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Trademark Appeal Case

要部抽出と品質誤認

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2013−890016(T2013−890016/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5329054号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成21年11月10日に登録出願され,同22年5月10日に登録査定,第32類「ビール,ビール製造用ホップエキス」及び第33類「洋酒,果実酒,リキュール」を指定商品として,同年6月11日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が,本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。

1 登録第2550798号商標(以下「引用商標1」という。)は,「爽 快」の文字を縦書きで表してなり,昭和56年3月24日に登録出願,第28類「酒類」を指定商品として,平成5年6月30日に設定登録されたものであり,その後,同15年4月1日に商標権の存続期間の更新登録がされ,平成15年5月28日に,指定商品を,第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする,指定商品の書換登録がなされ,さらに,同25年5月7日に,第33類について商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

2 登録第4354605号商標(以下「引用商標2」という。)は,「爽快」の文字を標準文字で現してなり,平成10年12月4日に登録出願,第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として,同12年1月28日に設定登録されたものであり,その後,同21年12月8日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

以下,引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 請求人の主張

請求人は,本件商標の指定商品中,第32類「ビール」及び第33類「洋酒,果実酒,リキュール」についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。)を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標の構成は,麦の穂の図形が「麦」の文字を囲うように白地背景部分に配置され,同「麦」の文字の下部で,右上がりのカーブを描いた下部矩形黄塗り図形内に「爽快」の文字を顕著に表し,その下に,極端に小さい文字(商標見本でも判読が困難な程度で,何らかの文字か図形があることが分かる程度の小ささ)で「むぎそうかい」を配したものであり,本件商標の構成中の「麦」の文字及び麦の穂の図形は,明らかに原材料が「麦」である酒であることを表す文字及び図形と認められ,麦を原材料とする酒類との関係では,単に「麦を原材料とする酒類」であることの品質表示にすぎず,商標としての自他商品の識別機能を有しない部分と認められる。

そうすると,本件商標の商標としての自他商品の識別力を有する要部は,「爽快」の部分に存し,これより「ソウカイ(爽快)」の称呼,観念を生じるものである。

(2)引用商標1および引用商標2は,「爽快」の文字(前者は縦書き,後者は標準文字)よりなり,これより「ソウカイ(爽快)」の称呼,観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用商標との比較において,両者は,いずれも「ソウカイ(爽快)」の称呼,観念を一にする類似の商標である。

(4)両商標の指定商品が抵触することも明らかである。

(5)したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号により登録できないものである。

2 商標法第4条第1項第16号について

本件商標中「麦」の文字及び麦の穂の図形は,「麦を原材料とした酒」であることを表わす品質表示であるところ,本件は,第32類「ビール,ビール製造用ホップエキス」,第33類「洋酒,果実酒,リキュール」を指定商品として「麦を原材料としない酒類」を含む商品について登録されており,本件商標が「麦を原材料としない酒類」に使用された場合,明らかに商品の品質について誤認を生じるおそれがあり,商標法第4条第1項第16号にも該当し,登録できないものである。

3 むすび

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第16号に該当し,商標登録を受けることができないにも拘らず誤って登録されたものであるから,商標法第46条第1項の規定により,その登録は,無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べた。

1 商標法第4条第1項第11号の主張について

(1)本件商標は,比較的大きな漢字の文字列からなる「麦爽快」の構成と,比較的小さな平仮名の文字列からなる「むぎそうかい」の構成と,上側端部が波形に湾曲し,全体としてほぼ台形状の形状をなす背景の図形と,上記背景の図形の上端であって波形部分から上方に突出し,かつ,先端側が右の方に傾くように配置される麦の穂及び葉の図形と,上記台形状の図形及び麦の図形に施された黄色あるいは黄金色の色彩との結合からなるものである。

そして,本件商標は,これらの各構成要素をバラバラに捉えるべきではなく,むしろ,これらを全体的,かつ,総合的に把握し,自他商品の識別力を有する要部については,このような総合的な判断の上に為されるべきものである。

しかるに,本件商標は,「爽快」ではなく,漢字3文字からなる「麦爽快」を一つの特徴ある表現として構成要素をなしているものであるから,これを「麦」と「爽快」とに分離し,下側の部分が,たまたま引用商標との比較において称呼,観念を一にするとする判断は,失当というべきである。

本件商標における漢字文字列の構成は,あくまでも「麦爽快」の3文字の構成である。

また,本件商標は,これとは別に,平仮名で「むぎそうかい」の構成を含んでおり,ここでも「そうかい」を「むぎ」と分離して把握すべきものでないことが明らかである。

そうすると,本件商標と引用商標との比較において,前者は,何れも「ムギソウカイ」あるいは「むぎそうかい」の称呼,観念を生ずるのに対し,後者は,「ソウカイ」の称呼,観念を生ずるものである。

したがって,本件商標と引用商標とは,互いに独立別異の称呼,観念を生ずる非類似の商標であることが結論として導出されることになる。

よって,本件商標と引用商標について,指定商品を論ずるまでもなく,これらは互いに非類似の商標であることが明白である。

(2)本件商標は,上述の如く「麦爽快」なる漢字3文字の文字列と,「むぎそうかい」の平仮名の6文字の文字列と,ほぼ台形状の背景図形と,穂及び葉を有する麦の図形と,そして背景の台形の図形及び麦の図形に付された黄色あるいは黄金色の色彩との組み合わせからなるものである。

そして,本件商標は,このような各構成要素が,デザイン的に優れた結合力をもって結合された全体として統一されて強烈に視覚に訴える顕著な特徴を有する商標である。

このような「漢字の文字列」,「平仮名の文字列」,「背景図形」,「麦の図形」,及び色彩の組合わせからなる本件商標と,引用商標とは,明らかに見る者をして全く異なる印象を与えるものであって,本件商標と引用商標とは,互いに明らかに非類似であり,互いに全く独立別異の商標であることが明白である。

2 商標法第4条第1項第16号の主張について

(1)本件商標の構成要素である「麦爽快」における「麦」は,「爽快」と結合された状態で使用されている。

ここで,「麦」は,「麦茶」,「麦酒」,「麦飯」のように,麦がその下に位置して「麦」によって修飾される物質に係る形で結合されたものではない。

したがって,本件商標における「麦」は,必ずしも商品の原材料としての表示の機能を果たすように「爽快」と結合されたものでもなく,むしろ「麦爽快」を1つの造語として認識すべきものである。

このような観点から本件商標について観察すれば,明らかに商品の品質を誤認させるようなものでないことが明白である。

(2)商標法第4条第1項第16号の「商品の品質について誤認を生ずる」とは,その商標によって取引される商品が,現実には中級品,下級品であるのに,上級品であるかの如く世人をして誤認させる場合をいうのである。

要するに,本号は,商標が商品との関係において不実を表示しているため,その商標によって表わされる商品の真正に関し,世人をして錯誤に陥らしめるような商標を登録しない旨を規定したものである(三宅正雄,商標法雑感157頁)。また,「商標について商品の品質を誤認させるような事情が存在するかどうかは,取引界における世人の認識いかんを基準として判断すべきもの」(網野誠「商標(新版)」)である。

このことを,本件商標と指定商品との関係において検討するに,本件商標においては,取引される商品が,現実には中級品あるいは下級品であるのに,上級品であるかの如く世人を誤認させるような状況が覗えない。

また,本件商標は,商品との関係において不実を表示しているものでもなく,本件商標の指定商品の取引において,世人が商標の品質を誤認させるような事情が存在することが覗えない。

3 むすび

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第16号に該当しないから,同法46条1項の規定によって無効とされる理由は存在しない。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は,別掲のとおり,縦長矩形図形の上辺部を右上がりの波形曲線にした略台形状図形の,該上辺部左側から上方に突き出るように,穂先を右側に傾けた麦の穂図形を配した黄色背景図形(以下「麦の穂図形」という。)を描き,麦の穂図形の中央部分に「麦爽快」の文字を,同じ書体,同じ大きさで一体的に縦に大きく書し,その下部に,該文字の読みである「むぎそうかい」の平仮名を縦に小さく書した構成からなるものである。

そして,本件商標の構成中,麦の穂図形の中央部分に重なるように配置され,まとまりよく表された「麦爽快」の文字部分は,外観上,これに接する取引者,需要者に一体のものとしてのみ看取され,把握されるとみるのが自然というべきであり,本件商標の,かかる構成からすれば,「麦」の文字部分を本件請求に係る指定商品の原材料を表示したものと理解し,「爽快」の文字部分のみを独立した商標として認識するものということはできない。

そうとすれば,本件商標は,構成各文字から,「ムギソウカイ」の称呼を生じ,特定の意味合いを有しない一種の造語と認識させるものといえるものであるから,特定の観念を生じないものである。

(2)引用商標について

引用商標1は,「爽快」の文字を縦に書してなり,引用商標2は,「爽快」の文字を標準文字で現してなるものであるから,該文字からは,「ソウカイ」の称呼を生じ,「さわやかで気持がよいこと」(広辞苑第六版)の観念が生じるものである。

(3)本件商標と引用商標との類否について

本件商標と引用商標との類否について検討するに,外観については,本件商標は,麦の穂図形と,「麦爽快」及び「むぎそうかい」の各文字とを組み合わせた構成からなるのに対し,引用商標は,「爽快」の文字からなるものであるから,外観上,十分に区別できるものである。

また,称呼については,本件商標から生ずる「ムギソウカイ」の称呼と,引用商標から生ずる「ソウカイ」の称呼とは,語頭における「ムギ」の音の有無という差異により,明確に区別できるものである。

さらに,観念については,本件商標からは,特定の観念が生ずるとはいえないから,本件商標と引用商標とは,観念上,類似するところはないものである。

そうとすれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても,十分に区別することができる非類似の商標である。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(4)請求人の主張について

請求人は,本件商標の構成中,「麦」の文字及び「麦の穂図形」は,明らかに原材料が「麦」である酒であることを表す文字及び図形と認められ,麦を原材料とする酒類との関係では,単に「麦を原材料とする酒類」であることの品質表示にすぎず,商標としての自他商品の識別機能を有しない,本件商標の要部は,「爽快」の部分である旨主張する。

しかしながら,本件商標の構成中,同書,同大で表された「麦爽快」の文字部分における「麦」の文字が,本件請求に係る指定商品との関係において商品の原材料を表示したものと理解されるというのが一般的であるとの取引上の実情は認め難く,請求人も,その主張を裏付ける証拠を提出していない。

そして,本件商標の,かかる構成からすれば,その構成中の「麦爽快」の文字部分は,取引者,需要者に,一体不可分のものと認識され,把握されるというのが自然である。

したがって,本件商標の要部が「爽快」の部分であることを前提とし,その上で,本件商標と引用商標とが称呼及び観念において類似するとの請求人の主張は,採用することができない。

2 商標法第4条第1項第16号該当性について

(1)本件商標は,別掲のとおりの構成からなるところ,その構成中,「麦爽快」の文字部分は,同じ書体,同じ大きさで,まとまりよく一体的に表されているものであり,かかる構成態様にあっては,構成文字全体をもって一体のものと理解,把握されるとみるのが自然である。

そして,たとえ,その構成中の「麦」の文字が,「イネ科に属するオオムギ・コムギ・ハダカムギ・ライムギ・エンバクなどの総称,また,その穀実。」を表すものとしてよく知られた語であるとしても,該文字部分が,本件審判の請求に係る指定商品との関係において,その商品の原材料を表したものと理解されるとはいい難いものである。

そうとすれば,本件商標は,これを上記指定商品に使用しても,商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものというのが相当である。

したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第16号に該当しない。

(2)請求人の主張について

請求人は,本件商標中の「麦」,「むぎ」の文字及び「麦の穂図形」は,本件商標の指定商品が「麦を原材料とした酒」であることを表わす品質表示であって,本件商標が「麦を原材料としない酒類」に使用された場合,明らかに商品の品質について誤認を生じるおそれがある旨主張している。

しかして,商標法第4条第1項第16号の趣旨に関して,「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標については,公益に反するとの趣旨から,商標登録を受けることができない旨規定されている(商標法4条1項16号)。同趣旨に照らすならば,商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標とは,指定商品に係る取引の実情の下で,取引者又は需要者において,当該商標が表示していると通常理解される品質と指定商品が有する品質とが異なるため,商標を付した商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標を指すものというべきである。」との判決があり(知財高裁 平成20年11月27日判決 平成20年(行ケ)第10086号),また,「商標法4条1項16号にいう『商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標』とは,商標を構成する文字,図形等がその指定商品又は役務と不実の関係にあるため,需要者に商標の使用に係る商品や役務が商標に表示された商品又は役務のごとく錯誤に陥るおそれのあるものをいうのであり,商品の品質,役務の質等の誤認のおそれの有無は,商標自体から判断すべきものである(大審院大正15年(オ)第164号同年5月14日第二民事部判決・大審院民事判例集5巻6号371頁)」とした判決が存するところである(知財高裁 平成24年11月21日判決 平成24年(行ケ)第10257号)。

これを本件についてみるに,本件商標の構成中の「麦爽快」の文字は,同じ書体,同じ大きさをもって表されており,視覚上も一体的に把握できるものであって,「麦」の文字部分が特別に印象強く表されているとはいえず,たとえ,その構成中に「麦」の文字を有するとしても,本件商標の係る構成においては,該文字部分が,これに接する取引者,需要者に,本件請求に係る指定商品の原材料を表したものと認識させるということができない。

そして,「麦の穂図形」は,本件商標を構成する背景図形であって,これが,本件請求に係る指定商品の原材料であることを直接的に認識させる態様のものということもできない。

また,本件商標の「麦○○」のように表された構成において,該「麦」の文字部分が,指定商品である酒類の原材料を表す態様というのが一般的であるとの実情や,「麦の穂図形」のような背景図形が,本件請求に係る指定商品の原材料を表示する図形であるとすべき取引上の実情も見受けられない。

そうとすれば,本件商標に接する酒類の取引者,需要者は,その構成から,「麦」の文字及び「麦の穂図形」について,イネ科の植物である「麦」のことを想起することがあるとしても,これらから,直ちに,本件請求に係る指定商品の原材料を表示したと認識することはないとみるのが相当であるから,請求人の主張は,採用することができない。

(3)なお,請求人は,本件審判の審理終結後,平成25年9月6日付けの弁駁書及び同11日付けの上申書を提出し,「麦爽快」を一体に見るべき理由がなく,「麦」と「爽快」の明確な観念に分離してみられることは,明らかである等,述べているが,当該弁駁書を検討するも,当合議体は,上記のとおり判断するものである。

3 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第16号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,無効とすることはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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