Trademark Appeal Case
論点抽出失敗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900108(T2013−900108/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5551327号商標(以下「本件商標」という。)は、「QuadBeat」の欧文字を横書きしてなり、平成24年7月26日に登録出願、第9類「MP3プレーヤー,ナビゲーション装置,音声受信機,携帯型マルチメディアプレーヤー,携帯情報端末装置,ヘッドホン,イヤホン,スピーカー,マイクロホン,コードレス電話機,イヤホンマイク,ヘッドセット,テレビジョン受信機用リモートコントローラ,オーディオ機器用リモートコントローラ,カセットプレーヤー用リモートコントローラ,MP3プレーヤー用リモートコントローラ,携帯電話機,スマートフォン,テレビジョン受信機,携帯用通信機械器具,携帯電話機用ヘッドセット,トランシーバー,衛星電話機,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同年12月18日に登録査定、同25年1月18日に設定登録されたものである。
第2 本件登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づいてその登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第76号証を提出した。
1 申立人が引用する商標
申立人が引用する登録第5449898号商標(以下「引用商標」という。)は、「BEATS」の欧文字を標準文字で表してなり、平成21年7月24日に登録出願、別記のとおり、第9類、第25類、第38類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同23年11月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2 引用商標の著名性について
申立人であるビーツ エレクトロニクス エルエルシーは、世界的に著名なヒップホップ音楽のアーティストであるアンドレロメルヤング、及び、米国の大手レコード会社ユニバーサルミュージックグループのレコードレーベルであるインタースコープ−ゲフィン−A&Mレコード社の会長であるジミー・アイオヴィンの両氏により2006年(平成18年)に設立された米国法人であり、米国を拠点に、全世界的規模で、ヘッドホン、イヤホン、スピーカーをはじめとする一般消費者向けの音響機器の企画・販売を行なっている(甲3ないし甲7)。
申立人は、2008年(平成20年)に、高性能ヘッドホンを企画、高音質ケーブルの製造で知られる米モンスターケーブル社との提携により、「BEATS BY DR.DRE」のブランド名で同ヘッドホンの販売を開始した。この商品は、申立人会社の設立者の一人であるアンドレロメルヤングが、“アーティストが創造したままの音楽をリスナーに届ける”ことを目指して監修したものであり、ブランド名に採用されたDR.DRE(ドクタードレー)”は、同氏の芸名である(甲3)。また、この商品は、1台300ドル(約3万円)を超えるという高価格帯にも関わらず、その品質の高さ、デザインの良さ、及び、DR.DREの人気と著名性も相俟って、たちまち高い人気を獲得することとなった(甲12及び甲13等)。
さらに、申立人は、米国の人気ミュージシャンやバスケットボール選手等著名人とコラボレーションした「BEATS」ブランドの音響機器(以下「申立人商品」という。)を次々と発売し(甲8ないし甲11)、音響機器の分野において確固たる地位を確立し、世界的な成功を収めている。実際、米国における1台100米ドルを超える高級ヘッドホンの市場では、申立人商品が市場を席捲しており、2012年(平成24年)には、その製品の売上高は5億米ドル(約500億円)を突破し、米国の高級ヘッドホンの市場においては、64%のシェアを獲得するに至っている(甲12及び甲13)。
2009年(平成21年)には、申立人は、DR.DREのプロデュースによる音楽用ソフトウェア「BEATS AUDIO」を発表すると共に、米国の大手コンピュータメーカーであるヒューレッドパッカード社とパートナーシップ契約を締結、同社を通じ、「BEATS AUDIO」のソフトウェアを搭載したパソコンの販売が開始された。また、2010年(平成22年)には、申立人の株式の過半数を獲得した台湾の携帯電話メーカーであるHTC社から、「BEATS AUDIO」のソフトウェアを搭載したスマートフォンが発売されることとなり、2011年(平成23年)には、米国の大手自動車メーカーであるクライスラー社とパートナーシップ契約を締結、同社を通じ、「BEATS AUDIO」のソフトウェアを搭載した自動車の販売が開始された(甲6、甲7、甲14ないし甲17)。
なお、申立人は、2012年(平成24年)末に、それまで製品を共同開発してきたモンスターケーブル社との契約を終了したものの(甲6)、上記の通り、コンピュータ、スマートフォン及び自動車等、異分野の企業と積極的に事業提携を行うことによって、その事業範囲及び規模の拡大を続けている。
現在、申立人商品の販売地域は全世界に及び、申立人は、世界各国で「BEATS」関連の商標の出願・登録を行うほか(甲18)、精力的な宣伝広告活動を行っている(甲19ないし甲26)。また、申立人商品、特にヘッドホンやイヤホンは、俳優、歌手、DJ及びスポーツ選手といった著名人が多く着用していることでも知られており(甲12及び甲27)、若者の間ではファッションアイテムとしても人気を博している(甲12)。なお、2012年(平成24年)には、米ニューヨークにおいて、「BEATS」ブランドのヘッドホンの強奪事件が発生しており(甲28)、このことからも、同ブランドの人気の高さが伺える。
我が国においては、申立人の国内正規代理店である完実電気株式会社が、申立人商品を輸入しており(甲29)、該商品は、同社を通じ、ヨドバシカメラ、及び、ビックカメラといった大手家電量販店(甲30)やオンラインショップ等(甲30ないし甲35)において販売されている。また、申立人は、雑誌やインターネット等の媒体、又は、イベント等を通じ、申立人商品に関する宣伝広告活動を精力的に行っている(甲36ないし甲43)。この結果、引用商標は、申立人及び申立人商品の出所表示として、我が国においても、高い知名度を獲得するに至っている。
なお、申立人商品の日本国内における年度別の売上高は、申立人商品が発売されてから約4年と短い期間にも関わらず、年々増加の一途を辿り、2008年(平成20年)1月から2012年(平成24年)2月までの売上高の総計は942万米ドル(約9億4,200万円)に達している(甲44)。このことからも、申立人商品が、我が国において高い支持を得ていることが伺える。
3 混同のおそれについて
上記のとおり、申立人は、引用商標の下、ヘッドホン、イヤホン及びスピーカーといった各種音響機器、並びに、音楽用ソフトウェア(BEATSAUDIO)の企画・販売又は提供を行うほか、台湾のHTC社、及び、米ヒューレッドパッカード社、クライスラー社等との事業提携を通じ、引用商標を用いたスマートフォンやコンピュータ、自動車等の販売を行っている。
しかして、本件商標についてみると、その指定商品は、いずれも、申立人の前記事業と密接な関連性を有するものである。
さらに、本件商標の商標権者は、本件商標を、同社が販売するスマートフォン「OPTIMUS G」用のイヤホンの商標として使用しているところ(甲73)、イヤホンが、申立人の「BEATS」ブランドの中核をなす製品であること(甲6)、並びに、申立人が、台湾のHTC社との業務提携により、同社から「BEATSAUDIO」のソフトウェアを搭載したスマートフォンを販売していること(甲6、甲14及び甲17)に鑑みれば、本件商標が使用される商品と申立人が提供する商品との関連性は極めて高い。
また、本件商標は、「QuadBeat」の欧文字からなるところ、その構成中、「Q」と「B」の文字のみが大文字で書かれていること、及び、「Quad」は、「4個入りの、4倍の」といった意味を有する英単語であり(甲74)、指定商品の品質や内容を表すにすぎない識別力の弱い語であることに鑑みれば、本件商標に接した者は、自然と「Quad」と「Beat」とを分離して看取し、「Beat」の部分を商標の要部として理解すると考えられる。
ここで、本件商標が「Beat」の部分において引用商標「BEATS」と綴りを共通にしていること、引用商標が本件商標の指定商品の分野において確固たる知名度を獲得していること、及び、本件商標の指定商品と申立人商品とが密接な関連性を有していることに鑑みれば、本件商標に接した者が、そこから、直ちに申立人の著名な引用商標を連想・想起することは必定であり、本件の指定商品を、申立人又は申立人とパートナー契約を締結した企業により販売される商品であるかの如く、その出所につき混同するおそれがあるというべきである。
とりわけ、申立人が、申立人商品に、「BEATS」又は「BEAT」を構成中に含む商標(サブブランド)を使用していることに鑑みれば(甲6及び甲29等)、「Quad」と「Beat」の文字を結合させた本件商標に接した者が、あたかも、これを、申立人の販売する「BEATS」製品のサブブランドの一種であるかの如く誤認する蓋然性は極めて高い。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標に該当するというべきである。
4 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するから、同法43条の3第2項の規定により取り消されるべきものである。
第3 当審の判断
1 本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「QuadBeat」の欧文字を横書きしてなり、「4個の、4個で1セットの」等の意味を有する「Quad」の語(甲74)と、「打つ、たたく、拍子」等の意味を有する「Beat」の語(研究社新英和大辞典)を組み合わせたものと理解されるものであるところ、本件商標の指定商品との関係において、いずれかの語が商品の品質、内容を表示するものとして一般に認識されているとの事情は見いだせない。
そうすると、まとまりよく一連に表されている本件商標は、一体不可分のものとして理解されるというのが自然であり、これより「クアドビート」の称呼が生じ、「quadbeat」は辞書等に載録されている語ではないから、特定の観念は生じないものである。
2 引用商標
(1)引用商標は、前記第2、1のとおり、「BEATS」の文字を標準文字で表してなるものであるから、これより「ビーツ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標の著名性について
申立人の提出する証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人について
申立人は、2006年に設立された米国法人であり、2008年に、同社初の商品「Beats by Dr.Dre Studio」のヘッドホンの販売を開始したこと、2009年よりモンスターケーブル社とのライセンス契約の下、主に「Beats by Dr.Dre」のブランド名で、ヘッドホン、イヤホン、スピーカーをはじめとする音響機器の製造を行なっていたこと、2012年末にモンスターケーブル社との契約が終了してからも、申立人のオリジナルの製品ラインとして「Beats by Dr.Dre」ブランドのヘッドホン、イヤホン、スピーカー(申立人商品)を製造販売していること、米国の人気歌手であるレディー・ガガと共同で開発したイヤホン「heart beats by LADY GAGA」のほか、申立人商品の商品名として、「Beats」の文字を含む「Beats Pro」「Beats Studio」「Beats Solo」等の標章(以下「Beats by Dr.Dre」の標章を含め、「BEATS関連商標」という。)が使用されていることが伺える(甲6ないし甲11)。
また、ライセンス契約等を行うことにより、2011年からはヒューレッドパッカード社のコンピュータ及びHTC社が販売する携帯機器(スマートフォン)に、2012年からはクライスラー社の高級車に、申立人の「BeatsAudio」のソフトウェアが搭載されたことが伺える(甲6及び甲7)。
イ 米国における申立人商品の売上げについて
「adage.com」のウェブサイト掲載記事(2013年1月14日付け)の抄訳には、「NPDのアナリストであるベンアーノルド氏によれば、100米ドルを超える高級ヘッドフォンのカテゴリの約1.5億米ドルの市場において、Beatsは現在、過半数のシェアを誇り、市場において首位となっている。NPDのデータでは、2012年の年末の時点で、高級ヘッドフォンのカテゴリでは64%のシェアを、ヘッドフォン全体の市場では28%のシェアを獲得するに至っている。・・・」との記載がある(甲13)。
ウ 日本における引用商標の使用について
(ア)我が国においては、遅くとも2010年12月頃には、完実電気株式会社が、申立人商品の正規取扱店として、商品を販売していることが認められ(甲10、甲11及び甲29)、同社のウェブサイトにおいて、ビックカメラ、ヤマダ電機等の大手電機製品量販店が、申立人商品「beats by dr.dre」の正規品を取り扱っている販売店として紹介されている(甲30)。
(イ)完実電気株式会社のオンラインショップ、「Amazon.co.jp」、「Apple Store」、「Manhattan Records」及び「OTAIRECORD」のウェブサイトにおいて、BEATS関連商標を付した申立人商品が販売されている状況が認められる(甲31ないし甲35)が、その販売時期や売上高などの状況は不明である。
(ウ)BEATS関連商標を付した申立人商品の日本国内における年度別の売上高については、2008年は76,634ドル、2009年は1,183,370ドル,2010年は3,158,013ドル、2011年は4,198,491ドル及び2012年は1月及び2月の2ヶ月間で805,661ドルの売上げがあったことは認められる(甲44)が、各商品の販売数や我が国におけるシェアはいずれの年も不明である。
(エ)甲第36号証ないし甲第72号証(ただし、甲44は除く。)は、BEATS関連商標が付された申立人商品を紹介する雑誌、展示写真(写し)及びインターネット記事等であるところ、そのほとんどが日付が不明であるか、又は本件商標の登録査定後のものであり、その販売部数及びアクセス数も不明である。
エ 以上によれば、申立人商品は、「Beats by Dr.Dre」のブランド名で、2008年に発売が開始され、発売から4年間の間に、米国の高級ヘッドホン市場において、過半数のシェアを獲得するに至ったこと、及び、我が国においても、2008年頃から申立人商品が販売され、それら商品にはBEATS関連商標が付されて雑誌及びインターネットのウェブサイト等を通じて宣伝広告され、高級ヘッドホンとして紹介されていることが認められる。しかしながら、提出された証拠からは、申立人商品の販売量やシェアが不明であり、宣伝、広告についても、その日付が不明であるか、又は本件登録査定後のものであり、その販売部数及びアクセス数も不明であることからすると、BEATS関連商標が、我が国の高級イヤホン、高級ヘッドホンの需要者にある程度知られているといえるとしても、これらをもってBEATS関連商標が申立人商品の一般の需要者の間において、本件商標の出願時はもとより登録査定時において、申立人の業務にかかる商品を表示するものとして広く認識されていたものということはできないし、引用商標においても、本件商標の出願時はもとより登録査定時において、申立人の業務にかかる商品を表示する商標として、本件商標の指定商品の取引者・需要者に広く認識されていたものということはできない。
3 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標は、それぞれ、上記1及び2のとおりの構成からなるものであって、構成文字(綴り及び文字数)を異にするものであるから、外観上は明らかに区別し得るものであり、本件商標から生ずる「クアドビート」の称呼と引用商標から生ずる「ビーツ」の称呼とは、音数が明らかに相違し、その語調、語感も著しく相違するものであるから、称呼上も明瞭に聴別し得るものである。
また、観念については、両商標は、ともに特定の観念を生じるものではないから、比較することはできないものである。
そうとすると、本件商標と引用商標は、観念においては比較することができないとしても、称呼及び外観において、相紛れるおそれはないから、十分に区別し得る別異の商標といえるものである。
4 商標法第4条第1項第15号について
上記2(2)のとおり、引用商標は、本件商標の出願時及び登録査定時において、申立人の業務にかかる商品を表示するものとして広く認識されていたものということはできないものである。
また、上記3のとおり、本件商標と引用商標とは、十分に区別し得る別異の商標というべきものである。
してみれば、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用しても、これに接する需要者が引用商標を連想・想起するとは認められず、当該商品を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同するおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
5 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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