Trademark Appeal Case
周知商標と不正登録
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900023(T2013−900023/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5530783号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成23年11月24日に登録出願され、第43類「中華料理の提供」を指定役務として、平成24年9月24日に登録査定、同年10月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2 登録異議申立ての理由の要点
(1)商標法第4条第1項第10号について
本件商標と明らかに類似する、別掲(B)のとおりの図形からなる標章(以下「引用図形商標」という。)、「CHINA DOLL」の文字からなる標章又はこれらの結合からなる標章(以下、これら標章をまとめて「引用商標」ということがある。)は、「中華料理の提供」について、株式会社ホームワークス(以下「ホームワークス」という。)又は登録異議申立人である有限会社チャイナドール(以下「申立人」という。)によって平成12年から今日に至るまで広く使用されており、申立人の商標として需要者の間に広く認識されている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上記のとおり、引用商標は申立人の商標として需要者の間に広く認識されているので、本件商標がその指定役務に使用された場合には、その役務の需要者が申立人の業務に係る役務と出所の混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件商標と類似する引用商標が申立人の商標として需要者の間に広く認識されており、また、本件商標権者は、平成20年10月21日から平成23年7月30まで申立人の共同経営者であったところ、投資金の返却を受けて引用商標等に関する一切の権利を放棄し、申立人に不利となることをしないことを約束したにも拘わらず、申立人の店舗を模した店舗を経営し、引用商標にフリーライドして不正の利益を得ようとする不正の目的をもって本件商標を使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
3 当審の判断
(1)本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 申立人は、引用商標が、平成12年から現在に至るまで中華料理の提供について使用された結果、申立人の業務に係る役務を表示する商標として需要者の間に広く認識されている旨主張し、証拠を提出しているので、該証拠について検討する。
(ア)甲第2号証は、有限会社龍商事(以下「龍商事」という。)、株式会社万成商事(以下「万成商事」という。)又はホームワークスの各法人に係る営業許可書の写しと認められるところ、これらの記載内容によれば、飲食店「CHINA DOLL(チャイナドール)」の日比谷店につき、平成15年12月15日付でホームワークスが、平成20年11月7日付で龍商事がそれぞれ営業許可を受けていること、同じく汐留店につき、平成17年1月21日付でホームワークスが、平成20年11月18日付で龍商事がそれぞれ営業許可を受けていること、飲食店「銀座チャイナドール」八千代台店につき、平成23年4月22日付で万成商事が営業許可を受けていることが認められる。
また、甲第19号証は、2008年10月19日付の「譲渡覚書」と題する書面の写しと認められるところ、その内容は、ホームワークスが「CHINA DOLL」の日比谷店及び汐留店の営業を「CHINA DOLL」の商標、ブランド権も含めて龍商事に有償で譲渡するというものである。
これらによれば、営業主体が異なるものの、少なくとも「CHINA DOLL(チャイナドール)」との店名による飲食店が、平成15年末頃から、東京都及びその周辺県において営業されていたものと推認されるが、引用商標の具体的な使用態様、使用方法等については明らかでない。
なお、後掲の甲第11号証によれば、2002年3月27日及び2003年3月5日発行の雑誌「Hanako」において、吉祥寺在の中華料理店「CHINA DOLL(チャイナドール)」が紹介されているが、この店舗の営業主体は明らかでない。
(イ)甲第3及び第17号証は、「汐留・日比谷の中華料理チャイナドール/天鴻餃子房・上海屋台九頭鳥」と題するウェブページの写しと認められるところ、これらによれば、各ページの上段に、引用図形商標及び「CHINA DOLL」の文字からなる引用商標が表示され、甲第3号証の1枚目、4枚目及び5枚目の中段にも上記と同様の引用商標が表示されているほか、「チャイナドール」の日比谷店及び汐留店について「天鴻餃子房」及び「上海屋台九頭鳥」の各店舗と共に掲載され、店舗紹介として店内及び料理を撮影した写真が掲載されていることが認められるものの、これらの内容は、飲食店等を紹介するウェブサイトにおいて一般に見られる範囲を超えるものではない。
なお、甲第3号証の4枚目及び5枚目は1ないし3枚目のページが本件商標の登録出願前に存在していたことを示すwebアーカイブの写しと認められる。
(ウ)甲第4ないし第6号証は、ウェブサイト「ぐるなび」に掲載された「CHINA DOLL ペディ汐留店」、「CHINA DOLL 日比谷シャンテ店」及び「銀座チャイナドール 八千代台店」の各店舗の紹介ページの写し、該紹介ページが本件商標の登録出願前に存在していたことを示すwebアーカイブ等の写し、並びに上記各店舗の紹介ページへのアクセス数を集計した一覧表の写しと認められるところ、これらによれば、上記各店舗の紹介ページには、各店舗の名称の下に、引用図形商標及び「CHINA DOLL」の文字からなる引用商標が表示されると共に、各種料理を撮影した写真が掲載され、コース料理等について説明されていることが認められるものの、これらの内容は、飲食店等を紹介するウェブサイトにおいて一般に見られる範囲を超えるものではなく、上記各店舗がとりわけ需要者の注意を強く惹くというものでもない。
また、上記各店舗の紹介ページへのアクセス件数は、毎月平均1000件程度であることが示されているが、他の店舗等と比較して極めて多いというほどのものではない。
(エ)甲第7号証は、ユアエルム八千代台店のチラシであり、銀座チャイナドール八千代台店について、「NEW SHOP 4/29(金・祝)オープン」の表題下に、引用図形商標、「銀座チャイナドール」及び「CASUAL CHINESE RESTAURANT」の文字が表示され、料理の写真と店舗が他の入居店舗とともに紹介がされていることが認められる。
(オ)甲第8ないし第10号証は、ウェブサイト「Yahoo!ロコ」又は「HOT PEPPER」における「チャイナドール」のキーワードによる検索結果の写しと認められるところ、これらによれば、「CHINA DOLL(チャイナドール)」の日比谷店及び汐留店が検索されること、各店舗についての口コミが記載されていること、各店舗の紹介ページにリンクすることができ、該紹介ページでは店名と共に引用商標が表示されているほか、料理の写真等が掲載され、店舗についての説明等がされていることが認められるものの、これらの内容は、飲食店等を紹介するウェブサイトにおいて一般に見られる範囲を超えるものではなく、上記各店舗がとりわけ需要者の注意を強く惹くというものでもない。
(カ)甲第11号証は、雑誌「Hanako」2002年3月27日号及び2003年3月5日号又は雑誌「おとなの週末」2005年8月号の抜粋写しと認められるところ、これらによれば、「CHINA DOLL(チャイナドール)」の吉祥寺店又は日比谷店について、料理の写真等と共に紹介されていることが認められるものの、店名として認識される「CHINA DOLL(チャイナドール)」の文字以外には引用商標の表示は一切見当たらない。
(キ)甲第12号証は、2009年8月8日又は2008年8月10日に開催された「東京湾大華火祭」に関連する「CHINA DOLL」汐留店の宣伝用ポスター及びチラシの写し並びにその掲示状態を示す店内の写真と認められるところ、これらによれば、該ポスターには、引用商標が「CASUAL CHINESE RESTAURANT」の文字と共に表示され、料理の写真、コース料理の説明等が掲載されており、該ポスターが店内に掲示されていることが認められるものの、上記ポスター及びチラシの発行部数、頒布の事実等は一切明らかでない。
(ク)甲第13号証は、「クリスマスフェアチラシ文字校正のお願い」等と題する2007年11月6日付又は2010年10月23日付の書面及びその添付資料の写しと認められるところ、これらによれば、上記書面は「日比谷シャンテ営業室」から各店舗宛てに発行されたものであり、添付されたチラシには、各店舗名とその代表的な料理が写真と共に一覧表として掲載されていることが認められるものの、店舗名としての「チャイナドール」の文字以外には引用商標は一切見当たらないばかりでなく、これらチラシの発行部数、頒布数、頒布方法等は一切不明である。
(ケ)甲第14号証の1枚目は、「覚書」と題する2008年10月31日付の書面の写しと認められるところ、その内容は、龍商事の経営する飲食店「チャイナドール」において、乙社の従業員に夜食券と引き替えに飲食物を提供し、後日、龍商事は該夜食券を添付して乙社に代金を請求すること等を定めたものであるが、引用商標についての記載は一切見当たらない。
また、乙第14号証の2枚目ないし5枚目は、ホームワークス(なお、電話番号には、チャイナドール汐留店の番号が記載されている。)から、食事代を請求する平成17年4月30日〜平成18年6月15日の請求書4通である。
(コ)甲第15号証は、「CHINA DOLL」日比谷店の発行に係る使用済みのポイントカードの写しと認められるところ、該ポイントカードの表面に引用商標が表示され、裏面にスタンプが押されていることが認められ、また、平成22年及び同23年に回収されたポイントカード(92枚及び98枚)を撮影した写真が添付されているものの、上記ポイントカードは飲食店等で一般に使用されているものと同類であり、殊更需要者の注意を強く惹くものではないし、その使用枚数もそれ程多いとはいえない。
(サ)甲第16号証は、申立人によれば、CHINA DOLL日比谷店において使用されている注文票及びレシートとのことであるが、これは、顧客が同店において2011年5月30日に飲食したことを示すに止まるものである。
イ 以上によれば、引用商標は、中華料理の提供について平成15年頃から、東京都及び周辺県における店舗で使用されているとしても、その店舗数はわずか3店舗にすぎず、その売上高も不明であり、その広告宣伝方法にしても、店舗を紹介するウェブサイトにおいて、一般に見られる範囲を超えるようなものでなく、かつ、雑誌における店舗の紹介記事にしても、掲載雑誌は「Hanako」と「おとなの週末」のみであって、その掲載回数も3回と少ない等、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものとはいえない。
その他、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めるに足る証拠はない。
ウ 一方、本件商標は、別掲(A)のとおり、図形と「CHINA DOLL」の文字からなるものであって、引用図形商標と「CHINA DOLL」の文字からなる引用商標とは、全体の構成において外観上紛らわしく、また、文字部分から生ずる「チャイナドール」の称呼を共通にするものといえるから、外観及び称呼において類似する商標というべきである。また、両商標はいずれも役務「中華料理の提供」について使用されるものである。
しかしながら、前示のとおり、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものとはいえない以上、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえない。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は、引用商標が申立人の商標として需要者の間に広く認識されているので、引用商標と類似する本件商標がその指定役務に使用された場合には、その役務の需要者が申立人の業務に係る役務と出所の混同を生ずるおそれがある旨主張している。
しかしながら、前示のとおり、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものとはいえず、かかる事情の下において、本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該役務が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 申立人は、「CHINA DOLL」の営業がホームワークスから商標と共に申立人に譲渡されたこと、本件商標の商標権者(正しくは「商標権者の代表者」であり、以下「X」という。)は一時期申立人の共同経営者であったことから、上記譲渡の事実を認識していたこと、その後Xは投資金の返却を受けて「CHINA DOLL」に関する一切の権利を放棄し、申立人に対して不利になることを一切しないことを約束したこと、Xは申立人の料理の写真と同一の写真をメニュー等に使用し、店舗の内装及びメニューのデザインも申立人の店舗を模倣していること、などからXは引用商標に類似する本件商標を不正の目的をもって使用しているものである旨主張し、証拠を提出している。
イ 前示のとおり、本件商標が引用商標と外観及び称呼において類似する商標といえるとしても、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものとは認められない以上、本件商標は商標法第4条第1項第19号の要件を欠くものであるが、念のため、申立人の主張について以下に検討する。
ウ 申立人の提出に係る証拠によれば、平成20年10月19日に「CHINA DOLL」の日比谷店及び汐留店の営業が、商標も含めてホームワークスから龍商事(申立人の前身と認められる。)に譲渡されたこと(甲第19号証)、龍商事はXに対し、投資金を返却し、かつ、退職証明を発行すること、Xは龍商事に対して不利なことをせず、秘密を保持することなどについて、2011年8月6日に同意書が作成されたこと(甲第20号証)、Xは2008年10月1日から2011年8月31日までチャイナドール汐留店に勤務していたこと(甲第20号証)、商標権者の営業に係る店舗「新宿CHINA DOLL」において使用する料理の写真は、申立人が使用する料理の写真と同一であること(甲第4、第5、第21及び第22号証)、商標権者の店舗の内装、メニューデザインが申立人の店舗のものと類似していること(甲第23ないし第25号証)が認められる。
エ 他方、本件商標の審査過程において商標権者(出願人)が提出した証拠によれば、龍商事とXはチャイナドールの汐留店及び日比谷店につき共同出資すること、Xは総料理長として人員の採用配置、メニューの開発、コース料理の開発、料理レシピの開発、仕入と在庫のコントロール等の管理職務を果たすこと、龍商事はXに単独会社の設立と投資経営者の在留資格の取得することを協力すること、などについて2008年10月22日に契約書を交わしたことが認められる(乙第4号証訳文)。また、Xは、中華レストランの共同投資、共同経営について申立人代表者から勧誘されたこと、Xは日本語が不自由で、上記共同出資の当時、申立人代表者に店舗購入手続、交渉事項の全てを任せたこと、申立人代表者は料理のことがわからず、全てXに一任され、Xは得意料理の中からメニューを編成し、コース料理の開発、料理レシピの開発を単独で担当したこと、申立人の店舗で使用されている料理の写真、レシピ等はXの著作権によるものであること、などについて商標権者の代表者たるXが上申していることが認められる(乙第5号証訳文)。
かかる経緯に照らすと、申立人の店舗で使用する料理の写真、メニュー等は、むしろXによるものとみるのが自然であるし、一般に、中華料理店の内装等が類似したものとなることが多いことも周知の事実である。そうすると、本件商標は、申立人の店舗や引用商標にフリーライドして不正の利益を得るなどの不正の目的をもって使用するものとはいい難い。
オ 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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