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Trademark Appeal Case

使用方法図形の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2011−14677(T2011−14677/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年9月27日に登録出願され、その後、指定商品については、本件審判請求と同日付の手続補正書により第5類「スプレー式の薬剤」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、スプレーにより人物の肩に液体を霧状にして吹きつけている様を表示したものとみられる図形よりなるから、これをその指定商品中、例えば『薬剤』に使用しても、該商品が『スプレー式の薬剤』であると理解し、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調をした結果、別掲2に示す事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、平成24年4月24日付けで、その結果を通知した。

4 証拠調べに対する意見の要旨

当審において行った前記3の証拠調べ通知に対し、請求人は、平成24年6月6日付けで意見書を提出したが、証拠調べの結果そのものについては、特段の意見はない旨述べた。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨

商標の本質は、自己の業務に係る商品を他人の業務に係る商品と識別するための標識として機能することにある。そして、この自他商品の識別標識としての本質的な機能から、商品の出所を表示する、商品の品質を保証する、及び商品の広告宣伝をする機能が生じるものである。商標法第3条第1項第6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品の識別標識としての機能を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。この点については、請求人が、その主張の前提として引用(甲1)する知的財産高等裁判所の判決(平成22年1月27日判決言渡、平成21年(行ケ)第10270号)と同旨である。

(2)商標法第3条第1項第6号の該当性

本願商標は、別掲1のとおり、右手にスプレーを持ち、首筋から背中にかけてスプレーを噴霧している人物の様子を表した図形よりなるものである。 しかして、前記3の証拠調べ通知書に記載のとおり、本願の指定商品「スプレー式の薬剤」の分野においては、その商品の使用方法を説明するために商品の包装用箱等に図形が多用されている事実がある。また、薬剤のほかスプレー式の化粧品のような本願の指定商品と需要者の共通性の高い商品においても、その使用方法ないし商品のイメージとしてスプレーを噴霧している写真、図などが多用されている実情がある。この点については、請求人も争わない(平成24年6月6日付け意見書)。

そうすると、本願商標の構成、その指定商品、及び指定商品に関する商品取引の実情からみて、本願商標は、これをその指定商品「スプレー式の薬剤」に使用するときは、これに接する指定商品の需要者が、その商品がスプレー式であること、背中に使用しやすいものであること、スプレーの噴霧部を下にして使用できるものであることを表したものと理解するにとどまるものであり、自他商品の識別標識として認識し得ないものであって、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるというのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものというべきである。

(3)審判請求書における請求人の主張について

請求人は、裁判例(甲1)、最高裁判例(甲2)、工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(甲3)を引用し、商標法第3条1項6号により、「一般的に使用されるがために自他識別力を欠く商標」と「独占適応性を欠く商標」の2つのタイプの商標が拒絶されることを前提として、要旨、以下の主張をしている。

ア 審判請求書における請求人の主張

本願商標と同様の図形が、本願の指定商品との関係で一般的に使用されている事実はないから、自他識別力を欠くと判断することはできない。また、かかる状況では、本願商標が将来、自他識別力を失うことを合理的に推測することも困難である。したがって、本願商標は、「一般的に使用される標章」に該当しない。

審決例、商標登録例(甲5、甲6、甲8)からすれば、イラストからなる商標については、対象の描写に特徴があるか否かという点が、独占適応性の存否を見極める指標である。そして、本願商標は、対象の描写において特徴的である。また、請求人は、本願商標に係るイラストを商品パッケージに現に使用しているが、単なる説明用のイラストに留まらない美観を呈している(甲9)。

本願商標の意味するところと同一の内容が表示されている商標が登録されている(甲10)。これは、本願商標について独占を認めても、競業者は取引上困らないことの証左である。

イ 主張に対する判断

前記(2)に説示したとおり、本願商標を構成する図形が、本願の指定商品に係る需要者にとって、自他商品を識別する標識として認識されない以上、本願商標と同様の図形について、現実の使用がないとの事情により、本件の判断が左右されるものではない。また、商標法第3条第1項第6号は、その商標が一般的に使用されていることを、その要件事実とするものではない。

また、図形から構成される商標について、その表現方法に特徴があるか否かが、商標法第3条第1項第6号に係る判断の要素になるものではないことは、同号の要件事実から、また、前記(1)に説示した商標の本質から、明らかである。したがって、表現方法に特徴があるか否かを前提として、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当しないとの請求人の主張は、その前提において誤りである。

そして、本願商標が、商標法第3条第1項第6号に商標が該当するか否かは、願書に記載された商標に基づいて判断されるものである。加えて、商標が、美観を有するか否かは、商標の本質である自他商品識別力と無関係であり、商標法第3条第1項第6号の要件事実ではない。

さらに、ほかの商標の登録例の存在と、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かとは関係がない。

しかるところ、請求人は、本願商標に係る右手にスプレーを持ち、首筋から背中にかけてスプレーを噴霧している人物の様子を表した図形について、かかる人物の様子を主題として、その主題を表現するのに様々な方法があることを論じているが、そのことと、自他商品の識別標識として、需要者が認識するか否かとは、全く別の次元のことである。

したがって、請求人の主張は理由がなく採用することができない。

(4)平成24年6月6日付け意見書における主張について

請求人は、証拠調べ通知に対する意見書において、要旨、以下の主張をしている。

ア 意見書における請求人の主張

商品の使用方法等を写真や図で示することが一般的に行われている事実があることは、イラストが、文章による説明と異なり、直感的な理解を促すものであることから、直感的な理解を促す必要のある分野一般において多用されている(甲11)。このこと自体全く異論のあり得ない周知の事実であって、証拠調べ結果の事実の存否について特段の異議はない。

しかしながら、 証拠調べの結果は、本願商標の自他商品識別力を否定するための、直接的な根拠にならない。需要者において商品の使用方法等を表示していると認識されるイラスト類であっても、例えば「人物の描写に特徴がある」或いは「一種漫画的な特徴」がある等として商標登録が認められている例がある(甲5、甲6)から、そのようなイラストのすべてが自他識別力を欠くわけではない。

本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性の判断要素として、本願商標の登録の結果、本願の指定商品を扱う競業他社において、「女性が背中にスプレーを吹きかけるイラスト」が使用できず、商品の使用方法の説明等に窮する結果とはならない。すなわち、「女性が背中にスプレーを吹きかける」内容を絵柄で表すとすれば、多数のバリエーションがある(別掲3、4)。問題は、イラストに、どれだけの変化に富んだ表現が存在し、競業他者に他のイラストの選択の余地が残されているかということである。本願の指定商品と類似の商品について「女性が背中にスプレーを吹きかける」イラストが使用されている例がある(別掲5)が、いずれも、本願商標とは特徴が異なる。本願商標が商品説明に必要的なものではないことは、これらによっても明らかである。必要的でなければ、本願商標を請求人が独占したとしても、何ら不都合は生じない。よって、本願商標が独占適応性に欠くととはいえない。

なお、裁判例(知財高判平成19年12月26日、甲12)によれば、裁判所は、審判体に対して、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当すると判断するに至った論理の過程を明確にすることを求めているから、請求人主張並びに同様の内容を示す種々の選択肢のある表現の存在を踏まえてもなお、本願商標が独占適応性を欠き商標法第3条第1項第6号に該当すると判断するならば、その結論に至る論理の道筋を、審判体の負担する責任として、明確にされたい。

イ 主張に対する判断

商標法第3条第1項第6号は、判断の対象となる商標が自他商品の識別性を有するか否かを要件事実とするものであって、商標を構成する図形の主題について、多数の表現方法があるか否かを要件とするものではない。

また、審決においては、その結論及びその理由を記載することは、商標法の規定するところ(第56条で準用する特許法第157条第2項)であって、ことさら、請求人が裁判例を引用して主張をする意図は、不明といわざるを得ないが、本件については、前記(2)のとおり、判断をするものである。

したがって、請求人の主張は理由がなく採用することができない。

(5)結語

以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すべきでない。

よって、結論のとおり審決する。

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