Trademark Appeal Case
記号「+」の称呼・観念の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900294(T2012−900294/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5506572号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成24年2月14日に登録出願、第36類「建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」、第37類「建築一式工事,土木一式工事,その他の建設工事,建築工事に関する助言,建築一式工事及び土木一式工事の請負,建築工事又は土木工事の施工管理」及び第42類「建築物のデザインの考案,建築物の設計,建築物の設計に関するコンサルティング及び情報の提供」を指定役務として、平成24年6月18日に登録査定、同年7月6日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(6)のとおりであり、(1)ないし(3)の商標権に関しては、いずれも現に有効に存続しているものであるが、(4)ないし(6)の商標権に関しては、いずれも、存続期間満了により、消滅しているものである。
(1)登録第4453921号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:D&B
登録出願日:平成9年7月16日
設定登録日:平成13年2月16日
指定商品及び指定役務 :「企業の財務に関する調査及びこれらに関する情報の提供」を含む第36類並びに第9類、第16類、第35類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(2)登録第4707950号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲(2)のとおり
登録出願日:平成14年4月24日
優先権主張:2002年1月25日(アメリカ合衆国)
設定登録日:平成15年9月5日
指定商品 :第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(3)国際登録第881991号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
国際登録出願日:2006年2月14日
優先権主張:2006年1月31日(アメリカ合衆国)
設定登録日:平成19年11月22日
指定商品 :第35類及び「financial reports including collecting and reporting credit, sales, financial and credit and financial analysis;providing credit rating and financial reporting and analysis;」を含む第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(4)登録第3117920号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲(4)のとおり
登録出願日:平成4年9月26日
設定登録日:平成8年1月31日(特例商標)
本権の登録の抹消登録日:平成18年10月4日
原因:平成18年1月31日存続期間満了
指定役務 :第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(5)登録第3139604号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲(4)のとおり
登録出願日:平成4年9月26日
設定登録日:平成8年4月30日(特例商標)
本権の登録の抹消登録日:平成19年1月24日
原因:平成18年4月30日存続期間満了
指定役務 :第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(6)登録第3139606商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲(4)のとおり
登録出願日:平成4年9月26日
設定登録日:平成8年4月30日(特例商標)
本権の登録の抹消登録日:平成19年1月24日
原因:平成18年4月30日存続期間満了
指定役務 :第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
なお、これらを一括して、以下「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由(要旨)
(1)申立ての根拠
本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当するから、同法第43条の2第1号の規定によりその登録が取り消されるべきものである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、結合した欧文字の「D」と「B」が青地に太く白抜きにされ、当該両文字の間に地と同色の加算記号「+」が重ねて書されてなる図案化商標である。すなわち、本件商標の文字および記号の要素は「D+B」であるところ、「+」が「&」と同様にラテン語の「et(英語のand)」を変形して作られたものであるとの語源(甲8)に遡るまでもなく、「+」が「足す」を意味することは明らかである。
よって、本件商標からは「DとB」ないし「D及びB」の観念が生じる。 称呼については、記号「+」と記号「&」は称呼においても互換可能であること(甲9)、コンピュータ言語においても「+」は「AND」の省略形として広く用いられていること(甲10)、日本の商標でも「+」が「&」や「と」の省略形として用いられている例も多いこと(甲11)から、本件商標からは、「ディープラスビー」のみならず、「ディーアンドビー」の称呼も生じる。
一方、引用商標1ないし3は、標準的な欧文字により「D&B」と書してなるから、「ディーアンドビー」の自然称呼を生じる。また、引用商標3の右半分の構成文字から「ワールドワイドネットワーク」の称呼も生じる。これらの商標からは「DとB」ないし「D及びB」の観念が生じる。実際には、引用商標は申立人である世界最大の企業信用調査会社グループであるDun & Bradstreetの頭文字からなる商標として著名ないし周知であるから、当該会社の名称「ダン アンド ブラッドストリート」およびその略称「D&B」を直感させるものである。
したがって、本件商標と引用商標1ないし3からは実質的に同一の観念、称呼が生じ、また、本件商標における第36類の指定役務「建物の売買の代理又は媒介」は引用商標1および3における指定役務と類似するから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知著名性について
申立人を国際的な統括組織とする米国ニュージャージーに本店を有する米国企業、The Dun & Bradstreet Corporation(以下「『D&B』社」という。)は、1840年代に創業されて以来(甲12)、全世界の企業情報を提供する世界最大手の信用調査会社であって、現在、200カ国以上、2億2千万件の企業情報を保有し、リスク管理や、マーケティングや仕入先管理のための企業情報を提供し、同社から企業情報を入手している企業は全世界で10万社以上にのぼる(甲13)。
また、申立人は世界80力国以上で本件に該当する商標を500以上所有している。このうち、引用商標1に対応する文字商標「D&B」および商号商標「DUN & BRADSTREET」は遅くとも本国で1933年から、引用商標2および3に対応する図案化商標は遅くとも2006年から、引用商標4ないし6に対応する「D+B」商標は遅くとも1979年から使用している。
加えて、引用商標4ないし6については、申立人が遅くとも1991年3月までに全世界的に採用し(甲12)、1996年頃までの期間に実際に使用していた商標である。
「D&B」社は1989年、日本においてダンアンドブラッドストリートジャパン株式会社を設立し、企業の意思決定をサポートする情報サービスを提供してきた(甲15)。1994年以降、「D&B」社は、帝国データバンクに次いで国内第2位の信用調査会社である株式会社東京商工リサーチ(以下「東京商工リサーチ」という。)との業務提携を通じ全世界の企業情報を提供してきたものであり、2005年には、商標使用の世界的な統一を目的に「D&B World Wide Network」を発足、2007年には東京商工リサーチとのジョイントベンチャーとして「ダンアンドブラッドストリートTSR株式会社を設立した(甲13等)。
2012年以降は、「ダンアンドブラッドストリートTSR株式会社」の事業のすべてを東京商工リサーチが承継し、日本におけるD&B事業の唯一の提供者になっている(同上他)。
「D&B」社が提供する全世界5,000万社超の企業概要と800万社の支払いリスク、倒産リスクに関する情報は、2008年以降、日経テレコンとの提携のもと提供されている(甲16)。
日経テレコンとは、日本最大級の会員制ビジネスデータベースサービスであり、日本の上場企業の実に70%がこれを導入している(同上)。
以上の事実や、申立人および日本における独占的な使用権者である東京商工リサーチのウェブサイト及び日本経済新聞等の記事(甲17)における記載から、標準的な文字「D&B」からなる略称が当業者の間で著名ないし周知であって極めて高い信用を化体している。
また、申立人(日本の使用権者を含む。以下、同じ。)は「日経ビジネス」や「日経産業新聞」等の専門性の高い刊行物を通じて定期的に宣伝広告を行っている(甲20ないし25)。
加えて、申立人は過去10年以上に渡り、月に2回程度、3〜40社単位の会員企業向けセミナーを東京や大阪で開催してきた(甲26および27)。これらの数字は、一定規模以上の法人企業を取引相手とし、かつ、専門性の極めて高い役務の提供に係るものである点を踏まえると相当な頻度であり、取引先の選択決定に携わる経営担当者の間で「D+B」の商標が浸透するに十分なものである。
イ 創造商標あるいはハウスマークであるか等
申立人の引用商標はいずれも高度に図案化された創造商標であり、かつ、ハウスマークであって、本件商標は他人である申立人の事業との関連性を強く想起させる。
さらに、申立人の提供する役務は事業の取引先の信用に関するものであって、本件商標における土地や建物に関する役務もその所有者の信用に深く関るものであることから、役務間にも強い関連性があるといえる。
ウ 小括
以上の事実により、引用商標は外国および日本において第36類の「企業の財務に関する調査及びこれらに関する情報の提供、企業の信用調査及びこれに関する情報の提供、企業の信用格付及びこれに関する情報提供」関連の役務を表示するものとして需要者の間に極めて広く認識されている商標であることが明らかとなった。
よって、当該引用商標に類似する本件商標は、第36類の「建物の売買の代理又は媒介」以外の指定役務に使用された場合であっても、需要者がその登録名義人が申立人と経済的又は組織的に何等かの関係があると誤認し、役務の出所について混同するおそれがある商標であるといえる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)まとめ
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に反して登録されたものであり、その登録は取り消されるべきものである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲(1)のとおり、青地の長方形内に白抜きで「D」と「B」のローマ字を接するように配し、そして、その両文字の接するちょうど中央部分に、地色と同じ青色をもって「+」の記号を配した構成よりなるものであるところ、かかる構成からは、青地の長方形内に、白抜きの「D」と「B」のローマ字と青色の「+」とを、組み合わせたモノグラム風の図形(以下「モノグラム風図形」という。)がまとまりよく配されているものとの印象を与えるものであって、その構成全体をもって不可分一体に表された図形商標とみるのが自然である。
そうしてみると、本件商標は、これより直ちに特定の称呼及び観念を生じ得ないものというべきである。
これに対し、引用商標1は、「D&B」の構成からなり、これよりは、「ディーアンドビー」の称呼を生ずるものである。
同じく、引用商標2及び引用商標3は、別掲(2)及び別掲(3)に示すとおり、それぞれ図形と文字とを組み合わせた構成からなるところ、独立して、自他役務の出所識別標識としての機能を果たし得る「D&B」の構成部分から、「ディーアンドビー」の称呼を生ずるものである。
そして、引用商標1ないし3は、その構成全体として、また、「D&B」の構成部分のいずれからも、直ちには、特定の観念を有しないものと認められるが、後述の(2)からすれば、「D&B」の構成部分に着目し、申立人を想起、連想する場合もあるといえる。
そこで検討するに、本件商標は、上記したとおり、その構成全体をもって不可分一体に表された図形商標であって、これより直ちに特定の称呼及び観念を生じ得ない以上、上記引用商標1ないし3とは、称呼及び観念について比較することはできない。
また、本件商標と引用商標1ないし3とは、それぞれの構成に照らし、判然と区別し得るものである。
してみれば、本件商標と引用商標1ないし3とは、称呼、観念及び外観のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
なお、申立人は、本件商標からは、「ディープラスビー」及び「ディーアンドビー」の称呼も生じる旨主張する。
しかしながら、たとえ、本件商標の構成中、モノグラム風図形から称呼が生ずる場合があるとしても、「ディープラスビー」の称呼のみであって、モノグラム風図形の「+」を「AND」の省略形として広く用いられている等の事情は提出に係る証拠からも認められず、他にその事実を認めるに足りる証拠はないから、モノグラム風図形から「ディーアンドビー」の称呼を生ずるとみるのは不自然である。
そして、本件商標から「ディープラスビー」の称呼が生ずるとしても、当該称呼と引用商標1ないし3から生ずる「ディーアンドビー」の称呼とは、中間における「プラス」と「アンド」の音に明らかに差異があるところから、十分に聴別し得るものである。
してみると、かかる申立人の主張は採用の限りでない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人の提出に係る証拠及び主張によれば、申立人を国際的な統括組織とする「D&B」社は、信用調査会社として1840年代に創業され、現在、200カ国以上、2億2千万件の企業情報を保有し、リスク管理等のための企業情報を提供等の業務(以下「申立人の業務」という。)を行っているものであって、同社から企業情報を入手している企業は世界で10万社以上あること(甲12及び甲13)、「D&B」社は1989年、我が国においてダンアンドブラッドストリートジャパン株式会社を設立(甲18)し、企業の意思決定をサポートする情報を提供していること(甲15)、2012年以降は、東京商工リサーチが「ダンアンドブラッドストリートTSR株式会社」の事業のすべてを承継し、日本におけるD&B事業の唯一の提供者になっていること(甲13)、「D&B」社が提供する企業情報は、2007年11月から、日経テレコンとの提携のもとで提供され、そして、上場企業の70%が日経テレコンを導入していること(甲16)、東京商工リサーチのウェブサイト(甲13)及び日本経済新聞等の記事に申立人「D&B」などの紹介記事(甲17)があること、申立人は「日経ビジネス」等の雑誌や「日経産業新聞」の新聞を通じ、引用商標1と同じ「D&B」、引用商標3の構成中、左側の図形部分とほぼ同様の図形を付して、広告を行っていること(甲20ないし25)、申立人が開催したセミナーのパンフレットにも引用商標3の構成中、左側の図形部分とほぼ同様の図形が付されていること(甲26および27)、引用商標4ないし6は、申立人が遅くとも1991年3月までに全世界的に採用し、1996年頃までの期間に実際に使用していた商標であるが(甲12、甲18及び主張)、本件商標の登録出願時には使用していないこと明らかである。
そうとすると、申立人の提出に係る証拠からは、引用商標のうち、引用商標1及び引用商標3の構成中、左側の図形部分に関しては、我が国において、申立人の業務に係る商標として、本件商標登録出願時には、相当程度知られていたものであることは認められるとしても、引用商標についての周知・著名性は、認めることはできない。
そして、前述のとおり、本件商標は、引用商標とは何ら相紛れるおそれのない別異の商標であるから、商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、申立人あるいは引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する
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