競争の目的がないことについて

請求人は、請求人以外の者の製造に係るゴム製オーリングについての被請求人による本件商標の使用は、不正競争の目的を有する旨主張する。しかしながら、請求人の主張は、以下の理由により失当である。

(1)森清商事と請求人との関係について

森清商事は、昭和63年(1988年)4月に設立され、ゴム製オーリングを始めとするゴム製品の販売を業とするものである。設立の経緯は、請求人の役員であった森清商事代表者が、請求人の製造に係る商品の販売を請け負うことを目的として独立、設立したものである。森清商事と請求人は、直接の資本関係はないものの、上記の設立の経緯、及び両者の代表者が姻戚関係(森清商事代表者は、請求人会社の会長の娘婿であり、社長の義兄である。)にあることから、単なる一販売店というよりは、むしろ、「製造は森清化工、販売は森清商事」というような、いわば「モリセイグループ」といえる特別な関係にあった。この関係は、森清商事の設立から平成23年(2011年)まで、約23年と長期にわたるものであったため、取引者や需要者においても、森清商事と請求人は、グループ会社のような組織的又は経済的に関連する者と認識されてきたものである。

このような森清商事と請求人の関係については、次に述べる本件商標の使用の経緯からも明らかである。

(2)本件商標の使用及び譲渡の経緯

森清商事は、本件商標の出願前である平成13年(2001年)頃から、本件商標を被請求人のハウスマークとして、森清商事が販売する商品に付して使用してきている。

本件商標の採択の経緯は、平成13年(2001年)頃、平成23年11月まで森清商事の取締役でもあった請求人会長による発意の下、「モリセイグループ」の商標として使用することを予定し、採択されたことによるものである。その後、請求人は、本件商標を現在に至るまで一度も使用することはなく、森清商事に使用をさせ、平成20年(2008年)に、それまでの本件商標の使用の実情から、本件商標を森清商事に譲渡したものである。

(3)本件商標の使用状況

森清商事は、上記のとおり、ゴム製オーリング及びゴム製品の販売を行っているところ、これらの商品に本件商標を付して販売を行っている。

森清商事は、設立以来、ゴム製オーリングについては請求人の製品のみを、その他の製品については、他社製の製品を販売してきたが、平成23年(2011年)6月頃から、ゴム製オーリングについても、他社製の製品の販売を開始した。これは、リストラに伴う生産力低下に端を発する平成23年4月25日からの請求人による受注制限や、東日本大震災の影響により、請求人からのゴム製オーリングの供給がままならなくなったため、やむを得ず、他社製のゴム製オーリングの取り扱いを開始したものである。

本件商標は、片仮名「モリセイ」と、片仮名の上下に円弧と、左上に小さい楕円形を配してなるものであるところ、「モリセイ」は、森清商事の商号の略称であって、10年来、森清商事が使用してきているハウスマークである。そして、その使用に際しては、請求人の商標と混同が生じないよう、「モリセイ」の文字に常に図形部分を配し、使用してきているものである。また、本件商標には、森清商事の10年にわたる使用により化体した信用が蓄積している。

また、森清商事は、ほかの取扱商品と同様に、森清商事のハウスマークである本件商標を他社製のゴム製オーリングにも付して販売しているものである。商品を販売する者が自らの販売に係る商品にハウスマークを付することは、通常の商取引において、一般的な行為である。

このように、森清商事が本件商標を請求人以外の者が製造するゴム製オーリングに付して使用する行為は、不正競争の目的によるものではない。

(4)宣伝広告

請求人は、ウェブ上の宣伝広告において本件商標を付して請求人のカタログを掲載していた行為が、森清商事と請求人とが資本的にも一体の会社であると、取引者・需要者に誤認混同を与える旨主張する。

しかしながら、森清商事は、請求人の販売代理店であったのであり、販売代理店がホームページにおいて取り扱うメーカーのカタログを設置することは、通常の商取引において、極めて一般的な行為である。事実、ほかの請求人の販売代理店が、引用商標を付した請求人の製品カタログの表紙を自社のホームページに掲載しており(乙第1及び第2号証)、PDF版の製品カタログのダウンロードを可能にしている(乙第1号証)。これらのPDF版の製品カタログは、請求人が制作し、各販売代理店に渡しているものである。そして、このような請求人の行為は、請求人が、各販売代理店が各自のホームページに当該PDF版の製品カタログを掲載することを想定、容認してきたことを示すものである。また、乙第1及び第2号証に請求人以外のメーカーの製品パンフレットが掲載されていることから明らかなように、当業界において、販売代理店が取り扱うメーカーの製品パンフレットをホームページで掲載することは、一般的に行われているものである。

そして、請求人の販売代理店の中には、自社のホームページにおいて、自社の商標と共に、引用商標及び請求人の商標を掲載しているものも存在する(乙第3及び第4号証)。なお、乙第4号証のホームページに掲載されている請求人の商標は、引用商標の片仮名をローマ字に変えたものであって、請求人において、現在商標登録出願がされているものである(乙第5号証)。

これらの事実よりすれば、森清商事の上記行為は、商取引上一般的に行われている行為であって、何ら不正競争を目的とするものでもないし、請求人の業務に係る商品であるとの具体的な誤認混同を生じさせるものでもないことは明らかである。

請求人も自認するとおり、取引者・需要者が、森清商事と請求人との関係について、「モリセイグループ」として認識していた事実があり、その要因は、森清商事が請求人の製造に係る商品を請け負うことを目的として独立・設立された経緯、及び両者の代表が姻戚関係にあること、さらには、森清商事が取り扱う商品のほとんどが請求人の商品であったことによるものである。森清商事が、取引者・需要者に対して、「モリセイグループ」であると宣伝・主張した事実がないことは、甲第7号証の1の覚書において、このような主張をしない旨を請求人との間で取り交わしていることからも明らかである。

(5)他社製品の販売

請求人は、森清商事に対して、請求人が製造したものではない他社製品を森清商事が販売することについて異議を申し立てるものではないとしても、本件商標を付して他社製品を販売することを認めているものではないと主張する。

しかしながら、森清商事と請求人は、姻戚関係にあるとしても、別法人であって、どのような商品を取り扱うかは、本来、被請求人の自由である。請求人の主張は、不当に競争を制限する不当な独占権の行使であって、容認することはできない。

また、請求人は、取引先等に無断で請求人以外の者が製造したゴム製オーリングに本件商標を付して販売を始めたと主張する。

しかしながら、被請求人は、事前に取引先等に商品が切り替わる旨を説明し、請求人のゴム製オーリングと混同が生じないよう努めており、このことは、甲第11号証の1において、取引先等からのコメントが記されていることからも明らかである。なお、連絡が遅れた取引先があり、謝罪した取引先もあった。

さらに、一部の取引先に、森清商事の不信感を抱かせた発端は、請求人が、森清商事の取引先に無断で訪問や電話をし、森清商事に対する誹謗中傷を続けたことによるものであることに加え、請求人は、オーリングを販売していない森清商事の取引先にまで連絡を入れる等したため、これらの取引先から、森清商事に対し、請求人のこのような行為を止めるよう依頼されることもあった。上記のような請求人の行為によって、森清商事が、取引先に対し、商品が切り替わる旨の説明をする機会や弁明の機会が与えられなかったためである。このように、森清商事が取引先に無断で請求人以外の者が製造するオーリングに切り替えようとした事実はないので、被請求人が、引用商標にフリーライドする意図を有しないことは明らかである。

(6)引用商標は周知ではないことについて

商標法第52条の2にいう「不正競争の目的」とは、「他人の信用を利用して不当な利益を得る目的」をいうことから(乙第6号証)、森清商事の使用が不正競争の目的で使用するというためには、引用商標が周知であって、森清商事の使用がその名声を利用して利益を得ようとする目的があることが必要であるところ、引用商標は周知ではない。

すなわち、請求人は、引用商標を付したカタログを作成した旨主張するが、それは、平成20年(2008年)以降とわずか4年のものにすぎないし、請求人は、2008年以降、19,900部(年平均4,975部)のカタログやチラシを作成したとして甲第3号証の3を提出しているが、これは、請求人が作成したものであって、カタログやチラシの制作を依頼した発注書等による客観的な取引事実を証明するものではない。仮に、甲第3号証の3によるカタログやチラシの作成部数が正当なものであるとしても、2008年から2011年に作成されたカタログ等のうち、7,800部(約40%)は中国版であって、日本国内で配布されているものではない。加えて、請求人は、該カタログがゴム製オーリングを取り扱う販売業者のほとんどすべての業者に置かれている実情にあると主張するが、その事実を示す証拠は何ら提出されていない。このようなわずか4年のカタログの作成配布実績を裏付けもなしに主張するのみでは、引用商標の周知性を到底裏付けられるものではない。

また、請求人は、昭和62年(1987年)頃より商品カタログの作成・配布を開始していると主張するが、そのカタログに引用商標が付されていたか否か不明であるし、カタログが作成・配布されていたことを示す証拠も何ら提出されていない。

さらに、請求人は、オーリング業界内で周知のメーカーであると主張するが、その裏付けとなる証拠は何ら提出されていない。しかも、工業用ゴム製品製造の業種において、全国及び東京都内で上位10%というが、この程度の売上高では、到底周知であるともいい得ない。

加えて、引用商標が周知であるならば、取引者・需要者の間で、本件商標と引用商標の区別ができるはずである。引用商標が周知でないことは、請求人が弁駁書において、「引用商標に化体した信用」ではなく、盛んに「モリセイ」の信用と主張することからしても明らかである。そして、その「モリセイ」は、引用商標から生じる称呼であるが、本件商標から生じる称呼でもあって、森清商事の商号の略称でもあり、創業以来23年間使用してきたものであるから、「モリセイ」に化体した信用のすべてが、請求人に係るものではない。

してみれば、引用商標は、周知性を有しているとはいえない。

(7)その他

森清商事には、請求人の引用商標との関係で、特にあやかろうという意図は存在しないし、請求人も立証できていない。

このように、請求人以外のゴム製オーリングに係る本件商標の森清商事の使用は、不正競争の目的による使用ではない。

2 混同の有無について

請求人は、甲第5号証の1ないし3を提出し、森清商事が請求人以外の者が製造した商品について本件商標を付して販売する行為が、請求人の業務に係る商品と混同を生じている旨主張する。

ところで、商標法第52条の2が想定する出所の混同とは、全く無関係の権利者に、相抵触する登録商標が移転された場合に生じる商品の出所の混同である。したがって、元々「モリセイグループ」の商標として採択された本件商標について、上記した被請求人の設立の経緯や姻戚関係を有し、取引業界においても、グループ会社のような組織的又は経済的に関連する者と認識されていた森清商事と請求人との間においては、同一の起源や由来から出ている関係が前提とされているのであって、これは、商標法52条の2が想定する出所混同の問題とは次元を異にする問題である。

このことは、請求人が提出する甲第11号証の1の調査結果からも明らかであり、請求人が主張する3件の事例は、元々の由来に基づいた行き違いか、単なるFAXの誤送であって、いずれも商品の出所の混同事例ではない。

例えば、審判請求書中の事例(ア)では、「森清商事のインターネットオンラインで購入したが、技術的な内容なので請求人に問い合わせてきたとのことであった。」と記載されているが、これは、森清商事の販売に係るものであるとの商品の出所を理解しながらも、技術的なことであったため、敢えて請求人に問い合わせたという事例であり、商品の出所の混同が生じているのではない。

そして、取引者や需要者において、請求人と森清商事が、組織的又は経済的に関連する者と認識されたのは、森清商事が、2011年(平成23年)6月頃から、請求人以外の者の製造に係るゴム製オーリングに本件商標を付して販売し始めたことに起因するものではなく、森清商事の設立当初からの経緯や姻戚関係に起因するものである。そして、本件商標は、森清商事の商号の略称である「モリセイ」を含むものであって、森清商事が10年にわたって使用してきているハウスマークであり、その使用に際しては、請求人の商標と混同が生じないよう配慮し、「モリセイ」の文字に常に図形部分を配し、使用してきているものであるから、本件商標には、森清商事の10年にわたる使用により信用が化体しているものである。

また、請求人は、甲第11号証の2及び3を提出し、具体的な出所の混同が生じていると主張するが、これらの証拠資料は、審判請求日である平成23年10月19日以降のものであって、本件審判の請求時において、森清商事が出所の混同を生じさせたとする証拠にはならないし、これらはいずれも、森清商事が取引先に納品した商品が請求人の商品ではなかったとの事実が分かるのみであって、森清商事が本件商標を付したことによって混同が生じたことについて何ら証明していない。

さらに、請求人は、甲第13号証の1ないし33の顧客対応リストによれば、問い合わせてきた顧客の大部分が、本件商標を付したオーリングがすべて請求人製造のオーリングと認識していたと主張する。

しかしながら、これらはいずれも、請求人が取引先との電話連絡をベースに自ら作成したものであって、その信憑性に疑義がある。また、請求人が森清商事への供給を停止した平成23年12月1日以降のものであって、本件審判の請求時において、森清商事が出所の混同を生じさせたとする証拠にはならない。さらに、これらが有効な証拠資料であるとしても、これらのうち、森清商事が納品した商品を請求人が製造した商品であると誤解していたという記載は、甲第13号証の9及び19の2件のみである。

このような誤解も、取引者・需要者において、グループ会社のような組織的又は経済的に関連する者と認識されていたこと、森清商事が販売するゴム製オーリングが請求人の製造するものであるという認識があったということに由来しているものであって、森清商事による本件商標の使用によって、出所の混同が生じているものではない。

してみれば、森清商事の上記の行為によって、請求人の業務に係る商品と具体的な出所の混同を生じさせた事実はない。

なお、被請求人は、具体的な出所の混同が生じることを避けるため、平成24年6月15日付けで、商号を「桜シール株式会社」に変更し、ハウスマークの変更も行っている(乙第7号証)。

3 結論

以上のとおり、被請求人が請求人以外の者の製造するゴム製オーリングについて本件商標を使用する行為は、不正競争の目的には該当しない。

また、被請求人の上記行為は、請求人の業務に係る商品であるとの具体的な誤認混同を生じていない。

よって、本件審判請求は、成り立たない。

第5 当審の判断

1 本件審判について

本件は、商標法第52条の2の規定に基づき商標登録の取消しを求める審判であり、同審判は、平成8年の商標法等の一部改正において連合商標制度廃止に伴って分離移転を認めたこと、及び類似関係にある商品又は役務についても商標権の分割移転を認めたことに対応する誤認混同防止のための担保措置の一つとして設けられたものである。

同条の規定から明らかなように、商標権者が有する2以上の商標権のうちの1つが分離して移転された結果、同一の商品若しくは役務について使用する類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用する同一若しくは類似の登録商標が異なった商標権者に登録されることとなった場合において、不正競争の目的で他の商標権者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる使用をしたときには、何人も、混同を生じさせるような使用をした登録商標に係る商標登録の取消しを求めることができることとしたものであり、自己の登録商標の使用であっても、不正競争の目的で他の類似関係にある登録商標の商標権者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる使用をしたときは、その制裁として、そのような使用をした登録商標全体を審判により取り消すこととなる。

ここで「不正競争の目的」を取消しの要件としたのは、需要者間に混同が生じるような事態に至っている場合には、類似商標を有する両当事者の少なくとも一方が、混同状態を放置することにより何らかの利益(例えば、片方が周知であるので他方がその名声にフリーライドしようとしている等)を得ようとしていることが想定され、「不正競争の目的」が認定されるものと考えられること、及びこれを要件としない場合には、利益を害されている側(名声をフリーライドされている側)の商標まで「混同」を理由に取り消されかねず、妥当性を欠く結論となるおそれがあるからである。なお、不正競争の目的があるかどうかは、使用の動機、使用の目的、使用の実態、周知性の程度、混同の有無等の要因を総合勘案して個々具体的に判断することになる。両当事者が互いに取消審判を請求し合う事態もあり得るが、その場合でも、両商標の周知度等を勘案の上、いずれの商標権者がその信用を害されるのかを判断することにより、「不正競争の目的」を有する商標権者を認定し、その者の登録を取り消すこととなるものと解される(特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」[第18版]参照)。

以上を前提として、以下、本件商標の登録が取り消されるべきものであるか否かについて検討する。

2 本件商標と引用商標との関係について

甲第1号証の1及び2、甲第2号証の1及び2並びに当庁備付けの商標登録原簿の記載によれば、本件商標及び引用商標は、いずれも請求人を権利者とし、同一の商品を指定商品として設定登録されたものであるが、本件商標権については平成20年2月に森清商事に移転されたものである。そして、両商標は、別掲(A)及び(B)のとおりの構成からなるところ、いずれも、その構成中の「モリセイ」の文字部分が看者の注意を強く惹くものであって、「モリセイ」の称呼を生ずるものであるから、称呼を共通にする類似の商標というべきものである。

したがって、本件審判の請求時を始め現在は、同一の指定商品について使用する類似の登録商標が異なった商標権者に属することとなっている。

3 不正競争の目的について

(1)両当事者の提出に係る証拠及び主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(ア)請求人は、昭和26年1月設立の工業用ゴム製品製造業を主業とする法人であり、昭和40年4月頃からゴム製オーリングの製造販売を開始した。工業用ゴム製品製造業における売上高は、平成22年9月決算期に24億8千万円余であり、全国1,171社中第99位に位置し、都道府県別にみても、227社中第17位を占めている(甲第3号証の1)。

(イ)請求人作成に係るゴム製オーリングの商品カタログの抜粋写しと認められる甲第3号証の2には、その表紙の左上方及び裏表紙の下方に、引用商標と同一といえる標章が表示されているほか、その第3枚目には、「ラベルの保管について」との表題の下に引用商標が表示されたラベルが掲載されている。そして、上記第3枚目の右下隅に「(87.10)」の数字が記載されており、該数字は、1987年(昭和62年)10月を意味し、上記カタログの作成日を示すものとみても不自然ではない。また、2010年1月29日から同年12月15日までの間に、複数回にわたり、萩原印刷株式会社から請求人に対し、「Oリング商品カタログ」の印刷に関する請求書が発行されている(甲第3号証の3)。

これらからすると、請求人は、ゴム製オーリングについて、昭和62年頃から商品カタログ及びラベルを作成頒布し、引用商標を使用しているものといえ、また、請求人のゴム製オーリングに付されるラベルは、甲第4号証の1に示されているように変更になっているものとも推認される。

(ウ)森清商事は、請求人会社の役員であった森清商事代表者が請求人製造に係る商品の販売を請け負う目的で昭和63年4月に設立した法人であり、同代表者が、請求人会社の会長の娘婿で、かつ、同社社長の義兄という姻戚関係を有することなどから、需要者には、請求人と森清商事とは関連会社ないしは「モリセイグループ」として認識されていたが、両者は組織的又は経済的な関係を有しない別法人である(当事者間に争いがない)。

(エ)森清商事は、平成13年頃から本件商標をハウスマークとして使用しており、自己のホームページには、森清商事の会社名と並べて本件商標と同一といえる標章が表示され、「モリセイOリング、Oリング周辺商品」との表示が見られるほか、「Oringモリセイ製品カタログ」として甲第3号証の2の請求人商品カタログと同様のカタログの写真が掲載されている。該商品カタログの表紙下部には森清商事の会社名と並べて本件商標と同一といえる標章が表示されているが、森清商事独自の商品カタログは発見できない。また、同ホームページには、「Oリング専業メーカー株式会社森清化工」の項目が設けられており、請求人ホームページにリンクできるものと考えられる(甲第4号証の3及び4)。

(オ)森清商事は、本件商標を使用して請求人製造に係るゴム製オーリングの販売を行っていたが、少なくとも平成23年6月頃から本件商標を使用して他社製のゴム製オーリングの販売も開始した(当事者間に争いがない)。被請求人がゴム製オーリングについては請求人製品のみを販売するとの明示の契約はないが、その旨請求人との間で約束していたことが窺われ、該約束に反する事態が生じたために、平成10年10月12日に両者間で「覚書」が交わされた。該覚書では、森清商事は請求人の商標権を侵害しないこと、請求人製造以外のオーリングを森清商事が流通させ、取引先が当該製品を請求人製品として認識していた場合にはその責めは森清商事に帰するものとすること、被請求人は請求人の他の取引先に比較し優位性、特異性を有しているような表現をしてはならないこと、などが確認された(甲第7号証の1)。なお、上記覚書が交わされた時点では、本件商標は未だ登録出願されておらず、使用されていなかったものと考えられるから、上記覚書にいう請求人の商標権とは引用商標をいうものとみるのが自然である。

(カ)請求人技術部(山田)から株式会社日本ロック技術部への2011年9月21日付け送信メール写しには、森清商事が販売した樹脂Oリングについては、請求人取扱い品でない可能性もあることから森清商事へ問い合わせするよう促す旨の内容が記載されている(甲第5号証の1)。

(キ)請求人による平成23年10月17日作成の「技術報告書/Oリング調査の件」と題する書面写しには、森清商事の取扱い品は、いずれの製品でも光沢が強い表面であるのに対し、請求人製品は、梨地状の表面であり、大きく異なることから、請求人製品ではないと判断する旨の記載がされている(甲第4号証の2)。

(ク)請求人あての顧客からの書面(甲第11号証の2及び3)には、「弊社は長年に渡り株式会社森清商事様とお取引してまいりましたが最近製品の中に貴社の製品ではないものが混入して納入される様になりました。弊社としては、株式会社森清化工の製品として販売してきましたので・・・」、「これまでの間、森清商事より納入頂きましたOリングはカタログにより森清化工の品物であるとの認識でここまで信頼し納入して頂きました。・・・当社には、何の連絡もないまま他社の製品が6月ごろ特定出来ませんが納入されていました。」等の記述がされているほか、被請求人から商品を購入した顧客が、当該商品の品質等につき請求人に問い合わせをしている(甲第5号証の1ないし2)。

(2)上記(1)の事実によれば、請求人は、オーリングを含む工業用ゴム製品業界では全国1,171社中第99位と上位に位置する会社であり、森清商事は、設立当初請求人製品を販売することを主目的にしていたといえること、請求人会社役員と森清商事代表者が姻戚関係にあること、請求人商号と森清商事商号とはいずれも「森清」を用い酷似していること、森清商事は、自己のホームページにおいて、請求人の商品カタログを掲載すると共に、「モリセイOリング」等の記載をしていること、などからして、取引者・需要者は、請求人と森清商事とを関連会社ないしはグループ会社として認識し、かつ、森清商事が取り扱うゴム製オーリングはすべて請求人製品であると認識していたものというべきである。しかるに、森清商事は、平成23年6月頃から請求人以外の他社製造のゴム製オーリングについても本件商標を付して販売していることを自認している。

そして、引用商標は、請求人製造に係るゴム製オーリングについて、その登録出願前である昭和62年頃から使用されているのに対し、本件商標は、その出願前の平成13年頃から森清商事による使用が開始されたものであって、しかも、本件商標のみが掲載された森清商事独自の商品カタログはなく、本件商標は、引用商標が表示された請求人の商品カタログと共に使用されることが多いといえるから、本件商標と引用商標とを対比した場合、引用商標の方が取引者・需要者間により広く認識されていたものというべきであり、本件商標をゴム製オーリングについて使用した場合には、これに接する取引者・需要者が引用商標ないしは請求人を連想、想起することが少なくないものといえる。

かかる事情の下において、森清商事が請求人以外の他社製造に係るゴム製オーリングに本件商標を使用することは、請求人製品と信じていた顧客の信頼を裏切ることになり、ひいては公正な取引秩序を乱すことになるばかりでなく、引用商標に化体した信用、名声にフリーライドし不当な利益を得ようとするものといわざるを得ない。

そうすると、森清商事は、不正競争の目的で本件商標をその指定商品について使用するものというべきである。

4 商品の混同について

上記のとおり、取引者・需要者は、請求人と森清商事とを関連会社ないしはグループ会社として認識しており、森清商事が取り扱うゴム製オーリングは請求人製品であると信じていたものといえる。そうすると、請求人以外の他社製造に係るゴム製オーリングに請求人所有の引用商標と類似する本件商標を使用する場合には、取引者・需要者は、該商品が請求人製造に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるものをしたというべきである。

現に、甲第11号証の1(請求人による平成23年9月5日ないし同年11月25日間の調査結果)によれば、「森清化工と森清商事は一緒の会社であると勘違いしており、別会社であることを説明した。」、「森清商事のホームページは=森清化工という認識でいた。」、「森清商事のラベルに関しては認識しており、森清化工と同じだと思っていたとのこと。」、「森清商事と森清化工とは別会社であるが、販売部門だと勘違いされていた。」、「森清商事は森清化工の商事部門の会社と認識されていた。」、「森清商事と森清化工は同一グループの会社だと認識していた。」、「倉庫の確認後、他社製品にモリセイ商事マークのラベルが貼られていた。」、「担当者が森清化工の品と認識し、用意していたものは全て(森清商事ラベル)だった。森清商事ラベルを見て森清化工品であると誤認していた。」等、また、森清商事が納品した商品について、ラベルや包装が相違していることには気づいていたが、請求人が製造した商品と認識していた(甲第13号証の9及び19)等と顧客が商品の出所について混同している事実がある。

5 むすび

以上のとおり、請求人が所有していた本件商標及び引用商標のうち、本件商標に係る商標権が被請求人に移転された結果、同一の商品について使用する類似の登録商標(本件商標と引用商標)に係る商標権が請求人と被請求人という異なる商標権者に属することとなり、その一の登録商標権者たる被請求人が、不正競争の目的で指定商品に本件商標を使用し、他の登録商標(引用商標)の権利者たる請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたというべきであるから、本件商標は、商標法第52条の2第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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