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Trademark Appeal Case

著名商標の称呼類否と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2011−890072(T2011−890072/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

登録第4980761号商標(以下「本件商標」という。)は、「インテルグロー」の片仮名を標準文字で表してなり、平成18年1月19日に登録出願、第19類「タール類及びピッチ類,建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,区画表示帯,セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス,吹付け塗装用ブース(金属製のものを除く。),セメント製品製造用型枠(金属製のものを除く。),送水管用バルブ(金属製又はプラスチック製のものを除く。),道路標識(金属製又は発光式若しくは機械式のものを除く。),航路標識(金属製又は発光式のものを除く。),貯蔵槽類(金属製又はプラスチック製のものを除く。),ビット及びボラード(金属製のものを除く。),石製郵便受け,建具(金属製のものを除く。),灯ろう,可搬式家庭用温室(金属製のものを除く。),石製彫刻,コンクリート製彫刻,大理石製彫刻,鉱物性基礎材料」及び第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定商品・指定役務として、同年8月2日に登録査定、同月18日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第54号証(枝番を含む。)を提出した。

1 請求の根拠

本件商標は、以下の理由及び提出した証拠より明らかなとおり、商標法(以下「法」という。)第4条第1項第8号、同第11号、同第15号、同第19号及び同第7号に違反して登録されたものであるから、法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

2 利害関係

請求人は、世界的に広く知られている半導体メーカーであるインテル・コーポレーションであり、その略称である「インテル」及び「INTEL」を、マイクロプロセッサを中心とする半導体等の電子応用機械器具、及び、通信機器等に商標として使用し、我が国においては著名な商標として防護標章登録が認められているから、需要者・取引者は周知著名な登録商標として認知している(甲第4号証、甲第5号証及び甲第10号証)。

一方、本件商標は、片仮名の標準文字をもって「インテルグロー」の表示からなる商標である。よって、本件商標は、請求人の名称であるインテル・コーポレーションの略称である「インテル」を含む商標であるから、請求人の人格的利益を毀損するものである。

また、本件商標は、請求人の上記登録商標「インテル」又は「INTEL」と同一の称呼を有する「インテル」を含む類似する商標であり、本件商標の登録及び使用は、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがある。

そして、本件商標は、上記請求人商標の世界的な名声、顧客吸引力に便乗するものであり、少なくとも、請求人と無関係の被請求人が本件商標を使用すれば、請求人の著名商標「インテル」、「INTEL」の出所表示力及び顧客吸引力が希釈化され、請求人に精神的及び経済的な損害を与えることが明らかである。

したがって、請求人は、本件審判の請求について利害関係を有する。

3 本件商標登録を無効とすべき理由

(1)請求人会社の沿革及び名声

請求人「Intel Corporation」(インテル・コーポレーション)は、1968年(昭和43年)7月18日にアメリカ合衆国カリフォルニア州でGordon E.Moore(ゴードン・E・ムーア)及びRobert N.Noyce(ロバート・N・ノイス)により創業された世界最大の半導体製品メーカーである。請求人の日本での本格的な営業活動は、1971年(昭和46年)10月開設の「インテルコーポレーション日本支社」(東京都渋谷区)により開始され、1976年(昭和51年)4月28日には「インテルジャパン株式会社」(東京都世田谷区)として法人登記され、その後、つくば本社(茨城県つくば市東光台)及び東京本社(東京都千代田区丸の内)が設置された。そして、同社は1997年(平成9年)に「インテル株式会社」と名称変更して現在に至る。(以上、甲第13号証)

半導体業界における請求人の名声は、1970年(昭和45年)に世界初のICメモリ(商用DRAM)「1103」を、また、1971年(昭和46年)に世界初のマイクロプロセッサ「4004」を開発したことに始まり、これ以後、現在に至るまで、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ向けのプロセッサでは、「8008」、「8086」、「286」、「INTEL 386」、「INTEL 486」、「Pentium」、「Pentium II」、「Celeron」、「Pentium III」、「Pentium 4」といったように、数年毎に先進技術のマイクロプロセッサを開発、製品化し(甲第14号証)、マイクロプロセッサの世界市場の約80%を占めている(甲第15号証)。

請求人の世界半導体市場の売上ランキングは、1989年(平成元年)の8位、1990年(平成2年)の5位、1991年(平成3年)の3位に続き、1992年(平成4年)に1位を獲得して以降、2010年(平成22年)まで19年連続して半導体売上高で世界第1位を維持している(甲第16号証ないし甲第18号証)。

1990年(平成2年)末から1991年(平成3年)初頭、請求人は、商標「INTEL」を冒頭に冠した「INTEL INSIDE」の文字及び甲第19号証に示すとおりの構成からなる「intel inside」の文字からなるロゴマークを商標として採択し、当該商標に関して「インテル・インサイド・プログラム」(INTEL INSIDE PROGRAM)と命名した商標使用許諾制度を導入した(甲第20号証)。

インテル・インサイド・プログラムは、「intel inside」のロゴマークと「PENTIUM」等の請求人の個別商品の名称を、請求人のマイクロプロセッサを搭載したパーソナルコンピュータ等の商品を製造販売するOEMメーカーに使用許諾し、当該商品の広告宣伝活動を請求人が経済的に支援するものである。このインテル・インサイド・プログラムに基づいて、上記の「Pentium」、「Pentium II」、「Celeron」、「Pentium III」、「Pentium 4」といった請求人のマイクロプロセッサの名称が、「intel inside」のロゴマークと共に、当該各種マイクロプロセッサを搭載したライセンシーの製造販売に係るコンピュータ製品等にステッカーとして貼付され、また当該製品のパンフレット、広告記事、テレビコマーシャル等の広告宣伝活動に使用されてきた。

例えば、日本国内では、日本電気、松下電器産業(現パナソニック)、日立製作所、シャープ、三菱電機、東芝、ソニー、富士通、日本IBM、セイコーエプソン、デルコンピュータといった日本を代表する大手電機・コンピュータメーカー等に請求人の商標が使用許諾され、これらのライセンシーが製造販売するコンピュータ関連の商品及びその広告活動に広く使用されるに至った(甲第21号証ないし甲第48号証)。

このインテル・インサイド・プログラムの成功と請求人及びライセンシー各社による「intel inside」のロゴマークをはじめとする請求人の商標の広範な使用により、一般消費者が請求人のプロセッサを搭載したパソコン等の最終製品を外部から認識することができるようになった。これと同時に、請求人の商標「INTEL」に止まらず、「Pentium」や「Celeron」といった請求人の個別商品商標が、家庭の一般消費者の目に触れる機会が増大し、コンピュータ関連製品を取り扱う取引者のみならず、一般の消費者の間における請求人の知名度は大きく上昇した(甲第49号証及び甲第50号証)。

加えて、1994年(平成6年)頃から急速に浸透した職場環境におけるパソコン一人一台時代の到来(甲第51号証)、一般家庭へのパソコンの普及、インターネット等情報通信技術産業の発展と相まって、請求人は、半導体・コンピュータ関連の取引者、需要者のみならず、業種を越えて、一般の消費者を含む広範囲の需要者の間でも広く知られるようになっている。

(2)無効理由の詳細

ア 法第4条第1項第8号

(ア)本件商標は、甲第1号証が示すとおり、標準文字をもって「インテルグロー」と表示する商標である。しかし、請求人の名称であるインテル・コーポレーションの著名な略称「インテル」を含むものであり、かつ、その登録につき、請求人の承諾を得ていないものである。

(イ)請求人の名称であるインテル・コーポレーションは、前述のとおり、主にマイクロプロセッサ、チップセット、フラッシュメモリなどを製造・販売する世界最大の半導体企業の商号として周知であり、その略称である「インテル」は、インテル・コーポレーションの略称として著名な名称である。

そして、日本においては、「インテル」の称呼が唯一発生する英文字商標「INTEL」(登録1373591号、甲第52号証)及び「INTEL」(登録4456379号、甲第3号証)が、請求人の名義にて第9類の指定商品「その他の電子応用機械器具及びその部品」等に関して登録されていることに加え、「INTEL」(登録4456379号、甲第3号証)が、登録4456379号防護1号(甲第4号証及び甲第10号証)及び登録4456379号防護2号(甲第5号証)として第1類ないし第45類に登録されている事実からも、「インテル」の名称が、日本においても請求人が製造販売する「マイクロプロセッサ、チップセット、フラッシュメモリ」の商標として周知な名称であることは明らかである。

特に、登録4456379号防護1号は、第19類及び第37類に属する商標登録原簿に記載の指定商品及び指定役務を含むため、第三者が商標「INTEL」又は同一の称呼が生じる「インテル」をその指定商品及び指定役務に使用した場合は、請求人の周知著名な商標である「INTEL」と混同を生じるおそれがある。そして、これらの指定商品及び指定役務は、本件商標の指定商品及び指定役務と一致する。

(ウ)法第4条第1項第8号における「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称を含む商標」については、「その他人の承諾を得ているもの」を除き、人格的利益の侵害のおそれがあることなどのその他の要件を加味して、その適否を考えることは妥当ではない。

もっとも、本件商標の指定商品及び指定役務は、前述のとおり、請求人の登録防護標章に係る指定商品及び指定役務と同一であるから、商品又は役務の出所混同を生じるおそれがあるが、仮に出所混同を生じるおそれがないとしても、出願人と他人との間で商品又は役務の出所の混同のおそれの有無、及び、いずれかが周知著名であるということは考慮する必要がないため、法第4条第1項第8号の適用を妨げるものではない。

なお、「インテル」の名称が日本において「マイクロプロセッサ、チップセット、フラッシュメモリ」等の商標として周知であることは、裁判所においても、「『INTEL』は、本件商標(平成19年12月20日、知的財産高等裁判所第4部判決、平成19年(行ケ)第10113号において審理された請求人以外の第三者商標)が出願された平成14年当時において、パソコンを日常生活や業務で使用するなどパソコンに何らかの関係を有する極めて広範囲の国民の間に、『INTEL』といえば原告(インテル・コーポレーション)を表わす略称として広く知れ渡っていたものと推認することができる」と認定した事実からも、疑問を差し挟む余地はない(平成19年12月20日、知的財産高等裁判所第4部判決、平成19年(行ケ)第10113号、甲第53号証)。

(エ)世界的なブランド価値評価会社であるインターブランド社の調査によれば、請求人の名称の略称である「INTEL」は、2010年の「グローバルブランドランキングTOP100」において第7位の位置にあり、その経済価値は、32,015百万US$(約2兆5,612億円)に相当するものと評価された(甲第54号証)。第6位は、日本においても著名な外食産業のブランド「McDonald’s」、第8位は、同様に日本において著名な通信機器のブランド「NOKIA」がランク付けされていることからも、我が国において「INTEL」が著名であることは明白である。

(オ)本件商標を検討するに、同商標は「インテルグロー」から構成されるところ、請求人の名称の著名な略称である「インテル」をそっくりそのまま含むものであり、かかる登録は請求人の人格的利益を毀損するものであるため、法第4条第1項第8号に該当し登録されるべきではない。

また、請求人の名称の著名な略称「インテル」は、特定の観念を有さない造語である。仮に、需要者・取引者が造語からなる周知著名な商標である「ソニー」、「トイザラス」、「パナソニック」、「グーグル」を含む名称である「ソニーグロー」、「トイザラスグロー」、「パナソニックグロー」、「グーグルグロー」などの商標について、需要者・取引者が第三者の著名な略称である「ソニー」、「トイザラス」、「パナソニック」、「グーグル」を想起・連想することが火を見るより明らかであると同様に、「インテルグロー」についても、需要者・取引者が請求人の著名な略称である「インテル」を想起・連想することには十分な理由がある。

特に、本件商標「インテルグロー」は、これを構成する各文字が同一の書体、大きさで、一連に表示されており、各文字の書体に格別の特異性はないものであるところ、7文字のうち、語頭からの4文字は、請求人の著名な造語の略称である「インテル」と完全に一致しているのに対し、これに付随する語尾の3文字「グロー」は、英語においては、「育つ」、「成長する」、「発達する」の意の語を形成する場合に用いられる単語であって、我が国における英語の知識の普及度に徴すると「インテル社とともに育つ」、「インテル社の成長」、「インテル社の発展」等の語意を直感するにとどまる者が多いことは明らかである。

してみると、本件商標は、一般世人がこれに接した場合、「インテルグロー」の構成から、本件商標の著名な略称である「インテル」を容易に想起看取し、その主要部を「インテル」として理解する蓋然性が極めて大きい構成のものであるといわざるを得ない。よって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標というべきものである。

(カ)以上より、本件商標は、請求人の著名な略称である「インテル」を含み、かつ、請求人が本件商標の出願人にその商標登録に関し承諾を与えた事実もない。

よって、本件商標は、商標登録の無効理由を有するため、無効にされるべきである。

イ 法第4条第1項第11号

(ア)引用商標

本件商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似する指定商品及び指定役務を有する請求人所有の登録商標は、登録第4362619号商標(甲第2号証)、登録第4456379号商標(甲第3号証)、登録第4634154号商標(甲第6号証)、登録第4997875号商標(甲第7号証)、登録第5054296号商標(甲第8号証)、登録第5076985号商標(甲第9号証)、登録第4614499号商標(甲第11号証)及び登録第4733468号商標(甲第12号証)である(当該商標に係る各商標権の概要は、順に別掲1の(1)ないし(8)に記載のとおりである。なお、これらの登録商標を一括して、以下「引用商標」という。)。

(イ)本件商標と引用商標との類否

本件商標「インテルグロー」において、商標としての自他商品の識別力を発揮する部分、すなわち、商標の要部は「インテルグロー」であるから、本件商標からは「インテルグロー」の称呼が発生する。

そして、本件商標のうち、「インテル」の部分は、前述のとおり、請求人の所有する商標として「電子応用機械器具」に関し周知・著名な標章であり、また、第三者が標章「インテル」を本件商標の指定商品に使用した場合は、請求人の業務に係る商品であると認識することは、請求人が商標登録第4456379号防護1号の防護標章登録を所有していることからも明らかである。

したがって、「インテルグロー」が本件商標の指定商品及び指定役務について使用される場合には、需要者・取引者は、商標登録第4456379号の所有者である請求人の提供に係る商品及び役務であると混同するのであるから、上記の商標「インテル」の周知・著名性より、「インテル」が本件商標の指定商品及び指定役務の分野における取引者、需要者に対しても商品・役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることに照らすと、本件商標からは、「インテルグロー」という一連の称呼のほか、「インテル」という称呼及び「インテル」が請求人を指し示す名称の著名な略称であるとの観念が生じることは明らかである。

特に、本件商標の構成中の「グロー」は、我が国の英語教育の習熟レベルに照らせば、「育つ」、「成長する」、「発達する」の観念を需要者・取引者は容易に認識するから、造語である「インテル」とは明瞭に区別して認識できる標章である。

また、かかる商標の要部の抽出を標章の類否という観点より検討すれば、指定商品・指定役務について、需要者の間に「広く認識された他人の登録商標と他の文字と結合した商標」は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、その他人の登録商標と類似するものと判断することが妥当である。

よって、本件商標の称呼である「インテルグロー」のうち、需要者・取引者が認識する称呼「インテル」は、引用商標の称呼「インテル」と同一であるから、本件商標と引用商標とは、類似と認定されるべきものである。

以上より、本件商標は、引用商標に類似する商標であって、引用商標に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものであるから、法第4条第1項第11号に該当し、その登録は無効にされるべきものである。

ウ 法第4条第1項第15号

請求人の著名な略称である「インテル」は、前述のとおり、同一の称呼を有する防護標章登録「INTEL」が、第1類から第45類に属するすべての商品及び役務について登録されている(甲第4号証、甲第5号証及び甲第10号証)から、需要者・取引者は、かかる防護標章登録と実質的に同一の「インテル」を標章に含む本件商標に接した場合は、商品・役務の出所について、出所の混同を生じることは明らかである。

また、本件商標から生じる称呼「インテルグロー」については、その構成態様から「インテル社の成長」、「インテル社の発展」など「請求人を指し示す観念」が必ず生じるから、本件商標に接する需要者・取引者においては、請求人の関連会社、小会社若しくはインテル社のライセンシーであるなどの密接な資本的・人的・事業的な関連性を誤認するおそれ、すなわち「広義の混同」を引き起こすおそれがある。

本号が、周知著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とすること、及び、本件商標の指定商品及び指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断するならば、本件商標をその指定商品・役務について使用するときは、請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。

よって、需要者・取引者は、かかる防護標章登録と実質的に同一の「インテル」を標章に含む本件商標に接した場合は、商品・役務の出所について、出所の混同を生じることは明らかであるから、本件商標は、法第4条第1項第15号に該当し無効にされるべきである。

エ 法第4条第1項第19号

(ア)請求人の所有する登録1373591号商標(甲第52号証)及び登録4456379号商標(甲第3号証)は、本件商標の登録出願時である平成18年1月19日の時点において、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標であることは明らかである。このことは、商標登録第4456379号防護1号(甲第4号証及び甲第10号証)が、平成14年9月6日に登録され、現在も有効に存続している事実から、少なくとも日本においては、需要者の間に広く認識されている商標であることは明らかである。

(イ)不正の目的は、以下の点について検討する必要がある。

a 他人の商標が需要者の間に広く知られているか(使用時期、使用範囲、使用頻度等)

請求人の商標「インテル」又は「INTEL」が本件商標の登録出願時及び登録査定時において需要者の間に広く知られていることは、上記のとおり、明らかである。

b その周知商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものであるか

請求人の商標「インテル」又は「INTEL」は、本来的に特定の観念を持たない造語である。すなわち、請求人が独自に創作した標章であるから、本件商標の出願人が「インテル」を標章の一部に採択する必然的な理由はない。

c 出願人がその商標を使用した場合、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあるか

請求人の所有に係る商標は、ブランドとしての経済価値が2010年の「グローバルブランドランキングTOP100」において第7位であり、その経済価値は、32,015百万US$(約2兆5,612億円)に相当するものと評価されている(甲第54号証)。よって、本件商標の名義人がその商標を使用した場合は、周知商標「INTEL」(インテル)に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りし、その信用・名声及び顧客吸引力を利用することが可能である。

特に、本件商標の構成中の「インテル」は、一以上の外国において、周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであり、また、その周知な商標である「インテル」が造語よりなるものであることからすれば、請求人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認することが妥当である。

よって、本件商標は、他人である請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、法第4条第1項第19号に該当し、無効とされるべきものである。

オ 法第4条第1項第7号

これまで詳細に述べた理由によれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人の商標「インテル」及び「INTEL」が我が国において周知・著名な商標として認識されるに至っていたことは明らかであり、かつ、当該周知・著名性と請求人の提供に係る商品が昨今においては広く一般において使用されている状況より、本件商標の登録出願当時の出願人は、請求人の商標「インテル」及び「INTEL」が需要者・取引者において広く認識されていたことを熟知していたというべきである。

また、本件商標の構成中に含まれる「インテル」は、請求人商標と同一又は類似であるとともに、特定の観念を持たない造語であるから、本件商標の登録出願当時の出願人は、日本及び外国において広く認識されている請求人商標の存在を知って本件商標を出願したものと優に推認できるものである。

よって、被請求人は、海外において広く認識されている請求人商標を知り、同商標を一部に取り込んだ商標を出願して登録を受けたものと考えることが自然である。

本件商標の登録を認めることは、高い著名性を有する請求人商標「インテル」及び「INTEL」の世界的な名声、顧客吸引力へのただ乗り(フリーライド)を是認するものであり、また、請求人と無関係の被請求人が本件商標を使用することは、請求人の著名商標の出所表示力及び顧客吸引力の稀釈化(ダイリューション)を招来するものである。

したがって、本件商標の登録は、法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものであり、公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあり、法第4条第1項第7号に該当し、無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。

1 法第4条第1項第8号

本件商標は、標準文字よりなり、一連一体に書されて「インテル」と「グロー」に分離されない造語であり、請求人の名称「インテル」を認識することはなく、本件商標は請求人の略称を含む商標ではない。

本件商標は、標準文字の同間隔で表わされ、かつ全体として冗長でもなく、全体として識別力を発揮し、一連一体に「インテルグロー」の称呼のみを生じる造語であり、「インテルグロー」が請求人及びその他の名称を想起・連想させるものではなく、請求人の人格的利益を侵害するおそれもない。

「intel」を含む言葉は、「intelligent」や「intellectual」等、我が国において親しまれており、この語頭5文字を含む商標は請求人会社とは関係なく多数採択され、登録されている(乙第1号証ないし乙第12号証)。商標の文字列の中に「インテル」又は「intel」の文字を含む商標について、請求人会社の独占物であるとの主張は、到底妥当なものとはいえない。さらに、請求人の名称「インテル」以外に、イタリアのサッカーチーム「インターナショナル・ミラノ」の「International」からとった略称「インテル(INTER)」も有名であり、「インテル」が一義的な訳ではない。

請求人は、請求人所有の防護標章登録(甲第4号証及び甲第10号証並びに甲第5号証)を挙げ、「INTEL」から生じる称呼「インテル」を使用すると混同を生じるおそれがあるとしているが、請求人の略称「インテル」が著名で、防護標章登録となっているからといって、本件商標は一連にかつ一気に称呼するものであって、本件商標と「インテル」とが混同することはない。

また、請求人は、周知著名な商標である「ソニー」、「トイザラス」、「パナソニック」、「グーグル」を挙げているが、本件の「インテル」とは事案が異なる。「ソニー」、「トイザラス」、「パナソニック」、「グーグル」の周知著名な商標は、辞書において「ソニー○○」等はないのに対し、「インテル○○」は、辞書において、「インテルサット【INTELSAT】(国際電気通信衛星機構)」、「インターファクス【Interfax】(ロシア連邦の通信社)」、「インテルポスト【intelpost】(国際電子郵便)」、「インテルメッツォ【intermezzo】(演劇や歌劇の幕間に息ぬきとして演じられる軽い劇)」等があり、これらの言葉は「インテル」を含むが、他の言葉と結びついて、全く異なる言葉として認識されている。本件商標も同様であり、「INTELLIGENCE:インテリジェンス(情報)」と「GROW:グロー(成長)」との組合せに由来した一連の語として認識され、「インテル」を想起・連想することはない。

本件商標は、同形・同大・同間隔の文字列で一連に表わされており、このような構成において殊更に分離・分解して、後半部の「グロー」を省略して、前半部の「インテル」の文字部分のみに着目して商取引に当たることはなく、本件商標は、その構成全体を一体不可分と認識され、全体としてよどみなく一連に「インテルグロー」と称呼され、その称呼のみを生じるとみるのが相当である。請求人は、「グロー」の意味と相まって、「インテル社とともに育つ」、「インテル社の成長」、「インテル社の発展」等の語意を直感するとしているが、全く失当である。

前述のとおり、「インテルグロー」は、その由来はともかく、客観的に特別の意味を持たず、かつ同形・同大・同間隔で一連―体に「インテルグロー」と称される造語である。これを「インテル」と「グロー」に分離したり、ましてや「インテル+グロー(成長)」であるとして、請求人の名称「インテル」を連想する又は類似するといった主張は、言い掛かり的なものである。

そもそも、「インテルグロー」が何ら分離性のない一体の造語であることを前提とすれば、「インテル」を含む名称「インテル○○」が、請求人の独占物であるとの主張自体、商標選択の自由を商品の流通秩序を維持しつつ保証する商標制度の趣旨に反するものである。

上記のような判断は、乙第13号証(平成21年(行ケ)第10074号判決)においても確立されている。

以上より、本件商標は、法第4条第1項第8号に該当するものではない。

2 法第4条第1項第11号

請求人が所有する登録商標「インテル」と本件商標「インテルグロー」との類否を検討する。

本件商標は、標準文字の同形・同大・同間隔の文字列で構成されており、外観上一体として把握されるとみるのが自然であり、これを「インテル」と「グロー」とに分離する特段の理由もなく、かかる構成から本件商標は「インテルグロー」とのみ称呼される。このような一連一体で分離不可能な本件商標と「インテル」とは、称呼上、外観上、非類似である。また、両商標は、特定の観念を生じないから、観念上比較することができない。

そうすると、本件商標と請求人が所有する登録商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれはない。

なお、請求人は、「グロー」が「育つ」、「成長する」、「発達する」の観念を認識するとしているが、前述のとおり、一連一体の「インテルグロー」の中でそうした意味が自然に生じるものではない。

以上より、本件商標は、法第4条第1項第11号に該当するものではない。

3 法第4条第1項第15号

前述のとおり、本件商標と請求人の略称は、非類似であり、混同のおそれはなく、甲第13号証ないし甲第51号証によれば、請求人の略称は、本件指定役務とは何ら関連性のない商品である半導体・コンピュータ関連においての出所表示として使用されている。

本件商標を使用する「合成建築専用材料」、「建設工事」を含む本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標に係る分野の商品とは、その需要者、用途等において関連性は薄く、本件商標が、請求人会社に関係したものと消費者が混同することはあり得ない。

また、乙第14号証に示すように、インターネットによる「インテルグロー」の検索の結果において検索されるのは、被請求人に関連するサイトであり、請求人の略称と混同することはない。

さらに、上記1及び2で説明した理由からも、一連―体の造語商標「インテルグロー」から請求人の名称「インテル」が想起されることはない。

以上より、本件商標は、法第4条第1項第15号に該当するものではない。

4 法第4条第1項第19号

本件商標は、一連一体の特別の意味を持たない造語であって、請求人の略称「インテル」よりなるものではなく、インテルの名に乗じて不正使用している事実はない。

以上より、本件商標は、法第4条第1項第19号に該当するものではない。

5 法第4条第1項第7号

インテルではなく、「インテルグロー」が登録商標となっているのであり、その構成自体がきょう激、卑わい及び差別的な印象を与えるような文字からなるものでなく、これをその指定商品・役務について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものでもないし、国際信義上何ら問題なく、乙第14号証に示すとおり、本件商標と「インテル」はまったく別のものとして扱われており、出所表示力及び顧客吸引力の希釈化を招くものではない。

以上より、本件商標は、法第4条第1項第7号に該当するものではない。

6 結論

請求人の主張は、多くの点で独断に満ちており、妥当性を欠くものであって、本件商標は、法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号、同第19号及び同第7号のいずれにも該当しない。

第4 当審の判断

1 法第4条第1項第8号について

(1)本号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標はその他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、人(法人等の団体を含む)は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁)、問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起、連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要するものと解すべきである(知財高裁平成21年10月20日、同年(行ケ)第10074号判決参照)。

(2)略称「インテル」について

ア 請求人の名称が「インテルコーポレーション」と表示されることから、これより法人であることを表示する「コーポレーション」を除いた「インテル」が同人の略称に該当するものであることは明らかである。

イ 請求人の提出した証拠(甲第13号証ないし甲第54号証)及び主張によれば、以下の事実が認められる。

請求人は、集積回路の開発、製造及び販売の事業を行う企業として、昭和43年に米国で設立された会社であり、昭和46年に世界初のマイクロプロセッサー(MPU)を発売し、その後もMPUの開発を続け、次々に製造販売した。その間、売上高も半導体製造分野において1位となり、MPUのシェア80%を占めるなど、世界的規模で事業展開している。そして、我が国においても、日本法人を設立して営業活動を展開している。

その際、「INTEL」、「intel inside」の商標を継続して商品に使用したのに加え、「インテル・インサイド・プログラム」という商標の使用許諾制度を導入して上記商標の使用を許諾し、請求人のマイクロプロセッサを搭載したパーソナルコンピュータ等の商品の広告宣伝活動を支援した。上記商標は、我が国内においても、ライセンシーのコンピュータ関連の商品とその広告宣伝において継続して使用された。

そして、カタログやプレスリリースにおいて、「インテル」の表示をもって自称し、また、請求人に関しての紹介記事において、同人を「INTEL」と表記するもののほか、頻繁に「インテル」と表記されていることが認められる。

ウ しかして、請求人に係る商品に商標「INTEL」や別掲2に示す商標が使用され、「インテル」の称呼をもって、当該商標がその需要者の間で広く認識されるものとなったこと、また、「インテル」の略称(表示)をもって、請求人の業績等が紹介されていることなどに照らせば、請求人の略称である「INTEL」や「インテル」(以下「引用使用商標」という。)は、本件商標の登録出願時には、請求人の業務に係る商品(半導体・集積回路等)の取引者・需要者を始めとして、相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたと推認することができるものである。

(3)本件商標について

本件商標は、「インテルグロー」の文字からなるものであるところ、その構成各文字が、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表されていることに照らせば、外観上一体として把握されるとみるのが自然である上、なじみのない語であり、一見して一連の造語として理解されるというのが相当である。

したがって、本件商標は、たとえその構成文字中に「インテル」の文字を有するとしても、一体不可分のものとして認識されるものであるから、該「インテル」の文字は、本件商標全体の文字列の中に埋没して当該文字部分のみが客観的に把握されるものではないから、請求人を想起させるものではないと認めるのが相当であり、本号の「他人(請求人)の略称を含む商標」には当たらないというべきである。

(4)請求人は、「インテル」に付随する語尾の3文字「グロー」が、英語においては「育つ」、「成長する」、「発達する」の意の語を形成する場合に用いられる単語であって、我が国における英語の普及度に徴すると、「インテル社とともに育つ」、「インテル社の成長」、「インテル社の発展」等の語意を直感するにとどまる者が多いことは明らかである旨主張する。

しかしながら、本件商標は、上記のとおり、一連一体的に構成されたものであって、これを「インテル」と「グロー」とに分離して観察しなければならない格別の理由は見いだせない上、仮に「インテル」と「グロー」とに分離したとして、「グロー」が直ちに何らかの観念をもって理解されるほどに、我が国において知られ親しまれた文字(語)であるとは認められず、また、当該「グロー」が「インテル」部分に付随する性質を有する文字であるとみるべき証左は見いだせない。

しかして、我が国の英語の普及程度を勘案しても、請求人のいうように「グロー」をして英語「grow」の表音とし、「育つ」、「成長する」、「発達する」の意を認識した上で、「インテルグロー」が「インテル社とともに育つ」、「インテル社の成長」、「インテル社の発展」等の意を直感するものとして把握されるとは、到底認め難いといわざるを得ない。

したがって、被請求人の主張は採用できない。

(5)小括

以上のとおり、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標に該当するものとは認められないから、たとえ、請求人の承諾がないとしても、法第4条第1項第8号に違反して登録されたものということはできない。

2 法第4条第1項第11号について

本件商標は、上述のとおり、一連の造語として看取されるものというべきであり、これより「インテル」部分に限定して、出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であるとすべき特段の理由は見いだせない。また、本件商標の構成文字から生じる「インテルグロー」の称呼も格別冗長でなく一気に称呼し得るものであるから、「インテル」の称呼を生じるものとは認められず、「インテルグロー」の一連の称呼のみを生じるものというべきである。

他方、引用商標は、別掲1(1)ないし(8)の「商標の構成」欄に示すとおりの構成からなるものであり、いずれも、その構成文字の「INTEL」、「intel」あるいは「インテル」に相応して「インテル」の称呼を生じるものである。

しかして、本件商標の称呼「インテルグロー」と引用商標の称呼「インテル」を対比しても、構成音数が全く相違する上、後半部で「グロー」の音の有無の明らかな相違により、全体の音感が異なり、彼此相紛れるおそれはないものである。

また、本件商標と引用商標の外観構成は明確に相違するものであり、両者から受ける印象は異なるものであるから、外観上、本件商標と引用商標が相紛れるおそれはないものである。

さらに、本件商標は、特定の観念を生じさせない造語として看取されるものであるから、引用商標と観念について比較することができず、観念上相紛れる余地はないものである。

してみれば、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標に類似する商標であると判断することはできないものである。

なお、請求人は、指定商品・指定役務について、需要者の間に「広く認識された他人の登録商標と他の文字と結合した商標」は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、その他人の登録商標と類似するものと判断することが妥当であると主張する。

しかし、本件商標の指定商品・指定役務の分野において、引用商標が使用され、その需要者間に広く認識された商標となっているとの実情を首肯するに足りる証拠はない。そうすると、請求人の上記主張によっては、本件商標と引用商標とが非類似であるとする上記判断は左右され得ないというべきである。

したがって、本件商標は、指定商品・指定役務について論及するまでもなく、引用商標をもって、法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできない。

3 法第4条第1項第15号について

(1)証拠(甲第53号証ほか)によれば、上記1(2)に記載したように、引用使用商標は、請求人が同人の業務に係る商品(集積回路等)に継続して使用した結果、本件商標の登録出願時には、請求人の商品を表示する商標として、上記商品の需要者の間では広く認識されるに至っていたと認められるものである。

しかし、本件商標の構成中に「インテル」の文字部分を有するものの、本件商標と引用商標とが類似する商標と認められないこと、「インテル」の文字部分を有することをもって、本件商標が請求人と関連づけてみられるともいい難いことは、上記のとおりである。因みに、「インテル」の文字は、「INTEL」の表音に当たるものであるが、「活字組版で、行間を適当な広さにするため挿入する木製または金属製の薄い板」を意味する語でもある(「広辞苑」参照)ことを勘案すれば、唯一、請求人に由来する標章とまでいうことはできないというのが相当である。

さらに、引用使用商標が使用される商品と本件商標の指定商品である「建築用又は構築用の専用材料」等とは、品質・用途・流通経路等が全く異なり、関連性がないか、極めて薄いものである。また、本件商標の指定役務も「建設工事」等であり、引用商標の商品との関連性の程度は極めて低いものである。それゆえ、それぞれの需要者も共通であるとはいえない。

しかして、商標間の類似性の程度、引用使用商標の周知性の程度、使用される商品間又は商品と役務間の関連性の程度、需要者の共通性等を総合勘案してみれば、本件商標をその指定商品・指定役務に使用した場合、これに接する需要者が引用商標や請求人を想起し連想して、当該商品や役務を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品や役務の如く誤信するとは認め難く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるとはいえないと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、法第4条第1項第15号に違反して登録されたものということはできない。

(2)なお、請求人は、商標「INTEL」についての防護標章登録を挙げて、「これと実質的に同一の『インテル』を標章に含む本件商標が指定商品・指定役務に使用されると、出所の混同を生じるおそれがある」旨主張している。

しかしながら、本件商標の指定商品について商標「INTEL」が防護標章登録されているとしても、本件商標が当該防護標章登録の基本の登録商標と同一あるいはこれと類似するものでないことは、前記2のとおりである。

してみれば、本件商標と上記基本の登録商標とは「インテル」の称呼を共通にするものではなく、別異の商標とみるのが相当であるから、挙示の防護標章登録をもって直ちに、本件商標の指定商品・指定役務についての使用により、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるとすることはできないというべきであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

4 法第4条第1項第19号について

引用商標が外国及び我が国において需要者の間に広く認識されている商標に当たるものであるとしても、本件商標が引用商標と同一又は類似するものではないこと前記のとおりであるから、本号の他の要件について論及するまでもなく、本件商標は、法第4条第1項第19号に違反して登録されたものとはいえない。

5 法第4条第1項第7号について

本件商標は、その構成自体において公序良俗を害するおそれがないものであることは明らかである。そして、当事者の主張及び証拠によってみても、その出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあった等の事情をうかがわせる具体的な理由及び証拠は見いだせず、ほかに、本件商標を指定商品・指定役務に使用することが公の秩序を乱すこととなる等の事情も認められないものである。

したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標には該当せず、法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとはいえない。

6 まとめ

以上のとおり、本件商標は、法第4条第1項第7号、同第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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