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Trademark Appeal Case

複合商標の称呼の要部

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2012−890044(T2012−890044/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5350989号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成22年4月14日に登録出願,第18類「かばん類,財布,その他の袋物,皮革製包装用容器」及び第25類「レザージャケット,その他の被服,バンド,ベルト」を指定商品として,平成22年9月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第4762269号商標(以下「引用商標」という。)は,「天神」の漢字を縦書きしてなり,平成15年7月9日に登録出願,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ」を指定商品として,平成16年4月9日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号該当について

本件商標は,丸の中に漢字で「天神」と現し,その右側に欧文字をややデフォルメして「TENJIN WORKS」と横書きした構成からなるものであるから,その構成から「テンジン」「マルテンジン」「テンジンワークス」「ワークス」等の自然的称呼を生じることは明らかである。

そして,取引の迅速を尊ぶ取引現場では,冗長な称呼より,短くて明確な称呼が使用されることが経験則上明らかであるから,本件商標は,短い「テンジン」や「ワークス」等の称呼が好まれ使用されるのが自然であるが,本件商標の構成から,「ワークス」の称呼が単独で生じるとするのは困難である。なぜなら,「WORKS」の語は,「TENJIN」の語と結合しており,「テンジンワークス」と称呼するのが自然だからである。

これ故,本件商標から生じる自然称呼は,「テンジン」である。

現実に,本件商標権者は,自己の商品「財布,ライター入れ,モバイル入れ」に,丸の中に「天神」の文字,あるいは「天神」の文字のみを表示して使用している(甲3の1〜5)。この使用事例からも,本件商標の自然称呼は,「テンジン」であることは明らかある。

一方,引用商標は,漢字二字の「天神」からなるものであるから,「テンジン」の称呼を生じるものである。

してみれば,本件商標と引用商標は,「テンジン」の称呼において,同一又は類似するものであり,称呼上類似する商標であることは明白である。

また,本件商標中の漢字「天神」からは,「天の神,仏法を守護する神,菅原道真の神号,公家風の人」(広辞苑)等の観念の生じることは明らかであり,引用商標中の漢字「天神」からも,本件商標と同じ観念の生じることは明らかであり,異なった観念の生じうる余地はない。

以上のとおり,本件商標と引用商標とは,その呼称及び観念において同一又は類似する商標である。

また,本件商標の指定商品中の第18類「かばん類,財布,その他の袋物,皮革製包装用容器」は,引用商標の指定商品である第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ」と同一又は類似するものである。

したがって,本件商標は,引用商標とその呼称及び観念において同一又は類似する商標であり,その指定商品についても同一又は類似するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 むすび

以上のとおり,本件商標は,その指定商品中の第18類「かばん類,財布,その他の袋物,皮革製包装用容器」について,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項第1号により,その登録を無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁

請求人は,結論同旨の審決を求めると申し立て,その理由を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証及び乙第2号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号該当について

(1)請求人は,本件商標の構成中の「TENJIN WORKS」について,これから生ずる「テンジンワークス」が冗長であり,「WORKS」が識別力を有さないことを理由に「テンジン」の称呼が生じ得るとしている。

しかし,「テンジンワークス」の称呼は滑らかに一気に称呼し得るもので,取引の迅速さの妨げになるほどの長さではなく,その語調・語感もまとまりよく,むしろ迅速さの波に合った小気味良さを感じさせるものである。

また,「TENJIN WORKS」は,すべて欧文字で「T」「J」「W」をややデザイン化した文字で大きくし,その他の文字もこれと同一のデザイン化が施されており,全体として統一した視覚的なまとまりを需要者に訴える外観構成である。

さらに,「TENJIN」が強い識別力を発揮するとの事情はなく,「WORKS」も本件商標の指定商品との関係でその商品の内容・性質等を具体的,直接的に示すものではなく,識別力を有する語であり,第18類で「WORKS」の登録があるようにその識別力が認められている。

このように,「TENJIN WORKS」の部分について,判決(最高裁昭和37年(オ)第953号及び同平成3年(行ツ)第103号)でいうところの「それ以外の部分から出所識別標識として称呼,観念が生じないと認められる場合」やその他,分離観察をすべきとする合理的理由はない。

そうすると,「TENJIN WORKS」は,一体で出所識別標識として機能する部分であり,「TENJIN」の部分が分離抽出され,そこから称呼が生じるとは到底考えられない。

また,本件商標と同様の構成をとる後半部に「WORKS」の語を結合させた商標とその前半部と同一の語からなる商標が併存して登録されている(乙1の1〜14)。

(2)本件商標の構成中の円形図形(以下「本件図形」という。)は,液体状の「天神」の文字を渦のように回転させて崩したような態様で,一見ではモチーフとなった文字が何であったか認識するのが困難なほど図案化されている。このような程度にまで図案化された場合,たとえ,ある文字がモチーフとなったと看取されたとしても,一種のモノグラムとして特定の称呼,観念を生じない図形であると判断するのが相当である。

なぜなら,使用者はモチーフとなったものが何であれ,斬新なデザインとして創作し,図形商標として使用するものであり,需要者もこのような商標に接した場合,一種の図形商標として認識・記憶するというのが取引の常識であり実際だからである。

過去の審決においても,出願(登録)商標から特定の称呼・観念は生じないから引用商標と類似しないとする判断がなされている(乙2の1〜5)。

以上のように,本件図形は一種の図形商標として捉えるのが自然であり,該部からは何らの称呼・観念も生じないと考えるのが相当である。

(3)以上よりすると,本件商標は,その構成中の「TENJIN WORKS」から「テンジンワークス」のみの称呼が生じ,特定の観念は生じないのに対し,引用商標は,「テンジン」の称呼及び「天神」の観念が生じる。

そうすると,「テンジンワークス」と「テンジン」の称呼は,相紛れるおそれのない非類似のものであり,また,本件商標からは特定の観念を生じないので両者の観念は比較のしようのないものであり,また,両者は外観上も共通点のない商標であるから,本件商標は引用商標と非類似の商標である。

2 むすび

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものではないから、本件審判の請求は成り立たない。

第5 当審の判断

1 本件商標と引用商標の類否について

本件商標は,別掲のとおり,細い線の円輪郭内に「天」と「神」と思しきものを配置した円形状の部分(以下「円形部分」という。)と「TENJIN WORKS」と思しき文字部分からなるものである。

そして,円形部分の内側の「天」と「神」は,隷書体を思わせるような書体の文字を回転させて崩したような態様からなり,右側に大きく配置された「神」は,その文字と認識し得るものの,左に小さく配置された「天」は,右の払いが「神」の辺「ネ」の左下部分に入り込み,にわかには「天」の文字と認識し得ないほどにデフォルメされていることから,一見ではそのモチーフとなった文字が何であったかを認識することが困難である。

そうすると,当該円形部分は,その内側に描かれたものが「天」と「神」をモチーフにしたものであるとしても,極端にデフォルメされていることから,これを「天神」と読むのは困難であって,直ちに特定の称呼及び観念を生じないものというのが相当である。

また,「TENJIN WORKS」の文字部分は,構成各文字が同様の筆文字風の書体にデザイン化され,全体としてまとまりよく一体的に表されているものであって,これから生ずるものと認められる「テンジンワークス」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。

そして,その構成中の「TENJIN」の文字部分について,これが「WORKS」に比して,特に強い識別力を発揮するとみる特段の事情もみあたらない。

そうすると,当該文字部分は,一体のものとのみ認識・把握されると見るのが自然であり,これからは「テンジンワークス」の称呼を生じ,また,特定の語義を有する既成の語ではないから,観念は生じないものである。

したがって,本件商標は,「テンジンワークス」の称呼のみを生ずるものであって,特定の観念は生じないものである。

一方,引用商標は,「天神」の漢字を縦書きしてなるところ,これは,「天の神。あまつかみ。」などを意味する語(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)であって,一般によく知られているものである。

そうすると,引用商標は,その構成文字に相応する「テンジン」の称呼を生じ,「天神」の観念を生じるものである。

そこで,本件商標と引用商標を比較すると,両者は,外観において明らかな差異を有し,称呼においても,本件商標から生ずる「テンジンワークス」の称呼と引用商標から生ずる「テンジン」の称呼とは,「ワークス」の音の有無により,その音構成,構成音数において著しい差異が認められるものであるから,相紛れるおそれはないものである。

また,観念については,本件商標が特定の観念を生じないものであるから,両者は,観念上比較することができず、類似するものとはいえない。

してみれば,本件商標は,引用商標と外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れることのない十分に区別し得る非類似の商標といわなければならない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

2 請求人の主張について

請求人は,「本件商標の指定商品は財布などいう直接手にとって見る商品に付されて使用されるものであるから,取引者・需要者は,十分に本件商標を見てその構成を認識し,前記図形部分にも当然に目を向ける。そして,前記図形部分は,日本人が読めないほどに漢字が極端にデフォルメされているものではなく,漢字二文字として日本人であれば普通に読める程度のものであるから,『天神』であることが自然に認識されるものであり,これから『テンジン』の称呼及び『天神』の観念が生ずる。」旨主張する。

しかしながら,前記のとおり,前記円形部分は,その内側に描かれたものが「天」と「神」をモチーフにしたものであるとしても,極端にデフォルメされていることから,これを「天神」と読むのは困難であって,直ちに特定の称呼及び観念を生じないものというのが相当である。

そして,本件商標を注視した場合に,「TENJIN WORKS」の文字との関係で図形部分を「天神」と認識することがあるとしても,それは「テンジンワークス」の称呼を生ずる「TENJIN WORKS」の「TENJIN」の部分に相応して認識されるのであって,「天神」として独立して認識されるものとは言い難い。

したがって,前記図形部分から,「テンジン」の称呼及び「天神」の観念を生ずるものとし,その上で,本件商標と引用商標とが称呼及び観念において同一又は類似するとする申立人の主張は,採用できない。

3 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項により,無効にすることはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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