Trademark Appeal Case
F1商標の混同誤認
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900321(T2012−900321/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5512323号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成24年3月19日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同年7月18日に登録査定、同年8月3日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当し、同法43条の3第2項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第65号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人が引用する商標
申立人が引用する登録商標は、次のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
ア 登録第4346060号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成6年4月4日
設定登録日:平成11年12月17日
指定商品 :第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
イ 登録第4409583号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:F1 Cafe(「e」の文字にはアクサン−テギュ記号が付されている。)
登録出願日:平成9年7月4日
設定登録日:平成12年8月18日
指定商品 :第25類「ジャケット,スウェットパンツ,スウェットシャツ,スーツ,スポーツシャツ,その他のワイシャツ類,セーター類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,長靴,短靴,その他の履物,仮装用衣服,ヘッドバンド,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
ウ 登録第4409584号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:F1 Restaurants (標準文字)
登録出願日:平成9年7月4日
設定登録日:平成12年8月18日
指定商品 :第25類「ジャケット,スウェットパンツ,スウェットシャツ,スーツ,スポーツシャツ,その他のワイシャツ類,セーター類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,長靴,短靴,その他の履物,仮装用衣服,ヘッドバンド,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
エ 登録第4409585号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:F1 Pit Stop Cafe(「e」の文字にはアクサン−テギュ記号が付されている。)
登録出願日:平成9年7月4日
設定登録日:平成12年8月18日
指定商品 :第25類「ジャケット,スウェットパンツ,スウエットシャツ,スーツ,スポーツシャッツ,その他のワイシャツ類,セーター類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,長靴,短靴,その他の履物,仮装用衣服,ヘッドバンド,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
オ 登録第4688587号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成14年5月20日
設定登録日:平成15年7月4日
指定商品 :第14類「身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」
以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。
(2)申立人の表示の周知著名性の程度
ア 申立人が引用する未登録商標「F1」は、国際自動車連盟(FIA)の下でモーター・スポーツに関する全決定権を有する国際自動車スポーツ連盟(FISA)が認定した世界選手権シリーズのひとつで(甲22)、モーター・レース中で最高峰のレースとされるものの名称(商標)であり(甲61)、「Formula 1」と同義である。
イ 申立人は、「フォーミュラワン ワールド チャンピオンシップ リミテッド(Formula One World Championship Limited)」の子会社で、同社を中心としてなるF1グループの一員として(甲65)、世界的に著名な商標「F1」、「Formula 1」等に関する商標権を始め、多数の知的財産権を所有し、それらのライセンス許諾を業務としており、日本においても「F1」の文字を含む登録商標を多数所有している。
「F1」及び「Formula 1」は、1950年から継続して、FIA主催の人気レースのシリーズを指称するものとして、また、同レースに関連するグッズ販売等の商業活動に係る商標として、長きにわたり使用されてきた。
ウ F1世界選手権は、世界の様々な地域で開催される一連のレースによって構成され、その開催国は、欧州のほか、オーストラリア、北アメリカ、南アメリカ、アジアに及んでおり、各レースには、その都度多くの人が観戦に訪れている。また、そのレースは、日本を含む世界185か国において放映されており、シーズンごとに、およそ5億1,500万もの人々がテレビ放映を通じて観戦し、F1レースに魅了されている(甲20ないし甲34、甲62及び甲64)。
また、F1世界選手権は,現在、オリンピック、FIFAワールドカップとともに、「世界三大スポーツイベント」の一つと称されるほど,世界的に人気かつ有名なスポーツとなっている(甲62)。
日本がF1世界選手権に初めて登場したのは、1964年に開催されたドイツ・グランプリであり、1976年には、日本で初のF1グランプリが富士スピードウェイで開催され、日本中のスポーツ・ファンを大いに沸かせた。その後、1987年からは、鈴鹿サーキットにおいて日本グランプリが開催されて、F1ブームが日本に到来し、毎年日本グランプリが開催されている(甲19、甲29及び甲63)。そして、日本におけるF1レースのテレビ放送は、1976年から1986年まではTBSが、1987年以降、現在に至るまでフジテレビが放送を行っている(甲21ないし甲35及び甲62)。また、F1レースに特化した専門誌が、申立人の許諾の下に複数提供されているほか、その他のモーター・スポーツの専門誌でも、F1レースは必ず大きく特集されている(甲37ないし甲39)。
エ 以上のとおり、「F1」は、日本においては、公衆がその文字や音に接すれば、必ず申立人グループ主催に係るモーター・レースを想起するといっても過言ではない程に広く認識されるに至っており、世界的に見ても、「F1」の文字は、申立人の業務を示す以外にはほかに存在しない唯一無二の著名商標と評せるものである。
(3)本件商標と申立人の表示との類似性の程度
本件商標は、別掲1のとおり、やや横長の四角形の枠の中に「F」の文字を目一杯の大きさで表し、その四角形枠の下部に欧文字「one」を表した構成からなり、それら全体から「エフワン」の称呼が生ずる。
他方、申立人は、「F1」を標準的な書体で使用していることはもちろん、公式ロゴ態様などの様々な態様で使用しており、引用商標は、「エフワン」の称呼で親しまれているものである。
したがって、両商標から生ずる称呼は共通するものであるところ、引用商標の周知・著名性に照らせば、本件商標がその指定商品について使用された場合には、申立人の業務に係る商品と誤認される可能性が極めて高いものである。
(4)申立人の表示の独創性の程度
上記(2)のとおり、「F1」という文字は、申立人グループ主催のモーター・レースを指す以外には存在しない世界で唯一無二の商標であるから、その意味において、「F1」の独自性は、極めて強いと評することができる。
(5)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性
一般的に、プロ野球、プロサッカーリーグ等のスポーツ興行において、それらの興行事業の一環として、各スポーツイベントのロゴマーク等の商標を貼付したTシャツ、帽子、タオルなど多種に及ぶ公式グッズが、競技場、各地のオフィシャルショップなどにおいて販売されていることは顕著な事実である。
そうすると、F1世界選手権が世界的なスポーツイベントとして知られていることから、同イベントの下でTシャツ等の公式グッズが販売されているであろうと一般公衆において認識されていること、そして実際にF1世界選手権において公式グッズが多岐の種類にわたり製造・販売されていることを考慮すれば、引用商標と称呼を共通にする本件商標が、Tシャツ、帽子等を含む被服について使用された場合には、同商品があたかもF1世界選手権の公式グッズであるかのごとく誤認されてしまうといわねばならない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであることが明らかである。
3 当審の判断
(1)自動車レース「F1」の著名性について
申立人の提出に係る証拠によれば、国際自動車連盟(FIA)が主催する国際的なモーター・レースの一つである「F1レース」は、1950年以来毎年開催されていること、F1レースは世界の様々な地域で開催される一連のレースにより構成されるものであること、F1レースはモーター・レースの中で世界最高峰のレースとされ、「F1」(エフワン)又は「Formula1」(フォーミュラワン)と称されていること、F1レースは日本を含む多くの国でテレビ放映されていること、日本では1976年に初めてF1グランプリが富士スピードウェイで開催されテレビ放映されたこと、1987年には鈴鹿サーキットで開催されフジテレビが独占中継していること、それ以降、毎年日本グランプリが開催されていること、F1レース関連グッズが販売されていること、F1レースについては広辞苑始め各種辞典において、「F1」の見出し下に「Formula1」又は「Formula One」として説明されていること、などが認められる。
しかしながら、上記証拠においては、F1レースについては、「F1」(エフワン)、「Formula 1」(フォーミュラワン)、「フォーミュラ1」又は「F−1GRAND PRIX」(F1グランプリ)として紹介、説明されているが、「F−one」の文字を用いて紹介、説明するものは見当たらない。また、引用商標1が「エフワン」と称呼されるものとして広く知られていることを示す事実を見い出すことはできず、引用商標2ないし5と同一といえる商標が使用されている事実は一切見当たらない。
また、F1レースについて紹介する雑誌(甲37及び甲39)及びF1レース関連グッズを紹介するウェブサイト(甲48)は、本件商標の登録出願後にプリントアウト又は発行されたものであり、しかも掲載されている個々の商品には「F1」の標章又は引用商標1が一切表示されていない。さらに、甲第36号証及び甲第44号証ないし甲第47号証は、すべて英文で記載されているものであって、我が国内で発行又は作成されたものとは認められないものであり、F1レース関連グッズに関する甲第43号証も、商品及び標章が不明確であったり、商品写真の撮影日等が不明確なものである。
以上を総合勘案すると、「F1」の標章及び引用商標1は、本件商標の登録出願時には既に、モータースポーツファンを中心に、F1レースを示すものとして広く認識されていたものといえるとしても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「F1」の標章及び引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者に広く認識されていたものと認めるに足る証拠は見いだせない。
(2)本件商標と「F1」の標章及び引用商標との類否について
本件商標は、別掲1のとおり、「F」の文字を隅丸の四角形内一杯に表し、その下方の近接した位置に「one」の文字を配してなるところ、その構成全体から「エフワン」の称呼を生ずるものといえる。
そこで、本件商標と「F1」の標章とを対比するに、両者は、「エフワン」の称呼において一部共通するところがあるとしても、それぞれの構成態様に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、ほかに両者を同一又は類似の商品について使用したときに、出所の混同を生じるおそれがあるというべき特段の事情も見当たらないから、互いに別異のものとして認識し、把握されるものというべきである。
また、引用商標は、前記2(1)のとおりであるところ、仮に、その構成中の「F1」ないし図案化された「F1」が独立して識別標識として機能するとしても、上記のとおり、本件商標と「F1」の標章とが、互いに別異のものとして認識し、把握されるものであることに鑑みれば、引用商標も同様に、本件商標とは別異のものとして認識し、把握されるものというべきである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)及び(2)のとおり、「F1」の標章及び引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者に広く認識されていたとはいえないものであり、また、本件商標は、「F1」の標章及び引用商標とは別異のものとして認識、把握されるものであることからすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が「F1」の標章及び引用商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
(4)結び
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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