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Trademark Appeal Case

こやすもちの普通名称・周知性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2013−900021(T2013−900021/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5531908号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5531908号商標(以下「本件商標」という。)は、「こやすもち」の文字を標準文字で表してなり、平成24年6月25日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、同年10月12日に登録査定、同月26日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由の要点

(1)商標法第4条第1項第10号該当性について

「こやすもち(子安餅)」は、古くから宇美八幡宮が主催する放生会等の祭りの際に宇美八幡宮(宇美町青年団)により配布ないし販売されてきた餅を指称する語として認識されており、少なくとも福岡県下においては、周知商標にあたる。

よって、本件商標は、他人の周知商標と同一の商標であり、かつ、同一の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号該当性について

上記(1)のとおり、「こやすもち(子安餅)」は、宇美八幡宮の祭りの際に配布ないし販売される餅を指称するものであるところ、本件商標は、需要者が宇美八幡宮の業務に係る商品である「こやすもち(子安餅)」と誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第19号該当性について

宇美八幡宮の境内に存在する店舗において営業を行う商標権者は、「こやすもち(子安餅)」の名称が宇美町の町民及び宇美八幡宮関係者の共有財産であり、特定人によって排他的・独占的に用いられるべき名称ではないことを当然に認識しているにもかかわらず、本件商標登録によって上記名称の使用を制限し、排他的に利益を得ようとするものであり、取引上の信義則に反する目的、つまり「不正の目的」をもって本件商標の登録出願をしたものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(4)商標法第3条第1項第1号該当性について

「こやすもち」という名称は、宇美八幡宮の祭りの際に製造・販売される「餅」の一般的名称として認識されるに至ったものであって、普通名称にあたるから、本件商標は、商標法第3条第1項第1号に該当する。

(5)商標法第3条第1項第2号該当性について

「こやすもち」という名称は、宇美八幡宮が主催する祭りによって、福岡県糟屋郡宇美町を中心として町民の間で普通に使用されるようになったものであり、慣用されている商標にあたるから、本件商標は、商標法第3条第1項第2号に該当する。

3 当審の判断

(1)本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について

ア 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠(甲第2、第3、第5ないし第15号証)によれば、福岡県糟屋郡宇美町在の宇美八幡宮(申立人)は、古事記にも記載されるように、神功皇后が新羅から帰国中にこの地で応神天皇を出産されたという伝説に由来し、この二人を祭る安産信仰の神社であること、宇美八幡宮では、古くから誕生祭、放生会等の祭りの際に、境内において宇美町青年団の奉仕により餅つきが行われ、できあがった餅は「こやすもち(子安餅)」として境内で販売されていること、上記祭りの際の「こやすもち(子安餅)」については、西日本新聞(甲第8ないし第15号証)で報道されていること、などが認められる。

イ しかしながら、「古しより子安餅の特殊な餅が境内の店で搗かれ、神様に供え買求めるのが通例である。子安餅は黄粉をまぶした小餅で現在は町の青年団若い男女の人々の奉仕に依り行われている。」と記述されている書籍「宇美八幡宮誌」(48頁)は、昭和54年4月に発行されたものであるほか、上記新聞報道は、昭和53年1月から1999年(平成11年)10月までの間の計8回掲載されたにすぎず、本件商標の登録出願前後頃に発行された書籍、新聞等における記事は見当たらない。

また、宇美町ホームページ(甲第5号証)には、「掲載日:2010年11月15日更新」として、宇美八幡宮について、「宇美八幡宮は、神功皇后の伝説が今も伝えられ、・・・十月十五・十六日の放生会には、露店もならび、青年団による『子安もちつき』、商工会による『商工まつり』などいろいろな催しで賑わいます。」との記載が見られるものの、「こやすもち(子安餅)」自体の記述はない。

さらに、餅つきの様子を撮影したものと認められる写真(甲第6及び第7号証)は、その撮影日、撮影場所、撮影者等が一切不明である。

ウ その他、宇美八幡宮(宇美町青年団)に係る「こやすもち(子安餅)」についての販売数量、売上高、販売地域、宣伝広告の事実等を具体的に示す証左は、一切提出されていない。

エ 職権により調査したところ、平成23年5月2日更新の「宇美八幡宮公式ホームページ」には、宇美八幡宮の紹介がされており、「御誕生祭」、「子安祭」、「夏越祭」及び「放生会」について説明されていることが認められるものの、「こやすもち(子安餅)」についての記述は、一切見当たらない。

オ 以上を総合勘案すると、申立人「宇美八幡宮」は、安産信仰の神社として知られ、かつては誕生祭、放生会等の祭りの際に、宇美町青年団の奉仕により餅つきが行われ、できあがった餅が「こやすもち(子安餅)」として境内で販売され、地域の人々の間で人気を博していたことがうかがえるが、それも10数年以上前のことであり、本件商標の登録出願の前後頃には、必ずしも餅つき自体が盛大に行われているとまではいい難く、「こやすもち(子安餅)」として広く販売され、認知されていたものとは認め難い。もともと、上記「こやすもち(子安餅)」は、その製造・販売が宇美八幡宮のお祭り時の境内に限定されるものであり、市場で取引され、転々流通するものともいえないばかりでなく、積極的に宣伝広告等されているものでもない。

そうすると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「こやすもち」又は「子安餅」の文字からなる標章(以下「引用標章」という。)が申立人の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。

したがって、本件商標は、引用標章と同一又は類似であり、同一又は類似の商品に使用するものであるとしても、商標法第4条第1項第10号に該当するものとは認めることができない。

(2)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について

引用標章は、上記のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められないから、引用標章と本件商標との類似性の程度、両者が使用される商品の関連性、取引者、需要者の共通性、その他取引の実情等を考慮したとしても、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者が引用標章ないしは申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は申立人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないものと認められる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

(3)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について

引用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められない以上、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものと認めることができない。

ちなみに、「こやすもち(子安餅)」の名称が、宇美町町民及び宇美八幡宮関係者の共有財産であり、特定人によって排他的・独占的に用いられるべき名称ではないことを具体的に示す証拠はない。

(4)本件商標の商標法第3条第1項第1号該当性について

上記(1)のとおり、申立人の提出に係る証拠によれば、宇美八幡宮のお祭りの際に境内でつかれた餅が「こやすもち(子安餅)」として販売され、そのことが一部西日本新聞で報道されたことが認められるとしても、ほかに、「こやすもち」の文字が、特定の餅を意味するものとして国語辞典、百科事典はもとより、食品関係の辞典・事典や雑誌、書籍等にも掲載されている事実はなく、商品「餅」を取り扱う業界において、特定の餅を指称する語として、普通に採択、使用されている証左もないことからすると、該文字が、商品「餅」を示す普通名称として一般に認識されているものと認めることはできない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第1号に該当するものと認められない。

(5)本件商標の商標法第3条第1項第2号該当性について

申立人のいう「こやすもち(子安餅)」は、一年に数回、宇美八幡宮のお祭りの際に境内でつかれ、販売されるにとどまるものであり、「こやすもち」の文字が、商品「餅」を取り扱う業界において、特定の餅を指称する語として、多数の同業者により広く自由に使用されていることを示す証左はないことからすると、該文字が、商品「餅」について慣用されている商標ということはできない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第2号に該当するものと認められない。

(6)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号並びに同法第3条第1項第1号及び同項第2号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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