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Trademark Appeal Case

称呼・外観類似と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2012−685011(T2012−685011/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

国際商標登録第1086558号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件国際登録第1086558号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、2011年4月4日にAustraliaにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2011年(平成23年)6月17日に国際商標登録出願、第33類「Wines,excluding fortified wines.」を指定商品として、平成24年2月9日に登録査定、同年4月13日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証を提出した。

1 引用商標

申立人の引用する登録第4343263号商標(以下「引用商標」という。)は、「TAYLOR’S」の文字を標準文字により表してなり、平成10年12月3日に登録出願、第33類「甘口ぶどう酒その他の果実酒」を指定商品として、同11年12月10日に設定登録され、その後、同21年8月25日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

2 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について

本件商標は、別掲のとおり、この構成中の上部の黒塗り横長方形部分に含まれる「TAYLORS」と「WAKEFIELD」の各単語が二段書きで別個に、しかも、各単語の間を横線によって分断して表示されているから、各単語が独立、分離して認識され得る。

また、「TAYLORS」と「WAKEFIELD」の2つの単語は、全体としてみれば、長さにおいて冗長であるから、これらの単語が常に一体として認識される必然性はなく、2つの語全体から、特定の観念を認識させる可能性は低い。

さらに、「TAYLORS」の語が、本件商標中、視覚上強く訴え、それのみで印象に残り易い最上部に位置し、また、「WAKEFIELD」は、英国の州都の地名である(甲第38号証)から、これが商品の産地、販売地として認識されることも考えられ、上記「TAYLORS」の語と比較すると、商標としての識別力が弱い。

そして、ワイン(業界)の場合、例えば、申立人のように、その製造、輸出ワインのラベル及びその商品名として、そのハウスマークに他の語を付して、特に、自己の製品中の種類を特定する目的で、他の語を付して使用することがしばしば行われているから、本件商標の「TAYLORS」と「WAKEFIELD」の2語についても、「TAYLORS」の文字がハウスマーク的に認識されて、該語のみをもって商品、ワインの出所が特定されて認識、称呼され、取引されることが決して少なくない。

そうとすると、本件商標は、取引上、その構成中、「TAYLORS」の単語によって、「テイラーズ」とも称呼される場合も決して少なくない。

これに対して、引用商標は、「TAYLOR’S」の英文字からなるから、これより、少なくとも「テイラーズ」の称呼が生じることは明らかである。

以上からすると、本件商標と引用商標とは、少なくとも、「テイラーズ」の称呼において、相紛らわしい類似の商標であり、本件商標の構成中で独立して認識し得る「TAYLORS」の語と引用商標を構成する「TAYLOR’S」とは、その構成中、「’」(コンマ)の有無の相違にすぎないから、両商標は、外観においても相紛らわしい類似の商標である。

したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観において類似するので、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

3 本件商標の商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について

(1)引用商標「TAYLOR’S」の周知、著名性について

申立人は、1692年創業の歴史ある有力メーカーであり、現在も創業者とそのパートナーによって経営されており、引用商標は最も評価の高いポート(ワイン)・ブランドの1つである(甲第11号証、甲第14号証及び甲第15号証)。

我が国においてみるに、現在提出できる証拠だけからでも、「TAYLOR’S」(ブランド)ポートワインは、少なくとも、1978(昭和53)年の古くから(甲第5号証)、その途中で代理店が何回か変わりつつも、各代理店を通して、現在に至るまで継続的、かつ、着実、積極的に輸入、販売されている(甲第6号証ないし甲第13号証、なお、1996年ないし2011年の各年の我が国への輸出量については、甲第36号証及び商標登録異議申立理由補充書の「5 証拠方法」中に付記した「注1ないし注3」を参照。)。

また、各代理店は、定期的に豪華な招待試飲会を催して(甲第21号証ないし甲第23号証、甲第25号証及び甲第27号証)、そのポートワインの広告に努めている(甲第35号証)。

さらに、ツアーや個人海外旅行(甲第15号証及び甲第32号証)により、我が国の旅行者が申立人の本場、現地でそのワイナリーを見学、訪問することによって、「TAYLOR’S」(ブランド)ポートワインに出会ったり、ますます愛好者になったりして、これを機会に、帰国後、さらにそのワインの評判が広まっているということも推測し得る。

我が国で輸入、販売されるポートワインに付されたラベル又はカタログでの銘柄表示として、明確に、かつ、常に「TAYLOR’S」の商標が使用されている(甲第5号証ないし甲第14号証)。

そして、書籍(甲第5号証ないし甲第14号証)、雑誌(甲第15号証ないし甲第20号証)、新聞(甲第22号証ないし甲第30号証)、ブログ、Webニュースなど(甲第21号証、甲第31号証ないし甲第34号証)により、申立人の「TAYLOR’S」ポートワインは、幅広く紹介されている。特記すべきは、我が国の流通経路の最終段階の一般消費者のレベルにおいて、「1692年に設立されたテーラー社は、ポートワインの代名詞といわれるくらい有名な存在ですね。300年以上の歴史って凄いですよね。」(甲第33号証)、「“TAYLOR’S”といわれる1692年創業のワイナリー、実に300年以上の歴史を持つ老舗中の老舗だと思う。」(甲第31号証)、「1692年創業、3世紀以上の歴史を持つ代表的なポートワインのシッパー(製造・輸出業者)です。」(甲第32号証)と、認識されるに至っている事実である。

しかして、引用商標は、本件商標の国際商標登録出願日以前から、申立人のポートワインの商標として、我が国のワインの取引者、需要者に広く認識され、周知、著名であったことは明らかである。

(2)本件商標と引用商標の類似性について

本件商標と引用商標の類似については、上記2の商標法第4条第1項第11号該当性に関する主張で述べたとおり、両者は、類似するものである。

そして、引用商標は、我が国において、しばしば、「テイラー」又は「テーラー」と片仮名表示されているが、「TAYLOR’S」のように、その商標主名と所有を示す(’S)からなる商標が、(’S)の部分を省略して称呼されることは、我が国の取引でよく行われていることであるから、引用商標と片仮名表示「テイラー」又は「テーラー」は、実質的に同一商標といえるものである。また、片仮名表示より生じる「テイラー」又は「テーラー」の称呼は、本件商標が、その構成中の「TAYLORS」の文字より生じる「テイラーズ」又は「テーラーズ」の称呼と類似することも明らかである。

また、本件商標の構成中の「TAYLORS」と引用商標の「TAYLOR’S」とは、構成上、目立たない最終文字の「S」の前に、コンマ「’」の有無があるにすぎず、その著名性故に、看者、聴者が本件商標の構成中、「TAYLORS」と、引用商標の「TAYLOR’S」とを取り違えて認識して、両商標を混同するおそれが高まるといえる。

さらに、引用商標は、「TAYLOR」が申立人の略称であるから、「申立人の」といったような、いわば、ハウスマーク的に使用されているから、本件商標が、仮に、その構成中、「TAYLORS」と「WAKEFIELD」の語が結びつけられて認識される場合があったとしても、これらの2語全体で、申立人のワインの1種類を表したものと誤認混同される。

そして引用商標に係る商品は、ワインの一種であり、本件商標の指定商品とは類似する。

(3)したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品が申立人に係る周知、著名な引用商標及びその商品と関連づけられて、該商品が申立人又はこれに関連する者の業務に係る商品であるかのように誤認、混同を生じるおそれがある。

4 本件商標の商標法第4条第1項第16号該当性について

引用商標は、上述したように、商品「ポートワイン」の商標として有名であり、「最も評価の高いポート(ワイン)ブランドのひとつ」(甲第11号証)、「ポートワインを代表」(甲第15号証)「ポルトガルワイン界を牽引」(甲第19号証及び甲第20号証)及び「ポートワインの代名詞」(甲第33号証)といわれている。

したがって、引用商標と紛らわしい本件商標が、その指定商品「ワイン」に使用されれば、そのワインがあたかも、「ポートワイン」であるかのように商品の品質に誤認を生じるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

5 まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第16号に該当するから、その登録は、同法第43の3条第2号の規定により取り消されるべきである。

第3 当審の判断

1 商標法第4条第1項第15号について

当審において、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する旨の取消理由を平成25年1月28日付けで通知したところ、本件商標の商標権者は、同年6月3日付けで意見書を提出するとともに、証拠方法として乙第1号証ないし乙第59号証(枝番を含む。ただし、乙第18号証ないし乙第20号証は欠番である。)を提出した。

そして、申立人及び商標権者の主張、各証拠並びに職権による調査を総合すれば、以下の事実を認めることができる。

(1)本件商標について

本件商標は、横長と縦長の2つの矩形を上下に配し、全体としてワインラベルの図柄を表示した構成からなるものであり、その構成要素は、上段に黒く塗りつぶした横長の矩形図形を配置し、その中に金色ないし黄色の文字で「TAYLORS」及び「WAKEFIELD」の欧文字を上下2段に書してなり、その下に水色の枠線による略正四角形の図形を配して、中央やや上よりに曲線からなる図形を表示し、その下方に筆記体の欧文字による文章を上下三行にわたり記載し、その下にオーストラリア国のワイン生産地である「CLARE VALLEY」及び「PROUDLY FAMILY OWNED」との文字、さらにその下右端に欧文字による手書きの署名を表示してなるものである。

本件商標は、その構成中の最上段に配置された黒色矩形の中に配置された欧文字部分が視覚的に分離して看取され、該文字に着目して取引されることも少なくないとみるのが相当であり、該文字部分からは、無理なく「テイラーズウェイクフィールド」の称呼が生じるものである。

そして、該称呼は、全体で10音と、さほど冗長にわたるものでもなく、よどみなく一連に称呼し得るものであって、該構成文字は、辞書などに載録されていないものであるから、特定の観念が生じるものとはいえない。

ア 本件商標の構成中、「TAYLORS」の文字部分は、商標権者を創業した家族の氏が「TAYLOR(テイラー)」で、親子3人の「TAYLOR(テイラー)たち」(「TAYLORS」)が経営するワイン醸造者であることに由来するものである(乙第1号証の1及び2)。

そして、「TAYLOR」の氏は、オーストラリア知財局のウェブサイト(オーストラリア人の氏検索)で検索すると、オーストラリアの全人口約2,300万人中、45,328人であることがわかる(乙第3号証)。

また、乙第5号証のウェブサイトでは、類似する氏や、最もありふれた氏、氏の意味や語源に関する情報が蓄積されたデータベースが公開されているところ、この情報によれば、「TAYLOR(テイラー)」は、英国では「SMITH(スミス)」、「JONES(ジョーンズ)」、「WILLIAMS(ウイリアムズ)」、「BROWN(ブラウン)」に続いて、5番目に多い氏であり(乙第6号証)、英国由来の氏としては「SMITH(スミス)」、「BROWN(ブラウン)」に次いで3番目に多い氏であり(乙第7号証)、米国では、13番目(乙第8号証)、オーストラリアでは、6番目に多い氏である(乙第9号証)。

我が国でも、著名な米国の女優「Elizabeth Taylor(エリザベス・テイラー)」を始めとして、「ブルック・テイラー」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)などがよく知られており、また、「コンサイス外国人名事典」及び「外国人物レファレンス事典」(乙第15号証ないし乙第17号証)には、「Taylor」との氏を有する人物が掲載されている。

以上の事実に徴すれば、我が国の取引者、需要者の間にあっても「Taylor(テイラー)」は、欧米における氏であると認識されるとみるのが相当であって、末尾の「S」が英語において複数形を意味する文字として使用されることが一般的に知られていることを併せ考察すれば、本件商標の構成中、「TAYLORS」の文字部分は、「TAYLOR」の複数形を表したものと理解されるか、少なくとも欧米人の氏「TAYLOR」を想起させるものといえ、「TAYLOR」のみでは、どの「TAYLOR(テイラー)」なのか特定できないから、該文字部分が有する出所識別機能は、特段強いものとはいえない。

イ 本件商標の構成中、「WAKEFIELD」の文字部分は、「コンサイス外国地名事典」(甲第38号証)を徴すれば、イギリス国ウエストヨークシャー州に存在する都市名であるところ、該都市の人口は、76,886人であり(乙第21号証)、その規模は、東京都国立市(乙第22号証)と同程度といえ、このような規模の外国の一都市名を我が国における取引者、需要者間において、広く知られているとはいい難い。

また、例えば、「小学館ランダムハウス英和大辞典」(2002年1月10日株式会社小学館発行)の「Wakefield」の項には、「1イングランドWestYorkshire州東部の都市で州都;2米国Massachusetts州東部,Boston北郊の町.」との記載、「ジーニアス英和大辞典」(2001年4月25日株式会社大修館書店発行)の「Wakefield」の項には、「1イングランドのラグビー選手・政治家.2イングランド北部の独立自治体.3ばら戦争の古戦場.4米国Massachusetts州東部Boston北郊外の町.5米国Virginia州東部,Potomac川南岸にある地;」などの記載がある。

さらに、ワインに関連する書籍を調査しても、「WAKEFIELD」がワインの生産地であるとか、その他ワインに関連する何らかの意味のある語として掲載されている事実は見いだせない(乙第24号証ないし乙第31号証)。

そうとすれば、本件商標の構成中、「WAKEFIELD」の文字は、単なる地名ないし本件商標の指定商品の産地名と理解される可能性が極めて低いというべきであって、一種の造語と認識されるとみるのが相当であるから、該文字部分から出所識別標識としての称呼が生じないということはできない。

ウ 小括

以上からすれば、本件商標の構成中、欧米人の氏「TAYLOR」に由来する「TAYLORS」の文字部分が、本件商標の指定商品の出所識別標識として、強く支配的な印象を与えるものということはできなく、また、同「WAKEFIELD」が地名として一般的に知られているとはいい難く、ワインの産地名として知られたものともいえないことからすれば、該文字部分から出所識別標識としての称呼が生じないということもできない。

そうすると、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される本件商標中、上段に黒く塗りつぶした横長の矩形図形内に金色ないし黄色の文字でまとまりよく表された「TAYLORS WAKEFIELD」の文字部分から、「TAYLORS」の文字部分のみを抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されないといわざるを得ず、本件商標からは、その構成文字に相応して、「テイラーズウェイクフィールド」の一連の称呼のみが生じるとみるのが相当である。

(2)引用商標について

引用商標は、「TAYLOR’S」の欧文字からなり、上記(1)アのとおり、「TAYLOR」は、我が国の取引者、需要者間において、欧米人の氏と認識されるとみるのが相当であって、また、我が国における英語知識に照らせば、アポストロフィー(’)に続く「S」は、所有格を意味するとして広く知られていることからすれば、引用商標からは、「テイラーズ」の称呼が生じ、「テイラー氏の」との観念が生じるものである。

(3)本件商標と引用商標との対比

本件商標は、全体として一個のワインラベル図形よりなるものであり、「TAYLOER’S」の文字のみからなる引用商標とは、外観上、明らかに相違するものである。

そして、本件商標からは、その構成全体に相応して、「テイラーズウェイクフィールド」の一連の称呼のみを生じるとみるのが相当であって、本件商標の構成中、「TAYLORS」及び「WAKEFIELD」の文字部分が上下2段に書されているとしても、本件商標の該構成部分が一体不可分であるとみるのが相当であり、他方、引用商標からは、「テイラーズ」の称呼が生じるものである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、後半の「ウェイクフィールド」の音の有無によって、引用商標から生じる「テイラーズ」とは、明らかに異なる音として聴取されるから、両商標が称呼において、相紛れるおそれはない。

また、本件商標は、その構成中、「TAYLORS WAKEFIELD」の文字部分からは、特定の観念が生じなく、引用商標「TAYLOR’S」の文字からは、「テイラー氏の」との観念が生じ得るから、両商標は、観念上類似するとはいえない。

したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において類似するとはいえない。

(4)引用商標の周知著名性について

ア 引用商標を付した商品の販売数量について、申立人は、甲第36号証を提出し、「該書面のデータは、本国ポルトガルのポート&ドウロワイン・インスティテュート(IVDP)に従っています(甲第37号証ご参照)」と説明するとともに「申立人は、高級なポートワインを専門に扱っているので、申立人の全体的な輸出占有率は、比較的小さいものです。」旨主張しているところ、甲第37号証において、具体的な輸出先やその数量も見いだせなく、甲第36号証においても、作成者及び客観的なものであるか不明である。

また、メルシャン株式会社作成に係る「ワイン参考資料」(乙第41号証)の6頁の「ワインの輸入数量推移(2001年〜2011年)」によれば、ポルトガルからの輸入数量は、2009年ないし2011年に0.4%であることが記載されており、その中に含まれる申立人のポートワインの我が国における市場シェアは、かなり少ないものと推認できる。

イ 我が国における申立人の広告宣伝活動として、新聞において、1992年、1998年、2002年、2003年、2010年及び2012年に、申立人のポートワインが他のブランドワインとともに試飲会やイベントに供したということが認められるものの(甲第22号証ないし甲第30号証)、その表示は、「テイラー」や「テイラー社」として紹介され、係る試飲会やイベントの規模、開催日数、参加者数などは全く不明であり、このほかに、申立人が新聞で積極的に引用商標を付した商品を宣伝したり、広告を掲載したことが見いだせない。

ウ 雑誌などにおける掲載内容の大部分は、申立人のポートワインを大きく扱ったものとはいえず、他の銘柄と並んで紹介されているもの(甲第16号証及び甲第17号証)、引用商標「TAYLOR’S」との関連が不明なもの(甲第15号証、甲第18号証及び甲第21号証)などである。

また、株式会社講談社発行の「世界の名酒事典」(甲第5号証ないし甲第13号証)において、申立人のポートワインは、600頁程にわたる書籍の中で他の数千社にのぼる世界中のワインメーカーの中の一つとして掲載されているという内容である。

エ 以上からすると、申立人のポートワインについての我が国における売上高は、不明であり、その市場シェアもさほど多いものとはいい難く、上記のような広告宣伝活動によって、引用商標は、本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品「ポートワイン」を表示するものとして、我が国の取引者、需要者間において広く知られていたとはいえない。

(5)結語

本件商標と引用商標とは、上記1(3)のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標であり、ほかに商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき特段の事情も見いだせないから、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品を申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

2 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標と引用商標との類否

本件商標は、別掲のとおりの構成からなり、全体としてワインラベル図柄からなると看取されるものであり、「TAYLOR’S」の文字のみからなる引用商標とは、外観上、明らかに相違するものである。

そして、本件商標は、その構成中、「TAYLORS WAKEFIELD」の文字部分から、「テイラーズウェイクフィールド」の一連の称呼のみが生じ、その全体からは、特定の観念が生じない。これに対して、引用商標「TAYLOR’S」からは、該文字に相応して「テイラーズ」の称呼が生じ、「テイラー氏の」との観念が生じ得るから、両商標は、観念上類似するとはいえない。

そうすると、上記1(3)のとおり、両商標は、外観、称呼及び観念において類似するとはいえない。

以上からすると、本件商標と引用商標とは、その指定商品において同一又は類似であるとしても、外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

3 商標法第4条第1項第10号該当性について

(1)本件商標と引用商標とは、上記1(3)のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標である。

(2)引用商標の周知性

申立人の提出に係る証拠をみると、上記1(4)のとおり、申立人のポートワインについての我が国における売上高は、不明であり、その市場シェアもさほど多いものとはいい難く、上記のような広告宣伝活動によって、引用商標は、本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品「ポートワイン」を表示するものとして、我が国の取引者、需要者間において広く知られていたとはいえない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

4 商標法第4条第1項第16号該当性について

本件商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、全体の構成から特定の商品の品質を表示するとはいい難く、また、本件商標の各構成文字において、具体的な商品の品質を表示する文字が含まれているとも認められない。

そして、申立人の主張は、引用商標が広く知られていることを前提に本件商標がその指定商品に使用するときは、申立人のポートワインであるかのように品質の誤認を生じるおそれがあるとするものである。

しかしながら、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標とは、指定商品に係る取引の実情の下で、取引者又は需要者において、該商標が表示していると通常理解される品質と、指定商品が有する品質とが異なるために、商標を付した商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標を指すものというべきであって、該商標が周知であるか否かは、その判断に直接影響を及ぼすものではないから、申立人の主張は、その前提において失当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第16号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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