Trademark Appeal Case
称呼の類似性と著名性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900254(T2012−900254/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5497160号商標(以下「本件商標」という。)は、「MARRIOT MARQUIS」の欧文字を横書きしてなり、平成23年11月28日に登録出願され、第35類「自動車並びに自動車の部品及び附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自動車に関する広告(インターネットによる広告の代理を含む。)及び広告用スペースの提供(ウェブサイト上の広告スペースの提供を含む。),顧客情報の収集・管理・分析,自動車並びにその部品の販売に関する情報の提供,自動車に関する市場調査,自動車の輸出入に関する事務の代理又は代行,自動車の売買契約の媒介・取次ぎ・代理,自動車オークションの運営」、第36類「中古自動車の買い取り価格の評価,中古自動車の評価,自動車ローンの貸付け及びその媒介,自動車の損害保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,保険料率の算出」及び第37類「自動車並びに自動車の部品及び付属品の修理・整備・点検・保守,車検のための自動車の修理・点検又は整備,自動車の修理又は整備の取次ぎ又は媒介,自動車の修理・整備・保守・点検に関する情報提供,車検のための自動車の修理・整備に関する情報の提供」を指定役務として、同24年3月28日に登録査定、同年6月1日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録商標及び使用標章は以下のとおりであり、いずれの引用登録商標も現に有効に存続しているものである。
なお、これらを合わせていう場合には、以下「引用商標」という。
(1)商標登録第3279975号(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「MARRIOTT」
登録出願日:平成4年9月28日
設定登録日:平成9年4月11日
指定役務 :第42類に属する商標登録原簿記載の指定役務(別掲3)
(2)商標登録第4182164号(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「マリオット」
登録出願日:平成6年7月28日
設定登録日:平成10年8月28日
指定役務 :第42類に属する商標登録原簿記載の指定役務(別掲4)
(3)商標登録第4436060号(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲1のとおりの商標
登録出願日:平成11年1月11日
設定登録日:平成12年12月1日
指定役務 :第42類に属する商標登録原簿記載の指定役務(別掲5)
(4)使用標章(以下「引用商標4」という。)
標章の構成:別掲2のとおりの標章
使用役務 :「宿泊施設の提供」
3 登録異議の申立ての理由
(1)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 引用商標がマリオットインターナショナル社の商標として広く知られていることについて
(ア)引用商標は、米国企業であるマリオット インターナショナル インコーポレーテッド(以下「マリオットインターナショナル社」という。)が実質的商標権者であり、申立人は、マリオットインターナショナル社の商標の出願・登録・管理の業務等を行っている子会社である(甲6)。
マリオットインターナショナル社は、1927年に米国人J.ウィラード・マリオットとヒュー・コルトンの二名がノンアルコールビールを扱う居酒屋を開業し、航空機の機内食事業や給食事業等を経て、1957年にホテルを開業し、1966年には6軒であったが、その後ホテル事業を拡大し、1981年には100軒を超え、1993年のホテル事業分社化を経て、2000年には世界中に約2000軒のホテルを所有するに至った。
マリオットインターナショナル社の経営にかかるホテルは、各国の首都・観光地・商業地の中心に位置することが多いため利便性が良く、また、そのホテルの建物や設備・居室の豪華さや快適さ、さらには従業員の良質なサービス等から、我が国を含めた世界中の顧客から絶大な信頼を得ている高級ホテルとして確固たる地位を築いている。
マリオットインターナショナル社は、商標「MARRIOTT」の他に各ホテルの特徴に応じた多数のブランドの下でホテル事業を行っている(甲7)。現在、マリオットインターナショナル社は、世界各国に合計3836軒のホテルを有する世界有数の巨大ホテルチェーンに成長しており、そのマリオットグループに属する殆どのホテルに引用商標のいずれかと同一態様の商標が使用されている。
(イ)引用商標4の著名性について
本件商標は、引用商標4とは英文字表記の綴り1文字「T」の有無のみを異にし、その称呼に至っては引用商標4の称呼と同一といい得るものである。一方、マリオットインターナショナル社は、米国のアトランタ、ニューヨーク、サンディエゴ、サンフランシスコに引用商標4を使用して宿泊施設の提供を行うホテルを経営している(甲28ないし31)。これらのホテルは我が国の需要者にも紹介され、また宿泊等をした需要者からは高い評価を得ている(甲32ないし39)。
(ウ)以上のことを総合的に考慮すると、引用商標は、本件商標の登録出願日である平成23年(2011年)11月28日以前から現在に至るまで、外国はもとより我が国需要者においても広く知られており、純粋なホテル事業の以外の分野においても強力な自他役務識別力を発揮する著名商標であることは明らかである。
イ 本件商標が使用された場合の出所の混同のおそれについて
本件商標の登録出願日・登録査定日において、引用商標は著名商標であった。
また、本件商標は、その全体の称呼が10音とやや冗長であるため、前半部分と後半部分に分離して認識されやすく、その前半部分の称呼「マリオット」が引用商標1ないし3の称呼と同一であるため、引用商標1ないし3と類似する。
さらに本件商標は、引用商標4とは「T」一字の有無の差しかなく、またその全体の称呼が同一であるため、両商標はほぼ同一といって良いほどに類似する。
そのような本件商標を指定役務に使用すると、引用商標のバリエーションの一つであるかのように容易に認識され、恰も当該役務がマリオットイックーナショナル社又は同社と経済的或いは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について混同を招くおそれがある。
ウ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し登録を受けることができない商標である。
(2)商標法第4条第1項第19号の該当性について
引用商標が日本国内及び外国における需要者の間で広く認識されていること及び本件商標は引用商標に類似することは上述のとおりである。
商標権者は、上述のように世界的に極めて商い著名性を有する引用商標1ないし3の称呼と完全に同一の称呼を有する「MARRIOT」の文字を、マリオットインターナショナル社又は申立人の承諾なく、需要者の注意を引く商標の前半に有する本件商標を採択・登録したものである。
なお、「marriott」や「marriot」の語は、いずれも英和辞書にも掲載されていないものであり(甲40)、決して一般的な既成語とはいえないものであるため、商標権者が偶然に採択したものとは極めて考えにくい。
これらのことから、商標権者の前記行為には引用商標1、2、3の著名性にただ乗りしようとする不正の目的があったと推認するのが妥当である。
まして、上述のとおり、本件商標は引用商標4とはほぼ同一と言っても良いほど類似するものである。「marquis」の語自体は「侯爵」の意味を有する既成語であるが(甲40)、この語と前記の「Marriot」の語を組み合わせること自体に何らの必然性もない。これら2語を結合するという発想が、引用商標4採択の発想と酷似していることが全くの偶然によるものとは到底考えられない。また、そのような本件商標の登録が維持された場合には、引用商標4の強力な出所表示機能が希釈化され、マリオットインターナショナル社が企業努力をもって築いている引用商標4の評判・名声が毀損されるおそれも高いと考えざるを得ない。したがって、本件商標は引用商標4との関係においても、本件商標は不正の目的をもって使用されることを前提に取得されたものであることは明らかである。
以上のことから、本件商標は、マリオットインターナショナル社の業務にかかる役務を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるため、商標法第4条第1項第19号に該当し登録を受けることができない商標である。
(3)むすび
上記のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び第19号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、取り消されるべきものである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 本件商標及び引用商標の構成について
(ア)本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「MARRIOT MARQUIS」の欧文字を横書きしてなり、その構成中の「MARRIOT」の文字部分は、辞書に掲載されていない語であって、特定の意味合いを有しないものであり、また、「MARQUIS」の文字部分は、「マーキーズ」と発音され、「侯爵」の意味を有する英語(甲40)と認められるものであるが、例えば、「ベーシック ジーニアス英和辞典」(株式会社大修館書店)などには掲載がなく、我が国において一般に親しまれている語ということはできないことから、構成文字全体として、特定の意味合いを有しない一種の造語として理解されるものである。
そして、本件商標は、該両語の間に一文字程度の間隔を有するが、その構成文字は、それぞれ同じ書体、等間隔に表され、全体として、外観の構成がまとまりよく表されており、これより生ずる「マリオットマーキーズ」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。
そうすると、本件商標は、そのまとまりのいい構成から不可分一体の商標として看取されるものであって、その構成文字に相応して「マリオットマーキーズ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標
これに対して、引用商標1ないし3は、前記2に記載のとおりの構成からなるところ、特に引用商標3は、語頭の「M」の文字に特徴を有するものであるが、それらの構成文字である「MARRIOTT」又は「マリオット」の各語は、辞書に掲載されていない語であり、また、我が国において一般に親しまれている語ではないことから、全体として、特定の意味合いを有しない一種の造語として理解されるものである。
そして、引用商標1ないし3は、いずれもその構成文字に相応して、「マリオット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
また、引用商標4は、別掲(4)のとおり、「MARRIOTT.」と「MARQUIS」の欧文字を二段に書してなるところ、該「MARRIOTT.」の文字においては、語頭の「M」の文字が引用商標3と同じ特徴を有するものであるが、その構成文字である「MARRIOTT」の文字部分は、上記と同様であり、また、「MARQUIS」の文字部分は、前記(ア)に記載したのと同様に、我が国において一般に親しまれている語ではないことから、全体として、特定の意味合いを有しない一種の造語として理解されるものである。
そして、引用商標4は、該両語に文字の大小の差異を有し、「MARRIOTT」の文字にピリオド(「.」)と思しきものが付されているとしても、その構成文字は、同じ色彩で、全体として外観の構成がまとまりよく表されており、これより生ずる「マリオットマーキーズ」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。
そうすると、引用商標4は、その構成文字に相応して「マリオットマーキーズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について
(ア)本件商標と引用商標1ないし3との類否について検討するに、両者は、外観において、それぞれ前記アのとおりであるから、その構成文字において、明らかな差異を有するものであって、明確に区別できるものである。
称呼においては、本件商標から生ずる「マリオットマーキーズ」と引用商標1ないし3から生ずる「マリオット」とは、本件商標の前半における「マリオット」の称呼を共通にするとしても、これに続く後半の「マーキーズ」の音の有無に差異を有し、称呼上明確に相違するものであるから、これらをそれぞれ一連に称呼するときには、相紛れることなく区別し得るものである。
また、観念においては、本件商標と引用商標1ないし3とは、いずれも観念を生じないものであるから、観念上比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標1ないし3とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではなく、互いに非類似の商標というべきものである。
(イ)本件商標と引用商標4との類否について検討するに、両者は、外観において、それぞれ前記アのとおりであって、それぞれの構成中の「MARRIOT」と「MARRIOTT.」の文字において、語尾の「T.」の有無に相違を有するものであるが、そのほかの文字及び綴りを共通にするものであるから、外観上近似しており、互いに相紛れるおそれのあるものである。
称呼においては、本件商標と引用商標4は、いずれも「マリオットマーキーズ」の称呼を生じるものであるから、称呼上同一のものである。
また、観念においては、本件商標と引用商標4とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上比較することができない。
そうすると、本件商標は、引用商標4と観念において比較できないとしても、外観において類似し、称呼を同一にするものであるから、互いに類似する商標というべきである。
ウ 引用商標の周知性について
申立人の提出に係る甲各号証によれば、引用商標1ないし3に係る「MARRIOTT」又は「マリオット」の文字は、同人の複数のホテルに関連するホームページにおいて使用されている(甲5、7ないし17)。
そして、我が国においては、名古屋、沖縄、東京(錦糸町、銀座)、札幌、岐阜などにおいて、同人のグループのホテルが存在しており、また、外国においても、多数のホテルが存在するものである(甲20ないし27)。
してみれば、申立人が使用する商標として、引用商標1ないし3に係る商標は、ホテル業界における取引者、需要者間において広く知られていると認められるものである。
また、引用商標4については、アトランタ、ニューヨーク、サンディエゴ、サンフランシスコの4カ所で、同人のグループホテルの一つである「Marriott Marquis」で使用されている商標であるが、その提出された証拠は、インターネット情報のみであって、また、申立人の作成した表によれば、2005年から2011年の間では、各年の予約泊数が3,200から6,300程度であって、その利用客数からすれば、我が国において、引用商標4が周知、著名になっているものとは認められないものである(甲28ないし39)。
エ 本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る役務及び取引者、需要者の共通性について
本件商標の指定役務は、第35類ないし第37類に属する主として自動車に関連する役務であるのに対して、引用商標の使用に係る役務は、主として「宿泊施設の提供」であるから、本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る役務とは、関連性がない全く異なる業種におけるものというべきものである。したがって、これらの役務についての取引者、需要者の共通性は認められないものである。
オ 混同のおそれについて
上記ウのとおり、引用商標1ないし3に係る商標がホテル業界における取引者、需要者間において、広く知られていると認められるものであるとしても、本件商標は、引用商標1ないし3とは、別異の出所を表示する商標として看取されるばかりでなく、その指定役務と引用商標1ないし3の使用に係る役務とは関連性がなく、需要者の共通性も認められないものであるから、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者において、その役務が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのようにその出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
また、本件商標は、引用商標4とは、類似性の程度が高いとしても、我が国において引用商標4の周知性が認められないものであり、その指定役務と引用商標4の使用に係る役務とは関連性がなく、需要者の共通性も認められないものであるから、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者において、その役務が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのようにその出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
カ 小括
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものでない。
(2)商標法第4条第1項第19号の該当性について
本件商標は、上記(1)イのとおり、引用商標1ないし3とは非類似の商標であり、また、本件商標は、引用商標4とは類似の商標であるとしても、同一の文字綴りではないし、提出された証拠によっては、引用商標4は、我が国及び外国において周知、著名であるとは認められないものである。
そうすると、本件商標は、引用商標の著名性にただ乗りしようとする不正の目的があったということはできないというのが相当である。
また、申立人は、本件商標が不正の目的をもって使用するものであるとの具体的事実について、主張、立証していない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものでもない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり決定する。
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