Trademark Appeal Case
デマンドモニタの識別性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2010−27635(T2010−27635/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「デマンドモニタ」の片仮名を標準文字で表してなり、第9類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品とし、平成21年9月25日に登録出願されたものである。
その後、本願の指定商品は、当審における平成23年1月20日付け手続補正書により、第9類「設置された電力量計の電力量パルス出力信号をカウントすることにより消費電力量の測定・監視・制御を行うとともに装置に内蔵したウェブサーバを利用してネットワークで接続されたコンピュータ端末に消費電力に関する各種データを表示する機能を備えた消費エネルギー管理用装置」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『デマンドモニタ』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『デマンド』の文字部分は、『需要(電力)率、電力の一定時間内の平均負荷の割合』等を、同じく、『モニタ』の文字部分は、『監視装置』等を、それぞれ意味する語として一般に広く知られているから、本願商標は、その構成全体から、『需要電力量を監視するための装置』程の意味合いを容易に認識させるものである。そして、本願の指定商品を取り扱う業界において、一定時間の電力デマンドを監視する装置が多数開発、販売されており、『デマンド』、『モニタ』の各文字が、上記意味合いの語として広く使用されている実情がうかがえる。そうすると、本願商標をその指定商品中、上記意味合いに照応する商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質を表示してなるものと認識するにとどまるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、上記商品以外の商品について使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。また、出願人は、本願商標は関連業界の需要者・取引者の間では、出願人の業務に係る商品の出所表示として認知されるに至っている旨述べ、証拠方法として各資料(6ないし15)を提出しているが、提出に係る各証拠からは、『デマンドモニタ』の文字が、出願人の商標として需要者間に広く知られるに至っているものとは認められないから、出願人の上記主張も採用することができない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審においてした証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権により証拠調べをした結果、別掲1記載の事実を発見したので、平成23年9月28日付けで、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、それを請求人に通知し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要点
1 証拠調べ通知に掲載された「デマンドモニタ」の文字に関する使用の事実のうち、大半は出願人の製品に関するものであり、また、それ以外の事実についても、本願商標が、特定の意味合いで、不特定の需要者・取引者によってありふれて使用され、認識されている事実を証明するものではない。
2 本願商標は、構成全体として出願人によって独自に採択された造語であって、本来的に自他商品識別力を有する商標である。仮に「電力需要量を監視する」を意味する余地があるとしても、本願商標は、その指定商品との関係で、直ちに想到し得るほどの具体性ないし直接性を有するものではなく、せいぜい当該商品が有する様々な品質等を暗示させるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るほか、商品の品質を誤認させるおそれのないものである。
3 仮に、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であるとしても、(1)出願人は、永年にわたり継続して「デマンドモニタ」を出願人の製品固有の名称として使用し、製品を大規模に宣伝、販売してきたこと、(2)「デマンドモニタ」の語に関して証拠調べ通知書において列挙された各事実のうち、大半が出願人の製品に関するものであったこと、(3)これら以外にインターネット検索エンジンにおいて「デマンドモニタ」のキーワードでヒットする例の大半は出願人の製品に関するものであることなどを考慮すると、本願商標は、本願の指定商品との関係で、永年にわたり継続して独占的に使用された結果、出願人の商品に係る業務を示す商標として、関連業界において広く認識されるに至ったというべきであり、本願商標は、商標法第3条第2項の適用がなされるべきである。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性
本願商標は、「デマンドモニタ」の片仮名を標準文字で表してなるところ、その構成中の「デマンド」の文字は、一般的には、「需要。要求。」(「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店発行))の意味合いを有するものとして知られているが、本願の指定商品の分野においては、「一定期間を通した電力あるいは関連した電力需要量の平均値」(別掲1の1(1))を表すものとして広く知られている語である。
また、その構成中の「モニタ」の文字は、「システムや機器を監視し動作状況を記録・報告する機器」(別掲1の1(3))の意味を有するものとして、一般においても、また、本願の指定商品の分野においても、広く知られている語である。
そして、別掲1のとおり、請求人(出願人)以外に係る「デマンドモニタ」の使用例があり、また、別掲2のとおり、本願の指定商品の分野においては、単に使用電力量を計測、監視及び制御する機能を有するだけでなく、ネットワーク経由で電力量データを監視することができ、また、過去のデータと比較分析してエネルギー管理を行う機能を有するデマンド監視装置(デマンドコントロール装置、デマンドコントローラ)が広く一般に取引されているものである。
そうとすると、「デマンド」と「モニタ」の各文字を単に結合させてなる本願商標「デマンドモニタ」をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「一定期間を通した電力需要量の平均値を監視し、記録・報告する機器」程の意味合いを容易に理解し、商品の品質を表したものとして認識するにとどまるといえる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質を誤認させるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標については、平成17年に開発した請求人の製品の特徴を表現するに当たり、請求人が考案した名称として使用しており、「需要電力量の監視」を直接記述する意図で採択されたものではないし、また仮にそのように意味する余地があるとしても、補正後の本願の指定商品との関係では、その旨を直ちに想到し得るほど具体性ないし直接性を有するものではなく、せいぜい商品が有する様々な品質・機能を暗示させるにすぎない旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であるか否かは、本願商標に接する取引者、需要者の一般の認識を基準として判断されるべきものである(最高裁昭和60年(行ツ)第68号 昭和61年1月23日第一小法廷判決)ところ、本願の指定商品の分野における取引の実情に照らせば、「デマンドモニタ」の文字からなる本願商標に接する取引者、需要者が、該文字から、「一定期間を通した電力需要量の平均値を監視し、記録・報告する機器」との意味合いを容易に認識することは上記(1)において認定したとおりである。
そして、別掲1の4(1)、(2)及び第24号証の1の書証(商品カタログに「Cat.No.201104」の記載があることから、2011年4月発行のものと推認される。別掲1の4(4)記載のカタログと同一。)によれば、デマンド監視装置の分野において、少なくとも、昭和57年(1982年)と昭和61年(1986年)に、また、平成23年(2011年)4月頃に、「デマンドモニタ」の文字が、他人によって、上記意味合いを認識させるものとして、請求人が使用する前より使用され現在においても使用されている事実が認められることからすると、当該文字は、請求人が当該商品の分野において、商品の品質等を表すものとして普通に採択し、使用し得るものであって、取引上必要な表示としてなんぴともその使用を欲するものと判断するのが相当であるから、請求人による独占使用を認めることは適切ではない。
イ さらに、請求人は、原審及び証拠調べ通知に記載した事実における「デマンド監視装置」は、需要電力量の監視・制御による電気料金管理の側面のみに使用されており、エネルギー管理の側面から各種データの表示を行う請求人の製品とは区別されるものである旨主張する。
しかしながら、仮に請求人の製品が、その開発当時には、従来のデマンド監視装置の分野において他に類を見なかったものであったとしても、判断時である査定時又は審決時において、当該分野では、請求人の製品の特徴と類似する機能を有するデマンド監視装置が広く一般に取引されていることは上記(1)で述べたとおりであって、また、請求人が提出した証拠方法によっても、請求人の「デマンドモニタ」に係る製品は、「デマンド監視装置」又は「デマンドコントローラ」と記載されて広告宣伝等が行われている事実が認められることからすれば、補正後の本願の指定商品は、デマンド監視装置と区別される別異の商品というより、これと同じ範ちゅうに入る商品として理解、把握されるものとみるのが相当である。
ウ したがって、上記請求人の主張は、理由がなく採用することができない。
2 商標法第3条第2項について
請求人は、本願商標は、その指定商品との関係において、永年にわたり継続して独占的に使用された結果、請求人の商品に係る業務を表す商標として、関連業界において広く認識されるに至ったというべきであって、商標法第3条第2項を適用するべきである旨主張する。
(1)商標法第3条第2項の趣旨
商標法第3条第2項の趣旨は,特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には,当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に,当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから,当該商標の登録を認めようというものであり,その要件を具備するためには、ア 使用により自他商品識別力を有すること、イ 出願商標と使用商標の同一性が認められること、が必要であると解される(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10054号 平成18年6月12日判決言渡)。
そして、商標が使用により識別力を有するに至ったかどうかは、例えば、実際に使用している商標並びに商品、使用開始時期、使用期間、生産、証明若しくは譲渡の数量又は営業の規模(店舗数、営業地域売上高等)、広告宣伝の方法、回数及び内容等の事実を総合勘案して判断するものである。
(2)本願商標の商標法第3条第2項該当性について
請求人は、証拠方法として第1号証ないし第29号証(枝番を含む。ただし、枝番のすべてを引用する場合は、その枝番の記載を以下省略する。)を提出しているところ、上記(1)の観点から、これらの証拠に基づいて、本願商標が商標法第3条第2項該当性について検討する。
ア 使用に係る商標及び商品等について
提出された全証拠によれば、請求人は、平成17年(2005年)6月から商品「設置された電力量計の電力量パルス出力信号をカウントすることにより消費電力量の測定・監視・制御を行うとともに装置に内蔵したウェブサーバを利用してネットワークで接続されたコンピュータ端末に消費電力に関する各種データを表示する機能を備えた消費エネルギー管理用装置」について、本願商標と同一視し得る「デマンドモニタ」の文字を使用しているものと認められる。
イ 累積出荷台数について
出荷台数推移表を表した第6号証、第16号証及び第21号証によれば、平成17年(2005年)6月から同23年(2011年)6月までの約6年間の累積出荷台数は1911台であり、また、第7号証(同21年(2009年)9月30日現在の納入台数地域分布)によれば、四国及び沖縄地区を除く全国に納入されていることが認められる。
しかしながら、上記書証は内部資料といい得るものであり、その証明力はさほど高くはないところ、内容を客観的に裏付けることができる証拠等の提出はなく、また、請求人が本願商標を付して使用する商品(以下「請求人商品」という。)が、デマンド監視装置の分野において、どの程度の市場占有率を有するものかについて判断することができる証拠の提出もない。
なお、当該分野における他社の販売状況をみるに、第10号証の10(2006年(平成18年)1月23日付け電気新聞の記事)によれば、デマンドコントローラーを製造する他社「エネゲート」の紹介における「年間1千台以上の販売実績を誇る主力製品に育っている。販売実績の累計は、約3500台。関西地域は約2500台、残り1千台は中国、四国、九州、沖縄など西日本地域で分ける。」の記載があり、また、別掲3記載の「デマンド監視装置の分野における他社の販売状況」によれば、例えば、2007年(平成19年)6月7日付け鉄鋼新聞に「ジーエスユアサパワーサプライ(省略)は(省略)デマンド遠隔監視装置『RMD501』シリーズを(省略)発売した。初年度の販売目標は2千台。」の記載及び2009年(平成21年)5月28日付け電気新聞4頁に「HIOKI(日置電機)は、企業の省エネルギーや省コストの取り組みを支援する新型のデマンド監視システム『でんき当番』を(省略)発売(省略)。(省略)年間1千台の販売を目指す。」の記載がある。
上記他社の販売状況を踏まえると、当該分野における請求人商品の市場占有率は、絶大に大きな割合を占めているとまではいえないものと推認される。
ウ 広告宣伝等について
新聞、雑誌及び書籍等への掲載記事・広告に係る第10号証によれば、請求人商品についての広告は、全国に頒布される業界向けの新聞、雑誌及び書籍等(OHM、電気新聞、空調タイムス、省エネルギー、週刊ビル経営、IPG及びシークエンス等)と、主に関西地方及び東京の財団法人や組合等の会誌及び広報誌等への掲載が認められる。
しかしながら、当該新聞、雑誌等が全国に頒布されるものであるものの、その発行部数は全国紙と比較しても少ないものであって、また、広告の時期は、平成17年(2005年)から同21年(2009年)の期間のみであり、さらに、同18年(2006年)以降の広告回数は減少している。
また、上記新聞、雑誌等以外のものは、関西地方及び東京等の一地域に止まるものでしかなく、また、広告の時期は、平成21年(2009年)を除く同18年(2006年)から同22年(2010年)の期間のみである。 そうとすると、新聞、雑誌等における広告宣伝は、全国に頒布されたものがあるとは認められるものの、その広告宣伝は、大規模かつ継続的なものとはいい難い。
次に、展示会についてみると、第11号証(展示会出展資料)のa、cないしe、i、j及びqによれば、本願の指定商品は、主に東京、大阪及び浜松等において開催された展示会に出展されていると認められるが、当該展示会の規模(総入場者数、出展社数等)について記載がない書証がほとんであって、その規模について客観的に判断することができる証拠の提出はなく、また、その期間は2005年から2010年の期間のみであるから、当該展示会によって、大規模かつ継続的に広告宣伝されたとは認め難い。
さらに、第12号証(広告費)によれば、請求人商品の平成17年(2005年)から同22年(2010年)までの広告費が1060万円であるものと認められるが、上記書証は内部資料とみてとれるものであり、その証明力は高いといえず、また、当該広告費が、デマンド監視装置の分野においてどの程度の広告規模であるのかについて客観的に判断することができる証拠の提出もない。
以上からすると、本願商標に係る広告宣伝は、大規模かつ継続的なものとはいい難く、これをもって、本願商標が、その指定商品に使用された結果、請求人の業務に係るものとして、需要者間に広く認識されるに至っていると認めることができない。
エ 第3者による使用
上記1(1)及び同(2)アで述べたとおり、「デマンドモニタ」の文字が、デマンド監視装置の分野において、「需要電力量を監視する装置」を表すものとして、取引上、請求人以外の者によって、請求人が使用する前より使用され現在においても使用されている事実が認められる。
オ 小括
以上のとおり、本願商標「デマンドモニタ」の文字は、本願の指定商品について、平成17年6月頃から使用しており、同17年6月から同23年6月の累積出荷台数が1911台であり、その販売地域が四国及び沖縄地区を除く全国であることが認められる。
しかしながら、デマンド監視装置の分野における請求人商品の市場占有率について客観的に判断することができる証拠方法の提出がないばかりか、当該分野の他社の販売状況に照らすと、請求人商品の市場占有率は、絶大に大きな割合を占めるものとまではいえないと推認される。
また、広告宣伝については、全国に頒布されている業界向けの新聞、雑誌等及び展示会において広告宣伝が行われているものの、大規模かつ継続的に行われたとはいい難い。
さらに、他者によって「デマンドモニタ」の文字が商品の品質等を表示するものとして取引上使用されている事実が認められる。
してみれば、請求人の提出した証拠を総合して勘案しても、本願商標が、その指定商品に使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
したがって、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるとする請求人の主張は、これを採用することができない。
3 まとめ
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第16号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであり、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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