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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35568号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4080822号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成5年3月26日に登録出願、後掲(1)に表示したとおり黒塗り半円状図形内に「キシリトール」の片仮名文字を白抜きで表してなり、第30類「キシリトールを使用したコーヒー及びココア,キシリトールを使用した角砂糖,キシリトールを使用した氷砂糖,キシリトールを使用した砂糖,キシリトールを使用した粉末あめ,キシリトールを使用した水あめ,キシリトールを使用した菓子及びパン,キシリトールを使用した即席菓子のもと,キシリトールを使用したアイスクリームのもと,キシリトールを使用したシャーベットのもと」を指定商品として、同9年11月14日に設定の登録がされたものである。

2 引用商標

本件審判において、請求人が本件商標の登録を無効とすべきものとする理由に引用した登録第1692144号商標(以下、「引用商標」という。)は、昭和51年7月8日商標登録出願、後掲(2)に示したとおり「キシリトール」の片仮名文字と「XYLITOL」の欧文字を上下2段に横書きした構成よりなり、旧第30類「菓子、パン」を指定商品として、同59年6月21日に設定の登録がされ、該商標権は平成6年11月29日に存続期間の更新登録がされ、現在有効に存続しているものである。

3 請求人の主張

請求人は、本件商標の指定商品中「キシリトールを使用した氷砂糖,キシリトールを使用した水あめ,キシリトールを使用した菓子及びパン」についての登録はこれを無効とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。

(1)本件商標と引用商標との比較検討

本件商標は、黒色塗潰しの幅広波状帯図形の上側に、2本の黒色細幅波線と1個の黒色細葉形を表してなるが、その構図が、全体として、何か特定のものを象徴しているとか連想させるというものとは認められない。すなわち、幅広波状帯図形と細幅波線及び細葉形がなす構図自体が、特定の称呼を生じるとか特定の観念を有するというようなものではない。

これに対し、本件商標の構図の中に最も大きく特徴的に表されている幅広波状帯図形内に配置されている「キシリトール」の片仮名は、黒色塗潰しの中に白抜きで顕著に表示され、その表示態様は、専ら商品識別標識としてしか理解できないものであることから、看者は、まずその「キシリトール」の片仮名に着目することになること明らかであり、それを「キシリトール」と呼称し観念すると見るのがごく自然であると認められる。すなわち、本件商標は、唯一の「キシリトール」なる称呼及び観念を生じるのである。

一方、引用商標が、その「キシリトール」と「XYLITOL」の片仮名または欧文字から「キシリトール」なる称呼及び観念を生じることは、明らかで、疑問の余地がない。

本件商標と引用商標は、外観を異にするものではあるが、「キシリトール」なる称呼及び観念を同一にすることにおいて、たがいに類似の商標であり、また、両商標は、指定商品「キシリトールを使用した氷砂糖、キシリトールを使用した水あめ、キシリトールを使用した菓子及びパン」を共通にしていることにおいて、少なくとも上記抵触関係にある指定商品について、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであることは明々白々であるから、その登録は同法第46条第1項第1号により、無効とすべきである。

(2)「商標登録異議の申立てについての決定」について

平成10年異議第90589号に係る「商標登録異議の申立てについての決定」(甲第5号証)が、本件商標及び引用商標の称呼、観念について格別触れることなく、すなわち、本件商標と引用商標は、如何なる称呼、観念を生じるかについて具体的に言及することもなく、ただ漫然と「してみれば、本件商標と引用登録商標とは、その外観、称呼および観念のいずれからしても類似しない商標といわなければならない」としたのは、判断の遺脱あるいは審理不尽の誹りを免れないし、それに基づいて「したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものではない」としたのは違法というほかない。

(3)商標法第4条第1項第11号について

商標法第4条第1項第11号は、適用除外規定がない限り、先願かつ先登録の商標と抵触する出願商標に対しては、例外なく適用されなければならないものであり、当該出願商標が、たとえば第3条第1項各号に掲げられている不登録事由を構成要素として内包している場合であっても例外でないこと明らかである。

被請求人は、引用商標の商標権の効力は本件商標の使用には及ばないこと、本件商標の要部は「キシリトール」の文字部分にないことを理由に、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない旨を主張しているものであり、その主張内容は、前出の「商標登録異議の申立てについての決定」(甲第5号証)の結論と同趣旨であると認められる。

一般に、商標権の効力が、当該指定商品等の普通名称や品質等を表示する商標に及ばないのは、商標法第26条第1項が、敢えてその旨を規定していることによるものであって、当該登録商標が当該指定商品等の普通名称や品質等を表示するだけの理由によるものではない。しかも、第26条第1項は、第3条第1項各号の規定等に反してなされた過誤登録に対する第三者の救済規定であって、誤って商標登録があった場合でも商標登録の無効審判手続によるまでもなく、他人に商標権の効力を及ぼすべきではないとの趣旨を規定したものであり、当該出願商標が、登録を受けることができない商標に該当するか否か、特に、第4条第1項第11号の規定に該当するか否かを審査判断することには、何らの関係もしない規定である。

すなわち、当該出願商標が所定の登録要件を具備するかどうかは、引用商標の商標権の効力が当該出願商標に及ぶか否かとは、無関係に審査判断されるべきが法の精神であると認められる。

本件商標の、「キシリトール」の文字は、それ自体において、あるいは、それを表している黒色幅広波状帯図形との結合状態において、本件商標の要部をなしていること自明であるにもかかわらず、かかる「キシリトール」の文字について、本件商標の要部ではないとし、反対に、特定の称呼や観念を生じさせない図形部分をもって要部であるとする被請求人の上記主張内容は、取引の実際に場における需要者取引者の感覚を無視する机上の空論に過ぎないというべきものである。

(4)被請求人の答弁に対する弁駁

本件商標と引用商標は、何れも、最初に判読の対象となる部分が「キシリトール」であることが、その各構成からして明々白々であるから、これら両商標から「キシリトール」なる称呼及び観念が生じないとすることは不可能というほかない。

被請求人においては、「キシリトール」が食品添加物の普通名称であることを理由に商標の要部となり得ないとしているが、商標法は「その商品又は役務の普通名称」(第3条第1項)についてだけ、商標登録を受けることが出来ないとしているものであり、本件商標の指定商品「氷砂糖、水あめ、菓子及びパン」は、何れも「キシリトール」なる語を普通名称とするものではない。したがって、「キシリトール」が食品添加物の普通名称であることの故をもって、商標の要部になり得ないなどとは到底いうことはできない。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第52号証を提出している。

(1)本件商標の要部について

これまでの本件商標と引用商標の手続経緯を鑑みるに、相反する要部認定がなされたことも事実であるが、すべての経緯、そして取引の実情を総合的に検討するならば、今や「キシリトール」が商標の要部となり得ないことは以下の点よりして自明の理である。

(イ)「キシリトール」とその商取引の実情について

「キシリトール」とは、元来、19世紀にドイツで発見された化学物質を指し示す語であるが、その後1970年代に入って抗齲触効果が確認されて以来、齲触予防効果のある甘味料として知られており、又、最近では初期段階の虫歯を再生させる可能性を持つことが発表され、更に世界の歯科研究者から関心が集まっているものである。「キシリトール」を甘味料とする商品は世界38か国以上でチューインガム,キャンディー,チョコレート等に既に使用されており、我が国においても、食品添加物の一つとして平成9年4月17日に厚生省の正式認可を受けるに至った(乙第1号証)。

即ち、上記の認可をもって、「キシリトール」は学問分野における普通名称だけでなく日本国も認めた食品添加物の名称となったものである。

「キシリトール」は世界的に注目された商品であることから、被請求人の啓蒙普及活動も含み、幾多の報道機関にもその内容が紹介されたものであり(乙第2号証乃至乙第44号証)、インターネットで「キシリトール」と「菓子」とをかけ合わせたキーワードで検索すると88件ものデータベースに到達するところを見ても、如何に「キシリトール」に対する関心が高いかを表しているものである(乙第45号証)。係る活動は請求人においてもなされているものであって、他の菓子メーカー以上に「キシリトール」の効能を熟知され、広告宣伝活動及び啓蒙普及活動を熱心に展開されているものである(乙第46号証)。

請求人商品を見ると『このガムに使われている天然素材を原料にした新・甘味料「キシリトール」は、・・。』と「キシリトール」を甘味料の普通名称として説明されているものであり(乙第47号証)、更に請求人の他にも「キシリトール」を使用してなる商品は散見されるものである(乙第48号証乃至同第50号証)。

従って、本件商標が登録された平成9年(1997年)11月14日には我が国において「キシリトール」は食品添加物の名称として認知されており、その後も盛大な啓蒙普及活動及び「キシリトール」を使用する商品の大ヒットも相まって、「キシリトール」は商品の普通名称として定着しているものである。

(ロ)請求人の主張について

請求人は『商標法第4条第1項第11号は,同法第3条第1項各号、第26条第1項各号に規定するような事由との関係を検討する余地はない・・。』と主張されているが、文字であれば例え顕著性の乏しい普通名称であっても商標の類否を検討すべき称呼であるとされるのは、あまりに乱暴な議論と言わざるを得ない。当該商標に文字が書かれていれば、それを読むことは極自然な反応であることは何人も否定できないものであると考えるが、書かれた文字を読むことと、商標の類否とは全く次元を異にする問題である。

又、第26条第1項の解釈については、請求人の主張するその一点(請求書6頁2行ないし同5行目)に限られるものでなく、即ち、後発的に本条に定めるものとなった場合に商標権の効力を制限する規定でもある。そして、引用商標の登録を得られた過程(異議答弁及び異議決定を前提)から考えて、その査定時に一般に普通名称と知られている実情があり取引も行われて、食品添加物として指定されていれば、当該商標は登録の要件を欠き、普通名称と認定されることとなる。

(ハ)むすび

以上の点よりして、引用商標の登録時に「キシリトール」の語が食品添加物として我が国厚生省において認定されていなかったことは事実であるが、しかし、遅くとも本件商標の登録時には「キシリトール」は我が国をはじめ世界中が認めた食品添加物であることも否定できない事実である。

従って、本件商標中「キシリトール」の語は商標の要部とはなり得ないから、たとえ引用商標が存続しているとしても、本件商標は商標法第46条第1項第1号の規定により登録を無効とされるべきものではない。

5 当審の判断

本件商標と引用商標との類否について判断するに、本件商標は、その構成後掲したとおり底辺を波形状にした黒塗り半円状図形上部を平行するやや幅広の3本の帯状に白抜きし、さらに同下部中央位置に「キシリトール」の文字を白抜きに表してなるものである。

ところで、「キシリトール」の文字(語)に関し請求人提出の乙第1号証ないし同50号証迄を総合勘案して検討すれば、該文字(語)は「虫歯の原因になる酸をつくらない天然素材の新しい甘味料」(XYLITOL)を指称するものとして使用され、かつ、該キシリトールは、我が国において、食品添加物の一つとして平成9年4月17日に厚生省の正式認可を受けていることが認められ、このことにより、多数の製菓会社等がキシリトールを使用した菓子や歯磨きを発売し、また、新聞報道等でも虫歯予防効果のある甘味料を表す語として、本件商標登録時において普通に使用されていたものとみて差し支えなく、したがって、「キシリトール」(XYLITOL)の文字(語)は食品業界において菓子等の原材料(甘味料)の一つとしてその当時すでに定着していたものということができる。

そして、本件商標はその指定商品を「キシリトールを使用したコーヒー及びココア,キシリトールを使用した角砂糖,キシリトールを使用した氷砂糖,キシリトールを使用した砂糖,キシリトールを使用した粉末あめ,キシリトールを使用した水あめ,キシリトールを使用した菓子及びパン,キシリトールを使用した即席菓子のもと,キシリトールを使用したアイスクリームのもと,キシリトールを使用したシャーベットのもと」とすること前記したとおりである。

そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、前記事情よりして、構成中の「キシリトール」の文字部分はその品質(原材料)を端的に表示した部分と理解するに止まり、それ自体は自他商品の識別標識としての機能を有しないものと認識するとみるのが相当である。

したがって、本件商標は専らその外観のみをもって取引に資されるものであって、「キシリトール」の文字部分をもって取引指標と目されることはないとみるのが相当である。

そうすると、本件商標からは「キシリトール」の称呼又は観念が生ずるということはできないから、これを理由に本件商標と引用商標との類似を述べる請求人の主張は妥当でなく、また、ほかに両者を類似のものとすべき点は見出せないから、結局、本件商標を商標法第4条第1項第11号該当を理由に同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすることはできない。

請求人は、特定の称呼や観念を生じさせない図形部分をもって本件商標の要部であるとする被請求人の主張内容は取引の実際に場における需要者、取引者の感覚を無視する机上の空論に過ぎない旨述べているが、商標法第2条に照らしてみるに、図形は文字、記号、立体的形状などと同様に独立して商標の構成要素となり得るものであり、たとえ、その図形部分が特定の称呼や観念を生じさせないものであったとしても十分に自他商品の識別機能を発揮し得るものであることは、実際の取引において多数の図形標章が商標として通用しているという取引の実情からみても明らかであるから、その主張は採用できない。

さらに請求人は、商標法は「その商品又は役務の普通名称」(第3条第1項)についてだけ商標登録を受けることが出来ないとしているものであり本件商標の指定商品「氷砂糖、水あめ、菓子及びパン」は何れも「キシリトール」なる語を普通名称とするものではないから「キシリトール」が食品添加物の普通名称であることの故をもって商標の要部になり得ないなどとは到底いうことはできない旨述べているが、「キシリトール」が、商品の品質(原材料)を表すものであって、商品識別の標識と目されないこと前述したとおりであるから、その主張は採用できない。

その他、請求人の主張を認めるに足りる証拠はない。

なお、両当事者は商標法第26条第1項の法解釈について述べているが、該条項は商標権の効力が及ばない範囲を規定したものであって、同第4条第1項第11号違反を理由とする本件無効審判の判断には直接関係ないものであるから、それについての判断は省力した。

よって、結論のとおり審決する。

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