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Trademark Appeal Case

役務の質表示と識別性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2011−24750(T2011−24750/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「広告マスターコース」の文字を標準文字で表してなり、第9類、第16類、第35類、第41類及び第45類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として平成22年12月9日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、本件審判請求と同日付の手続補正書により、第35類「広告,経営の診断又は経営に関する助言」及び第41類「知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、『広告マスターコース』の標準文字からなるところ、本願の指定商品及び指定役務との関係では、様々な知識や技芸などをマスターするための役務が存在し、それらが、「○○マスターコース」(○○は、マスターできる知識・技芸の内容)と称されている実情があることからすれば、『広告をマスターするためのコース』程の意味合いを容易に理解させる。そうすると、本願商標をその指定役務のうち、『広告についてマスターするためのコースを内容とする知識の教授』など広告をマスターするためのコースからなる役務に使用するときは、単に役務の質を表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋の要点

当審において、本願の指定役務の分野において、広告、マーケティングに関する資格認定講座、講演会などに関する事実を発見したので、かかる事実を開示する証拠調べ通知をするとともに、請求人が、審判請求の理由において、本願商標が、商標法第3条第2項の適用を受けることができる旨主張することについて、当該主張に係る証拠を提出するようにとの審尋(別掲)を行い、請求人に対し意見を述べる機会を与えた。

4 審尋に対する請求人の意見(要旨)

前記3の審尋(証拠調べ通知を含む)に対し、請求人は、何ら回答していない。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について

本願商標は、前記1のとおり「広告マスターコース」の文字を標準文字にて表してなるところ、その構成中の「広告」、「マスター」及び「コース」は、いずれも我が国において広く親しまれた語であって、これを本願の指定役務中、第41類「知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」について使用するときは、「広告を修得する課程」程の意味合いをその需要者に一般に認識させるものである。

しかして、広告、マーケティングの分野において、例えば、広告に関する資格の名称として「BMC広告マスター」(「BMC」は、「Business Marketing Communication Master」の略称)、マーケティングの資格に「マーケティングマスター」の名称を使用している事実並びに広告業関連の団体が、広告に関する講演会、夏季講座及び討論会を開催している事実が認められる(別掲(審尋)1 証拠調べ通知)。

さらに、本願商標は、標準文字により表されたものであって、その構成態様に何ら特徴のあるものではなく、普通に用いられる方法で表されてなるものである。

そうすると、本願商標「広告マスターコース」に接する取引者、需要者は、本願商標をその指定役務「知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」についての質(内容)を表したものと一般に認識するというべきである。

してみれば、本願商標は、その指定役務の質を直接的に表示するものであるから、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。

また、これを広告と関連のない「知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」について使用するときは、その役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるといわなければならない。

よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

(2)商標法第3条第2項について

請求人は、本願商標は、自己の業務に係る役務を表すものとして需要者に広く認識されるに至っているから、商標法第3条第2項に該当し、登録されるべきものである旨主張し、証拠方法(甲1ないし甲8)を提出している。

したがって、以下、商標法第3条第2項について検討する。

ア 商標法第3条第2項の趣旨

知的財産高等裁判所平成18年6月12日判決(平成18年(行ケ)第10054号判決)は、「・・・商標法3条2項は,商標法3条1項3号等に対する例外として,『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できることができるもの』は商標登録を受けることができる旨規定している。その趣旨は,特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には,当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に,当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから,当該商標の登録を認めようというものであると解される。上記のような商標法3条2項の趣旨に照らすと,同条項によって商標登録が認められるためには,以下のような要件を具備することが必要であると解される。」と説示し、その要件を以下のように判示している。

(ア) 使用により自他商品識別力を有すること

商標登録出願された商標(出願商標)が,商標法3条2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,実際に使用している商標(使用商標)及び商品,使用開始時期,使用期間,使用地域,当該商品の生産又は販売の数量,並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願商標が使用された結果,判断時である審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる『自他商品識別力(特別顕著性)』の獲得の有無)によって決すべきものである。

(イ) 出願商標と使用商標の同一性が認められること

商標法3条2項の要件を具備するためには,使用商標は,出願商標と同一であることを要し,出願商標と類似のもの(例えば,文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら,同条項は,本来的には自他商品識別力がなく,特定人の独占にもなじまない商標について,特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり,実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして,登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると,同条項は,厳格に解釈し適用されるべきものである。

イ 本願商標の商標法第3条第2項該当性について

上記アの観点から、本願商標が商標法第3条第2項の要件を備えているものか否か判断する。

(ア)本願商標と請求人の使用商標との同一性について

請求人の提出した書証に表示されている商標は「宣伝会議 広告マスターコース」(甲1、甲3及び甲6)、「宣伝会議の広告マスターコース」(甲5)、「宣伝会議【広告マスターコース】」(甲2、甲7及び甲8)であり、又は「宣伝会議」が表示されているものである(甲4)。

しかして、広告宣伝の分野においては、「宣伝会議」は、株式会社宣伝会議(東京都港区)ないし同社の発行する広告を内容とする雑誌の題号として知られているものである。

そうすると、前記(1)のとおり、自他役務識別標識としての機能を果たし得ない本願商標ではなく、「宣伝会議」が自他役務の識別標識として機能しているものというのが相当である。

(イ)商標としての使用について

甲第2号証によれば、「広告マスターコース」とは、「マーケティングを理解、活用するため、最新の知識と情報、場所、ツールを総合的に提供、企業のマーケティング力を強化するサービスです。」との記載があり、その内容として「宣伝会議」などの専門誌の頒布、セミナー、カンファレンスへの招待、ニュースの配信、企画書テンプレートのダウンロードなどを具体的な内容とするものであり、1年間税込み100,000円の旨の記載がある。 このような実際の「広告マスターコース」の内容並びに前記(1)のとおり「広告を修得するための課程」の意味を需要者に一般に認識させる本願商標の構成態様及び同種の役務に係る取引の実情を踏まえると、「広告マスターコース」は、その役務の内容である「広告を修得するための課程」の意味で表示されたにすぎないものというべきである。

したがって、本願商標と同一の構成に係る「広告マスターコース」が表示されているとしても、それは、当該役務の内容を表示したものと需要者が認識するにとどまるものというべきである。

そして、その役務の提供者としては、株式会社宣伝会議が認識されるものというのが相当である。

(ウ)使用開始時期、使用期間

本願商標の使用開始時期について請求人は明らかにしていない。一方、請求人が主張する本願商標についての新聞広告(平成23年2月21日付け日本経済新聞(甲3、甲5及び甲6)が、使用開始時期とすれば、本願商標の使用期間は本件審決時までの1年7月ほどにすぎないものである。

(エ)使用地域

a 役務の提供

前記(イ)の本願商標に係る役務の内容からすれば、当該役務は日本全国に提供しうるものであるところ、この役務の提供を受けた者の人数などは明らかでなく、他の同種の役務を提供する事業者に比較して多数の受講者を獲得しているなどの事実を認めることはできない。

b 広告による使用

本願商標に係る広告は、平成23年2月21日付け日本経済新聞(甲3)のみである。請求人は、インターネット上の広告として甲第7号証及び同8号証を提出するが、当該インターネットウェブサイトをどの程度の者が閲覧しているのか不明である。また、当該新聞広告及び当該インターネットウェブサイトは、前記(ア)のとおり、「宣伝会議 広告マスターコース」、「宣伝会議【広告マスターコース】」として表示されたものであって、当該証拠から自他役務の識別標識として認識されるのは、前記のとおり、「宣伝会議」であるというのが相当である。

さらに、前記以外の本願商標に係る広告についての証拠は提出されておらず、その回数は前記の新聞広告の掲載(甲3)とそれに関するインターネット情報(甲4ないし甲6)のみである。

(オ)証拠方法の提出についての審尋

前記3の審尋において、請求人の前記の主張について、商標法第3条第2項の適用を認めるに足りる証拠方法の提出を促したが、請求人からは、前記4のとおり、何ら回答がなかった。

(カ)小括

以上の事実から、本願に係る広告(マーケティング)についての知識の教授を内容とする役務の提供について本願商標と同一と認められる「広告マスターコース」の名称を用いていることは認められる。

しかしながら、その使用態様をみると、「広告マスターコース」が商標として自他役務の識別標識としての機能を発揮したというより、自他役務の識別標識として十分に機能する「宣伝会議」が、商標として需要者に認識されるというのが相当である。

また、本願商標の広告としての使用についても、「宣伝会議」とともに表示されたものであって、その新聞広告の回数も1度しかない。

また、役務の提供について、本願に係る広告(マーケティング)についての知識の教授が、他社の提供する同種の役務を圧倒するような受講者を得ているといった格別の事情も認めることはできない。

その上、本願商標の使用時期が確認できる平成23年2月から、審決時までの使用期間は、1年7月ほどにすぎず、先に説示した事実と考え合わせると、需要者が請求人を出所として認識するに至る期間として十分なものということはできない。

加えて、本願に係る広告(マーケティング)についての知識の教授を提供する者は、株式会社宣伝会議であるというのが相当である(本件全証拠)ところ、請求人は、本願の名義を株式会社宣伝会議に変更する用意がある旨主張するが、そのような名義変更をしたとしても、前記のとおり、本件全証拠をもってしても、本願商標が商標法第3条第2項の適用を受けることができるものとはいえないものである。

以上からすれば、本願商標が使用された結果、本願商標がその指定役務の出所表示として、需要者の間で認識されるに至ったものとは認められず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとはいえない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。

(3)結語

以上からすれば、本願商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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