Trademark Appeal Case
世界遺産と商標の公益性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900161(T2012−900161/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5477263号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成23年10月12日に登録出願、第33類「韓国済州島産の濁り酒」を指定商品として、同24年2月14日に登録査定、同年3月9日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の要点
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号または同第6号あるいは同法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第43条の3の規定により、その登録を取り消すべきである旨申立て、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第39号証を提出した。
(1)商標法第3条第1項第3号又は同第6号該当
本件商標の各構成部分はいずれも自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであり、構成全体として「韓国の済州で生産された、加熱処理していない濁り(マッコリ)」を表したにすぎないものであるから、これをその指定商品に使用しても、指定商品の品質、産地、販売地を表すにすぎず、また、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当
本件商標は、その構成中に大韓民国の世界遺産を容易に理解させる「Jeju」の文字を顕著に表してなるものであるから、これを自己の営利を目的とするために一出願人が商標として登録使用することは、大韓民国の尊厳を害し、国際間の信義則に反する。
3 本件商標に対する取消理由の要旨
本件商標は、別掲のとおり、「Jeju」(3文字目の「j」は上部の点が赤丸で表されている。)、「チェジュマッコリ」、「生マッコリ」の各文字と、山並みとツツジとおぼしき花を描いた風景画的な図形との組み合わせからなるところ、甲各号証によれば、その構成中の「Jeju」「チェジュ」の各文字及び図形部分に関し、以下の事実が認められる。
(1)「Jeju」(チェジュ)は、韓国南部済州道の中心都市である済州又は済州道の中心をなす済州島を指す語として、我が国においても良く知られていること(甲10、甲11)。
(2)「山並みとツツジとおぼしき花を描いた風景画的な図形」は、韓国の済州島の中央にある韓国最高峰の火山島で、春にはツツジが咲き誇ることなどで良く知られた観光名所である「漢拏山(ハルラサン)」を描いたものであって、これと酷似する風景が韓国の観光地を紹介する日本のウェブサイトにおいて紹介されていること(甲7、甲8)。
そして、「漢拏山(ハルラサン)」は、多様な植物が分布しており、学術的価値が高いことから1970年に国立公園に指定され、また、2007年には「火山島と溶岩洞窟群」として、韓国で初めての世界自然遺産に登録されていること(甲5〜甲9、甲32、甲33)。
(3)ユネスコは、1972年に「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)を採択し、我が国は1992年6月30日に受託書を寄託、同年9月30日に我が国において同条約が発効している。そして、同「世界遺産条約」は、その目的として「文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存するための国際的協力及び援助の体制を確立することを目的とする。」とあり、その第4条では「締約国は、自国内に存在する遺産を保護する義務を認識し、最善を尽くす」と規定され、第6条では「自国内に存在する遺産について、保護に協力することが国際社会全体の義務であることを認識」と規定されていること(甲31)。
また、世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている(i)から(X)の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要です。」とされていること(甲30)。
そして、これらの規定からすると、登録された世界遺産は、その国及びその国民が重要な自然遺産として認識されているものというべきであって、また、日本国も世界遺産条約の締結国として、韓国におけるそのような認識を理解し、保護に協力すべき立場にあるといわなければならない。
(4)上記(1)ないし(3)の認定事実によれば、本件商標は、その構成中の「Jeju」の文字と「山並みとツツジとおぼしき花を描いた風景画的な図形」から、韓国の済州島(Jeju)にあり国立公園に指定され、かつ、韓国で初めて世界自然遺産に登録された「漢拏山(ハルラサン)」を描いたものと容易に認識させるものと認められる。
そして、韓国で初めて世界自然遺産に登録された「漢拏山(ハルラサン)」は、韓国の国民に愛され、重要な世界遺産として認識されていると認められる。
また、日本国も世界遺産条約の締結国として、韓国におけるそのような認識を理解し、保護に協力すべき立場にあるといわなければならない。
そうとすれば、「韓国」及び韓国の国民が誇るべき重要な自然遺産を容易に理解させる本件商標を、日本国の一企業である出願人に、自己の商標として登録を認めることは、韓国の国民や「漢拏山(ハルラサン)」の保全活動を行っている者の感情を害するおそれがあり、また、韓国の尊厳を守り、ひいては国と国との信頼関係を構築・維持していくとの国際信義の観点からも、許容されるべきではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に違反して登録されたものというべきである。
4 商標権者の意見
商標権者は、前記3の取消理由について、指定した期間内に意見を述べていない。
5 当審の判断
平成24年12月11日付けで前記3の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もない。
そして、前記3の取消理由は妥当なものであるから、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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