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Trademark Appeal Case

登録商標の同一性判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2012−300358(T2012−300358/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5028952号商標の指定商品中、「洋酒,果実酒」については、その登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5028952号商標(以下「本件商標」という。)は、「日の丸」の文字を標準文字で書してなり、平成18年4月3日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成19年3月2日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した(弁駁書に添付された甲第1号証は、番号が重複しているので甲第2号証と読み替えた。)。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品中の「洋酒,果実酒」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

2 答弁に対する弁駁

(1)登録商標と社会通念上同一の商標ではないこと

被請求人は、清酒以外のアルコール類のリキュール等に業務を拡大、注力中であると述べ、リキュールに「『日の丸』を使う予定がある。」として、胴ラベルを証拠として提出する(乙10、乙11)。

しかしながら、以下のとおり、商標権者が使用を予定している商標(便宜上、以下「使用標章」という。)が本件商標の使用とはいえず、本件商標の登録が取り消されるべきである。

使用標章は、乙第10号証及び乙第11号証に示す赤色と思われる丸の中に、「の」の字が他の2文字に比べてかなり小さい構成態様の「日の丸」の文字が肉太の筆字で表された構成よりなるものである。これに対し、本件商標は、標準文字よりなるものである。

商標法第50条第1項かっこ書きでは、「登録商標」を「社会通念上同一と認められる商標」まで広げているところ、その代表例として、「(a)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、(b)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって、同一の称呼及び観念を生ずる商標、(c)外観において同視される図形からなる商標、(d)その他社会通念上同一と認められる商標」を挙げて、その範囲を明らかにしている(甲1)。

使用標章は、登録商標の「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するもの」ではないため、上記(b)には該当しない。また、本件商標が文字商標であるため、上記(c)にも該当しない。また、本件商標は漢字2文字と平仮名1文字とで構成された横書きの商標であるため、書体に変更を加えずに横書きを縦書きにするといった、上記(d)にも該当しない。そうすると、上記(a)に該当するかどうかが問題となる。

平成8年工業所有権法解説によれば、上記(a)の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」は、明朝体で記載された商標の書体をゴシック体に変える、活字体で記載された商標を筆記体に変えるといった範囲の変更を想定している。ところが、使用標章は、図形と組み合わされている点、上述のように、本件商標を構成する「日の丸」という3文字の大きさが変更されている点、文字の並び方を右上から左下へ並ぶように変更されている点において、標準文字である本件商標の構成態様からは大きく変更されている。

このような使用は、登録商標と「社会通念上同一」とはいえないものである。

(2)正当理由がないこと

請求人は、平成24年5月7日に、本件審判を請求し、同年5月16日に、商標権者に電話で連絡をし、商標権の一部譲渡、ビールについての使用許諾について申入れを行った。しかし、商標権者は、即座に、本件商標に係る商標権を譲渡する気はないこと、現在では使用していないが、息子の代になったら使用するかもしれないため、大手からもそのような話はあったがすべて断っており、使用許諾をするつもりもないとして、請求人からの申入れを拒絶した。

そして、本件審判は、平成24年5月21日に請求の登録がされている(審決注:「平成24年5月23日」の誤りと認める。)。

一方、商標権者が財務大臣宛に表示方法届出書を提出したのは、平成24年6月6日、「甘酒仕込林檎梅酒 日の丸」の企画書が作成されたのは、平成24年6月1日、といずれも本件審判の請求の登録日の後である。

すなわち、商標権者が「使用予定がある」ことを明らかにしたのは、本件審判の請求の登録後であることは明らかである。

しかも、「息子の代になったら使用するかもしれない。」としていたにもかかわらず、本件審判の副本の送達日である平成24年5月22日(審決注:請求人のいう「本件審判の副本」が「審判請求書の副本」であるとすれば、その送達日は、平成24年5月25日である。)を過ぎた後に、「使用予定があり、登録商標の取消しを免れるための正当な理由がある。」と主張するのは、不自然極まりない。

したがって、被請求人の主張する理由は、商標法第50条第2項ただし書きに規定される「正当理由」とはいえない。

(3)むすび

以上より、使用標章は、本件商標と社会通念上同一といえるものではなく、また、登録商標を3年以上使用しなかったことについて、正当な理由もない。

第3 被請求人の主張

被請求人は、「商標法第50条第2項ただし書の規定により、本件商標は、その指定商品中の『洋酒,果実酒』についての登録を取り消さない。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。

1 使用の計画

請求人による審判請求の意思を知る以前から、商標権者は、登録商標について明確な使用計画があった。このことを疎明するために以下に理由を述べる。

(1)商標権者は、明治41年に、「日の丸」を商標登録して以来今日まで、地方向け商品として、第33類「清酒」に使用している。一方、商標権者の有する他の商標である「まんさくの花」は、昭和55年に商標登録され、全国展開を目指す「リキュール」について使用している。商標権者は、近年、酒類製造業として、清酒以外のアルコール類のリキュール(洋酒)等に業務を拡大、注力中である。

(2)商標権者は、平成17年5月27日に、期限付きリキュール製造免許を取得(乙1)、その後、平成18年3月16日に、リキュール製造免許の期限延長を取得(乙2)、さらに、平成19年1月30日に、リキュール製造免許の条件解除の申し出を行い(乙3)、平成19年2月23日に、リキュール製造免許の条件解除を受け、平成19年3月1日付けで解除となり(乙4)、リキュール製造永久免許を取得して地元の特産品であるフルーツ等を使用する新商品を開発してきた。

さらに、商標権者は、平成22年3月5日に、単式蒸留しょうちゅう製造免許の期限延長を取得(乙5)、平成24年3月14日に、単式蒸留しょうちゅう製造条件付免許を取得(乙6)、平成24年3月14日に、清酒を原料としてリキュールを製造する製造承認を申請し、平成24年3月23日に承認を得て(乙7)、近々、「日の丸」という昔の米を復刻栽培して仕込んだ日本酒(乙8)をベースとする梅酒(林檎梅酒「日の丸」)の販売(乙9〜乙11)を開始する計画を立てていた事情にある。

(3)今までリキュールで「日の丸」の商標を使用してこなかったのは、商標権者の販売先は秋田県外が中心であり、リキュールについても全国展開を目指し、全国区で通用する「まんさくの花」のブランドを使用してきたためである。

今般リキュールに「日の丸」の商標を使う理由は、紅ドリームプロジェクトの会の商品コンセプトが地元の特産品を使用する地元向けのこだわり商品であり(乙12〜乙14)、マーケティングの目的も従来商品と全く異なるものであるためである。すなわち、原料に全国唯一の「日の丸」米を原料とする清酒「日の丸」と、横手市当局が地元の特産品育成策として推進してきた真っ赤な果肉の新品種リンゴが内蔵の町として、国指定の伝統的建築物保存地区の申請をする(平成25年3月予定)に呼応して、地元で愛されている「日の丸」ブランドの特産品(リキュール)を作ることで、地域興しに貢献したいと考えるためである。

特に、新品種リンゴ「紅の夢」は真っ赤な果肉と真ん丸い形状から、「日の丸リンゴ」のイメージがあり(乙15)、商標権者は、当初からリンゴ農家と協力して苗木育成に関与して、リンゴ由来の天然の赤い果汁を使用した赤いリキュールを「日の丸」ブランドの特産品として売り出すことを企画してきたが、2年続きの豪雪でリンゴの樹木被害により(乙16)、果汁の確保が困難となり、新商品開発計画が延び延びとなり、今日に至った事情がある。

酒造業界では、メインブランドに派生させた商標のシリーズ商品は数多くあり、商標権者としても、今後も各種酒造免許を取りながら、シリーズ化を進めていく方針である。

かかる状況下、請求人は酒造免許がなく、単なる委託生産による販売者との立場のようである。かかる立場の人に明治時代から守ってきたブランドが形式的事由で簡単に侵害されることは、到底許されるものではないと考える。

2 むすび

故に、被請求人としては、「洋酒,果実酒」について登録を取り消さない、との審決を求める。

第4 当審の判断

1 商標権者による本件商標の使用計画について

(1)商標法第50条第1項による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項本文は、「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定し、同項ただし書において、「その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があるを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。」と規定している。

そして、商標法は、使用により商標に蓄積された信用を保護することにより、産業の発達に寄与し、需要者の利益を保護することを目的としているものである。換言すれば、商標権者が登録商標を使用することを保護の前提としているものであって、一定期間登録商標を使用しない場合は、保護する対象がないものというべきであり、他方、不使用の登録商標を放置することは、商標の使用を欲する者の商標採択の範囲を狭める結果ともなり、国民一般の利益を損なうこととなる。商標法第50条の立法趣旨は、上記のような一定期間登録商標を使用していない登録商標については、請求により、商標登録を取り消すことにあると解される。

商標法の目的及び同法第50条の立法趣旨からみれば、登録商標を使用しているというためには、将来的に使用をする意思があり、その準備を進めていたにもかかわらず、例えば、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係わる事由等商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない特別の事由が発生したために、当該審判の請求の登録前3年以内に現実に使用をすることができなかった場合のような、不使用についての正当な理由が必要というべきである。

(2)上記を踏まえて、本件について検討する。

被請求人は、商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」として、「請求人による審判請求の意思を知る以前から、商標権者は、登録商標について明確な使用計画があった」旨主張し、乙第1号証ないし乙第16号証を提出する。

ア 乙第1号証ないし乙第16号証及び答弁の理由によれば、以下の事実を認めることができる。

(ア)商標権者の事業及び酒類製造免許の取得及び酒類製造等の承認等について

a.商標権者は、酒米「日の丸」を原料とした清酒の製造業者であり、その製造に係る清酒に、明治41年に商標登録された「日の丸」の文字よりなる商標を使用しているが、近年、事業の拡大を図り、リキュールの全国展開を目指しているところ、商標権者が、今までリキュールに「日の丸」の文字よりなる商標を使用してこなかったのは、「まんさくの花」の文字よりなる商標を使用してきたことにある。今般、商標権者がリキュールに「日の丸」の文字よりなる商標を使用する理由は、地域興しに貢献するため、横手市の特産品育成策として推進してきた、果肉が赤く真ん丸い形状という特徴を持つ新品種りんごを使用したリキュールを製造しようと企図し、当該りんごの持つ特徴が「日の丸」ブランドに調和することにある(答弁書2、3頁、乙8)。

b.商標権者は、平成17年5月27日に、製造免許の期限を平成18年3月31日とするリキュール類製造免許を取得し、平成18年3月16日に、上記期限を平成19年3月31日とするリキュール類製造免許の期限延長が認められ、さらに、平成19年3月1日付けで、「自らが製造した清酒を原料としてリキュール(梅酒他)を製造するため」に、リキュール類製造免許の条件解除が認められた。また、商標権者は、平成22年3月5日に、単式蒸留しょうちゅう製造免許の期限延長(期限延長は平成23年3月31日限り)が認められ、平成24年4月1日に、単式蒸留しょうちゅう製造条件付き免許(「製造する酒類の範囲は、自己の清酒の製造に際し生じた酒かす又は米ぬか等の副産物を主原料として製造するもの及びこれに発泡性を持たせたものに限る。」とする条件付き)を取得、平成24年3月14日に、製造期間を平成24年4月1日から平成25年3月31日までとする「清酒を原料としてリキュール(梅酒)」を製造するための製造・移出等承認を申請し、平成24年3月23日に、この承認を受けた(以上、乙1〜乙7)。

(イ)新品種のりんご「紅の夢」(以下「本件りんご」という。)について

a.「紅ドリームプロジェクトの会概要(要約)」(横手市産業経済部マーケッティング推進課の職員の作成に係る。ただし、作成日は不明である。)には、「紅ドリームプロジェクトの会」は、横手市、大学教授等の研究者、りんご農家等で、平成21年10月に発足し、同会の発足当時より商標権者と連携して、果肉の赤い本件りんごの栽培面積を拡大し、これを横手市の特産品として販路拡大を目指し活動していること、同会は、本件りんごの穂木を、平成22年に150本配布し、翌平成23年には100本配布したこと、平成23年冬の豪雪により樹木被害が拡大し、計画の30%しか収穫できなかったこと、そして、商標権者への納入実績は、平成21年に10.5箱と果汁70リットルであり、平成22年に18箱と果汁110リットル、平成23年に21箱と果汁130リットルであった(いずれの年も納入の月日は不明である。)こと、などが記載されている(乙12)。

b.本件りんごは、その収穫期が10月20日前後(乙15)であり、平成23年1月に、「紅の夢」として品種登録された(乙12)。

c.2011年(平成23年)4月22日付け秋田魁新報(乙16)には、「果樹雪害やはり深刻」の見出しのもと、「記録的な大雪による県南地区の果樹被害の様子が、雪解けとともに明らかになってきた。・・折れた枝の補強や焼却処分に追われる農家は『木が回復するまでに何年もかかり、収穫減が続くだろう』と無念さを隠さない。」、「県は、県南部を中心とした今冬の大雪による農業被害について、果樹の改植や補修に対し助成するほか、・・」などと、横手市を含む秋田県南地区における平成22年の暮れ、若しくは平成23年の年頭から平成23年の春にかけての(と推認することができる)冬の豪雪による果樹の被害を伝える記事が掲載された。

(ウ)商標権者による「林檎梅酒『日の丸』」製造の準備

a.商標権者は、本件審判の請求の登録日(平成24年5月23日)後である2012年(平成24年)6月1日に、社内において、「商品企画書」を作成した。同「商品企画書」には、「商品名/甘酒仕込林檎梅酒 日の丸」、「商品区分/リキュール」、「販売期間/通年商品」、「アルコール度数/13〜14」、「発売予定日/2012.6.29」、「びん詰予定日/2012.6.27」、「ラベル税務署届出/要/2012.6.6届出」、「備考(注意事項等)/商品コンセプト等別紙の通り」などと記載されている(乙13)。

b.上記商品に関する「補足説明」(作成日は不明)には、「1.新商品名:林檎梅酒『日の丸』リキュール」、「2.開発目的/地元横手市産のりんご、大屋梅と日本酒、米アルコール、甘酒を使用したリキュールを開発し、リキュールのラインナップの充実を図る。」、「3.商品コンセプト/・・商品名は真っ赤で丸い日の丸りんごと日の丸米を使用することから、蔵名の『日の丸』とし、従来商品の日の丸に相応しい天然の赤い色のリキュールを開発し、林檎リキュール『日の丸』として売出すことを企画した。・・」との記載のほか、「4.開発経緯」には、「秋田県内随一を誇るリンゴ産地に在る当社は4年前から『紅ドリームプロジェクト』に積極的に参画し、蔵名の日の丸に相応しい天然の赤い色のリキュールを開発し、林檎リキュール『日の丸』として売り出すことを企図してきた。しかし、一昨年の豪雪でリンゴの木が被害に遭い、収穫量は6割減となったため、当初予定してきた果汁の量を確保することは困難な状況にある。当面、紅の夢100%使用のリキュールの成算が見込めないことから、本件は次善の策として梅酒とのミックスリキュールの形で商品化するもの。」、「7.ラベル:別添のとおり。横手税務署へ届け出済」などと記載されている(乙14)。

c.商標権者は、平成24年6月6日付けで、上記商品について、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令第8条の3第1項(第2項)の規定による「表示方法届出書」を財務大臣に提出した。該「表示方法届出書」の「3.届出する酒類の種類等」には、「種類/リキュール」、「アルコール分等/13度以上14度未満」、「商品名/甘酒仕込林檎梅酒 日の丸」、「容器区分/瓶」、「容量/500ml」と記載されている(乙9)。

d.当該商品に付される胴ラベルは、別掲のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中、自他商品の識別標識としての機能を発揮する部分は、周囲がややでこぼこしている赤色円図形内に、毛筆で縦書き風に表した「日の丸」の文字部分(使用標章)であるといえる(乙10)。なお、胴ラベルの作成日は明らかではないが、「商品企画書」(乙13)に、「ラベル税務署届出/要/2012.6.6届出」と、また、「補足説明」(乙14)に、「7.ラベル:別紙のとおり。横手税務署へ届け出済」と、それぞれ記載されているところから、胴ラベルの作成日は、「表示方法届出書」(乙9)の作成日とほぼ同時期であると推認することができる。

ちなみに、「補足説明」(乙14)の作成日については不明であるが、上記のとおり、「7.ラベル:別紙のとおり。横手税務署へ届け出済」の文字部分より、平成24年6月6日以降と推測される。

e.乙第11号証として提出されたリーフレット(作成日は不明)には、上部に「林檎梅酒『日の丸』」と大きく表示され、その下部に、「日本で唯一の当蔵オリジナル酒米『日の丸』仕込み日本酒と赤い果肉の新品種りんご『紅の夢』と横手市産大屋梅・豊後梅仕込み梅酒のコラボリキュールです。」などと記載され、乙第10号証で示した胴ラベルと同一とみられるラベルが付された商品の写真、原材料の一つであるりんご「紅の夢」の説明、商標権者の名称等が記載されている。なお、該リーフレットに掲載された商品のアルコール分は、「8度以上9度未満」であるところ、この表示は、「商品企画書」(乙13)、「表示方法届出書」(乙9)及び胴ラベル(乙10)に記載されたアルコール分の表示とは異なるものである。

イ 以上アによれば、商標権者は、平成17年5月27日付けで、製造免許の期限を平成18年3月31日にとするリキュール類製造免許を取得し、その後、当該製造免許の期限の延長をし、平成19年3月1日には、「自らが製造した清酒を原料としてリキュール(梅酒他)を製造するため」に、それ以前に取得したリキュール類製造免許の条件の解除を受け、平成22年3月5日には、「単式蒸留しょうちゅう製造免許の期限延長(平成23年3月31日限り)」が認められ、さらに、平成24年4月1日付けで「単式蒸留しょうちゅう製造条件付き免許(「製造する酒類の範囲は、自己の清酒の製造に際し生じた酒かす又は米ぬか等の副産物を主原料として製造するもの及びこれに発泡性を持たせたものに限る。」とする条件)」を取得した。また、商標権者は、平成24年3月14日に、製造期間を平成24年4月1日から平成25年3月31日までとする「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」の製造承認を申請し、平成24年3月23日に承認を受けたことを認めることができる。

一方、商標権者は、平成21年10月ころから、地元横手市産の本件りんごの栽培及び販路の拡大を目的とする「紅ドリームプロジェクトの会」と連携し、平成21年から平成23年にかけて「紅ドリームプロジェクトの会」より本件りんごの納品を受けたことを推認することができる。

そして、商標権者は、本件審判の請求の登録日(平成24年5月23日)以降である平成24年6月1日に、社内において、アルコール度数を「13〜14」とする商品名「林檎梅酒『日の丸』リキュール」についての「商品企画書」を作成し、同年6月6日に、当該商品の「表示方法届出書」(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令第8条の3第1項(第2項)の規定による)及び使用標章が付された胴ラベル(乙10)を財務大臣に届出したことを認めることができる。

ウ しかしながら、以下のとおり、商標権者のリキュール類製造免許の取得及び「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」についての製造承認等のリキュールの製造、販売に係る一連の手続(乙1ないし乙7)と、本件りんごを使用したリキュールの商品化計画等(乙9ないし乙15)とは、関連性に乏しいものといわざるを得ない。

(ア)商標権者は、上記のとおり、平成17年5月27日付けで、製造免許の期限を平成18年3月31日にとするリキュール類製造免許を取得し、その後、当該製造免許の期限の延長をし、平成19年3月1日に、「自らが製造した清酒を原料としてリキュール(梅酒他)を製造するため」に、それ以前に取得したリキュール類製造免許の条件の解除を受けた日から、製造期間を平成24年4月1日から平成25年3月31日までとする「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」の製造承認(酒類の製造・移出等承認申請書及び承認:乙7)を受けた平成24年3月23日までの間には、約5年の期間がある一方で、商標権者は、リキュールの製造について、本件りんごを使用したリキュールの商品化計画が初めての試みではなく、過去現在にわたり、「まんさくの花」の文字よりなる商標を使用したリキュールを製造しているとの事情(乙14)があることからすれば、上記約5年の期間中に、リキュール類の製造承認を受けたことがないとは考えられず、上記「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」の製造承認(乙7)は、過去において承認を受けた「まんさくの花」の文字よりなる商標を使用したリキュールの製造承認の延長線上のものであると推測することができる。

このことは、平成19年3月1日に、「自らが製造した清酒を原料としてリキュール(梅酒他)を製造するため」に、既に平成22年3月5日付けで「単式蒸留しょうちゅう製造免許の期限延長」が認められ、さらに、平成24年4月1日付けで「単式蒸留しょうちゅう製造条件付き免許(「製造する酒類の範囲は、自己の清酒の製造に際し生じた酒かす又は米ぬか等の副産物を主原料として製造するもの及びこれに発泡性を持たせたものに限る。」とする条件付き)」を取得している事実が存在すること、前記ア(イ)認定のとおり、横手市は、平成22年暮れ、若しくは平成23年の年頭から平成23年春にかけての冬の豪雪により、りんごをはじめとする果樹の被害を受け(乙16)、「紅ドリームプロジェクトの会」の報告(乙12)によれば、本件りんごの収穫量も計画の30%に激減したことが認められ、りんごの木の再生には長い期間を要する(乙16)との事情からすると、平成23年秋及びそれ以降における本件りんごの収穫量が、増えることは期待できず、むしろ減少するか、あるいは横ばいの状態が続くと考えられ、このような時期に、本件りんごを使用したリキュールを製造するために、平成24年3月23日に、製造期間を平成24年4月1日から平成25年3月31日までとする「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」の製造承認を受けたこと自体、極めて不自然であるといわざるを得ないこと、「補足説明」(乙14)には、「・・蔵名の日の丸に相応しい天然の赤い色のリキュールを開発し、林檎リキュール『日の丸』として売り出すことを企図してきた。しかし、一昨年の豪雪でリンゴの木が被害に遭い、収穫量は6割減となったため、当初予定してきた果汁の量を確保することは困難な状況にある。当面、紅の夢100%使用のリキュールの成算が見込めないことから、本件は次善の策として梅酒とのミックスリキュールの形で商品化するもの。」との記載があるところ、この記載部分は、商標権者が、本来的には、本件りんごを100%使用したリキュールの商品化計画があったかのような印象を与えるが、前記平成17年5月27日付けでリキュール類製造免許を取得して以来、一連の製造の免許・承認等の取得状況からみると、「豪雪でリンゴの木が被害に遭い、収穫量は6割減となったため」に、「次善の策として梅酒とのミックスリキュールの形で商品化する」ことから、既に製造承認を受けている内容を変更してまで、「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」についての製造承認を受けたものとは考えにくく、「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」の製造承認(乙7)は、平成19年3月1日に「自らが製造した清酒を原料としてリキュール(梅酒他)を製造するため」に受けたリキュール類製造免許の条件の解除に基づいてされた製造承認にすぎないとみるのが相当であること、などから首肯し得るところである。

したがって、商標権者は、本件りんごを使用したリキュールの商品化計画とは無関係に、「まんさくの花」の文字よりなる商標を使用したリキュールの製造をするなどの理由により、一連の「リキュール類製造免許」の取得、「単式蒸留しょうちゅう製造免許の期限延長」等の取得及び「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」についての製造承認を受けたものとみるのが相当である。

(イ)商標権者には、上記(ア)のとおり、平成17年5月27日に、条件付リキュール類製造免許を取得して以来、平成24年3月23日に受けた「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」についての製造承認に至るまで、リキュール類製造に関する一連の免許・承認を取得した事実が存在する一方で、本件りんごを使用した商標権者の開発に係る商品が、もともと真に「リキュール」であったかは、これを裏付ける的確な証拠の提出がない。すなわち、「リキュール・・甘酒仕込林檎梅酒 日の丸」(乙9〜乙11、乙13、乙14)の語や「リキュール・・りんご(紅の夢)使用/アルコール分 十三度以上十四度未満・・/原材料 梅の実、甘酒、日本酒、米アルコール、りんご果汁、氷砂糖」(乙10)、「赤い果肉の新品種りんご『紅の夢』」(乙11、乙14)、「紅の夢100%使用のリキュール」(乙14)などの語を使用した証拠は、いずれも本件審判の請求の登録(平成24年5月23日)後に作成されたものであるか又は作成日の不明なものであり、商標権者が、本件りんごを使用したリキュールを、本件審判の請求日前より商品化の計画をしていたことを立証する証拠とはなり得ない。

(ウ)上記(イ)に関連して、社内で作成した「林檎梅酒『日の丸』」に関する「商品企画書」は、本件審判の請求の登録(平成24年5月23日)後の平成24年6月1日であり、それに続く、「表示方法届出書」も平成24年6月6日であって、これらは、「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」についての製造承認を受けた平成24年3月23日より2か月以上も経過した時点で作成されているばかりでなく、「清酒を原料としたリキュール(梅酒)」の製造期間が平成24年4月1日から平成25年3月31日までで、その期間がわずか1年しかなく、しかも、社内における「商品企画書」の作成や「表示方法届出書」の提出が製造期間に食い込んでいるところからすると、商標権者が、本件審判の請求日前より、本件りんごを使用したリキュールの商品化を計画し、本件商標について明確な使用計画があったのか疑問が残るといえる。

(エ)さらに、「紅ドリームプロジェクトの会概要(要約)」(乙12)は、横手市産業経済部マーケッティング推進課の職員の作成に係るものであるところ、いわば公的立場にある市の職員の作成した文書に作成日の記載がないこと自体極めて不自然であること、また、平成22年暮れ、若しくは平成23年の年頭から平成23年春にかけての冬の豪雪により、本件りんごの樹木が被害を受けたことが推認されるとしても、本件りんごは、その収穫期が10月20日前後である(乙15)ところからすれば、平成22年秋の収穫期における果実そのものの被害は免れたと推測することもできるから、該「紅ドリームプロジェクトの会概要(要約)」にある「平成23年冬の豪雪により樹木被害が拡大し、計画の30%しか収穫できず」との記載は、平成23年秋の収穫量をいっているものと考えられるが、商標権者への納入実績は、平成23年は減ることなく、むしろ平成21年及び平成22年より増えていること、「平成23年冬の豪雪」による果樹の被害が問題となっている本件において、商標権者への納入期日には、「平成23年」のように、年のみが記載され、月日の記載がなく、また、納入実績を裏付ける証拠の提出もないこと、などを考慮すると、「紅ドリームプロジェクトの会概要(要約)」の記載を直ちに信用することはできない。

(オ)以上(ア)〜(エ)を総合し、その他、商品「林檎梅酒『日の丸』」に関するアルコール分の表示が、「商品企画書」(乙13)、「表示方法届出書」(乙9)及び「胴ラベル」(乙10)に記載されたものと、「リーフレット」(乙11)に記載されたものとが食い違っていること、などを併せ考慮すると、そもそも商標権者が本件審判の請求日以前より、本件りんごを使用した「リキュール」の商品化を計画していたとの被請求人の主張は極めて疑わしいものであって、本件商標を請求に係る指定商品中の「リキュール」について使用する計画を有していたと認めることも困難であるといわざるを得ない。

エ 上記ウに関し、被請求人は、商標権者は、リンゴ農家と協力して苗木育成に関与して、リンゴ由来の天然の赤い果汁を使用した赤いリキュールを「日の丸」ブランドの特産品として売り出すことを企画してきたが、2年続きの豪雪でリンゴの樹木被害により、果汁の確保が困難となり、新商品開発計画が延び延びとなり、今日に至った事情がある旨主張する。

しかし、前記ウ認定のとおり、そもそも商標権者が、本件審判の請求日以前より、本件りんごを使用した「リキュール」の商品化を計画していたものと認めることは困難である。仮に商標権者が、本件審判の請求日以前より、本件りんごを使用した「リキュール」の商品化を計画していたとみた場合、平成22年暮れ、若しくは平成23年の年頭から平成23年春にかけての冬の豪雪により(被請求人の「2年続きの豪雪」との主張を裏付ける証拠の提出はない。)、横手市のりんご等の樹木が被害を受けたことは認め得るとしても、前記ウ(エ)のとおり、本件りんごの収穫期が10月20日前後であるところからすれば、平成22年秋の収穫期における果実の被害は免れたと推測することができ、このことは、平成22年の本件りんごの商標権者への納入実績が、平成21年当初のそれより増えていることからも首肯し得るところであり、のみならず、平成23年の本件りんごの商標権者への納入実績も減ることなく増えているところであるから、豪雪の影響により商標権者の新商品開発計画が延び延びとなっていたとは考えられない。しかも、商標権者が、リキュール類製造免許の条件の解除を受けたのは、平成19年3月1日であり、商標権者の意思がありさえすれば、本件審判の請求の登録(平成24年5月23日)前3年以内において、本件商標を請求に係る指定商品に使用する機会は十分にあったということができる。

以上によれば、商標権者が、新商品開発計画を進めていたと仮定した場合において、当該新商品開発計画を進めていたにもかかわらず、商標権者の責めに帰すことができない特別の事情により現実の使用に至らなかったなどの事実関係が存在していたものと認めることはできない。したがって、商標権者が、本件商標を本件審判の請求の登録前3年以内に使用しなかったことについて、正当な理由があったとみることはできない。

オ 被請求人のその他の主張について

被請求人は、本件審判を請求した吉田茂は酒造免許がなく、単なる委託生産による販売者との立場のようであり、かかる立場の人に明治時代から守ってきたブランドが形式的事由で簡単に侵害されることは、到底許されるものではない旨主張する。

しかしながら、商標権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る指定商品のいずれかについて使用していなかったことについては、被請求人も認めているところであり、また、商標権者において、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標を請求に係る指定商品のいずれかについて使用していなかったことについて、正当な理由があったものとも認めることができないことは、前記認定のとおりである。そうである以上、商標法の目的及び同法第50条の立法趣旨からすれば、本件商標の登録は、取り消されてもやむを得ないといわなければならず、被請求人の「明治時代から守ってきたブランドが形式的事由で簡単に侵害されることは、到底許されるものではない」との主張は、当を欠くというべきものである。したがって、上記に関する被請求人の主張は理由がない。

2 むすび

以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていたことを証明し得なかったのみならず、使用をしていないことについて正当な理由があったものとも認めることができない。

したがって、本件商標の登録は、その指定商品中「洋酒,果実酒」について、商標法第50条第1項の規定に基づき、取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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