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Trademark Appeal Case

二連商標の使用同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2013−300086(T2013−300086/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件第4856369号商標(以下「本件商標」という。)は、「アルファジーピーシー ALPHA GPC」の文字を標準文字で表してなり、平成16年9月7日に登録出願され、第29類「動植物から抽出したエキスを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・及びカプセル状の加工食品」を指定商品として平成17年4月15日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

そして,本件審判の請求の登録は,平成25年2月22日である。

第2 請求人の主張の要点

請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、弁駁書、上申書及び口頭審理陳述要領書(口頭審理における陳述を含む。)において、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証を提出している。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実が存しない。

よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。

2 弁駁の理由

被請求人が「アルファGPC」、「Alpha GPC」又は「アルファジーピーシー」の文字からなる商標(以下、まとめて「使用商標」ということがある。)を使用している事実については認めるが、使用商標は、本件商標の前半部分又は後半部分と社会通念上同一であったとしても、本件商標の全部と社会通念上同一ではない。

また、本件商標の不使用につき、商標法第50条第1項但書規定の正当理由もない。

そのため、商標法第50条第1項規定の不使用要件の充足に基づき、本件商標の登録が取り消されることを免れない。

(1)本件商標の構成に基づく本件商標の認定

ア 上下多段併記商標

登録商標が上下多段併記の構成からなる場合、その一段の使用が登録商標と社会通念上同一と認められることがある。

しかしながら、本件商標のように、同一の称呼及び観念を生じる各文字が横に2個連なって表示される商標(以下「二連併記商標」という。)について、その前後一方いずれかの使用が登録商標と社会通念上同一と認められた事件は、全く存在しないか、存在したとしても数少ないと請求人は考える。

イ 二連併記商標

そもそも、登録商標が上下多段併記の構成からなる場合にその一段の使用が登録商標と社会通念上同一と認められることになったのは、商標審査基準における商標法第4条1項第11号の解説「振り仮名を付した文字商標の称呼」に記載のとおり、文字商標に振り仮名を付して商標登録される場合が多く見受けられるからと考えられる。そして、それが審判便覧53−01に記載の態様のように、観念を同じにする「太陽」及び「SUN」を上下二段に併記した「太陽/SUN」のような二段併記商標についても、その一部の使用が登録商標と社会通念上同一と認められるに至ったと考えられる。

しかしながら、二段併記商標は一商標一出願制度の法制下においては特例として認められた商標であると厳格に解するのが相当であるから、本件商標のように、二連併記商標の一部の使用が二連併記商標と社会通念上同一であると拡大解釈することは許されないはずである。

また、二連併記商標の過去の登録例を見てみると、「OLI OLI/オリ オリ」(登録第4146560号)や「ニューヨーク・ニューヨーク」(登録第5298805号)などがある。ここで、登録商標「OLI OLI/オリオリ」や「ニューヨーク・ニューヨーク」の一部「OLI」若しくは「オリ」又は「ニューヨーク」を商標として使用していたとしても、当該登録商標が2語で一体不可分に登録されていることに鑑みれば、それらが各登録商標と社会通念上同一であると判断されるとは考えられない。

特に、登録商標「ニューヨーク・ニューヨーク」においては、もしそれがその一部の商標「ニューヨーク」又は上下二段併記商標「ニューヨーク/NEW YORK」のように出願されていた場合、その商標は産地又は役務提供場所を普通態様で表示する商標として商標法第3条第1項第3号で拒絶になることは確実である。このことを考慮すれば、登録商標「ニューヨーク・ニューヨーク」は、二連併記することによって一体不可分の商標を構成しており、それによって商標としての識別力を発揮すると判断されたとみるのが相当である。

ウ 被請求人による二連併記商標の選択

被請求人は、本件商標を上下二段併記商標「アルファジーピーシー/ALPHA GPC」で登録しておけば、その一部の商標「アルファジーピーシー」若しくは「ALPHA GPC」又はそれら一部の商標と社会通念上同一の商標が上下二段併記商標と社会通念上同一と判断される場合があることが上記審判便覧において周知にされていたにもかかわらず、被請求人は、本件商標を上下二段併記商標の構成にせず、あえて、登録商標の一部使用が登録商標と社会通念上同一と判断されるか極めて懐疑的である二連併記商標の構成で本件商標を出願している。

そのことを考慮すれば、被請求人は、本件商標について、その称呼は「アルファジーピーシーアルファジーピーシー」のみであって、その一部の商標「アルファジーピーシー」等とは異なる一体不可分の商標であると、本件商標の出願時から考えていたと判断するのが相当である。

以上より、本件商標は一体不可分の商標であるから、その一部の商標「アルファジーピーシー」若しくは「ALPHA GPC」又はそれら一部の商標と社会通念上同一の商標は、本件商標と社会通念上同一の商標ではない。

(2)「ALPHA GPC」が本件商標出願前からその指定商品の品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するものであった点

ア 化学成分「Alpha−GPC」の説明及び使用開始時期

本件商標の一部「ALPHA GPC」と社会通念上同一の文字「Alpha−GPC」が化学成分名であることは、現時点及び本件商標出願前において、広く知られていたことは明らかである。

例えば、インターネット辞典「Weblio英和対訳辞書」には、「Alpha−GPC(アルファGPC)」とは、「L−α−グリセリルホスホリルコリンの別名であり、天然に存在するコリン誘導体の一種で、脳や乳に含まれる。」といった記載がある(甲3)。

イ 被請求人は、平成16年(2004年)8月頃、「Alpha GPC」の文字等を自己の造語として考案したと主張するが、それは事実に反する。

請求人が証拠として把握している限りにおいて、「Alpha−GPC」が化学成分名として最初に用いられたのは、平成16年(2004年)8月頃の10年以上前である1994年6月頃に発行された学術誌「Pharmacology of Aging Processes: Methods of Assessment and Potential Interventions(Annals of the New York Academy of Sciences), Volume717」第253〜269頁に掲載された論文「α-Glycerophosphocholine in the Mental Recovery of Cerebral Ischemic Attacks」(甲5)である。

なお、請求人は、論文を入手していないが、それ以前の論文にも「alpha−GPC」が記載されている(甲6、甲7)。

さらに、米国カルフォルニア州サンタクルーズに所在する「Source Naturals,Inc.」等は、2004年頃の時点において、すでに、化学成分「alpha−GPC」を含むサプリメントを「ALPHA/GPC」として販売していることからも、「Alpha−GPC」がサプリメント業界においてすでに周知の化学成分名であったことが伺い知れる(甲10、11)。

つまり、名称「Alpha−GPC」は、化学成分「Alpha−GPC」又はそれを含む商品が製造される外国において、学術界だけでなく、その当業者にとっても、化学物質名として広く用いられていることは明らかである。

ウ 我が国における「Alpha−GPC」の認知性

請求人が把握している限りにおいて、化学成分「Alpha−GPC」を日本国内において製造する会社は現時点で存在せず、そのすべてを輸入に依存している現状がある。そのため、日本国内で化学成分「Alpha−GPC」に関する文献は近年まで少なかった。

しかしながら、化学成分「Alpha−GPC」の製造国においては、上記のとおり、化学成分「Alpha−GPC」に関する多くの文献がある。また、昨今のインターネット通販の事情に鑑みれば、我が国においても、化学成分「alpha−GPC」を含むサプリメントを容易に入手できる環境にある。

したがって、化学成分「Alpha−GPC」を扱う被請求人を含む当業者であれば、化学成分「Alpha−GPC」の存在は、我が国においても本件商標の出願前から認知されていたといえる。

さらに、請求人は、平成25年5月17日付弁駁書の提出後に以下の事実を入手した。

(ア)特定非営利活動法人日本サプリメント評議会のWebサイトには、「商品『ブレインゴールド』、成分名『グレイセロホスホコリン(αーGPC)』」の記載がある。

(イ)株式会社クラウディアのWebサイトには、「αーGPCは米国では、Dietary Supplement Health and Education(栄養補助食品健康教育法)法により販売されており、国内では厚生労働省が非医薬品栄養補助食品として認定しました。世界で最も厳しい安全性・必要性基準とされる韓国の『機能性健康食品』審査にも合格し許可されています。」の記載がある。

(ウ)被請求人のWebサイトに掲載の食品成分αーGPC(グレイセロホスホコリン)の説明によると、「αーGPCは母乳にも含まれる生体成分で、子供の身長増加を助ける。」の記載がある。

これらの事実は、すべて、グリセロホスホコリン(αーGPC)は食品成分や生体成分等の成分名であることが明らかなことを裏付けている。

エ 外国での「Alpha−GPC」の商標登録の状況

米国特許商標庁(USPTO)及び欧州共同体商標意匠庁(OHIM)において「Alpha−GPC」が商標登録されているかを検索したところ、遅くとも1993年には「Alpha−GPC」が使用されていたにもかかわらず、いずれも商標登録されている事実を発見することができなかった。

したがって、少なくとも、米国及び欧州において、「Alpha−GPC」は化学成分の名称であると認識されているのではないかと推測される。

オ 化学成分名「Alpha GPC」を含む二連併記商標について

本件商標において、もしそれがその一部「アルファジーピーシー」若しくは「ALPHA GPC」又はそれら一部で構成される上下二段併記商標「アルファジーピーシー/ALPHA GPC」のように出願されていた場合、その商標はその指定商品の品質表示を普通態様で表示する商標として商標法第3条第1項第3号で拒絶になることは確実である。これは、上記した登録商標「ニューヨーク・ニューヨーク」の構成態様と同様である。

このことを考慮すれば、本件商標については、その一部の商標「アルファジーピーシー」等やそれらの二段併記商標では商標としての識別力を発揮しえないところ、その称呼は「アルファジーピーシーアルファジーピーシー」のみであって、二連併記することによってはじめて一体不可分の商標を構成し、それによって商標としての識別力を発揮し得ると、審査官が判断したとみるのが相当である。

したがって、そのような経緯を鑑みれば、本件商標は、その一部の商標「アルファジーピーシー」若しくは「ALPHA GPC」又はそれら一部の商標と社会通念上同一の商標と、社会通念上同一の商標ではない。

カ そもそも、商標法第50条第1項の規定において社会通念上同一の商標の使用が登録商標の使用であると認められる趣旨は、パリ条約第5条(不実施・不使用に対する措置、特許・登録の表示)C(2)において、「商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合には、その商標の登録の効力は、失われず、また、その商標に対して与えられる保護は、縮減されない。」と規定されていることに起因すると考えられる(特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」第19版)。

つまり、商標法第50条第1項にいう「社会通念上同一の商標」であるためには、少なくとも、「登録商標の識別力に影響を与えることがない構成部分の変更」であることを満たさなければならない。

そこで、商標の識別力の観点に基づき判断すると、使用商標(本件商標の一部の商標)は、「アルファジーピーシー」若しくは「ALPHA GPC」又はそれと社会通念上同一の商標であり、現時点においてそれが使用商品の成分名であるから、識別力を有していない。

一方、本件商標は、その二連併記の構成によって、独自の識別力を発揮する。

したがって、本件商標から本件商標の一部「アルファジーピーシー」又は「ALPHA GPC」又はそれらと社会通念上同一の商標への変更は、識別力の有無が異なることに鑑みれば、「登録商標の識別力に影響を与えることがない構成部分の変更」であるといえないことは明らかなので、使用商標(本件商標の一部の商標)は、本件商標と社会通念上同一の商標でないことは明らかである。

3 平成25年9月12日付け口頭審理陳述要領書

(1)「α−GPC」について

「α−GPC」及び「L−α−GPC」は、日本国内外において、遅くとも昭和60年以降に発行の特許公報等(甲12〜甲20)に記載のとおり、「L−α−グリセリルホスホリルコリン」(「グリセリルホスホリルコリン」は「グリセロホスホリルコリン」、「Sn−グリセロール−3−ホスホコリン」等とも称される。)の略称として一般的に用いられている。

ここで、「α−GPC」は、学術上、L体(Levorotatory:左旋性)の「L−α−GPC」及びD体(dextrorotatory:右旋性)の「D−α−GPC」の対称な2つの光学異性体を有する。「L−α−GPC」は、人間等の生命体内で作られるホルモン分泌促進成分であって、自然界に存在する化学成分(食品成分の一種)に該当する。それに対し、「D−α−GPC」は、生命体が作り出せず、人工的に製造しなければ自然界に存在し得ないので、現在まで「D−α−GPC」が市場に流通したことはない。

つまり、市場に流通する「α−GPC」の全てが「L−α−GPC」であるので、学術上の成分名「L−α−グリセリルホスホリルコリン」等は「L−α−GPC」の「L−」を省略した「α−GPC」を流通上の成分名として流通している。これは、独立行政法人国立健康・栄養研究所が提供するWebページ「『健康食品』の安全性・有効性情報」(甲21)において、成分名称「α−GPC」の学術名が「L−alpha−glycerylphosphorylcholine」であると記載されていることからも明らかである。

なお、上記Webページ(甲21)のデータベースには、「1994年公開のALPHA−GPC関連論文」(甲5)を含む多数の文献が引用されている。つまり、独立行政法人国立健康・栄養研究所は、遅くとも1994年から「L−α−グリセリルホスホリルコリン」が「α−GPC」として称されていたことを認識しているといえる。

(2)社会通念上同一の商標について

登録商標は、商標法第3条の要件を満たすことから、同条違反の無効理由がない限り、すべからく識別力を有することになる。

本件商標の場合、その前半部分又は後半部分が、甲第5号証〜甲第21号証に示すとおり、遅くとも昭和60年から日本国内外で周知の化学成分及び食品成分の略称「α−GPC」と称呼が同一であるので、識別力を有しない。

そのため、本件商標は、商標法第3条違反が看過されて登録になったか、一連一体不可分で識別力を発揮する造語商標として登録されたかのいずれかである。

そして、本件審判は不使用取消審判であり、商標法3条違反の是非を争う商標登録無効審判(商標法第46条)ではないので、商標法第3条違反が看過されて登録になったか否かの主張を行い得ない。

そのため、請求人は、本件商標の前半部分及び後半部分が個別に識別力を有さず、本件商標が一連一体不可分ではじめて識別力を発揮する造語商標であると仮定して主張している。

上記を考慮すると、本件商標における社会通念上同一の商標は、識別力のない本件商標の前半部分又は後半部分ではなく、一連一体の造語商標「アルファジーピーシー Alpha GPC」の書体変更等と同程度の商標でなければならない。

(3)被請求人の陳述要領書に対する反論

ア 被請求人は、「漢字や欧文字の商標の表音を、カタカナで、上下ではなく左右に並べて配置することも一般的に行われている」と主張し、この主張を根拠にして、登録商標と社会通念上同一の商標であるか否かにつき、二段併記商標か二連併記商標かといった表面的な形式に注目して画一的に判断されるべきものではないと述べている。

通常、市場で利用される商標の表音を左右に並べて配置する場合、左右どちらかが表音であることを明らかにして初めてそれが表音であると認識される。言い換えると、同一称呼の2単語が左右配置された場合、その後ろの単語は前の単語の読みを無条件に示すものであるという日本語の規則は言語学上存在しない。

したがって、一商標一出願の原則の例外を左右配置の二連併記商標にまで拡大する合理的理由はなく、被請求人の上記主張には理由がない。

イ 本件商標の前半部分又は後半部分から生じる称呼に基づき本件商標から「アルファジーピーシー」の称呼が生じると審査官が判断したことを理由に、本件商標の前半部分又は後半部分と同一の称呼を生じる使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標であると考えるのは誤りである。

つまり、商標の類否判断に係る要部認定と社会通念上同一商標の認定とは全く異なる判断だからである。

ウ 被請求人は、「日本国内において、少なくとも本件商標の出願時には、『アルファジーピーシー』、『アルファGPC』又は『Alpha GPC』という造語を創案し、これらを商標として使用することに決めた」と主張する。

しかしながら、上述のとおり、「α−GPC」及び「L−α−GPC」は、遅くとも昭和60年以降から現在に至るまで、日本国内外で、「L−α−グリセリルホスホリルコリン」等の略称として一般的に用いられている(甲5〜甲20)。

このことから、「α−GPC」を単に欧文字で表記した「Alpha GPC」という造語を食品成分の商標として被請求人が創案したというのは、事実に反すると考えざるを得ない。

また、食品成分が化学成分の一種であることに鑑みれば、化学成分で多用されている略称が本件商品(サプリメント)に係る食品成分の略称として公知にならないという合理的理由がない。むしろ、「α−GPC」は、本件商品の分野において、本件商品の原料「L−α−グリセリルホスホリルコリン」等の略称として一般に認識されていたと考えるほうが自然である。

したがって、本件商標の前半部分又は後半部分と同一の称呼を有する商標(「アルファジーピーシー」、「アルファGPC」又は「Alpha GPC」)には識別力がなく、「アルファジーピーシー Alpha GPC」という二連併記により本件商標の識別力が認められた、と請求人は考える。

エ 被請求人は、登録商標の識別力の有無は本件には関連がないと主張する。

しかしながら、請求人が社会通念上同一の商標の判断基準を述べたとおり、社会通念上同一商標の認定については、本件商標の識別力がどこにあるのかを明らかにする必要があるため、少なくとも本件審判においては、識別力の認定は極めて重要である。

(4)まとめ

以上から、被請求人の主張では、被請求人が使用する使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標であるとはいえないので、取消理由がある。

第3 被請求人の答弁の要点

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁書及び口頭審理陳述要領書(口頭審理における陳述を含む。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証〜乙第26号証を提出している。

1 答弁の理由

(1)使用商品及び使用商標について

ア 被請求人は、平成18年3月から現在まで継続して、「アルファジーピーシー」、「アルファGPC」又は「Alpha GPC」との商品名で、グリセロホスホコリン(グリセロリン酸コリン)を主成分とするカプセル状の加工食品を製造販売している。

「アルファジーピーシー」、「アルファGPC」及び「Alpha GPC」は、被請求人が平成16年8月頃に考案した造語である。

イ 乙第1号証〜乙第9号証より、「アルファGPC」又は「Alpha GPC」を商品名とする商品は、動植物から抽出したエキスであるグリセロホスホコリンを主成分とするカプセル状の加工食品であり、被請求人によって、平成25年1月8日及び同月11日に「(株)クラウディア」に販売されていることが明らかである。

ウ 被請求人は、動植物から抽出したエキスであるグリセロホスホコリンを主成分とするカプセル状の加工食品について、商品名として「アルファGPC」、「Alpha GPC」又は「アルファジーピーシー」の文字からなる商標(使用商標)を使用している。

(2)本件商標と使用商標について

本件商標は、「アルファジーピーシー」の部分が片仮名でまとまりよく表され、「ALPHA GPC」の部分が英文字でまとまりよく表され、片仮名で表された前者と英文字で表わされた後者の間に一文字分の空白が設けられている。本件商標を構成する「アルファジーピーシー」の部分と「ALPHA GPC」の部分は分離して看取され、前者も後者も、それぞれ、一気によどみなく称呼できるものであり、前者も後者も「アルファジーピーシー」と自然に読むことができるので、本件商標からは「アルファジーピーシー」の称呼が生じる。

使用商標のうち「アルファGPC」は、「アルファジーピーシー」との称呼を生ずる。また、本件商標と使用商標「アルファGPC」との間には、別異の概念は生じない。

使用商標のうち「Alpha GPC」は、本件商標の後半部分である「ALPHA GPC」の「ALPHA」を小文字に変更しただけのものであり、本件商標と同様に「アルファジーピーシー」との称呼を生ずる。また、本件商標と使用商標「Alpha GPC」との間には、別異の概念は生じない。

使用商標のうち「アルファジーピーシー」は、本件商標の前半部分と同一であり、本件商標と同様に「アルファジーピーシー」との称呼を生ずる。また、本件商標と使用商標「アルファジーピーシー」との間には、別異の概念は生じない。

以上のように、上述の使用商標は、いずれも「アルファジーピーシー」との称呼を生ずる。また、本件商標と上記使用商標との間には、別異の概念は生じない。

したがって、上記各使用商標は、本件商標とは社会通念上同一の商標である。

2 平成25年8月29日付け口頭審理陳述要領書

(1)請求人は、本件商標は二段併記の構成ではなく、「二連併記商標」であるから、登録商標が二段併記の構成からなる場合に上段及び下段の各部が観念を同一とするときにその一方の使用が登録商標と社会通念同一の商標の使用であると認められるのとは異なって、その一部の使用が登録商標と社会通念上同一の商標の使用であると拡大解釈されることは許されない旨主張している。

しかしながら、登録商標と社会通念上同一の商標であるか否かということは、登録商標において、同一の称呼及び観念を生ずる文字が二段併記であるからとか、一段内に並べて表されているからとかいった表面的な形式に注目して画一的に判断されるべきものではない。

本件商標は、上述のように、「アルファジーピーシー」の部分が片仮名でまとまりよく表され、「ALPHA GPC」の部分が欧文字でまとまりよく表され、片仮名で表された前者と欧文字で表わされた後者の間に一文字分の空白が設けられている。本件商標を構成する「アルファジーピーシー」の部分と「ALPHA GPC」の部分は分離して看取され、前者も後者も、それぞれ、一気によどみなく称呼できるものであり、前者も後者も「アルファジーピーシー」と自然に読むことができるので、また、上述のような構成を有する本件商標を目にした需要者は、前半部分の片仮名は、後半部分の欧文字の読みを表したにすぎないものであると容易に理解するので、本件商標からは「アルファジーピーシー」の称呼が生じる。

実際、漢字や欧文字の商標の表音を、片仮名で、上下ではなく左右に並べて配置することも一般的に行われている取引の実情を考えれば、上述のような構成を有する本件商標を目にした需要者は、前半部分の片仮名は、後半部分の欧文字の読みを表したにすぎないものであると容易に理解し、本件商標をあえて「アルファジーピーシーアルファジーピーシー」と称呼することはない。

(2)請求人は、「OLI OLI」及び「オリ オリ」の文字を上下二段に横書きしてなる商標(商標登録第4146560号)と、「ニューヨーク・ニューヨーク」の文字を横書きしてなる商標(商標登録第5298805号)とを例に挙げて、これらの一部である「OLI」若しくは「オリ」又は「ニューヨーク」は登録商標と社会通念上同一であると判断されるとは考えられないと述べている。

上記「OLI OLI/オリ オリ」は、上段の「OLI OLI」の全体、下段の「オリ オリ」のそれぞれが同一の書体、同一の大きさの欧文字又は片仮名でまとまりよく表されているものである。前半と後半の間に一文字分の空白が設けられているとはいえ、前半も後半も音は「オリ」の二音で極めて短く、全体としても「オリオリ」と一気一連に称することのできるものであるから、少なくとも、上段の「OLI OLI」、下段の「オリ オリ」のそれぞれが、一体不可分の一種の造語であると考えられる。そして、この商標は、下段の「オリ オリ」が上段の「OLI OLI」の読みを表したものであると容易に理解される。上述したような取引の実情から考えて、請求人が述べるような、上段と下段を分離した上、さらに、上段の一部の「OLI」だけを抽出して取引に当たるとか、下段の一部の「オリ」だけを抽出して取引に当たるといったようなことは、非常に不自然である。

また、上記「ニューヨーク・ニューヨーク」も、全体が同一の書体、同一の大きさの片仮名でまとまりよく表されているものである。前半と後半の間に「・」が設けられているとはいえ、前半も後半も「ニューヨーク」という、短く、非常によく知られた地名であり、全体としても「ニューヨークニューヨーク」と一気一連に称することのできるものであるから、「ニューヨーク・ニューヨーク」の全体で一体不可分の一種の造語であると考えられる。また、上述したような取引の実情から考えて、前半部分も後半部分も片仮名で表わされている商標について、前半部分又は後半部分のいずれか一方を他方の表音に過ぎないと理解して、一方を省略して「ニューヨーク」と称することは、非常に不自然である。

これに対して、本件商標は、上述のように、「アルファジーピーシー」の部分が片仮名でまとまりよく表され、「ALPHA GPC」の部分が英文字でまとまりよく表され、片仮名で表された前者と英文字で表わされた後者の間に一文字分の空白が設けられている。本件商標は、片仮名で表わされた前半部分と英文字で表わされた後半部分とが視覚的に分離されている。また、本件商標は、片仮名で表わされた前半も英文字で表わされた後半もそれぞれ、「アルファジーピーシー」と自然に読むことができる一方で、前半と後半とを通した「アルファジーピーシーアルファジーピーシー」は冗長であり、自然に一気に読めるとはいえない。上述したような取引の実情から考えても、前半部分の片仮名は、後半部分の欧文字の読みを表したにすぎないものであると容易に理解される。

したがって、本件商標は、「アルファジーピーシー ALPHA GPC」の全体で一連一体の一種の造語というよりも、前半部分と後半部分とが分離して観察され、「アルファジーピーシー」の称呼が生ずると考える方が自然である。

(3)本件商標から「アルファジーピーシー」の称呼が生ずることは、本件商標の登録出願後になされた商標登録出願のうち、本件商標を引用商標として拒絶された出願が6件存在していることからも裏付けられる。

被請求人が調査した範囲では、。

(4)請求人は、「被請求人は、本件商標を上下二段併記商標の構成にせず、あえて、・・・二連併記商標の構成で本件商標を出願している。」「そのことを考慮すれば、被請求人は、本件商標について、その称呼は『アルファジーピーシーアルファジーピーシー』のみであって、その一部の商標『アルファジーピーシー』等とは異なる一体不可分の商標であると、本件商標の出願時から考えていたと判断するのが相当である」と述べているが、これは請求人の憶測にすぎないし、漢字や欧文字の商標の表音を、片仮名で、上下ではなく左右に並べて配置することも一般的に行われている取引の実情を考えれば、上述のような構成を有する本件商標を目にした需要者は、前半部分の片仮名は、後半部分の欧文字の読みを表したにすぎないものであると容易に理解されることを考慮していない。

上述のとおり、本件商標の出願前から現時点に至るまで、本件商標からは、「アルファジーピーシー」の称呼が生じる。登録商標から生じる称呼は、登録商標が二段併記の構成であるのか、同一の称呼を生ずる部分が一段内に横書きされた構成であるのかといった表面的な形式によって画一的に判断されるものではない。

(5)請求人は、「『Alpha−GPC』が化学成分名であることは、現時点及び本件商標出願前において、広く知られていたことは明らかである。」、「被請求人は、平成16年(2004年)8月頃、『Alpha GPC』の文字等を自己の造語として考案したと主張するが、それは事実に反する。」と述べ、「化学成分Alpha−GPCを扱う被請求人を含む当業者であれば、化学成分『Alpha−GPC』の存在は、我が国においても本件商標の出願前から認知されていたといえる。」と述べている。

しかしながら、これらの請求人の主張は事実に反する。

まず、本件商標の出願時には、日本国内に、グリセロホスホコリンを主成分とするサプリメントは存在しなかった。被請求人は、平成16年(2004年)8月頃から、グリセロホスホコリンを初めて日本国内に食品として商業輸入するための準備を進めていた。日本国内では、平成16年(2004年)8月頃の時点において、グリセロホスホコリンは、GPCと略されることがあった。

そこで、被請求人は、新しく輸入するGPCには、従来の他のGPCと紛らわしくないような名称を付けたいと考え、「アルファジーピーシー」、「アルファGPC」及び「Alpha GPC」という造語を創案し、これらを商標として使用することに決めた。

例えば、「生化学辞典(第4版)」(株式会社東京化学同人発行:乙22)には、「グリセロ−3−ホスホコリン(sn−glycero−3−phosphocholine)=グリセロール 3−ホスホリルコリン」の記載はあるが、「α−GPC」、「アルファジーピーシー」、「アルファGPC」、「Alpha GPC」及び「ALPHA GPC」のいずれも、記載されていない。そして、被請求人は平成16年9月7日に本件商標登録出願をした。

その後も被請求人は、グリセロホスホコリンの輸入の準備に鋭意取り組み、平成17年1月31日には、関西空港検疫所長に宛てて、被請求人が商業輸入する予定であるグリセロホスホコリンについて、医薬品等に該当しない旨を確認したことを報告する確認書を提出した(乙23)。そして、被請求人は、平成17年(2005年)3月11日に、製造元から輸出の報告である「Pro Forma Invoice」を受け(乙24)、平成17年(2005年)4月1日に、日本で初めて、グリセロホスホコリンを商業輸入することができた。平成17年(2005年)4月5日付けの「食品等輸入届出済証」(乙25)と「食品等輸入届出控」(乙26)には、輸入の届出の日が2005年4月1日であることが記載されている。

上述の乙第23号証〜乙第26号証のいずれにも、「アルファジーピーシー」、「アルファGPC」、「Alpha GPC」という記載も、「α−GPC」という記載も、全く無い。輸入する製品名は、単に「グリセロホスホコリン」、「GLYCERO PHOSPHO CHOLINE」又は「GPC」という用語で表わされている。

したがって、日本国内において、少なくとも本件商標の出願時には、「アルファジーピーシー」、「アルファGPC」及び「Alpha GPC」という用語は認知されていなかった。

(6)請求人は、「本件商標については、その一部の商標『アルファジーピーシー』等やそれらの二段併記商標では商標としての識別力を発揮しえないところ、その称呼は『アルファジーピーシーアルファジーピーシー』のみであって、二連併記することによってはじめて一体不可分の商標を構成し、それによって商標としての識別力を発揮し得ると、審査官が判断したとみるのが相当である。」と述べ、また、「本件商標は、その二連併記の構成によって、独自の識別力を発揮する。」と述べている。

しかしながら、本件商標は、二連併記することによって初めて一体不可分の商標を構成し、それによって商標としての識別力を発揮し得ると審査官が判断したのではなく、前半部分の「アルファジーピーシー」は後半部分の「ALPHAGPC」の読みを表したものであると容易に理解されると判断された上で、本件商標の出願時には「α−GPC」は、日本国内において食品(サプリメント)成分の普通名称ではなかったので、登録されたのである。

(7)請求人は、「alpha−GPC」等の記載がある論文や記事を何通か挙げて(甲3〜甲11)、本件商標出願前から「アルファジーピーシー」又は「ALPHAGPC」の語には識別力がなかった旨主張している。

しかしながら、これらの論文等が本件商標の出願時において、日本国内で、本件商標の指定商品の分野の需要者に広く知られていた事実を示す証拠は示されていない。

グリセロホスホコリンを「α−GPC」又は「alpha−GPC」と称し、かつ、多少なりともグリセロホスホコリンのサプリメントヘの利用について触れているのは、甲第9号証の記事の一部のみである。これでは、本件商標の出願時に、日本国内は勿論、海外においても、サプリメントの分野の需要者において、「ALPHA GPC」がサプリメントの原材料の普通名称であったとは認め難い。

たとえ、本件商標の出願前に、海外ではグリセロホスホコリンを「α−GPC」又は「ALPHA−GPC」と称することがあったとしても、上述のように、日本では、グリセロホスホコリンを「α−GPC」、「アルファGPC」、「Alpha GPC」、「ALPHA GPC」又は「アルファジーピーシー」と称することはなかった。

(8)請求人は、本件商標の一部を構成する「ALPHA GPC」には、本件商標の出願時から識別力がなく、したがって、本件商標は「二連併記」にすることによってはじめて一体不可分の商標を構成し、独自の識別力を発揮する旨主張するが、そもそも、使用商標が登録商標と社会通念上同一であるか否かを判断するに当たって、登録商標の識別力を問題にすべきではない。

商標法50条は、登録商標の不使用による商標登録の取消しの審判についての規定である。商標登録は、登録後に存続が妥当でなくなった場合にも、適切な無効理由がない限りは存続するし、商標が普通名称化した場合にも存続する。例えば、商標が普通名称化した場合には、商標法第26条の規定により、その商標には商標権の効力が及ばないよう調整されている。

すなわち、登録商標の不使用による取消審判は、登録商標に識別力があるとかないとかの問題ではない。

3 まとめ

以上によれば、被請求人は、本件審判の要証期間内に日本国内において、売上伝票及び商品の包装に、本件商標と社会通念上同一の範躊に属する「アルファGPC」、「Alpha GPC」又は「アルファジーピーシー」の文字からなる商標を、その指定商品に使用していることが明らかである。

そして、上記売上伝票及び商品の包装は、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」(商標法第2条第3項第1号、第2号)に該当するものである。

第4 当審の判断

1 本件商標の使用について

(1)被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。

ア 乙第1号証及び乙第7号証は、いずれも被請求人が「(株)クラウディア」宛に発行した「売上伝票」の写しと認められる。それぞれの売上伝票には、商品名欄に「hps アルファGPC 60粒」又は「gpc12 アルファGPC 120粒」等と記載され、これに対応した数量、単価、金額等がそれぞれの欄に記載されている。また、日付欄に「25/01/11」又は「25/01/08」の記載がある。

イ 乙第2号証〜乙第4号証は、商品の包装箱の外形又は展開図を撮影した写真と認められるところ、該包装箱には、上蓋部分に濃紺色で「アルファGPC400」の文字が大きく記載され、一方の側面に赤色の「アルファGPC」の文字並びに、白色の「400」及び「60Capsules」の文字が大きく顕著に横一連に表示されている。そして、上記一連の文字を挟んで、上段には「Physician’s Choice」及び「高次機能性食品」の文字が白色で二段に表示され、下段には「(αーグリセロホスホコリン 400mg)」の文字が表示されている。

さらに、これらの表示の下方には、「お召し上がり方」を始め、「品名:グリセロホスホコリン補助食品」、「原材料:グリセロホスホコリン(GPC)、グリセリン、HMPC植物性カプセル」、「販売者:日本ファミリーケア株式会社PD」等の記載がある。

他方の側面には、赤色の「AlphaGPC」の文字、白色の「400」及び「60Capsules」の文字が大きく顕著に一連に表示されている。そして、上記一連の文字を挟んで、上段には「Physician’s Choice」及び「Highly Functional Supplement」の文字が白色で二段に表示され、下段には「400mg αーGlycerophosphocholine」の文字が表示されている。

さらに、これらの下方の左側には、「α」の文字を図案化した如き金色の図形が大きく表され、これに重ねて赤色の「GPC」の文字が表示され、右側には「本品は栄養補助食品で成長期のお子様から中高年の健康維持に役立つことが医学的にも知られています。」等の語句が記載されている。

ウ 乙第8号証及び乙第9号証は、商品の包装容器及びそれに付されたラベルの写真と認められるところ、該ラベルの中央部分には、上記イの側面に表された図形と同一の金色の図形に重ねて赤色の「GPC」の文字が顕著に表示され、これを挟んで、上段に「Physician’s Choice」の文字が白色で表示され、下段に「アルファジーピーシー」及び「120 Capsules」の文字が白色で二段に表示されている。

そして、これらの左右に、「栄養成分(1カプセルあたり)/熱量:1.5kcal、蛋白質:100mg、脂質:50mg、炭水化物:250mg、ナトリウム:0mg」、「内容成分(1カプセル当たり)/α−GPC(アルファジーピーシー):150mg」、「お召し上がり方/健康補助食品として、1日4〜8粒を目安にお召し上がり下さい。」、「名称/高次機能性食品」、「原材料/グリセロホスホコリン(GPC)、ゼラチン、グリセリン」、「販売者」等の記載がある。

エ 乙第23号証は、被請求人が関西空港検疫所長宛に提出した平成17年1月31日付の「確認書」の写しと認められるところ、これには、被請求人が輸入する商品について、「製品名:グリセロホスホコリン(GPC)」及び「食品名:グリセロホスホコリン(GPC)」の記載がある。

オ 乙第24号証は、「March 11、2005」の日付がある「Pro Forma Invoice」と題する書面の写しと認められるところ、不鮮明ながら、「Customer」欄に「Japan Family Care Inc.」と、「Material」欄に「GPC100TM(100%GlyceroPhosphoCholine)」とそれぞれの記載がある。

カ 乙第26号証は、「食品等輸入届出控」と題する書面の写しと認められるところ、輸入者の「氏名」欄に「JAPAN FAMILY CARE,INC.」と、「届出年月日」に「2005年04月01日」と、「品目名」欄に「大豆レシチンの調整品」と、「備考」欄に「GLYCERO PHOSPHO CHOLINE」等とそれぞれの記載がある。

(2)以上を総合すると、乙第1号証及び乙第7号証の「売上伝票」に記載された商品「アルファGPC」は、乙第2号証〜乙第4号証、乙第8号証及び乙第9号証の写真に示す包装箱や容器の商品を指すものというべきであり、被請求人は、健康補助食品として「大豆レシチンの調整品」である「グリセロホスホコリン(GPC)」と称する商品を輸入し、これらの写真に示す包装箱や容器により、本件審判の請求の登録(平成25年2月22日)前3年以内である、平成25年1月8日及び同月11日に販売したものとみるのが自然である。そして、上記商品は、写真に示す包装箱や容器に記載された商品の説明に徴し、本件商標の指定商品「動植物から抽出したエキスを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・及びカプセル状の加工食品」の範疇に属する商品といえる。

また、乙第2号証〜乙第4号証の包装箱に表示された「アルファGPC 400」、「AlphaGPC 400 60Capsules」又は「アルファGPC 400 60Capsules」の文字部分は、「400」又は「400 60Capsules」の文字部分が、商品の内容等を表示するものであって自他商品の識別力を有しないものというべきであり、いずれも「アルファGPC」又は「AlphaGPC」の文字が独立して認識し理解されるものといえる。同様に、乙第8号証及び乙第9号証の容器に表示された「アルファジーピーシー」の文字部分も、他の構成部分とは独立して認識し理解されるものといえる。

したがって、上記容器や包装箱に表示された「アルファGPC」、「Alpha GPC」又は「アルファジーピーシー」の文字(以下、これらをまとめて「使用商標」という。)は、本件審判の請求の登録前3年以内に、被請求人によって本件商標の指定商品について使用されていたものというべきである。

なお、上記使用商標が被請求人によって使用されているものであること、販売時期が要証期間内であること、使用商品が請求に係る指定商品であることについては、当事者間に争いはない。

2 社会通念上同一の商標といえるか否かについて

(1)商標法第50条第1項の規定に基づく登録商標の取消審判における商標の使用については、審決取消訴訟における判決において「登録商標は、これを付する商品の具体的な性状に応じ、適宜に変更を加えて使用されるのがむしろ通常であるから、そのような変更が当該登録商標の有する独自の識別性に影響を与えていない限り、なお同一の範囲に属する標章と認識するのが、商品需要者あるいは取引者の通念というべきである。そして、商標の不使用を事由とする商標登録取消しの制度の存在理由(全く使用されていないような登録商標は、第三者の商標選択の余地を狭めるから、排他的な権利を与えておくべきでないとするのが、主たる理由と考えられる。)に鑑みると、登録商標と称呼及び観念を同じく外観も酷似する標章(これを、『社会通念上、登録商標と同一の標章』と称することもできよう。)の使用が、同条にいう『登録商標の使用』に該当すると解すべきことは当然であるが、それにとどまらず、登録商標の構成に変更が加えられたために外観が必ずしも登録商標と酷似するとはいえない標章であっても、構成の変更が、登録商標の構成において基本をなす部分を変更するものでなく、当該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない限度にとどまるものであるときは、その標章の使用をもって商標法五〇条にいう『登録商標の使用』に該当すると解して差支えないとするのが正当である(パリ条約第五条C(2)の規定を参照)。」と判示され、また「商標の不使用を事由とする商標登録取消しを論ずるときには、『前述のような制度の存在理由に鑑みても、商標法第五〇条所定の登録商標の使用』は、商標がその指定商品について何らかの態様で使用されておれば十分であって、識別標識としての使用(すなわち、商品の彼比識別など商標の本質的機能を果たす態様の使用)に限定しなければならぬ理由は、全く考えられない。」と判示されているところである(以上、東京高裁平成3年2月28日判決 平成2年(行ケ)第48号)。

(2)これを本件についてみるに、本件商標は、「アルファジーピーシー ALPHA GPC」の文字からなるところ、単に文字が繰り返されているというより、その文字種が異なることから、その構成中の「アルファジーピーシー」の片仮名の文字部分が後半部分の「ALPHA GPC」の欧文字の読みを表したものとして認識し把握されるとみるのが自然であり、「アルファジーピーシー」の称呼を生ずるものというべきである。

この点に関し、請求人は、本件商標は一体不可分のものであって「アルファジーピーシーアルファジーピーシー」の称呼のみを生ずる旨主張するが、かかる称呼は冗長であるばかりでなく、「アルファジーピーシー」の文字部分と「ALPHA GPC」の文字部分が視覚上分離して看取され、かつ、「ALPHA GPC」の文字が「アルファジーピーシー」と称呼されることは明らかであり、「アルファジーピーシー」の文字がその称呼を特定すべき役割を果たしているものと無理なく認識し把握されるから、上記のとおり判断するのが相当であって、請求人の主張は採用することができない。

一方、使用商標のうち、「アルファGPC」は「アルファジーピーシー」の称呼を生ずることは明らかである。同じく「AlphaGPC」は本件商標の後半部分と綴りを同じくするものであり、また、「アルファジーピーシー」は本件商標の前半分と同一であり、いずれも「アルファジーピーシー」の称呼を生ずるものである。

そうすると、使用商標は、本件商標と称呼を共通にするばかりでなく、本件商標の構成文字を含むものでもあり、本件商標と社会通念上同一の商標というべきである。

なお、請求人は、本件商標は二連併記の構成によってのみ自他商品の識別力を有するものであるとか、商標法第3条違反が看過されて登録されたものであるとか縷々主張するが、本件は、商標法第50条第1項の規定に基づく登録商標の取消審判であり、当該商標がその指定商品について何らかの態様で使用されていれば足りるのであって、当該商標が識別標識としての機能を有するか否かの問題は本件の埒外といわなければならないから、請求人の主張は採用することができない。

3 小括

してみれば、被請求人(商標権者)は、日本国内において、本件商標の指定商品「動植物から抽出したエキスを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・及びカプセル状の加工食品」の範疇に属する商品の包装箱や容器に、本件商標と社会通念上同一と認め得る「使用商標」を付し、それを要証期間内の平成25年1月8日及び同月11日に(株)クラウディアに販売(譲渡)したものであり、被請求人の当該行為は、商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為であって、商標法第2条第3項第2号に該当する。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人によってその指定商品について使用されていたものというべきであるから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべき限りではない。

よって、結論のとおり審決する。

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