Trademark Appeal Case
商標周知性の判断
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900107(T2012−900107/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5465554号商標(以下「本件商標」という。)は,「行道文庫」の文字を書してなり,平成23年7月13日に登録出願,第16類「紙類,印刷物」を指定商品として,同年12月7日に登録査定,同24年1月27日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同第8号,同第10号及び同第15号に該当するから取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,申立人の略称と認められ,当該略称は仏教関係とりわけ日蓮宗霊断師会関係の仏教徒にとって,周知・著名な商標と認められる(甲第1号証並びに甲第2号証−1及び2)。しかも,商標権者は日蓮宗霊断師会所属の僧侶でありながら,「行道文庫」の登録がないことを奇貨として,日蓮宗霊断師会又は申立人に無断で本件商標の登録出願をして商標登録を受けたものである。
したがって,本件商標は,他人の商標が登録されていないことを奇貨として出願された,いわゆる剽窃的出願と認められるため,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は,申立人の略称と認められ,当該略称は仏教関係とりわけ日蓮宗関係の教徒にとっては周知・著名な商標である(甲第1号証並びに甲第2号証−1及び2)。しかも,本件商標の出願書類等には申立人の承諾書は提出されていない(甲第2号証−2)。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は,申立人名称であり,かつ,申立人が商品「出版物」に使用している周知・著名商標「株式会社行道文庫」又は商標「行道文庫」と同一又は類似の商標と認められ(甲第1号証並びに甲第2号証−1及び2),しかも,使用にかかる商品と同一の商品を指定している。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は,申立人名称であり,かつ,申立人が商品「出版物」に使用している周知・著名商標「株式会社行道文庫」又は商標「行道文庫」と同一又は類似の商標と認められ(甲第1号証並びに甲第2号証−1及び2),しかも,使用にかかる商品と同一の商品を指定している。本件商標の指定商品に本件商標を使用すると,申立人の業務にかかる商品又は申立人と経済的あるいは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所の混同を生ずるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 当審の判断
(1)「行道文庫」の周知・著名性について
申立人提出に係る甲各号証を検討するに,申立人は,昭和47年2月8日に成立した「聖徒タイムスの編集,発行に関する業務,一般図書刊行の業務」等を目的とする会社(甲第3号証)であるが,その成立以前から書籍,新聞を発行しており,「国体信仰講座」を題号(旧字体)とする書籍(第一巻ないし第四巻,昭和17年12月ないし昭和18年3月発行,「発行所」には「行道文庫」の記載がある。)を発行し(甲第4号証−1ないし4),また,「漂う人々へ−行道文庫法話集」と題する書籍(「日蓮宗霊断師会 行道文庫」の記載がある。)を1998年6月に出版したことが認められる(甲第5号証)。
そして,「聖徒タイムス」と題する新聞(【発行所】に「行道文庫」の記載がある。)については,2012年(平成24年)5月1日付けの同新聞(甲第6号証)に「第569号」「(昭和40年8月10日第三種郵便物認可)」,「毎月1回1日発行」との記載が認められる。
また,甲第7号証は,「行道文庫」の文字を検索したgoog1eの検索結果情報である。
上記甲各号証においては,「国体信仰講座」又は「漂う人々へ−行道文庫法話集」と題する書籍が発行されているとしても,これらの書籍の販売部数等を証する証拠がなく,また,「聖徒タイムス」の題号の新聞は,昭和40年8月頃から「日蓮宗霊断師会」の会員を対象として発行されていることが推認できるとしても,その発行から現在に至るまでの発行部数や販売地域等を証する証拠がないことから,申立人提出に係る証拠からは,「行道文庫」の文字が,申立人の略称又は申立人の業務に係る商品を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,我が国の取引者,需要者の間で広く認識されているものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
「行道文庫」の文字は,前記(1)のとおり,申立人の業務に係る商品を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
また,「行道文庫」の文字は,前記(1)のとおり,申立人の略称又は申立人の業務に係る商品を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,著名であると認めることができないものであるから,商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても,これに接する取引者,需要者が申立人又は申立人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく,商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当するためには,「行道文庫」の文字が,申立人の略称として著名であることが求められるところ,前記(1)で認定したとおり,申立人提出に係る証拠によっては,該文字が,本件商標の登録出願時及び査定時において申立人の略称として著名であると認めることができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第7号該当性について
同号の該当性について,「商標法4条1項7号の『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ』を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは,特段の事情のある例外的な場合を除くほか,許されないというべきであり,商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,そのような場合にまで『公の秩序又は善良の風俗を害する』特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。」(知財高裁平成19年(行ケ)第10391号判決)と解されるところ,申立人は,本件商標は申立人の略称であって,日蓮宗霊断師会関係の仏教徒にとって周知・著名な商標であり,商標権者は日蓮宗霊断師会所属の僧侶でありながら,「行道文庫」の登録がないことを奇貨として申立人に無断で本件商標の登録出願をして商標登録した,いわゆる剽窃的出願である旨主張するので,以下検討する。
申立人(その前身)は,前記(1)に記載のとおり,昭和17年12月に「国体信仰講座」を題号(旧字体)とする書籍の第一巻を発行し,1998年(平成10年)6月には「漂う人々へ−行道文庫法話集」と題する書籍を出版し,また,「聖徒タイムス」と題する新聞については,昭和40年には発行を始めているものである。
そうすると,申立人は,本件商標の指定商品について,商標「行道文庫」を自ら登録出願をすることが十分可能であったにもかかわらず,商標登録出願をしていなかったものであり,また,他人の出願を排除するための適切な措置をとっていた事実を確認することもできない。
また,本件については,商標権者と申立人との間の商標権の帰属等をめぐる問題であって,当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,公の秩序や善良な風俗を害するおそれについて特段の事情があるものということができない。
本件商標は,「行道文庫」の文字を表してなるものであるから,その構成自体において公序良俗違反に該当するものでないことは明らかであって,申立人の証拠を検討しても,本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあった等の事実を証する証拠を見いだすことができず,他に,本件商標をその指定商品について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するような事情,あるいは,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないとすべき事情等も見受けられない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第8号,同項第10号及び同項第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録は維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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