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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と著名商標

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成9年審判第14830号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第3312742号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成4年9月28日に登録出願され、第42類「宿泊施設の提供、宴会のための施設の提供、会議のための施設の提供」を指定役務として、同9年5月23日に登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第31号証を提出した。

(1)請求人会社は、我が国有数の製薬を主業務とする一流大企業であることは、顕著なる事実である。

そして、請求人は、別掲(2)、(3)、(4)に表示した商標(以下「引用各商標」という。)の商標権者であるところ、これらの引用各商標は、すべての商品の区分において、防護標章の登録及びその存続期間の更新登録もなされていること明らかである。尚、請求人の提出に係る甲第12号証乃至甲第15号証の各記載に徴するも、請求人の所有に係る引用各商標が、請求人の業務に係る商品「薬剤」等を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、古くより広く認識されているものであること明らかである。

(2)本件商標は、「Sankyo」のローマ字、「さんぽーと」の平仮名文字及び「三協精機厚生年金基金会館」の漢字よりなるところ、それぞれの構成文字の種類及び大きさ等を異にしているばかりでなく、「三協精機厚生年金基金会館」の文字は、本件商標の指定役務の提供場所及び役務内容等を端的に表示したにすぎない部分であるから、本件商標の自他役務を識別するための最も重要な部分は、本件商標構成中の最上段に顕著に書された「Sankyo」の文字部分にあるといわざるを得ず、本件商標は、簡易、迅速を旨とする取引の実際にあっては、本件商標構成中の「Sankyo」の文字部分のみを捉えて、これより単に「サンキョウ」とのみ称呼される場合の決して少なくないことは、取引の経験則に照らして、首肯し得るところである。

一方、請求人の所有に係る引用各商標は、いずれも「サンキョウ」(三共)の称呼及び観念を生ずるものであること明らかであるばかりでなく、請求人の業務に係る商品を表示するためのものとして、極めて周知、著名なものであるから、本件商標をその指定役務について使用をするときは、その役務が、請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、誤認、混同を生じさせるおそれの充分にある商標であるといわなければならない。

(3)更に、請求人の名称は、「三共株式会社」であるところ、「株式会社」は法人の種類を表示する部分であって、自他名称を識別するための主たる重要な部分は、「三共」の文字部分にあり、これが、請求人の名称を表示するための実質的な部分であって、請求人は、「三共」(サンキョウ)とのみ略称されて、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識され、著名なものであることは、顕著なる事実である。

一方、本件商標は、請求人の名称の略称として著名な「サンキョウ」と同一称呼を生ずる文字を含んでいるにも拘わらず、本件商標は、その登録について、請求人の承諾を得ている事実はない。

(4)してみれば、本件商標は、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識されている、請求人の引用各商標と称呼において、彼此相紛らわしい類似の商標であるから、これをその指定役務について使用をするときは、その役務と請求人の業務に係る役務との間において、役務の誤認、混同を生ずるおそれの充分にある商標であり、かつ、請求人の名称の著名な略称と同一称呼を生ずる文字を含んでいる商標であるにも拘わらず、その登録について請求人の承諾を得ていないものであるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものである。

(5)請求人の弁駁

被請求人は、「三共」の称呼自体は「極めてありふれた称呼の名称」として存在している旨主張しているが、たとえ、「サンキョウ」の称呼を有する企業が存在しているとしても、「サンキョウ」といえば、先ず請求人を想起するといっても過言ではなく、「極めてありふれた称呼の名称」であるというのは、被請求人の恣意による我田引水論である。

そして、被請求人の上記主張の根拠としている乙第1号証(帝国データバンク企業情報リスト)をみるに、これは、単に、商号、住所、業種がリストアップされているのみで、それらの企業規模程度も一切記載がなく、我が国においては、圧倒的に中小企業の数が多いところから、これらの単に羅列されたリストのみでは、これらの企業が、多くは、ごく狭い特定の一地域において、こぢんまりと営業しているものや、家族だけで切盛りしている実質的な家内工業である可能性も決して否定できず、これをもって、出所混同について論議する前提とは、なり得ないものである。

また、本件商標構成中の「三協精機厚生年金基金会館」が余りにも冗長なため、これを「Sankyo」と略して、取引に資されることを、被請求人が意図しているか、又は、自ら認めていることの証左に外ならず、本件商標における該「Sankyo」の文字部分も、自他役務を区別するための識別標識の重要な部分、所謂、商標の一要部である。

更に、請求人は、現代企業の多角経営化の例に漏れず、製薬のみではなく、化学品、化成品、農薬、動物薬、医療補助品を初めとして、化粧品、食品等、多種多様な製品の製造・販売、役務の提供を行っており、単に製薬のみならず、総合的分野における著名性が認められるに至っているものである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。

(1)我が国において「サンキョウ」の称呼を有する企業は、「三京」、「山京」、「三協」、「三共」、「サンキョウ」、「産京」、「山協」、「三恭」、「三強」、「産協」、「三杏」、「賛協」、「三慶」、「三教」、「サン共」、「さんきょう」、「産教」、「三兄」を含め、帝国データバンクの企業情報によって調べてみても、300社にも及ぶことが確認できる。

つまり、単に「サンキョウ」の称呼により各社が識別されているものではなく、その称呼自体は「極めてありふれた称呼の名称」として存在しているところである。したがって、請求人の防護標章登録を初め、周知、著名と主張する商標は、引用商標の極めて狭い「外観」に存すると考える以外なく、本件商標の「Sankyo」部分は、この単に「ありふれた名称」の称呼をローマ字で表音記載したにすぎず、「さんぽーと」及び「三協精機厚生年金基金会館」の部分が識別標識の要部とみられるものである。

(2)請求人の創業及びその規模等は、製薬部門として世界的に著名性を認めざるを得ないとしても、「製薬」という限定のもと、または、その「書体の特定」のもとに存するもので、「サンキョウ」の称呼自体まで、「製薬」及び「書体」を離れ主張することは極めて横暴である。

(3)したがって、本件商標は、ありふれた「サンキョウ」の名称が含まれているとしても、請求人の略称「三共」等の各態様の文字が直接含まれているものではなく、又、請求人が引用する周知、著名の根拠とする防護標章(甲第8号証乃至11号証)の態様とも異なるもので、「サンキョウ」の称呼を有するこれ等の300社がすべて請求人と混同を生じているとも考えられない。

4 当審の判断

請求人は、我が国において製薬会社として著名であること、また、引用各商標は、請求人の業務に係る商品「薬剤」等を表示するものとして、取引者・需要者の間において広く認識されていることは認め得るものである。

他方、本件商標は、「Sankyo」、「さんぽーと」及び「三協精機厚生年金基金会館」の文字を三段に横書きしてなるところ、被請求人の提出した乙第1号証によれば、「サンキョウ」の称呼を生ずる「三協」、「三共」、「山京」、「産協」等の漢字を商号の一部に採択使用する企業が各種業種に多数存在していることが認められるものであって、本件商標の構成文字中「Sankyo」の文字部分は、これら実情よりして、被請求人の名称を表示したとみられる「三協精機厚生年金基金」の「三協」の文字部分をローマ字で表記したものと容易に認識、理解されるにすぎないものというのが相当である。

しかして、請求人の名称「三共株式会社」が製薬業界において「三共」と略称され、著名であったとしても、請求人と被請求人の業種が著しく異なるものであることを考慮すれば、本件商標の係る構成において、「Sankyo」の文字部分よりは、直ちに請求人の略称「三共」の文字を想起させるものとはいえないから、本件商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標と認識されることはないものと判断するのが相当である。

また、たとえ引用各商標が本件商標の登録出願時には請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されていたとしても、前記した実情からすると、本件商標をその指定役務について使用しても、それに接する取引者・需要者をして直ちに引用各商標を想起し、請求人の業務に係るものであるかの如く混同を生じさせるおそれのないものというのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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