結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2010−890100(T2010−890100/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4913996号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成17年5月25日に登録出願され、第25類「履物,運動用特殊靴」を指定商品として、同年10月28日に登録査定、 同年12月9日に設定登録されたものである。
請求人(スポーツ用品メーカーであるアディダス アーゲー及びアディダスグループの知的財産を管理する子会社であるアディダス インターナショナル マーケティング ベー ヴェー 以下、両者又はアディダス アーゲーを「請求人」という場合がある。)は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第127号証(枝番号を含む。)を提出した。
請求人が本件商標の無効の理由に引用する商標は、別記のとおりの商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、請求人の引用する商標を順次「引用商標1」ないし「引用商標23」といい、これらの商標を総称するときには「引用商標」という。)
本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第7号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の著名性
(ア)請求人の歴史及び沿革
請求人であるアディダス アーゲーの歴史は1920年に創始者アディ・ダスラー(Adi Dassler)がスポーツシューズを開発したことに始まる(甲26の1ないし10)。
引用商標に共通する概念であるところの3本線(Three Stripes)が請求人の商標として採択使用されたのは1949年のことである。以後、「3本線」は50年を超える長期にわたり今日まで請求人の業務に係る商品及び役務の識別標識として世界各国で使用され親しまれている。
上記「3本線」からなる引用商標は、請求人の製造するスポーツシューズの品質と性能への高い評価とあいまって「勝利を呼ぶ3本線」の愛称で急速に需要者に広く知られることになった。3本線を表示したスポーツシューズは、1952年のオリンピック・ヘルシンキ大会で西ドイツ選手が着用したことにより世界の舞台に初登場した。その後のオリンピック、世界選手権、欧州選手権等の国際試合における請求人のスポーツシューズを着用した選手の活躍によって、請求人のスポーツシューズの優れた性能が世界の需要者に証明され、これと同時に請求人のスポーツシューズに採用される引用商標の名声も不動のものとなった。
また、請求人は、世界一流のテニスやバスケットボールのプレイヤーらと専属契約を結び、請求人の商品を供与して自社商品の広告に起用するとともに、彼らの名前を冠した商品シリーズを一般需要者向けに製造販売している(甲63及び甲64)。
(イ)「3本線」に関する広告活動
請求人は、3本線を同社の商標として最も重要なものと認識し、引用商標に示すとおり様々な態様について商標登録を取得している。3本線の重要性は、1972年に採用され(甲26の7)、引用商標と共に請求人の商標として著名な三つ葉をかたどった商標が3本線を構成要素として採用している点にも見いだすことができる(甲68ないし甲82)。
請求人は、3本線が請求人の業務に係る商品の識別標識であるという認識を需要者に広く深く浸透させるための広告宣伝活動にも力を注いでいる。請求人は「3本線のブランド」を意味する「THE BRAND WITH THE 3 STRIPES」の文字についても商標登録を取得している(甲20ないし甲23)。また、需要者の間で広く認知されている「3本線=アディダス」というイメージの保持と徹底を図るべく、「3本線」又は「Three Stripes」というフレーズを自己の業務に係る商品と常に結びつけた形で商品カタログや広告等に使用している(甲32及び甲48)。少なくとも1989年から1996年までの7年間、商品カタログの裏表紙(甲35ないし甲40、甲43ないし甲48及び甲62)や雑誌掲載広告(甲56及び甲62)には、引用商標(甲2、甲3及び甲13ないし甲15)又はこれに類似する「3本線」の商標の表示と共に「3本線はアディダスの登録商標です」なる表示が継続的に記載されている。
(ウ)日本における引用商標の使用実績
我が国における請求人の営業活動は、遅くとも1971年頃に当時の請求人商標の日本における使用権者であった株式会社デサントによって開始された(甲27)。これ以降1998年までは株式会社デサント(途中、兼松スポーツ用品株式会社を含む。)を介して請求人の製造に係るポロシャツ、ティーシャツ、スウェットスーツ、帽子等の被服、運動靴、サンダル等の履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴、ベルト、かばん類、布製身回品等について引用商標が使用された(甲27ないし甲48及び甲54ないし甲64)。
続く1999年1月から現在に至るまでは、アディダスジャパン株式会社によって営業活動が継続されている(甲49ないし甲53、甲83、甲84、甲96ないし甲112及び甲114)。
(エ)引用商標の使用態様
請求人による引用商標の使用態様は、1949年の採択時から50年以上経過した今日でも本質的に変わっていない。
サイドラインとして用いられた3本線は、請求人による長期的かつ継続的な使用実績によって同社の取扱いに係る商品の出所表示として広く知られており、例えば、靴に関しては、引用商標23に示す立体商標として商標登録されている(甲24)。請求人は、諸外国でも引用商標23に対応する立体商標について商標登録を受けており(甲89ないし甲92)、3本線を基調とする商標が請求人の出所表示として世界的名声を獲得していることが明らかである。
(オ)以上より、引用商標は、本件商標の登録出願時及び査定時には、本件商標の指定商品を取り扱う取引者、需要者の間で、請求人の商品を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。
イ 本件商標と引用商標の構成について
(ア)本件商標の構成
本件商標は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾け、輪郭線で描いた細長の台形様図形を、当該台形様図形の幅よりもやや広い間隔をもって4本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形(以下「4本線の図形」という。)より構成され、4本線の図形を構成する各台形様図形は、平行に向かい合う二辺の各々に沿って表示された2本のステッチ状の模様とその間に均等間隔に表示された複数の極小の円形図形を有するものである。
(イ)引用商標の構成
引用商標1及び引用商標2の構成中の図形部分は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた黒塗りの細長の台形様図形を、当該台形様図形の幅よりもやや狭い間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形よりなるものである。
引用商標3ないし引用商標6の構成中の図形部分及び引用商標7ないし引用商標10は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた黒塗り細長の台形様図形を、当該台形様図形の幅の3分の1程度の間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形よりなるものである。
引用商標11ないし引用商標13は、仮想垂直線に対し、左方向にわずかに傾け、左右の縦線を波形あるいはくさび形の輪郭線で描いた細長の台形様図形を、当該台形様図形の幅とほぼ同じ間隔をもって3本並べ、わずかな差異ではあるが、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形よりなるものである。
引用商標14及び引用商標15並びに引用商標16及び引用商標17の構成中の図形部分は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾け、左右の縦線が波形あるいはくさび形の黒塗りの細長の長さが均等な長方形を、当該長方形の幅の3分の1程度の間隔をもって3本並べた図形よりなるものである。
引用商標23(靴の形状の立体商標)の構成中の靴の側面に描かれた図形部分は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた黒塗りの細長の台形様図形を、当該台形様図形の幅よりやや狭い間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形よりなるものである。
ウ 出所混同のおそれについて
(ア)本件商標と引用商標との対比
本件商標を構成する4本線の図形と引用商標1ないし引用商標17、引用商標23もしくはこれらの引用商標の構成中の3本線からなる図形部分を対比考察すると、本件商標と当該引用商標は、台形様図形等の数が4本と3本の差異があるものの、いずれも、台形様図形等を仮想垂直線に対し、左方向にやや傾け、均等間隔で複数本を配置した構成を共通に有する。
なかでも、本件商標の4本線の図形は、とりわけ、引用商標1ないし引用商標6の構成中の3本線の図形部分、引用商標7ないし引用商標13、並びに引用商標23の構成中の靴の側面に描かれた3本線の図形部分と、台形様図形等を仮想垂直線に対し左方向にやや傾け、均等間隔で複数本を配置し、かつ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形である点で一致し、これらの引用商標と構成の軌跡を一にするものであることが明らかである。
よって、本件商標は、その構成態様、外観印象が上記引用商標と酷似することが明らかである。
(イ)靴のサイドラインとしての使用
本件商標の指定商品は、第25類「履物、運動用特殊靴」であり、当該指定商品は、請求人が引用商標を長年にわたり継続使用している商品と同一又は類似のものである。そして、3本線を靴の本体側面のソールと靴紐を通すアイレットステイを結ぶ部位付近にサイドラインとして表示する態様は、請求人が過去50年以上の長きに亘り継続して採用している商品表示の形態であり、本件商標の登録出願時には、請求人の業務に係る商品表示として世界的に広く認識されていたものである。引用商標23に示すとおり、3本線をサイドラインとして表示した靴の立体形状からなる商標が我が国で商標登録されている事実、並びにこれに対応する3本線を表示した靴の立体商標が諸外国でも多数登録されている事実は、3本線が請求人の業務に係る商品(靴)の出所識別標識として広く認識理解されている事実を裏付けるものである。
甲第115号証は、被請求人が実際にそのインターネットホームページで販売したスニーカーである。当該スニーカーには、本件商標又は本件商標の構成と極めて類似する商標がシューズの側面の、靴底とアイレットステイを結ぶ位置にサイドラインとして使用されていることが認められる。当該スニーカーは、請求人の製造販売に係る3本線をサイドラインとして表示したスポーツシューズを直感させる程度に請求人の商品と相紛らわしい外観を呈している。
したがって、本件商標を当該指定商品に使用した場合は、請求人の商品出所表示として周知著名な3本線を表示したスポーツシューズと誤認混同を生ずるおそれが高いことが明らかである。
(ウ)本件商標の構成中の円形図形及びステッチ状の模様
3本線を構成する各ストライプの表面にパンチング(孔)を施したデザインは、請求人のスポーツシューズの代表的なデザインモデルの一つである(甲96ないし甲112)。本件商標の4本線の図形を構成する台形様図形の各々に表された極小の円形図形は、上記のようなパンチングを施したストライプの部分に対応するものといえる。また、本件商標の構成中の4本の台形様図形の輪郭線に沿って表示されているステッチ状の模様は、スポーツシューズの本体側面にストライプをサイドラインとして縫い付ける場合に生じるステッチ部分に相当するものであり、シューズに商標を表示する場合の方法あるいはデザインとして一般的なものといえる。
したがって、本件商標において4本線の図形を構成する台形様図形が円形図形及びステッチ状の模様を有する点は、本件商標が使用される指定商品と請求人の製造販売に係るスポーツシューズの差異を明確にし、その出所について誤認混同を生ずるおそれを打ち消すことができる程度に大きな相違点ということはできない。
(エ)本件商標が「3本線」として認識されるおそれ
本件商標が指定商品に使用される場合、4本線の図形(商標部分)とシューズ本体及び周辺のパーツの地色との配色方法、商標部分と本体のコントラストの強弱の程度などによっては、4本線の図形が必ずしも明瞭でなく、余白部分が形成する3本線の図形部分が視覚的に強調され、本件商標に接する取引者・需要者に対して「3本線」の印象を与え「3本線の商標」として看取されるおそれがある。
実際に、被請求人が取り扱うスポーツシューズの中に「3本線」として認識理解されるサイドラインを使用したモデルが存在する。甲第116号証は、被請求人がインターネットホームページで販売している子供用スニーカーを示す。当該スニーカーにおいては、本件商標の構成に相当する4本線の図形部分と靴の地色を同色(紺色)に着色し、4本で区切られた部分(すなわち、本件商標の構成における3本の余白の部分)をこれと異なる灰色で着色していることが認められる。このような態様で使用される場合、本件商標が「3本線」を基調にする商標の印象を看者に与えることは否定できない。
(オ)指定商品の通常の需要者の注意力の程度
本件商標の指定商品は「履物,運動用特殊靴」であり、一般家庭の消費者が購入するものを多く含むものであるから、本件商標が使用される商品の通常の需要者の注意力の程度は、必ずしも高いものとはいえない。
したがって、本件商標が指定商品に使用された場合、請求人の業務に係る商品又は請求人の関連会社もしくは請求人から引用商標の使用許諾を受けた者等が取り扱う商品であると誤信され、その出所について混同を生ずるおそれが高い。
(カ)フリーライド、ダイリューション
商標法第4条第1項第15号の規定は、出所混同防止に止まらず、フリーライド、ダイリューション(稀釈化)も防止する趣旨の規定であると解されている(平成16年10月20日東京高裁判決、甲95)。
被請求人は、過去に、3本線を表示した請求人のスポーツウエアと酷似するスポーツウエアを販売し、また、3本線のサイドラインと貝殻(シェル)風のデザインのつま先部を特徴とする請求人の著名なスポーツシューズのモデルと酷似する子供用スニーカーを販売して、請求人から警告を受けて販売を中止した経緯を有する(甲119ないし甲121)。
かかる事情に照らせば、引用商標と構成の軌跡を同じにする本件商標は、請求人の努力によって獲得された「3本線」を基調とする商標の顧客吸引力にフリーライドするものであり、請求人の商品出所表示として著名な「3本線」の出所表示機能を稀釈化するものと言わざるを得ない。
(キ)以上より、本件商標が指定商品に使用された場合には、請求人又はこれと経済的又は組織的な関係を有する者の業務に係る商品と誤信され、その出所について混同を生ずるおそれがあることが明らかである。また、本件商標を指定商品に使用する行為は、請求人の商品出所識別標識として広く認識されている引用商標の顧客吸引力にフリーライドするものと言わざるを得ず、そのような使用によって、引用商標の出所表示機能が希釈化されることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
上記した事情にかんがみれば、本件商標は、引用商標及び請求人の商品の出所表示として著名な「3本線」の信用力、顧客吸引力にフリーライドせんとする不正な目的で採択使用されたものと推認せざるを得ない。また、本件商標が指定商品に使用された場合、請求人の業務に係る商品を表示するものとして周知著名な「3本線」商標の出所表示機能が稀釈化され、請求人に経済的及び精神的損害を与えることは疑いない。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び国際信義に反するものと言わざるを得ず、公の秩序を害するおそれがあるものというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証(枝番号を含む。)を提出した。
請求人は、本件商標と引用商標の図形部分とは、構成の軌を一にし、出所混同を生ずるおそれが高い旨主張するが、本件商標と引用商標とは、その構成態様において判然と区別し得る差異を有しており、その構成全体から受ける視覚的印象も明らかに異にするものであるから、これを時と所を異にして離隔的に観察した場合でも外観上相紛れるおそれはなく、十分に区別し得るものであって、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない別異の商標というべきものである。
また、本件商標の指定商品においては、線からなる図形商標が多数商標登録されており、線の特徴をもって識別されているのが実情であり、線が異なれば別異のものとして認識されているものである(乙1ないし乙19)。
なお、請求人は、引用商標に示すところの3本線を基調として構成された商標ないし3本線の概念を想起させる商標が周知である旨主張しているが、周知性があると認められるのはあくまでも請求人が提示した引用商標と同一性を有する態様の3本線でのことであって、同一性から逸脱した3本線並びに2本線以下及び4本線以上で構成されたものまで請求人の商標の範ちゅうに含まれるものではない。
さらに、請求人は、「本件商標の指定商品は、一般家庭の消費者が購入するものを多く含むものであるから、当該指定商品の通常の需要者の注意力の程度は、必ずしも高いものとはいえない。」と主張しているが、本件商標の指定商品「履物(特に「靴」)」という日常茶飯に使用され愛用されている商品や、運動用特殊靴というスポーツ愛好者に拘りをもって購買される商品においては、需要者は特別な注意力をもって商品を識別している場合が多いのが実情である。特に、商品「靴」において、わざわざその側面に図形商標を付して使用されるのは、商品を選択するに際しての需要者へのアピールや、注意力を喚起するためであって、そうでなければ靴の側面にわざわざ図形商標を付して使用する意味がない。本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、登録商標等を側面に付して商品をアピールしているのが実情であり、当該登録商標は需要者によって特別な注意力をもって認識されており、登録商標(図形)が異なれば別異のものと把握されるものである。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起することはないものというべきであり、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
本件商標は、引用商標と類似しない別異のものであり、引用商標を模倣したものではない。また、本件商標は、引用商標の信用力・顧客吸引力にフリーライドすることを意図して出願したものでもなく、かつ、その出所表示機能を希釈化するものでもない。
なお、請求人は被請求人が過去に請求人から警告を受けたことを主張するが、被請求人は請求人に真摯に対応しており、請求人の引用商標とは別異の本件商標を採択したものであって、引用商標にフリーライドする意志はみじんもない。
そして、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益及び社会の一般的道徳観念に反するものでもなく、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれもないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)請求人は、昭和24年、3本線を基調とする商標(以下、細部のデザインの相違を捨象した3本線を基調とする商標を「スリーストライプス商標」という。)を採用し、これを甲の両側面(靴底とアイレットステイを結ぶ位置)にサイドラインとして付したデザインの運動靴の製造、販売を開始した(甲26)。
以降、請求人は、スリーストライプス商標を、甲の側面に付したデザインの運動靴の製造、販売を継続し、請求人に係るスリーストライプス商標を付した運動靴は、昭和27年の第15回オリンピック大会(ヘルシンキ大会)では西ドイツ代表選手により使用され、その後も、多くのオリンピック大会、サッカーのワールドカップ大会、テニスの国際大会などにおいて、各国の代表選手らによって使用され、このことは、スリーストライプス商標を付した運動靴の写真と共に、カタログ、雑誌広告等において紹介された(甲31、甲43、甲54 ほか)。
(2)請求人は、平成元年から平成8年頃まで、商品カタログの裏表紙や雑誌掲載広告において、スリーストライプス商標と共に、「3本線はアディダスの登録商標です」(甲35)、「ハイテクを秘めた3本線」(甲57)、「勝利を呼ぶ3本線」(甲57)、「勝利をめざす三本線・・・スリーストライプス」(甲62)との宣伝文句を用いた広告を行った。
(3)我が国において、昭和46年頃から平成10年までは、当時請求人の商標の日本における使用権者であった株式会社デサント(途中、兼松スポーツ用品株式会社を含む。)を通じて、スリーストライプス商標を使用した運動靴等が販売された。これに続く平成11年1月から現在に至るまでは、請求人の子会社として設立されたアディダスジャパン株式会社によって、スリーストライプス商標を使用した運動靴の販売が継続され、広告宣伝されている(甲27〜61 ほか)。
(4)そうとすれば、運動靴の甲の両側面にサイドラインとして付されたスリーストライプス商標は、本件商標の登録出願時である平成17年5月25日及び登録査定時である同年10月28日において、請求人商品を表示するものとして、運動靴の取引者、需要者の間において広く知られていたものと認められる。
(1)運動靴においては、靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用されていることは広く知られているところであり、そのような態様で付された商標においては、商標上端部はアイレットステイと重なり、下端部は靴底と甲の接合部と重なるため、商標の上下両端部における構成は視認しにくくなっている。
(2)また、4本線商標を靴の甲の側面に付したもののうち、4本線とそれらの間に存在する3つの空白部分とを、2色で別々に塗り分けるなどすると(例えば甲121、被請求人販売商品であるスニーカー)、これを見た場合、4本線の部分と3つの空白部分のいずれが強い印象を与えるか(4本線か3本線か)、外観において紛れる場合が見受けられること、が認められる。
(3)そして、請求人に係る運動靴の甲の両側面に付したスリーストライプス商標の具体的な構成には、使用時期や製品によって、ストライプの長短、幅、間隔、傾斜角度、輪郭線の形状等、細部のデザインが異なる様々なものが存在する。また、請求人に係る運動靴において、甲の両側面に付されたスリーストライプス商標の各ストライプの向かいあう2つの長辺に沿ってその内側に2本のステッチ状の模様のあるものが多数存在し、3本のストライプ間中央又はストライプ中央にストライプに沿って直線上に多数のパンチング(小さな丸い孔)模様のあるものも存在する(甲96〜112)。
(1)前記1のとおり、サイドラインとして付されたスリーストライプス商標は、請求人商品を表示するものとして、取引者、需要者の間において広く知られていたものと認められる。そして、そのスリーストライプス商標の具体的な構成には、使用時期や製品によって、ストライプの長短、幅、間隔、傾斜角度、輪郭線の形状等、細部のデザインが異なる様々なものが存在するが、これら細部の相違は、スリーストライプス商標の基本的な構成である3本のストライプが与える印象と比較して、看者に異なった印象を与えるほどのものではないというべきである。
(2)本件商標は、別掲1のとおり、細長い4本の台形様ストライプからなるものであるが、その指定商品「履物,運動用特殊靴」に属する運動靴においては、前記2のとおり、靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用され、そのような態様で付された場合、商標の上下両端部における構成が視認しにくく、また、4本線の部分とそれらの間に存在する3つの空白部分につき、4本線か3本線かが紛れる場合が見受けられる。
(3)そうすると、運動靴の甲の側面に付された本件商標に接した取引者、需要者は、本件商標の上下両端部における構成が視認しにくい場合や、本件商標から、4本の細長いストライプではなく、それらの間に存在する空白部分を3本のストライプと認識する場合などがあり、これらのことから、3本のストライプから著名な請求人のスリーストライプス商標を想起するものと認められる。また、4本線商標かスリーストライプス商標かという相異についても、靴の甲の側面に商標として付された場合、さほど大きな区別の指標になるものとはいえない。
(4)さらに、本件商標は、4本線商標というのみならず、台形様図形の向かい合う2辺の各々に沿って表示された2本のステッチ状の模様とその間に均等間隔に表示された多数の小さな丸点が描かれている点において、引用商標と異なることは確かであるが、請求人のスリーストライプス商標の付された運動靴において、甲の両側面に付されたスリーストライプス商標の各ストライプの向かいあう2つの長辺に沿ってその内側に2本のステッチ状の模様(これは商標を靴の甲の側面に付す場合の縫い目のようにも見える。)のあるものが多数存在し、3本のストライプ間の中央部又はストライプ中央部にストライプに沿って直線上に多数のパンチング(小さな丸い孔)模様のあるものも存在することを考慮すると、本件商標の「2本のステッチ状の模様」及び「多数の小さな丸点」は、本件商標の構成において,格別の出所識別機能を発揮するものと認めることはできない。
(5)そうとすれば、本件商標と引用各商標(請求人の著名商標)との構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると、本件商標を指定商品「履物,運動用特殊靴」に使用したときは、その取引者、需要者において、当該商品が請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ないから、その他の無効の理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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