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Trademark Appeal Case

故人名の商標登録と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2011−650016(T2011−650016/J1)
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第4類、第16類、第37類、第39類、第40類、第41類及び第42類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2009年(平成21年)3月26日に国際商標登録出願(事後指定)されたものであり、その後、本願の指定商品及び指定役務については、原審における平成22年6月25日付け手続補正書により、別掲2に記載のとおりの商品及び役務に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、世界的に著名な科学者・発明家である『トーマス・エジソン(1847〜1931)』の姓である『EDISON』の文字を含むものであるから、遺族の承諾を得ない限り、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 商標法第4条第1項第7号の意義

商標法4条1項7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決言渡参照)。

2 認定事実

請求人提出の甲各号証及び同人の主張並びに当審における職権に基づく証拠調べによれば、次の事実を認めることができる。

(1)本願商標の構成等

本願商標は、別掲1のとおり、「EDISON」の欧文字を書し、その左上方に円周の一部が欠けている大小二つの円弧を重ねた図形を配した構成からなるものである。

本願の指定商品及び指定役務は、別掲2のとおり、電力を始めとするエネルギー関連の商品又は役務を主とするものである。

(2)トーマス・エジソンについて

トーマス・エジソン(以下「故エジソン」という。)は、1847年2月11日に米国オハイオ州にて生誕し、1931年10月18日に米国ニュージャージー州にて死没した発明家・企業家であって、その発明及び改良は、電信機・電話機・蓄音機・白熱電灯・無線電信・映写機・電気鉄道などにわたり、生涯に1300以上の特許を得て、発明王といわれている。

そして、1882年には、世界最初の中央発電所を設立、直流による電灯事業を起こし、電気の普及に成功した人物である。

また、1999年12月26日に米国のタイム誌が発表した11世紀から20世紀までの各世紀を代表する人物において、19世紀を代表する人物として選ばれている。

さらに、故エジソンの功績を伝える施設には、ヘンリーフォード博物館(米国ミシガン州)、エジソン生誕地博物館(米国オハイオ州)、エジソン国立歴史博物館(米国ニュージャージー州)、石清水八幡宮のエジソン記念碑(京都府)、エジソン・ミュージアム(熊本県)が存在し、母国米国及び我が国においても敬愛されている人物といえる。

(3)請求人(出願人)について

請求人(出願人)であるEDISON S.p.Aは、欧州で最も古い電力会社として1884年に「Societa` Generale Italiana di Elettricita` Sistema Edison (General “Edison System” Italian Electric Company)」の名称で設立された。

その後、数度の社名変更を経て、現在に至るまでの120年以上の間、常に「EDISON」の文字を含む社名を使用しており、現在では、イタリア第2の電力会社として、ヨーロッパ、アフリカ、中東に幅広く電力を供給している。

そして、請求人(出願人)は、自身のウェブサイト(http://www.edison.it/en/index.shtml)において、本願商標をハウスマークとして使用している。

また、小学館が刊行している百科事典「日本大百科全書(ニッポニカ)」をベースとした無料オンライン百科事典「Yahoo!百科事典」に、「エジソン(イタリアの電力会社)」の項が設けられており、請求人(出願人)が紹介されている。

(4)電力業界の実情

上記(2)のとおり、故エジソンは、電力業界に多大な影響を与えた人物であり、例えば、「Consolidated Edison Company」(ニューヨーク)、「Southern California Edison」(ロサンゼルス)、「Commonwealth Edison Company」(シカゴ)等のように故エジソンの姓に通じる「EDISON」の名前を冠した電力・配電会社が少なからず存在し、請求人(出願人)の1884年の設立当時の社名「Societa` Generale Italiana di Elettricita` Sistema Edison (General “Edison System” Italian Electric Company)」も、「Edison System(エジソン・システム)」に由来するものである。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について

上記2において認定したところによれば、本願商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではないことは明らかである。

確かに、故エジソンが母国米国及び我が国において敬愛されている人物であり、本願商標の構成中の「EDISON」の文字が故エジソンの姓に通じるものであることは認められる。

他方、故エジソンが電力業界に多大な影響を与えた人物であり、同業界において、故エジソンに由来する社名の電力会社が請求人(出願人)を含め複数存在しており、それら社名が問題視されることなく、今日まで使用されていることが認められる。

以上の事実に、本願商標が、請求人(出願人)がハウスマークとして用いている該「EDISON」の文字と図形からなるものであることを併せ考慮すれば、本願商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものではなく、本願商標をその指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益、社会の一般的道徳観念及び国際信義に反するものとはいい難く、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されているものでもない。

したがって、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標といえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。

4 まとめ

以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。

その他、本願についての拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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