Trademark Appeal Case
称呼類似と著名商標の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900134(T2013−900134/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5555554号商標(以下、「本件商標」という。)は、「プルイ・ジョア」の片仮名を標準文字で表してなり、平成24年11月29日に登録出願され、第25類「コート,レインコート」を指定商品として、同25年1月24日に登録査定、同年2月8日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立の理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号又は同第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
1 引用商標
申立人が、引用する登録商標は、次の(1)ないし(4)のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。
(1)引用商標1
登録番号 商標登録第787960号
商標 「ジョワ」
登録出願日 昭和42年1月31日
設定登録日 昭和43年7月29日
書換登録日 平成21年4月15日
指定商品 第25類に属する別掲1のとおりの商品のほか、第20類、第22類及び第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)引用商標2
登録番号 商標登録第4719366号
商標 「JOIE」(標準文字)
登録出願日 平成13年10月11日
設定登録日 平成15年10月17日
指定商品 第25類「被服,履物」
(3)引用商標3
登録番号 商標登録第5442184号
商標 別掲2のとおり
登録出願日 平成22年1月18日
設定登録日 平成23年9月30日
指定商品 第25類に属する別掲2のとおりの商品
(4)引用商標4
登録番号 商標登録第5564316号
商標 別掲3のとおり
登録出願日 平成23年8月22日
設定登録日 平成25年3月8日
指定商品 第25類に属する別掲3のとおりの商品
2 具体的理由
(1)引用商標の著名性について
ア 引用商標ブランドの歴史
申立人は、商標「Joie」を、2001年以降服飾ブランドとして米国カリフォルニア州で使用を開始し、2007年には靴、2012年秋にはハンドバッグを発表した。そして、申立人は、世界の高級デパートや店舗に出店し、また、2012年1月からはインターネットでの販売も開始した(甲6)。
イ 引用商標の世界での商標登録
申立人は、商標「Joie」ないしそれを含む他の商標(「ジョワ」を含む。)を世界各国で43件登録(4件の引用商標を含む。)し、日本では計5件の登録を有し、いずれも、異議申立対象の商標登録の指定商品が属する国際分類第25類を指定している(甲7)。
ウ 日本での事業
Joieブランドの大手顧客の1社は、株式会社リンク・セオリー・ジャパン社(以下「リンク社」という。)であり、リンク社によるJoieブランドに関する活動の概略は、以下のとおりである。
2003年3月に「Joie」の輸入直営販売第1号店を東京都港区南青山に設立、2005年7月に「Joie」などを扱う株式会社アーバンホリックを設立、2007年4月に表参道ヒルズに「Joie」が開店、2008年8月株式会社アーバンホリックが株式会社リンク・インターナショナルに吸収合併、2009年7月にファーストリテイリング社がリンク・インターナショナルのグループを完全子会社化し、2010年6月に株式会社リンク・インターナショナルが商号をリンク社に変更した(甲8、9)。
エ 三越百貨店での取扱い実績
Joieブランドは、著名な三越百貨店で取り扱われている(甲10、11)。
オ 日本での広告実績
2004年以降、AneCan、VERY、GISELe、Precious、CLASSY、With、Style、Glamorous、ar、BAILA、Pinky、Oggi、Nikita、LEE、VoCE、SAKURA、STORY、ViVi、non・no、MORE、GINZAなど、有数の女性ファッション雑誌に度々「Joie」やアーバンホリック社の名前とともに商品が掲載されている(甲12)。
カ 商品売り上げ実績
申立人は、アメリカのDutch,LLC社(以下「Dutch社」という。)に、その事業範囲に必要な範囲で、引用商標を使用することを許諾する契約を締結している(甲13)。その商品の売り上げ実績は、2005年までは1億円に達するほどの額を達成し、その後2008年までは平均して1千万円程度の売上を達成している。2011年に日本へ発送した商品額は、総計で30,563,000円にのぼり、日本は申立人にとって第4位の販売国であり、主要な市場の一つである(甲14)。
(2)商標法第4条第1項第11号の該当性について
本件商標「プルイ・ジョア」の前半部「プルイ」は「pluie」に該当し、これは、フランス語で「雨」を意味し、発音表記は「プリュイ」と表記されている(甲15)ところ、外来語をカタカナで表音しようとするときは、「リュ」が「ル」とも表記されうることは、日本人にとって至極自然のことである。したがって、本件商標の「プルイ」はフランス語で「雨」を意味する「pluie」の表音語である。甲第16号証(決定注:本件商標の商標権者のホームページの写し)に接する需要者、特に少なくとも最低限の初級フランス語の習得を試みたものであれば容易に、「プルイ」が雨を指すフランス語であることは容易に想起できる。そうすると、指定商品「レインコート」との関係において、「プルイ」の部分はその商品の質、用途、使用の方法を表示するものであって、本件商標の要部は「ジョア」であると判断できる。かかる「ジョア」は、申立人所有の引用商標と称呼上(「ジョア」又は「ジョワ」)及び観念上(フランス語の「joie」、「喜び」の意。甲17。)同一又は類似であるということは明かである。
したがって、本件商標は、引用商標と類似し、全指定商品との関係で商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号の該当性について
本件商標は、日本及び外国において著名な商標である引用商標と、需要者をして出所の混同を生じせしめるおそれの蓋然性が高く、商標法第4条第1項第15号に反して登録されたものである。
なぜなら、引用商標2ないし4は各外国でも登録されており(甲7)、引用商標1は日本国のみでの登録であるものの、前記のとおり、申立人の引用商標2ないし4は、海外でも広く商標登録された上使用され、特に、メディアに露出する機会が多いであろうアメリカ、ロサンゼルスのセレブリティを顧客に持つものである。日本国においても、甲第12号証で示したとおり、数々の雑誌に多数掲載され、広く需要者に知られている商標である。さらに、本件商標の要部は前記のとおり「ジョア」の部分であるから、本件商標に接した需要者をして容易に、申立人との出所の混同を生じせしめるおそれがある。
そのうえ、申立人も、商標権者も、それぞれ服飾業界と、衣服に使用される繊維の染色業という密接不可分な産業分野に属しており、少なくともかかる業界の需要者にとっては、本件商標が引用商標の所有者と何等かの経済的なつながりを有する者にかかるものであるという印象を与えるなど、出所の混同を生ずるおそれがある(甲18)。
なお、本号を適用するにあたっては、本件商標の出願日の時点で、申立人商標が著名であることが必要であるところ(商標法4条3項)、その要件を満たしている。甲第12号証ないし甲第14号証、前記の売り上げ及び日本進出の経緯に述べたとおり、申立人は2001年からロサンゼルスで事業を立ち上げ、日本には遅くとも2004年には雑誌への商品掲載など使用を開始し、2005年にはすでに約1億円の売上が達成されていたことからすると、本件商標の出願日の時点で申立人の引用商標の著名性が存在することについては疑いの余地はない。
(4)商標法第4条第1項第19号の該当性について
本件商標は、日本国内又は外国における周知・著名な引用商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
商標権者は、日本の法人であり、申立人の属する服飾業界と密接な繊維染色業に属し、かつ、甲第16号証のとおり、自らコート、レインコートなる被服を販売している。したがって、申立人の存在はおろか、その著名性を無視できない立場にあるものと考えられる。商標は選択物であるところ、レインコートに、フランス語で「雨」を意味する「pluie」の表音文字と、申立人の引用商標と類似する標章「ジョア」を組み合わせて被服の分野で採用しようとする商標権者の意思は、申立人の引用商標の著名性にフリーライドして、不正の利益を得る目的、その他の不正の目的をもって使用しようとしたものといっても過言ではない。双方の商品もシャツその他の商品に多岐に渡って共通するものであるからなおさらである。なお、本号を適用するにあたっては、本件商標の出願日の時点で、申立人商標が著名であることが必要であるところ(商標法4条3項)、前記のとおり、その要件を満たしている。
(5)商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、申立人の引用商標に化体した名声・信用・評判にフリーライドする意図があって出願したといっても過言でなく、引用商標の名声等を希釈化ないし著しく毀損するおそれがある。したがって、本件商標の登録は国内の商取引秩序を乱し、ひいては国際信義則に反し、公序良俗を害するものであることは明らかであるから、その登録は取り消されるべきものである。
(6)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号又は同第7号に反して登録されたものであって、取り消されるべきものである。
第3 当審の判断
1 引用商標の著名性について
(1)引用商標の使用について
申立ての理由及び申立人の提出に係る甲各号証については、次のとおり判断する。
ア リンク社の事業活動
申立人は、リンク社によるJoieブランドに関する活動(甲8)を主張しているが、同社による引用商標の具体的使用についての主張、立証がなされておらず、引用商標の使用事実は確認できない。
イ 三越百貨店での取り扱い実績
申立人は、三越百貨店においてJoieブランドが取り扱われている旨(甲10、11)主張しているところ、2010年9月及び2013年8月時点で同百貨店の取扱いブランド一覧に「婦人服」、「LADIES」として「ジョア」及び「Joie」が掲載されていることは認められるものの、これらブランドの展示規模や期間、販売数量及び販売金額などについては明らかにされていない。
ウ 日本での広告
申立人は、日本での引用商標を使用した広告として甲第12号証を提出している(なお、同号証は枝番号を付けずに同一又は異なる雑誌の写し61枚からなるところ、綴り順に1〜61の枝番号として以下検討する。)。
しかしながら、甲第12号証として提出された雑誌には、モデルが着用したスカートやブラウス等の商品と共に、その商品のブランド及び提供企業名として、「Joie(又は「ジョア」)」及び「アーバンホリック」の記載があるものの、そのほとんどが他の複数のブランドの商品と共に掲載されているものであって、当該商品及び引用商標等が特段目立つように掲載されているものではなく、また、提出に係る雑誌のうち、およそ2割程度はブランド等の説明部分の記載内容が判別できないもの(枝番号8、18〜21、24〜26、28、30、33)及び記載自体が確認できないもの(枝番号55)である。
さらに、甲第12号証中に、引用商標1、引用商標3及び4の使用は確認できない。
エ 商品売上げ
申立人は、Dutch社に対し、引用商標を含む複数の商標の使用を許諾する契約を締結しているとして商標使用許諾契約の冒頭ページ(写し:甲13)を提出し、該Dutch社の日本顧客向けに発行した請求額をまとめたとする2005年から2009年までの商品の売上の一覧表を提示している(具体的理由中)ところ、上記使用許諾契約の日付けが2012年10月15日であることからすれば、該一覧表の期間においてDutch社が引用商標に係る商品を取り扱っていたと認めることはできない。
なお、仮に、上記一覧表の期間においてDutch社が引用商標に係る商品を取り扱っていたとしても、本件商標の登録出願及び登録査定の時期における売上額についての説明はされておらず、また、一覧表に示された金額中、引用商標に係る商品がどの程度の割合を占めるものか、あるいは、被服等の同種商品の業界における売上規模においてどの程度の割合を占めるものかも明らかではなく、さらにその具体的な出荷先(出荷した地域及び店舗数等)等も明らかではない。
オ 小活
以上を総合して考慮すると、甲各号証によっては、引用商標が我が国において商標権者等によりどのように使用されていたかは明らかにされておらず、また、申立人の引用商標2及び片仮名「ジョア」商標の雑誌等への掲載は、引用商標等及びこれら商標を付した商品に特化した掲載とはいえず、さらに、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標に係る商品の売上額も明らかでないことからすれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、本件商標に係る指定商品を取り扱う業界において、引用商標が広く知られていたものと認めることはできない。
また、同様に、甲各号証によっては、引用商標が外国における需要者の間に、広く知られていたとも認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本件商標
本件商標は、「プルイ・ジョア」の片仮名を標準文字で表してなるところ、本件商標の指定商品の取引者、需要者において、片仮名「プルイ・ジョア」又は「プルイ」若しくは「ジョア」は、特定の語義を有する語として知られているとはいえないものであるから、特定の観念を生じない造語として認識されるというべきであり、該構成文字に相応して「プルイジョア」の称呼のみを生じる。
申立人は、本件商標は、前半部の「プルイ」は、「雨」を意味する仏語「pluie」の発音をカタカナ表記したものであり、指定商品「レインコート」の商品の質、用途、使用の方法を表示するものであって、要部は「ジョア」であり、「ジョア」の称呼及びフランス語の「joie」、「喜び」の観念を生ずる旨主張するが、本件商標は、片仮名で表示されたものであり、当該文字から直ちにフランス語を想起するといえるものではないから、申立人の上記主張はいずれも採用することができない。
(2)引用商標
引用商標1は、前記第2の1(1)のとおり「ジョワ」の片仮名を横書きしてなるところ、辞書等に採録されておらず、特定の語義を有する語とは認められないものであり、該構成文字に相応して「ジョワ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
引用商標2及び3は、前記第2の1(2)及び別掲2のとおり、いずれも「JOIE」の欧文字又は「Joie」の筆記体の欧文字からなるところ、「Joie」は、「喜び」などを意味するフランス語の成語であるから、該構成文字に相応してフランス語読みの「ジョワ」若しくは「ジョア」の称呼を生じ、「喜び」の観念を生じる場合があるものである。
引用商標4は、別掲3のとおり、「Soft Joie」の欧文字を筆記体で書してなり、「柔らかい」などを意味する英語「Soft」と「喜び」などを意味するフランス語「Joie」を組み合わせたものであるから、全体として「ソフトジョワ」若しくは「ソフトジョア」の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語といえるものである。
また、構成中前半の「Soft」の文字は、上記のとおり「柔らかい」などを意味するもので、その指定商品との関係では、比較的自他商品識別力が弱いものといえることから、後半の「Joie」の文字に相応してフランス語読みの「ジョワ」若しくは「ジョア」の称呼を生じ、「喜び」の観念を生じる場合があるものである。
(3)本件商標と引用商標との対比
本件商標と引用商標の外観とを対比すると、両者は、外観において構成文字に顕著な差異を有する非類似の商標である。
また、本件商標から生じる称呼「プルイジョア」と引用商標から生じる称呼「ジョワ」「ジョア」「ソフトジョワ」「ソフトジョア」とを対比すると、両者は、語頭部分における構成音に顕著な差異を有するものであるから、両商標は称呼においても非類似の商標である。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないものであるから、両商標は観念において類似するものとはいえず、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標は、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれがない非類似の商標というべきものである。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号の該当性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において広く知られていたとは認められないものである。また、本件商標は、上記2のとおり、引用商標とは、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用しても、取引者・需要者において、その商品が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるとはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号の該当性について
引用商標は、上記1のとおり、我が国及び外国において本件商標の登録出願時及び登録査定時において広く知られていたとは認められないものであり、また、本件商標は、上記2のとおり、引用商標とは、別異の商標というべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号の該当性について
引用商標は、上記1及び2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、また、本件商標と引用商標とは類似するところのない別異の商標であるから、商標権者が、引用商標に化体した信用等にただ乗りし、不正の利益を得るために使用する目的で本件商標を出願し、登録を受けたものということはできず、商標権者による本件商標の使用が、商取引の信義則に反するものともいえない。
さらに、本件商標は、前記第1のとおりの構成よりなるものであって、それ自体何らきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものでなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものとすべき事由はなく、かつ、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号及び同第7号の規定のいずれにも違反してされたとは認められないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。