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Trademark Appeal Case

外国語称呼と片仮名の類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2013−890023(T2013−890023/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5502039号商標(以下「本件商標」という。)は、「カシェ」の片仮名を横書きしてなり、平成24年1月19日に登録出願、第44類「美容」を指定役務として、同年6月4日に登録査定、同月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標

請求人が引用する登録第5441186号商標(以下「引用商標」という。)は、「Cache」の欧文字を標準文字により表してなり、平成23年6月21日に登録出願、第44類「美容,理容」を指定役務として同年9月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証を提出している。

1 本件商標と引用商標との対比

(1)外観

本件商標は「カシェ」の片仮名を横書きしてなるものであり、一方、引用商標は「Cache」の欧文字を横書きしてなるものであるから、両商標は、外観において同一でなく、類似でもない。

(2)称呼

本件商標から「カシェ」の称呼が生じることは明らかである。

一方、引用商標は、「Cache」の欧文字が標準文字として横書きに表されたものであり、需要者・取引者が「Cache」の欧文字をフランス語として認識した場合には、「カシェ」との称呼を生じ(甲3)、「Cache」の欧文字を英語として認識した場合には、「キャッシュ」と称呼することも可能である。

(3)観念

「カシェ」の片仮名については、日本国内において「隠れ場所」等の意味を有するフランス語として広く使用されている(甲5ないし甲24)。したがって、「カシェ」の文字から需要者がこれを一種の造語として看取し理解することはあり得ない。

そうすると、「カシェ」の片仮名が横書きにされた本件商標についても、これに接する取引者、需要者は「隠し場所」、「隠れ場所」等の意味を有するフランス語として認識すると解するのが自然である。その結果、本件商標からは、「隠し場所」、「隠れ場所」などの観念が生じる(甲3)。

一方、引用商標は、需要者・取引者がこれをフランス語として認識した場合には、「隠し場所」、「隠れ場所」等の観念が生じ(甲3)、英語として認識した場合には、コンピュータ・IT分野において頻繁に用いられている「キャッシュメモリー」の観念が主として生じ、その他に「(隠し場の)貯蔵物」、「隠し場所」などの観念を生じ得る(甲4)。

(4)役務の同一性

本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一ないし類似である。

2 取引の実情

(1)請求人は、その代表者が2001年8月21日にヘアーメイクサロン「Cache(カシェ)」(審決注:「Cache」の文字中の「e」の文字にはフランス語のアクサン記号(アクサン・テギュ)が付されている。以下、アクサン・テギュが付された文字については、括弧で括り「(e)」のように表す。)を創業し、その後2003年6月3日に有限会社Cacheとして設立登記されたものである。また、請求人は創業当時から「Cach(e)」又は「Cache」に対し「カシェ」の片仮名を付すなどして使用していた。

一方、請求人代表者は、2003年9月2日に請求人会社の100%子会社である有限会社GLEAM.Inc.(以下「G社」という。)を設立し、G社は2005年2月頃にヘアメイクサロン「Cach(e) PRIVEE」を開業し運営するようになった。その後、2009年9月10日に、請求人が運営するヘアーメイクサロン「Cach(e)」と、G社が運営する「Cach(e) PRIVEE」とがヘアーメイクサロン「Cach(e)」として統合され、その店舗の運営はG社が行うようになった。また、G社は引用商標の使用についても請求人から許諾を受けた。

請求人及びG社が「Cach(e)」又は「Cache」に対し「カシェ」の片仮名を付して使用していたことは、甲第25号証ないし甲第28号証、甲第39号証及び甲第40号証に示すとおりである。

(2)また、甲第29号証ないし甲第34号証、甲第39号証及び甲第40号証に示すとおり、引用商標は請求人の商号商標であり、請求人代表者が経営する店舗は全国的に発行されているファッション雑誌等でも頻繁に紹介されているものである。

(3)本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務である第44類「理容,美容」に含まれるものである点で共通している。そして、これら美容、理容業界においては、役務の提供に際して用いられる化粧品等と同様にファッション性が重視され、その主要な需要者が女性であることもあって、化粧品等と同様にフランス語をもって商標等が採択されている傾向にあるといえる(例えば、甲14、甲18、甲19及び甲24)。

(4)さらに、「Cache」の欧文字又は「カシェ」の片仮名は、美容・理容業界のほか、服飾業界、レストラン業界等において、「隠れ場所」等の意味を有するフランス語として認識され、日本国内において広く使用されている(甲5ないし甲24)。

(5)指定役務「美容,理容」を取り扱う業界においては、美容室等の新規開店や店舗の紹介等を行うための広告・宣伝は、新聞・チラシ・雑誌等の紙媒体のみで行われるものではなく、画像又は音声を用いた広告・宣伝媒体(例えば、テレビ・ラジオ・インターネット上の動画等)が選択されるものである。実際に「美容,理容」の業界において、その店名等を告知する方法として、テレビ・ラジオ・インターネット上の動画等によるCMが利用されている(甲35ないし甲38)。

このように、今日においては、一般にテレビ・ラジオ・インターネット上の動画等による音声を用いた広告・宣伝が広く行われていることから、音声を用いた広告・宣伝に対する人の耳からの記憶(商標の称呼)が、出所の識別に重要な役割を果たしているものといえる。このことは、本件商標及び引用商標の指定役務においても何ら変わるところはない。すなわち、本件商標の指定役務と同一又は類似である引用商標の指定役務「美容,理容」の分野においても称呼は重要であるから、本件商標と引用商標の類否を判断する上で、称呼の果たす役割は大きいといえる。

3 本件商標と引用商標との類否

(1)上記1(2)及び(3)のとおり、引用商標の欧文字「Cache」を英語と解した場合には、「キャッシュ」との称呼をすることも可能である。しかしながら、仮に「Cache」を英語と解した場合、その意味するところは、コンピュータ・IT分野において専門用語として用いられている「キャッシュメモリー」(甲4)となり、指定役務である「美容,理容」における取引者、需要者にとっては馴染みの薄いものとなる。

また、上記2(3)のとおり、引用商標の指定役務である「美容,理容」業界においては、役務の提供に際して用いられる化粧品等と同様にファッション性が重視され、その主要な需要者が女性であることもあって、化粧品等と同様にフランス語をもって商標等が採択されている傾向にある。

さらに、「Cache」の欧文字が「隠れ場所」等の意味を有するフランス語として認識され、「カシェ」と称呼されて日本国内において広く使用されているものであることは、甲第5号証ないし甲第24号証、甲第41号証及び甲第42号証に示すとおりである。

また、請求人及びその後店舗を運営するようになったG社は、2001年の創業当初から現在に至るまで「Cache」の欧文字に「カシェ」の片仮名を付して長年使用している。

したがって、引用商標の「Cache」はその指定役務に使用される場合には、需要者・取引者においてフランス語として認識されると解するのが自然であるから、引用商標「Cache」からは「カシェ」との称呼を生じ、「隠し場所」、「隠れ場所」との観念を生じると解すべきである。

(2)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、上記の取引の実情を考慮すると、称呼及び観念において同一又は類似である。その結果、本件商標と引用商標の類否については、外観、称呼、観念等によって取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して具体的な取引状況に基づいて全体的に考察すれば、本件商標と引用商標が役務における出所の誤認混同を生じるおそれがあるのであるから、両商標は類似する。更に、本件商標の指定役務は引用商標の指定役務と同一又は類似である。

(3)なお、本件商標と引用商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情は、当該商標が現に当該指定役務に使用されている特殊的、限定的な実情に限定して理解されるべきではなく、当該指定役務についてのより一般的、恒常的な実情、例えば、取引方法、需要者層、商標の使用状況等を総合した取引の実情を含めて理解されるべきである(最高裁第一小法廷昭和49年4月25日判決・昭和47年(行ツ)第33号参照)。

引用商標は、上述のとおり、請求人の商号商標であり、また、請求人が経営する店舗は全国で発行されている美容専門雑誌等でもたびたび紹介されているものである。

一方、本件商標の現在の取引の実情は、商標権者の店舗の所在地である三重県松阪市を中心に少なくとも三重県において使用されているものであるが、引用商標の上記のような取引の実情を考慮すると、本件商標が現に三重県でのみその指定役務に使用されているとの特殊的、限定的な実情に限定して考慮されるべきではなく、現在の取引実情の一側面が今後も変化する余地のないものと判断されるのは適切でない。

本件商標がその指定役務において使用された場合には、引用商標との間に役務の出所について誤認混同を生じさせるおそれがある。

4 むすび

以上のとおり、本件商標と引用商標とは類似するものであり、また、本件商標の指定役務も引用商標の指定役務と同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号(審決注:第46条第1項の誤記と認められる。)の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。

第4 被請求人の答弁の要点

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出している。

1 本件商標と引用商標との類否

(1)外観について

本件商標と引用商標とは、外観において論ずるまでもなく、同一又は類似ではない。

(2)称呼について

引用商標「Cache」は、請求人が本件商標に対して先に行った異議申立て(異議2012−900276)における異議決定でも判示されているとおり、「キャッシュ」の称呼を生ずるとみるのが妥当である。このことは、甲第4号証(ジーニアス英和大辞典)をはじめ、種々の辞典に掲載されている。

また、請求人は、引用商標をフランス語読みした場合、「カシェ」と称呼されると主張しているが、甲第3号証(小学館ロベール仏和大辞典)の「cache」に付された発音記号からみても、「カシェ」よりもむしろ「キャシュ」と発音する方が正確であると解される。

さらに、請求人は、請求人の創業以来、自己の店名「Cache」の欧文字に片仮名「カシェ」を付して使用しており、また、甲第5号証ないし甲第24号証を提示して、美容・理容業界のほか、服飾業界、レストラン業界等において「Cache」の欧文字と「カシェ」がフランス語として認識され、日本国内において広く使用されている旨主張しているが、例えば、乙第1号証ないし乙第3号証のとおり、「Cache」の欧文字からなる店名を「カーシュ」と称している美容室や、乙第4号証及び乙第5号証のように、「Cache」を「カッシュ」と称呼している美容室もあり、美容業界において「Cache」の欧文字を「カシェ」と称するということが取引の実情となっているわけではない。

その他、例えば、「Cache’」を「カシュ」と称している菓子店(乙6)、「CACHE」を「カーシュ」と称呼しているファッション関係店(乙7)、「Cache」を「カーシュ」と称呼しているホテル(乙8)、「cache−cache」を「キャッシュキャッシュ」と称しているバー(乙9)等々があり、よって、「Cache」の欧文字を「カシェ」と称するという請求人が主張するような取引界の実情は存在せず、請求人の主張は恣意的なものであって、妥当性に欠けるといわざるを得ない。

一方、乙第10号証に例示されるとおり、「Cache」という欧文字は、IT用語として「キャッシュメモリー」を意味することは勿論、携帯電話やスマートホン、あるいはタブレット型端末等を用いてインターネットで画像の送受信を行って記憶等をする際に広く一般的に使用されているのが実情であり、単に一部のネットユーザーだけで使用されているような専門用語ではない。

例えば、米国アップル社のサイトでは、同社の「i―tunes」を使ってipod、iphone、ipadにおいて、「ipod Photo Cache」というフォルダを作成して写真保存を行うことが紹介されており(乙11)、動画投稿サイトとして有名な「You−Tube」では、上記「iPod Photo Cache」を使った投稿(乙12)が日常行われ、「google play」サイトでは、Android(OS)を使ったKindleストアにおける「キャッシュ」処理の方法に関する投稿がなされたり(乙13)、スマートホンのアプリ総合情報サイトでは、「Cache=キャッシュ」データを削除するための「Cache Cleaner」が紹介されている(乙14)等々、「Cache」の文字は「キャッシュ」と称呼されることが一般的に広く浸透していると認められる。

そして、このように携帯電話やスマートホン、あるいはタブレット型端末等を使用する人は、日本国内において、老若男女を問わず、今や多くの人が利用しているという実情に鑑みれば、「Cache」の欧文字は「キャッシュ」と一般に称呼されると認められる。また、美容室等を利用する女性をはじめとする顧客においても、日ごろ携帯電話やスマートホン、あるいはタブレット型端末等を使用して情報の送受信やアプリの利用が日常頻繁に行われているという実情に鑑みれば、かかる顧客についてもCache=キャッシュということが容易に認識されるといえる。そのため、美容室等に来店する顧客にとってCache=キャッシュということが馴染みの薄いことであるという請求人の主張は失当であるといえる。

したがって、請求人のいう取引の実情は、恣意的な主張であって、現実とは異なるものといえる。

また、上記異議2012−900276の異議の決定でも示されているとおり、日本においては、フランス語よりも英語の方がはるかに普及していることから、引用商標「Cache」は、一般に「キャッシュ」と称呼されるとみるのが自然である。

これに対し、本件商標は、「カシェ」の称呼を生ずることから、本件商標と引用商標とは称呼においても、同一又は類似ではないといえる。

(3)観念について

本件商標は、上記異議2012−900276の異議の決定でも示されているとおり、「カシェ」の片仮名が日本国内において特定の意味を有するものとして把握・認識されていないため、これに接する一般需要者が造語の一種であると看取・理解するとみるのが妥当である。

また、請求人は、甲第5号証ないし甲第24号証を提示して「『カシェ』の片仮名を需要者が一種の造語として看取し理解することはあり得ない」と主張しているが、甲第5号証ないし甲第24号証は、ごく一部の取引者が使用している態様を示しているに過ぎず、これがあたかも日本国内における常識であるかのような主張は、全く恣意的であって、妥当性を欠くものといわざるを得ない。

一方、引用商標「Cache」は、上述したとおり、一般にキャッシュメモリー、或いは携帯電話やスマートホン、タブレット型端末等で画像の送受信を行う際に一度アクセスしたデータを高速のメモリーに記憶しておく機能、貯蔵庫、隠し場所等を示す用語として知られていることから、本件商標とは、観念においても同一又は類似ではない。

2 むすび

以上述べたように、本件商標と引用商標とは、外観、観念及び称呼のいずれにおいても同一又は類似ではないとみるのが妥当であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

第5 当審の判断

1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標と引用商標との類否について

(ア)本件商標は、上記第1のとおり、「カシェ」の片仮名からなるところ、該文字は国語辞典、外来語辞典、カタカナ語辞典等の辞典に掲載されていないものであり、既成の親しまれた観念を有する成語を表したものとはいえず、一種の造語からなるものとして認識し把握されるとみるのが自然であるから、「カシェ」の称呼を生じ、既成の親しまれた観念を生じないものというべきである。

この点に関し、請求人は、「カシェ」の文字は美容・理容業界、服飾業界、レストラン業界等において「隠れ場所」等の意味を有するフランス語として広く使用されているとし、需要者がこれを一種の造語として看取し理解することはあり得ない旨主張し、証拠を提出している。

しかしながら、提出された証拠に示された使用例は、「カシェ」の片仮名が「Cache」、「Cache’」又は「CACHE」の欧文字と共に使用されているものが大多数であり、「カシェ(Cache:フランス語で『隠す』の意味)」、「カシェ(CACHE)とはフランス語で『隠れ家』という意味です。」等の説明がされているものがあるものの、「カシェ」の文字が単独で上記意味を有する語として使用されている例は殆ど見当たらない。

そうすると、一般の需要者・取引者は、「Cache」、「Cache’」又は「CACHE」の文字と併せ考慮することにより、初めてフランス語ではないかと推測し、「カシェ」の文字がこれらの表音を示したものとして認識し理解するに止まるというべきであり、「カシェ」の文字自体が独立して「隠れ場所」等の意味を有するフランス語として認識し理解されているものとは到底いえない。

加えて、被請求人の提出に係る乙第1号証ないし乙第8号証によれば、「Cache」、「Cache’」又は「CACHE」の欧文字が「カーシュ」、「カッシュ」又は「カシュ」と称されている例もあることからすると、「Cache」、「Cache’」又は「CACHE」の欧文字が「カシェ」と発音されるフランス語として我が国において定着しているものともいえない。

以上からすると、請求人の上記主張は採用することができない。

(イ)他方、引用商標は、上記第2のとおり、「Cache」の欧文字からなるところ、該文字は、甲第4号証(株式会社大修館書店発行「ジーニアス英和大辞典」)によれば、「(食料・武器・貴重品などの)隠し場(所)、貯蔵所」、「(隠し場に)隠した物、隠匿物資」、「〔コンピュータ〕=キャッシュメモリー(頻繁に用いるデータを一時的に保管する場所)」等の意味を有し、「キャッシュ」と発音される英単語と認められる。また、本件商標に対して請求人が申し立てた異議2012−900276事件の異議の決定においても、株式会社三省堂発行「大辞林第三版」の「キャッシュ【cache】」の項に「(隠し場、貯蔵所の意)キャッシュメモリー」と、株式会社集英社発行「イミダス編集部編imidas現代人のカタカナ語欧文略語辞典」の「キャッシュ【cache】」の項に「一度アクセスしたデータを高速のメモリー(RAM)に記録しておく機能、貯蔵庫、隠し場所」とそれぞれ記載されていることが示されている。

さらに、甲第3号証(株式会社小学館発行「小学館ロベール仏和大辞典」)によれば、「cache」の文字は、「隠し場所、隠れ場所」の意味を有し、「カシュ」と発音されるフランス語の単語でもあると認められる。

しかしながら、我が国においては、英語が最も普及している外国語であることは顕著な事実であるのに対し、フランス語はそれ程普及しているものとはいい難く、「cache」の欧文字が上記意味を有するフランス語として、本件商標及び引用商標の指定役務に係る主たる需要者である一般成人女性を含め、広く一般に知られているものとはいえない。そして、昨今のコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末等の情報・技術(IT)産業関連の機器や情報の著しい進展に鑑みれば、本件商標及び引用商標の指定役務の需要者・取引者にあってもこれら機器や情報に接する機会が多いというべきであり、「cache」の文字は、「キャッシュ」と発音され、「キャッシュメモリー」、「一度アクセスしたデータを高速のメモリー(RAM)に記録しておく機能」等の意味合いの語として、広く一般に認識されているものというべきである。

そうすると、引用商標は、上記意味合いを有する英語を表したものとして認識し把握され、「キャッシュ」の称呼を生ずるものとみるのが自然である。

(ウ)そこで、本件商標から生ずる「カシェ」の称呼と引用商標から生ずる「キャッシュ」の称呼とを対比すると、両者は、構成音数を異にするのみならず、称呼の識別において重要な要素を占める第1音を始めとする各構成音が相違することから、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感・音調が著しく相違し、相紛れることなく明瞭に区別することができるものである。

また、本件商標と引用商標とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであるほか、本件商標は、既成の観念を有しないものである以上、観念について引用商標と比較すべくもない。

(エ)以上のとおりであるから、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

(2)小括

前示のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、たとえ両者の指定役務が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

2 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づきその登録を無効にすべき限りではない。

よって、結論のとおり審決する。

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