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Trademark Appeal Case

悪意の商標登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2012−890005(T2012−890005/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5445231号商標(以下「本件商標」という。)は、「ろく福」の文字を標準文字で表してなり、平成23年6月28日に登録出願、第44類「あん摩,マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,美容,理容,医療情報の提供」を指定役務として、平成23年9月26日登録査定、同年10月21日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

1 請求の趣旨

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番を含む。)を提出した。

2 請求の理由

本件商標は,商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

(1)商標法第4条第1項第7号について

ア 請求人は現在、吹田もみほぐしセンターろく福、ほか11店舗の各チェーン店において「もみほぐしセンター ろく福」の店舗名を用いて営業しているものであり、各店舗の法人開設届のコピーを添付する(甲第1号証の1ないし12)。

上記各店で、開店にあたり新聞折り込み広告した(甲第号2証の1ないし8)。また、各店舗の写真も提出する(甲第3号証の1ないし12)。

イ 請求人は、店舗の来客に対して「もみほぐし」すなわち「あん摩、マッサージ及び指圧」の有料サービスを提供することを業務としている。

ウ 請求人の店舗は、1年もたたないうちに12店舗に拡大し、本件商標の出願日時点では、請求人は吹田と布施の2店舗を所有するだけであったが、JR吹田駅近辺では非常に有名になっており、被請求人が請求人の出願に気付く半年前から十分な実績があった。

エ 被請求人が商標登録の出願をしたときには、まだ請求人は出願をしていなかっただけである。請求人が出願を失念していたのをよいことに、被請求人は請求人の店舗名と同一商標を請求人の承諾なく行った。

請求人は、出願後3ヶ月目に情報提供したが、間に合わなかった。

オ 請求人が展開している「ろく福」は請求人固有の名称であり、請求人が開店するまでに被請求人はもちろんその他にも同名称を使用した同業店舗は全く存在しなかった。このことは請求人が出店する際に調査済である。また、請求人が「ろく福」という特異な屋号や独特の表記法(ひらがなと漢字の混交)を採用していることから見ても偶然の一致とは考えられない。

本件商標は請求人の業務を妨害するため、又は請求人の業務と混同させることにより不正な利益を上げるために行われたものと推定して間違いないものと思われる。このような行為は公正な取引秩序を乱すおそれがあることは明らかである。

カ 被請求人の妨害を受けているのは請求人だけではない。同業の数社も請求人と同じような立場にあるようであり、他社の「楽や」、「きらく」、そして「MOANA」などについても同じ商標登録出願しているものであり、それら全てがもともと被請求人固有の名称だとはとても考えられない。

キ 平成23年9月13日付で請求人の顧問弁護士より被請求人に対して通告書を送付し(甲第8号証の1及び2)、商標登録の出願の取り下げと「ろく福」の名称を使用した営業を行わないことを要求したが、現在のところ被請求人から全く回答はなされていない。

ク 被請求人は、商標登録を本来の目的である業務上の信用や需要者の利益の保護のためではなく、同業者の信用にただ乗りして利益を得ることに使用している。極めて悪質といわざるを得ない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして無効とされるべきである。

(2)商標法第4条第1項第10号について

上記のとおり、本件商標の登録出願の日(平成23年6月28日)時点では、請求人は吹田と布施の2店舗を所有するだけであったが、第1号店を開店して以来一気に有名になった。

したがって、本件商標の登録出願の日には、本件商標は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標となっていたことを信ずる。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものとして無効とされるべきである。

(3)商標法第4条第1項第15号について

前記のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標である。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとして無効とされるべきである。

(4)商標法第4条第1項第19号について

前記のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一の商標であって、請求人の業務を妨害すること、又は請求人の業務と混同させることにより不正な利益をあげることによる不正の目的をもって使用するものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとして無効とされるべきである。

第3 被請求人の主張

被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。

1 商標法第4条第1項第7号について

(1)被請求人は、請求人の店舗名をひょう窃して出願したものでない。

被請求人が「ろく福」の名称を使用しようと検討を開始したのは、請求人の最初の店舗である「吹田もみほぐしセンター ろく福」の開店日(2011年2月24日)から少なくとも6ヶ月程度前である。そして、被請求人は、「ろく福」の名称を用いて現在店舗を開設している。

したがって、被請求人は、「ろく福」の名称を店舗名に使用することを目的として、商標登録出願をしたものである。

(2)「ろく福」は被請求人が独自に考えた名称である。

上述したとおり、被請求人は、請求人の最初の店舗開店日(2011年2月24日)から少なくとも6ヶ月程度前から「ろく福」を新店舗の名称にすることを検討していたものである。

この「ろく福」の由来は、七福神の一つである「福禄寿(ふくろくじゅ)」からであり、顧客が、長寿で健康で元気になってほしいという願いから「ろく福」が採択されものであり、被請求人が独自に考え出したものである。

したがって、被請求人の「ろく福」の商標登録は、請求人の業務を妨害するため、又は請求人の業務と混同させることにより不正な利益を上げるために行われたものでない。

(3)他店舗の名称について

被請求人は、2010年2月頃から、新規の店舗名を検討し、「ほぐし処楽や」「きらくrelaxation−kiraku」「癒し空間MOANA」などの商標登録出願のほか、多くの名称を考えていたものであり、商標登録を同業者の信用にただ乗りして利益を得ることに使用しておらず、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

2 商標法第4条第1項第10号について

請求人の吹田の店舗の開店日(2011年2月24日)は、被請求人の商標登録出願日の約4ヶ月前であり、布施の店舗の開店日(2011年4月11日)は、被請求人の商標登録出願日の約2ヶ月前である。

請求人は、店舗開設に際して使用したチラシ(甲第2号証の1、甲第2号証の1)を提出しているのみで、このような短期間でいわゆる周知になった証拠は何ら示されていないから、請求人の店舗名である「ろく福」は、被請求人の商標登録出願時において、いわゆる周知であったということができない。

したがって、商標法第4条第1項第10号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号について

前述したように、請求人の店舗名「ろく福」は、被請求人の商標登録出願時において周知であったということができず、本件商標は、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標ということができない。

したがって、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第19号について

前述したように、請求人の店舗名「ろく福」は、被請求人の商標登録出願時において、周知であったということができない。

したがって、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第7号について

(1)商標の構成それ自体において公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標はもとより法第4条第1項第7号に該当するが、商標自体には公序良俗を害するおそれがない場合であっても、その商標の登録に至る出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等は、本号に該当するものと解される(東京高裁平成14(行ケ)第403号事件・平成15年3月20日判決(最高裁HP)参照)。

(2)以上を踏まえて、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるか否かについて検討する。

本件商標は、前記第1のとおり、「ろく福」の文字からなるものであるところ、本件商標の構成文字それ自体において公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に当たらないことは明らかである。

ところで、本件商標と請求人の使用に係る標章「ろく福」(以下「請求人標章」という。)とは、その構成文字が一致するものであり、請求人標章は、本件商標の出願時には、請求人の店舗において表示されていた(甲第1号証の1及び2、甲第3号証の1及び2)と認め得るものである。

また、「ろく福」の文字は、特定の語義を有する既成の語ではないから、特定の観念を生じない造語というべきである。

そして、甲第1号証の1及び2によれば、請求人は、本件商標の登録出願前である平成23年2月24日に「吹田もみほぐしセンター ろく福」(大阪府吹田市朝日町)を、同年4月11日に「布施もみほぐしセンター ろく福」(大阪府東大阪市長堂)を開設したこと、請求人標章は、上記の2店舗の看板(甲第3号証の1及び2)及びオープンに際して頒布されたと主張するチラシ(甲第2号証1及び2)において表示されたことが認められる。

しかしながら、該チラシは新聞折り込み広告であって、それぞれ、27,700枚と23,400枚で各2回行ったと主張するが、頒布地域などは定かでなく、例えば、その店舗の近辺を離れて、さらに広い地域(大阪以外の地域を含む。)に及ぶ宣伝広告活動等を行ったことを認め得る証左はない。そのほか、両店舗への来客数なども窺い知れない。

そうすると、請求人標章について、提出された証拠から、本件商標の出願までの約2ヶ月ないし4ヶ月程度の比較的短い使用の期間、使用地域、広告・宣伝等の程度を総合してみた場合、請求人標章の需要者への浸透度は、限定的な範囲に止まり、決して高いものということはできず、この程度の実績によっては請求人標章が我が国の需要者の間に広く認識されていたということはできない。

したがって、本件商標の出願時において、請求人標章が、請求人の業務に係る役務「あんま、マッサージ及び指圧」を表示する商標として、我が国(又は外国)の需要者の間に広く認識されるに至っていたと認めることはできない。

さらに、本件商標の出願前において、被請求人が請求人標章を知り得る立場にあったことを窺わせるような取引関係その他特別の関係にあったなどの当該標章をひょう窃したと認めるべき事情も見いだせず、また、請求人からはその事実を裏付ける何らの証拠の提出もない。

してみると、本件商標は、造語であって、同一の標章を本件商標出願時に請求人が使用していたことのみをもって、請求人標章をひょう窃して出願、登録されたものということはできず、その出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあったと認めることはできないものであり、また、請求人の業務を妨害し、請求人又は同業者の信用にただ乗りするなど、公正な取引秩序を乱し、ひいては公序良俗を害することとなるような商標に該当するということはできない。

(3)請求人は、本件商標の登録出願は請求人の業務を妨害するため、又は請求人の業務と混同させることにより不正な利益を上げるために行われたものであり、このような行為は公正な取引秩序を乱すおそれがあることは明らかであり、さらに、被請求人が、同業他社の使用する標章についても、「ろく福」と同様に盗用して商標登録出願した可能性が高い旨主張している。

しかしながら、前記(2)において認定判断したとおり、被請求人が本件商標を不正の目的をもってひょう窃的に出願し、その出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあったと認められないから、本件商標の登録出願が請求人の業務を妨害するためになされ、あるいは、不正な利益を上げるために行われたものであり、公正な取引秩序を乱すおそれがあるということはできない。また、登録商標に係る無効理由の存否は、商標毎に、個々具体的事実及び証拠に基づいて判断されるべきものであるから、請求人の主張は採用することができない。

(4)以上のとおり、本件商標は、商標自体が公の秩序又は善良の風俗を害する商標でないことは明らかであり、また、その出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底認めることができないという場合に該当しないというべきである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものということはできない。

2 商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号について

商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号の適用にあたっては、請求人標章が請求人の役務を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていることが適用要件の一つと解されるところ、前記1(2)の認定のとおり、請求人標章はその登録出願の時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないから、上記各法条に該当するものということができない。

3 まとめ

以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものとは認められないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできないものである。

よって、結論のとおり審決する。

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