Trademark Appeal Case
リハビリパンツの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2012−825(T2012−825/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第5類に属する出願時の願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年10月12日に登録出願されたものである。そして、指定商品については、平成23年6月24日付け手続補正書によって、第5類「失禁用おしめ」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、青色で縁取りされ黄色が施された『リハビリ』の文字及びそれよりもやや小さい『パンツ』の文字とを結合して『リハビリパンツ』の文字を普通に用いられる方法の域を脱しない程度の態様で書してなるものであるが、全体として、『リハビリテーション用のパンツ』又は『リハビリテーション用のパンツ型商品』程の意味合いを容易に看取させるもので、本願商標に係る指定商品を扱う業界において、例えば『リハビリテーション向けの大人用おむつ』等を表す際に『リハビリパンツ』の語が使用されている実情も確認できるから、本願商標をその指定商品『失禁用おしめ』に使用するときは、失禁等の排泄障害を有する者が排泄の自立のために使用する『リハビリテーション用のパンツ型商品』である旨の商品の品質、効能、用途を普通に用いられる方法で表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。また、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められない。」旨判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
(1)本願商標の自他商品識別力について
本願商標は、別掲1のとおり、「リハビリ」の片仮名及び該文字よりやや小さく表した「パンツ」の片仮名を、いずれも黄色で横書きし、それらの文字を縁取りするように青色で囲んだ構成からなるものであり、その構成から、「リハビリ」の語と「パンツ」の語とを組み合わせたものと容易に看取させるものである。
また、本願商標の構成態様についてみるに、「リハビリパンツ」の文字が、文字の大きさを変え、着色や縁取りがなされているとしても、近時、商業広告等において、看者の注意を惹くために文字を装飾的に着色、縁取り等することが普通に行われている実情があること(例えば、甲9の3:99頁左上「おでかけ安心」、甲9の4:裏表紙「尿とりパッド」、http://item.rakuten.co.jp/e-omutsu/c/0000000112:「いちばんパンツ」)からすれば、かかる着色や縁取りは、該文字を強調して表したものと認識されるというのが自然である。
ところで、本願商標の指定商品である「失禁用おしめ」を取り扱う業界においては、要介護者や高齢者が寝たきり状態になることを防ぐためのリハビリといった観点から、その排泄行動を助け、日常生活をより快適、簡便に過ごすことができるように、パンツ型の商品を開発、販売しており、また、「リハビリパンツ」の文字は、失禁用のパンツ型の商品を指称する語として使用されている実情がある。このことは、原審で挙げた事例の外、例えば別掲2の新聞記事及びインターネット情報等によっても、裏付けられる。
そうとすれば、本願商標は、その指定商品との関係において、当該商品が失禁用のパンツ型商品であることを認識させるにすぎないものと判断するのが相当である。
してみれば、本願商標は、これをその補正後の指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が例えば「失禁用パンツ型おしめ」であること、すなわち、商品の品質を表示したものと認識するにとどまるものであって、自他商品の識別標識としては認識し得ないものというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は、「リハビリパンツ」の文字(語)について、その文字の持つ意味から指定商品の品質、効能、用途を直接的に表示するものであるとはいうことができず、また、そもそもは請求人自身が「排泄の自立支援を促すことで寝たきり状態を改善し又はリハビリ訓練を促すこと」といったコンセプトの下に新商品を開発し商標として採択した独創的なものであるから、商品の品質を直接表示するものとはなり得ない旨主張している。
しかしながら、「リハビリパンツ」の文字(語)は、別掲2に例示したように、失禁用のパンツ型の商品を指称する語として、請求人の取扱いに係る商品以外の商品についても、介護用品を販売する事業者や介護関係者等の需要者によって普通に使用されているものであるから、仮に請求人が新商品開発の過程においてその商品コンセプトのもとに「リハビリパンツ」を採択したとしても、現在においては本願指定商品の品質を表示したものといわざるを得ないから、請求人の主張は採用することができない。
2 商標法第3条第2項の該当性について
請求人は、本願商標は使用によって自他商品の識別性を獲得しているので商標法第3条第2項に該当する旨主張し、証拠方法として甲第4号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出している。
そこで、本願商標が当該条項の要件を具備するに至っているか否かについて、以下、検討する。
(1)商標法第3条第2項について
商標法第3条は、同条第1項第1号ないし第6号に該当する商標については、商標登録できない旨の規定であるが、同条第2項において、「商標法第3条第1項第3号から第5号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」とされている。
また、商標法第3条第2項は、商標法第3条第1項第3号等に対する例外として、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」は商標登録を受けることができる旨を規定している。その趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として長期間継続的かつ独占的に使用し、宣伝もしてきたような場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は乏しいということができるから、当該商標の登録を認めるというものであると解される。(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10441号判決 判決日 平成19年3月29日参照)
そこで、以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて検討する。
(2)本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて
請求人(出願人)により提出された証拠資料によれば、請求人は、大人用紙おむつ「ライフリー」を1987年に発売し、さらに翌1988年に「ライフリー尿とりパット」、1995年に「ライフリーリハビリ用パンツ」、1996年に「ライフリーテープ止めタイプ」、1999年に「ライフリーさわやかパッド」、2002年に「ライフリー夜用安眠パンツ」など、順次「ライフリー」関連商品を発売し(甲4の1)、そのような商品に少なくとも1998年3月には「リハビリパンツ」の文字を使用していた(甲4の2)。そして、「リハビリパンツ」の文字の商品(包装)への表示態様は、使用開始当初(1998年3月)は「リハビリ」の片仮名及び該文字よりやや小さく表した「パンツ」の片仮名を青色で横一連に表したものであったが、2003年10月頃からは当該青色文字に略四角形の図形を結合させたもの、2009年10月頃からは文字色を黄色にして略四角形の図形を結合させたものといったように変遷が見られるが、常に「ライフリー」の文字と共に使用されている。
また、商品「ライフリーリハビリパンツ」(以下「請求人商品」という。)は、請求人の主張によれば、2004年度から2010年度の7年間で約322億6千6百万円(年平均46億円強)の売上があり、POSデータを基にユニアデックスが加工分析した月間カテゴリー別ランキングによれば、大人用おむつとして、2007年から2009年の間、例えば金額シェアにしてM・L合わせて5〜15%程のシェア(甲9の14〜25、甲9の27〜35)で推移している。
さらに、請求人商品又はこの商品コンセプト等が、新聞、雑誌及びテレビ等に取り上げられ、又は、広告されたことが認められる(甲6、甲7、甲8、甲9の1〜13、26、36〜49、甲10、甲12、甲13)。
他方、「リハビリパンツ」の文字(語)は、別掲2のコないしヒのとおり、失禁用のパンツ型の商品を指称する語として、当該商品を販売する事業者や高齢者介護に関係する施設や介護者等によって使用されている。
加えて、請求人商品についても、その商品の紹介にあたり「リハビリテーションを応援するパンツ型紙おむつ」「排泄リハビリに最適なパンツ」等と商品の特長が説明されている。
以上の事実を総合すると、請求人商品が相当程度販売されていることは認められるものの、本願商標が常に「ライフリー」の文字と共に使用されていること、該「ライフリー」の文字が本願商標を使用する以前から請求人に係る大人用紙おむつ及びその関連商品を表示する商標として使用されていること、及び「リハビリパンツ」の文字(語)が失禁用のパンツ型の商品を指称する語として使用されていることからすれば、共に使用されている「ライフリー」の文字が高い自他商品識別標識として機能し、本願商標は当該商品の品質(特長)を表示した部分として認識されるとみるのが相当である。
そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、いまだ請求人の業務に係る商品であることを認識することができないものといわなければならない。
以上のとおりであるから、本願商標は、例外的に自他商品識別力を獲得したものとはいえず、かつ、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請が乏しいということはできない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するということはできない。
(3)請求人の主張について
請求人は、「失禁用おしめ」等の取引分野では、一つの商標のみが商品に付されるのではなく、いわゆるファミリーネームとペットネームとが一緒に使用されるのが一般的であるから、ペットネームである本願商標が「ライフリー」と併記されているからとして本願商標の登録を拒絶することは、使用により商標に化体した業務上の信用の保護を図る商標法の趣旨に反する旨主張している。
しかしながら、本願商標は、原審における例示や別掲2のとおり、「リハビリパンツ」の文字(語)が、失禁用のパンツ型の商品を指称する語として使用されているという実情からすれば、前記のとおり当該商品の品質(特長)を表示した部分と認識されるとみるのが相当であるから、本願商標のみをその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、いまだ請求人の業務に係る商品であることを認識することができないものといわざるを得ない。
また、請求人は、本願商標は永きにわたりほとんど請求人のみが使用してきたもので、請求人による独占的な使用が容認されている旨述べ、出願人以外の者による「リハビリパンツ」の語の使用例として原審において引用した、ウェブサイト及び新聞記事における使用は、当業者ではない一消費者や個人商店による記述であり、商標と品質表示語との混同ないし取り違えによるものである旨主張している。
しかしながら、別掲2で例示したように、「リハビリパンツ」の文字(語)は失禁用のパンツ型の商品を指称する語として使用されているもので、その中でも例えばヌないしハのように、インターネットによる商品の販売を行う事業者によって、おしめの一種(カテゴリー)を示すものとして使用されている事実もあることから、当該商品の取引の実際において品質表示として認識され、使用されているものといわざるを得ない。
したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
したがって、本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められない。
第4 結語
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同条第2項の要件を具備しないものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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