Trademark Appeal Case
品質表示と使用による識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2012−6745(T2012−6745/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「全素線塗装型PC鋼より線」の文字を標準文字で表してなり、第6類「塗装PC鋼より線」を指定商品とし、平成22年11月12日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『全素線を塗装した型からなるPC鋼より線』の意味合いを表す『全素線塗装型PC鋼より線』の文字を書してなるから、これに接する需要者は、商品『PC鋼より線』の一種にすぎないものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、出願人は、本願商標が同法第3条第2項により登録される旨主張しているが、提出された資料からは、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至ったものとは認められないから、出願人の上記主張も採用することができない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした審尋
当審において、請求人に対し、平成25年4月25日付けで、別掲のとおりの内容を示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、また、同法第3条第2項に該当しない旨の審尋をし、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
4 審尋に対する請求人の回答の要点
請求人は、前記3の審尋に対して、要旨次のように意見を述べている。
(1)本願商標が、商標法第3条第2項に該当するものとなったことについては、甲第1号証ないし甲第9号証(枝番を含む。)を提出し、審判請求書において十分主張している。
(2)請求人は、商標登録された標章のみを商標として使用しているものでなく、商品の説明において使用されている「全素線塗装型PC鋼より線」は、商標というべきであるから、本願商標が商標として使用されていたものであることを否定することはできない。
(3)塗装したPC鋼より線の表現において、本願商標は、唯一無二の表現ではなく、国土交通省が土木・建築の新技術を周知させるための情報提供システムとして運営するNETIS(New Technology Information System)の検索結果の一覧表に示されるように、他社の塗装PC鋼より線については、「内部充てん型PCより線」と表現されていることからも、他の表現を使用する余地が十分にあるものであり、本願商標が技術内容を機械的に表現したものでなく、「全素線」の語を使用しているのは、請求人のみであり、請求人の創作した表現であるから、本願商標が、商品の出所表示機能を有するに至っているといえる。
(4)以上のように、本願商標は、請求人の長年にわたる商標としての使用によって、需要者をして何人かの業務に係る商品であることが認識できるに至っている状態にあり、商標法第3条第2項に該当するものである。
5 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「全素線塗装型PC鋼より線」の文字からなるところ、別掲1のとおり、本願商標は、その構成全体の文字から容易に「全ての素線に塗装を施してなる型式のPC鋼より線」程の意味合いを看取、理解させるものとみるのが相当である。
してみれば、本願商標をその指定商品「塗装PC鋼より線」について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、該商品が「全ての素線に防錆、防食のための塗装を施してなるPC鋼より線」であること、すなわち、商品の品質を表したものと認識するにとどまるというべきである。
したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、請求人が本願商標をその指定商品について長年使用してきたことにより、本願商標を付した商品に接する需要者は、その商品が請求人の業務に係るものであることを認識できる状態に至っている旨主張し、甲第1号証ないし甲第11号証(枝番を含む。)を提出しているところ、該甲各号証及び職権調査によれば、別掲2(1)に記載のとおりのことが認められる。
また、「『全素線塗装型PC鋼より線を使用したPC構造物の設計・施工ガイドライン』の作成」(甲第2号証の2)には、52頁に「図−1 塗装PC鋼材の断面形状」が「(a)内部充填型」と「(b)全素線塗装型」として、その違いが図示されており、また、同頁には、「これまで、全素線塗装型を使用したPC構造物の設計・施工に関する基準は作成されていない。そこで、(財)土木研究センターでは、平成20年10月、『全素線塗装型PC鋼より線を使用したPC構造物の設計・施工ガイドライン』(以下、本ガイドライン)の作成を目的に、産学官からなる『全素線塗装型PC鋼より線の合理的な適用に関する委員会(委員長・・・)』を設立した。」との記載があり、請求人主張のとおり、「全素線塗装型PC鋼より線を使用したPC構造物の設計・施工ガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)は、請求人が自社の製品「SCストランド」等の全素線塗装型PC鋼より線をより多く使用してもらうために部材の特性や適用個所に応じた使用方法及び設計方法の基準を財団法人土木技術センターとともに作成したものといえる。
さらに、本ガイドラインの最終頁である162頁には、「全素線塗装型PC鋼より線 品質証明書例−2」として「全素線塗装型PC鋼より線検査成績書」の書式があり、「製造者 株式会社○○○」との記載及び「下記の『全素線塗装型PC鋼より線』は当社製品で、品質規格により検査し本記載通りの検査成績であることを証明します。」との記載がある。
以上からすると、請求人は、遅くとも平成7年頃、商品「塗装PC鋼より線」について、その耐久性を向上させるべく、該商品を構成する素線(心線(芯線)及び側線)を1本ごとにエポキシ樹脂で塗装(被覆)する技術を利用した商品を開発したことが認められるとしても、請求人が自社の製品「SCストランド」等をより多く使用してもらうために部材の特性や適用個所に応じた使用方法及び設計方法の基準を他社の使用を前提にした本ガイドラインを財団法人土木技術センターとともに作成しているものであるから、「全素線塗装型PC鋼より線」は、請求人以外の者によっても製造されるといえ、該文字に接する取引者、需要者にあっては、「PC構造物の設計・施工」に使用される部材を表したと認識されるとみるのが相当である。
してみれば、請求人の提出した証拠を総合して勘案しても、本願商標が、その指定商品に使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するとはいえない。
(3)請求人(出願人)の主張について
ア 本願商標は、塗装したPC鋼より線についての唯一無二の表現ではなく、国土交通省が土木・建築の新技術を周知させるための情報提供システムとして運営するNETIS(New Technology Information System)の検索結果の一覧表に示されるように、他社の塗装PC鋼より線については、「内部充てん型PC鋼より線」(甲第10号証)と表現されていることからも、他の表現を使用する余地が十分にあるものであり、本願商標が技術内容を機械的に表現したものでなく、「全素線」の語を使用しているのは、請求人のみであり、請求人の創作した表現であるから、本願商標が、商品の出所表示機能を有するにいたっていると主張する。
しかしながら、前記したとおり、「『全素線塗装型PC鋼より線を使用したPC構造物の設計・施工ガイドライン』の作成」(甲第2号証の2)には、52頁に「図−1 塗装PC鋼材の断面形状」が「(a)内部充填型」と「(b)全素線塗装型」として、その違いが図示されており、「塗装PC鋼材」には、「内部充填型」と「全素線塗装型」との技術が異なる2種類の商品があるといえるから、他社が請求人と同じ技術内容の「PC鋼より線」について、「内部充てん型PC鋼より線」としているとする請求人の主張は、採用できない。
また、本ガイドラインの「まえがき」には、「全素線塗装型PC鋼より線は、より線の各素線が独立に薄膜のエポキシ樹脂で堅固に付着被覆されているため、確実な防せい性能を待つことに加えて素線の集合体であるより線の可撓性をそのまま保持できる極めて優れた特性を持つものです。」との記載があり、「全素線」の文字からは、「全ての素線」程の意味合いが容易に認識されるといえ、請求人の創作した語とはいい難く、本願商標は、上記(1)のとおり、商品の品質を表示するものといい得るから、請求人の主張は、採用できない。
イ 請求人は、塗装PC鋼より線について、建設技術審査証明制度による審査証明及び特許権の存在があるため、他社が本願商標又は本願商標に類似する商標を使用することが制限される特段の事情が長年継続されてきたことから、需要者は、本願商標を付した商品に接した場合、請求人の商品であることを認識できる状態に至っている旨主張している。
しかしながら、財団法人土木研究センター発行の「民間開発建設技術の技術審査・証明事業認定規程に基づく土木系材料技術・技術審査証明 報告書(技審証 第0612号)平成7年3月」(甲第5号証の1)及び同じく「建設技術審査証明報告書 土木系材料・製品・技術(建技審証 第0434号)平成17年3月(更新同22年3月)」(甲第5号証の2)には、技術名称として「エポキシ樹脂全塗装PC鋼より線『SCストランド』」との記載が認められるものの、本願商標を見いだせない。
また、本願商標を使用している商品が特許発明に係るものであるとしても、特許権の保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであって、これらに従った特許発明と商標の使用とは明らかに異なるものであり、特許権による独占を理由として自他商品の識別力を有するに至ったとは認めることができないから、請求人の主張は、採用できない。
(4)まとめ
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものである。
なお、原査定においては、商標法第3条第1項に係る拒絶の理由について、本願商標が同項第6号に該当するとして本願を拒絶したものであるが、本願商標は、上記のとおり、その指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない商標であり、この認定において原査定と実質的に相違するものではないから、結局、本願を拒絶した原査定は、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。