Trademark Appeal Case
商標剽窃と4条1項7号
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2012−900335(T2012−900335/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5518502号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成からなり,平成24年3月27日に登録出願され,第3類「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として,同年8月21日に登録査定,同月31日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
本件登録異議申立人が(以下「申立人」という。),本件商標の商標法第4条第1項第7号該当の理由として引用する商標は,別掲2に示すとおりの構成からなるものである(以下「引用商標」という。)。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
1 理由の要点
本件商標権者(以下「商標権者」という。)は,申立人が本願出願日より10年以上前から使用をしている商標と全く同一の商標を,剽窃的に自ら商標登録しようとするものであるから,本件商標は,社会の一般的道徳観念に反し許されないものであり,商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 具体的理由
(1)申立人(株式会社ラ・フィーネ)について
ア 申立人は,1999年(平成11年)4月に設立され(甲2),発毛サロンを経営すると共に,申立人の代表者が設立当初にデザインしたRaffineの文字を含むロゴマーク(以下「ロゴマーク」という。)を当該サロンやヘアケア化粧品などに付して設立当初より使用し,ホームページなどを通じて全国的に広告,販売などをしてきた者である。
イ 申立人が使用してきたロゴマークは,申立人のホームページ(甲3)や過去に使用していたパンフレット(甲4)などにも表示されている。
ウ 申立人の本店住所は平成15年3月3日に現在地に移転したが(甲2),少なくとも平成15年3月3日時点では当該ロゴマークを申立人が既に使用していたことを明確に示している。また,申立人の美容液のパッケージ印刷デザインを確認するため印刷会社から申立人に宛てて発信された2005年(平成17年)12月16日付ファクシミリ(甲5)からも,この時期,当該ロゴマークを申立人が既に使用していたことが明らかである。
エ 申立人は,会社設立後現在に至るまで,新聞,情報誌,テレビなど多数の各種広告宣伝を行っている(甲6〜21)。これらからも申立人が当該ロゴマークを採択し,サロンや化粧品などの分野で長年これを使用してきたことが明白である。
(2)ロゴマークと本件商標の関係について
申立人が使用をしてきたロゴマークは,本件商標の標章そのものであり,全く重なり合う程度まで同一である。
(3)申立人と商標権者の関係について
商標権者は他に「RAFFINE」(商標登録第5408589号),「RAffINE」(商標登録第5411218号,商標登録第5431315号)の商標権を保有し(以下これらを,順に「別件登録商標1:別掲3」「別件登録商標2:別掲4」「別件登録商標3:別掲5」といい,これら3件をまとめて「別件登録商標」という場合がある。),これら商標権を申立人が侵害しているとして商標権に基づく侵害行為の差止請求など(以下「差止請求事件」という。)を行っている者である(甲22)。
商標権者は本件商標登録出願前の平成24年2月2日に申立人に対し警告書を送付し,申立人は同年2月17日に回答を行っている。本件商標登録出願は明らかに差止請求事件と関連してなされたものであって,申立人がロゴマークを商標登録していないことを奇貨として申立人が永らく使用してきた商標そのものを出願し登録したものである。
申立人は差止請求事件において,商標権者が保有する別件登録商標は無効にされるべきものであること,また,商標権者の保有する商標権の効力は申立人には及ばないことなどを抗弁している(甲23)。
(4)商標法第4条第1項第7号の適用について
常識的に見て,ロゴマークと本件商標の標章がこれほど一致することはあり得ず,また,申立人と商標権者との関係からみても,商標権者が申立人のロゴマークを剽窃的に登録したことは明らかである。
本件商標は,商標登録出願をされる10年以上も前から申立人が使用してきた商標そのものであって,申立人は商標権者よりも密接な関係を有する者に該当し,本件商標登録出願に至る前記経緯に照らせば,自らは使用する意思のない申立人の商標を登録する剽窃的行為であることも明らかである。したがって,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当し,その登録は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
第4 本件商標の取消理由(要旨)
当合議体は,平成25年3月29日付けで,商標権者に対し,本件商標を取り消すべき旨の通知をした。その理由の要旨は次のとおりである。
【取消理由理由(要旨)】
申立人の提出に係る各甲号証によれば,以下のとおり,本件登録異議申立は,その理由があるものである。
1 申立人による引用商標の採択及び使用について
申立人は,1999年(平成11年)4月15日に設立され(甲2),女性専門の育毛・発毛サロンを経営し,証拠上,使用されている引用商標の態様が明確に確認できる限りでは,遅くとも,1999年(平成11年)10月9日付情報誌「京都東南リビング」(甲13),1999年(平成11年)10月9日付情報誌「京都北リビング」(甲14),1999年(平成11年)9月22日付「京都新聞」(甲6)において,役務「増毛,育毛」について引用商標を使用し(ただし,色彩は確認できず。),以降,同役務について継続して引用商標を使用していることが認められる(上記甲号証を含め甲5〜18)。
また,申立人は,商品「頭髪用サプリメント(栄養補助食品)」及び「石鹸,シャンプー,ヘアートリートメント」について2005年(平成17年)2月1日から(甲15),「髪の美容液」について2006年(平成18年)2月15日から(甲6),それぞれ引用商標を使用してきていることが認められる(ただし,色彩は確認できず。)。
そして,引用商標の色彩については,甲第10号証の読売新聞折込情報誌「読売ファミリー」2007年5月16日号及び甲第20号証の関西テレビ「2時ドキッ」(2002年1月17日放送)ほかにより確認することができる。
2 商標権者による警告及び差止請求事件の提起等について
商標権者は,本件商標登録出願前の平成24年2月2日に申立人に対し,申立人による引用商標の使用について警告書を送付し,申立人は同月17日に回答を行った(甲22に添付されている「甲9」の回答書)。
その後,商標権者は,平成24年6月6日に申立人を相手に差止請求事件を提起し,これが現在東京地方裁判所に係属していることが認められる(甲22,23)。
3 商標権者による本件商標の登録出願
前記したように,商標権者は,申立人に対して,平成24年2月2日に警告書を送付し,その後,平成24年6月6日に申立人を相手に差止請求事件を提起しているところ(甲22),同人は,甲第23号証に示された「原告標章1(別件登録商標1)」,「原告標章2(別件登録商標2)」,「原告標章3(別件登録商標3)を有していながら,この行為の間である平成24年3月27日に,これらと指定商品が重複する指定商品について本件商標の登録出願を行っているものである。
4 本件商標と引用商標の態様について
本件商標及び引用商標の構成は,それぞれ,前記「第1」及び「第2」に示したものであるところ,両者は,構成する文字の綴り,そのデザイン化の程度及び付加されている図形並びに色彩を含めてほぼ同一の構成といえるものであり,本件商標の採択が,申立人により既に使用されていた引用商標と偶然に一致したとみることはできないというべきである。
5 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
これらの経緯に照らせば,商標権者は,申立人が引用商標を使用していることを知悉しつつ,申立人が引用商標について商標登録を得ていないことを奇貨として,自らは,別件登録商標を有しているにもかかわらず,敢えて引用商標と同一の商標を採択して商標権を得ることにより,申立人との関係において法的に優位な立場に立つことで,申立人による引用商標の使用に支障を来たさせることを目的として本件商標を登録出願したものと推認するのが相当である。
そして,この行為は,別件登録商標の希釈化を阻止するための防衛目的によるものということもできず,また,商標権者が自ら使用する目的をもって本件商標を登録出願したとの事情も認められない。
そうであれば,本件商標は,利害関係を有する他人(申立人)が使用する商標について不正な目的をもって剽窃的に出願したものというべきであって,その経緯に社会的相当性を欠くものがあり,その登録を認めることは,商標法の予定する秩序に反するものであって,特段の事情のない限り許されない行為というべきである。
しかるところ,商標権者が本件商標登録出願を行ったことについて,上記認定を否定すべき特段の事情は見当たらない。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわなければならない。
第5 商標権者の意見(要旨)
商標権者は,前記第4の取消理由通知に対し,平成25年5月7日付け意見書において,以下のように反論し,証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号について
商標出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。
しかし,同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮すると,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは,その出願の経過に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるというべきである(東京高裁平成14年(行ケ)第616号判決)。
そして,商標法は,出願に係る商標について特定の利害を有する者が存在する場合には,それぞれ類型に分けて,商標法所定の保護を与えないものとしている(法第4条第1項第8号,第10号,第15号,第19号等)ことに照らすと,周知商標等を使用している者以外の者から出願された場合は,特段の事情がない限り,専ら当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであり,出願を怠っている場合や他者の出願を排除するための適切な措置を怠ったような場合にまで,法第4条第1項第7号の適用があると解するのは妥当ではない。この点については,知財高裁平成23年(行ケ)第10104号判決においても明らかにされている。
そして,商標権者は申立人に対し,本件商標の出願日前に警告書を送付し,申立人は回答をしている。申立人は,本件商標の指定商品について本件商標と同一商標を出願することが可能であったにもかかわらず,商標出願をしなかったのであるから,かかる商標の出願を怠っていたというべきである。
さらに,本件商標は,その構成文字をして,きょう激,卑わい,差別的又は他人に不快な印象を与える様なものではなく,これを商標権者が採択,使用しても,他の法律によりその使用が制限または禁止されるものでもない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
2 取消理由通知について
取消理由通知は,(1)「申立人が引用商標を使用していること」を前提とし,(2)「申立人による引用商標の使用に支障を来たす」として,権利の取得の経緯に社会的相当性に欠くものがあるとしたが,以下のとおり,これらの点については承服できない。
(1)本件では「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品とする本件商標が問題となっていることから,当該商品について申立人の使用実績を有しているかを検討すべきであることは明らかであり,当該商品と無関係の分野である「育毛サロン」についての使用実績については,何ら考慮する必要はない。仮に「育毛サロン」の分野において広く知られたブランドであったとしても「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」の分野で育毛サロンと同一ブランドを無条件に使用して良いという論理は成り立たないことは当然である。
申立人は,この点を意図的に混同し,「育毛サロン」としての使用実績を示す大量の証拠を提出しているが,これらは本件とは全く無関係である。
そして,甲第5号証ないし甲第21号証について検討しても,これらの証拠からは「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」についての使用事実はほとんど認められない。これは申立人に「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」としての使用事実はないということを端的に結論づけるものというべきものである。
(2)申立人による引用商標の使用については,別件登録商標の存在からその使用が制限されるものであって「申立人による引用商標の使用に支障を来させることを目的として本件商標を登録出願した」と把握すべきではない。(3)上述のとおり,申立人が「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」について引用商標を使用しているという事実はほとんどなく,また,引用商標は,そもそも別件登録商標を侵害するものであって,本件商標の存在が引用商標の使用に大きな影響を与えるものではなく,取消理由通知には承服できない。
3 むすび
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
第6 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,「Raffine」の欧文字と図形を組み合わせた構成からなるところ,「Raffine」の文字は丸みを帯びた独特のフォントで表され,語尾の「e」の上部にアクサン・テギュを思わせる三角形の図形が,また,「Ra」「ine」の下部に太いライン状の図形が配された構成からなり,構成要素全体に青色の色彩が施されている。
そして,本件商標は,第3類「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品とするものである。
2 引用商標について
引用商標は,別掲2のとおり,「Raffine」の欧文字と図形を組み合わせた構成からなるものであり,「Raffine」の文字の綴りやデザイン化の程度,付加されている図形の形状や配置及び構成要素全体に施された色彩を含め本件商標とほぼ同一の構成といえるものである。
そして,引用商標は,申立人が増毛,育毛の役務のほか,石けん,シャンプーなどの商品に使用するものである(甲3,4ほか)
3 商標法第4条第1項第7号該当について
(1)商標法第4条第1項第7号について
登録出願された商標又は商標登録された商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるか否かについて判断するに際しては,以下の基準に則して判断するのが相当である。
すなわち,「(1)当該商標の構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号判決)。
(2)事実認定
前記1及び2のとおり,本件商標と引用商標とは,共に「Raffine」の欧文字と図形を組み合わせた構成からなるところ,構成文字の綴りやデザイン化の程度,付加されている図形の形状や配置及び構成要素全体に施された色彩を含めほぼ同一といえる商標である。
そして,前記第4の取消理由通知(要旨)において示したとおり,申立人は,1999年(平成11年)4月15日に設立され,女性専門の育毛・発毛サロンの経営を行う者であり,証拠上,使用されている態様が明確に確認できる限りでは,遅くとも1999年(平成11年)10月9日頃から,役務「増毛,育毛」について引用商標(ただし色彩は確認できず)を使用し,以降,同役務のほか,商品「頭髪用サプリメント(栄養補助食品),石鹸,シャンプー,ヘアートリートメント及び髪の美容液」等について同商標を継続的に使用していること,また,申立人は,本件商標の登録出願時及び登録時においては,少なくとも申立人の経営するサロンの看板や広告に,別掲2に示すとおりの青色の色彩が施された引用商標を使用していたことが認められる(甲2〜20)。
これに対し,商標権者は,本件商標と同一の商品を指定商品又はその指定商品に含む「RAFFINE」又は「RAffINE」の綴り字からなる別件登録商標を所有している(甲22)。
そして,本件商標は,平成24年3月27日に商標登録出願されたものであるところ,商標権者は,本件商標登録出願前の平成24年2月2日に,申立人による引用商標の使用行為について警告書を送付したこと,これに対し,申立人は,同年2月17日付けの回答書において「...使用商標(審決注;「引用商標」)は本件商標(審決注;「別件登録商標」)とその外観において大きく異なるものであり,類似性は認められません。」として,引用商標が別件登録商標と非類似である旨の主張をしていること,その後,商標権者は,平成24年6月6日に申立人を相手に差止請求事件を提起し,これが現在東京地方裁判所に係属していることが認められる(甲22,23)。
以上のとおり,商標権者は,申立人に対して警告書を送付し,その後,申立人を相手に差止請求事件を提起しているところ,同人は,別件登録商標を有していながら,この行為の間である平成24年3月27日に,これらと指定商品が重複する指定商品について本件商標の登録出願を行っているものである。
(3)商標法第4条第1項第7号の該当性についての判断
前記(2)の認定事実によれば,本件商標の採択が,申立人により既に使用されていた引用商標と偶然に一致したとみることはできず,商標権者は,申立人が引用商標を使用していることを知悉しつつ,申立人が引用商標について商標登録を得ていないことを奇貨として,自らは,別件登録商標を有しているにもかかわらず,敢えて引用商標と同一の商標を採択して商標権を得ることにより,申立人との関係において法的に優位な立場に立つことで,申立人による引用商標の使用に支障を来たさせることを目的として本件商標を登録出願したものと優に推認しうる。
そして,この行為は,別件登録商標の希釈化を阻止するための防衛目的によるものということもできず,また,商標権者が自ら使用する目的をもって本件商標を登録出願したとの事情も認められない。
そうであれば,本件商標は,利害関係を有する他人(申立人)が使用する商標について不正な目的をもって剽窃的に出願したものというべきであって,その経緯に社会的相当性を欠くものがあり,その登録を認めることは,商標法の予定する秩序に反するものであって,特段の事情のない限り許されない行為というべきである。
しかるところ,商標権者による本件商標登録出願の行為について,前記認定を否定すべき特段の事情は見当たらない。
そして,商標権者による前記行為は,前記(1)及び申立人が意見書において主張する「当該商標の登録出願の経緯(経過)に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」にあたるものといえる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわなければならない。
4 商標権者の主張について
(1)商標権者は,東京高裁平成14年(行ケ)第616号及び知財高裁平成23年(行ケ)第10104号の判決を引用し,「商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは,その出願の経過に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるというべきである。また,商標法が出願に係る商標について特定の利害を有する者が存在する場合には,同法第4条第1項各号に商標法所定の保護を与えないものとしていることに照らすと,周知商標等を使用している者以外の者から出願された場合は,特段の事情がない限り,専ら当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであり,周知商標等を使用している者が出願を怠っている場合や他者の出願を排除するための適切な措置を怠ったような場合にまで,法第4条第1項第7号の適用があると解するのは妥当ではない。」また,「本件では,本件商標の指定商品について申立人の使用実績を有しているかを検討すべきであり,『育毛サロン』についての使用実績については何ら考慮する必要はない。そして,申立人が本件商標の指定商品について引用商標を使用しているという事実はほとんどなく,引用商標は別件登録商標を侵害するものであって,本件商標の存在が引用商標の使用に大きな影響を与えるものではない。」などと主張する。
しかしながら,前記のとおり,本件商標は,その登録出願の経緯(経過)に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。
そして,商標登録出願について先願主義を採用し,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められているなどの我が国の法制度を前提としても,申立人との差止請求事件の係争過程において別件登録商標を有しながら引用商標とほぼ同一の商標を出願した前記商標権者の行為は,健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり,商標法の目的(商標法第1条)にも反し,公正な商標秩序を乱すものというべきであるから,引用商標が周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は,「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである(「知財高裁平成21年(行ケ)第10297号判決」参照)。よって,商標権者の主張する「引用商標の本件商標に係る指定商品についての使用実績や周知・著名性の有無」は,本件の判断を左右するものではない。
また,商標権者の引用する前記2件の判決は,いずれも出願前から何等かの関係があった者の間において争われた事案であって,その当事者の関係及び出願から権利取得に至る経緯などから,当事者間の契約を巡る紛争として解決されるべきものであると判示されたものであって,本件商標とは事案を異にするものである。
さらに,「引用商標が別件登録商標を侵害するものであって,本件商標の存在が引用商標の使用に影響を与えるものではない」との主張も,本件の前記判断を覆すものではない。むしろ,申立人との差止請求事件の係争過程において,別件登録商標を有しながら引用商標とほぼ同一の商標を出願した行為こそが,健全な法感情に照らし条理上許されないといわざるをえないのである。
よって,商標権者の主張は,いずれも本件の判断に影響を及ぼすものではなく,採用することはできない。
5 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものであるから,同法第43条の3第2項に基づき,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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