結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35284号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第2724307号商標(以下、「本件商標」という。)は、昭和62年12月26日登録出願、「自律分散セル」の文字を横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の区分(以下、「旧区分」という。)第9類「金属加工機械器具その他本類に属する商品」を指定商品として、平成11年3月19日に設定の登録がされたものである。
請求人は、本件商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
本件商標中の「自律分散」なる語は、1977年に生物を範として生まれたシステムコンセプトとして、請求人のシステム開発研究所にて開発が始められて以来、20年以上にわたり鉄道や鉄鋼などの一般作業向け情報制御システムに広く適用されているものである(甲第2号証の1)。
また、請求人は、甲第3号証の1ないし11、甲第4号証の1及び2に示す事実により周知著名となっている登録第2045432号商標(以下、「引用商標」という。)を所有している。引用商標は、「自律分散」の文字を横書きしてなり、旧区分第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、昭和60年9月30日登録出願、同63年5月26日設定登録、その後、平成10年3月3日商標権存続期間の更新登録がされ現在権利として有効に存続しているものである。
そこで、本件商標と引用商標との出所の混同の有無について考察するに、両者の構成は前記のとおりであり、「自律分散」の要部を共通にする称呼、観念上極めて酷似する関係上、両者は商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
そして、引用商標は、本件商標の出願日(昭和62年12月26日)以前より、わが国において商品「電気通信機械器具、電子応用機械器具」等に使用し、周知著名な商標となっている点において、両者は商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標中の「自律分散」なる語は、請求人がその技術の提唱者であり、その技術の仕様公開を行なったことから、商品「電気通信機械器具、電子応用機械器具」ほかに使用し周知著名となっており、これに続く「セル」の文字は、コンピュータ用語として、例えば「表の中の1つの欄」「罫線で囲まれた部分で文字列やグラフィックを入力できる(単位)」などを表すもので、記憶装置において、スプレッドシートプログラムの「セル」を意味することが最もポピュラーな意味として認められるから(甲第2号証の2及び3)、そのような機能を有しない商品に使用するときは、その商品が恰も独創的なコンピュータによる制御機能を備えた商品であるかの如く、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
(3)答弁に対する弁駁
甲第3号証の1ないし11は、各種学会誌等に発表された論文が主であり、又、甲第4号証の1及び2は、日刊工業新聞に掲載された記事であって、これら各証拠は、第三者が客観的に立証するものであり、決して請求人が恣意的に作成主張したものではない。
また、本件審判請求の理由は、商標法第4条第1項第15号であり、類を越えて「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当する旨の主張である。即ち、他人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある場合をもいうものである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、引用商標が周知著名になっている証拠方法として、甲第3号証の1ないし11及び甲第4号証の1及び2を提出しているが、甲第3号証の1ないし11は、雑誌類に掲載された「自律分散」に関する記事であり、また、甲第4号証の1及び2は、「日刊工業新聞」に掲載された「自律分散」に関する記事であって、第三者等が客観的に立証するものは何もないから、これらの事実のみをもって、引用商標が本件商標の登録出願時(昭和62年12月26日)において、その指定商品中の「電気通信機械器具、電子応用機械器具」等を表すためのものとして、周知著名であるとは認め難い。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標中の「セル」の文字(語)は、本件商標の指定商品である旧区分第9類の「産業機械器具」等の商品の品質を表示するが如き語義を有しないばかりでなく、商取引上、該語が、商品の品質等を表示するものとして普通に用いられている事実もなく、請求人においても、何ら、その証左を示すところがないものであるから、上記の一事(甲第2号証の2及び3)のみをもって、これが直ちに、本件商標が、恰も独創的なコンピュータによる制御機能を備えた商品であるかの如く、その商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標であるとはいい得ない。
(1)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、「自律分散」の文字と「セル」の文字とを結合した構成からなると容易に看取させるものである。
一方、請求人が、一般作業向け情報制御システムに広く適用され、周知著名となっているとして、引用する登録第2045432号商標(以下、「引用商標」という。)は、「自律分散」の文字を書してなるものである。
しかして、該「自律分散」の文字(語)は、請求人が提出した分散型製造システム成果報告書及び各種学会誌等に発表された論文(甲第2号証の1、甲第3号証の1ないし11)及び一般業界紙(甲第4号証の1及び2)等によれば、70年代、請求人(日立製作所システム開発研究所)の研究者「森欣司」氏等によってコンピューターネットワークの分野で提唱され、その後、鉄道や鉄鋼などの一般作業向け情報制御システムとして研究・開発がなされているコンピューターの基本的設計構造の概念を表す語であることが認められる。
さらに、「自律分散」の文字(語)について、一般の用語辞典をみると、「自律分散システム〔distributed autonomous system〕」(imidas’99)とする見出し語、或いは、見出し語「分散処理〔distributed processing〕」(朝日現代用語’99)とする記述中に「自律分散協調システム」の文字が使用されていること。また、株式会社ジー・サーチの提供に係る「G−Searchの新聞記事データベース」を検索すると最近の一般新聞記事紙において、例えば、以下のような状況が認められる。
◆000047 (19990222NKM0133)物品の搬送を縦横自由に、東洋エンジ、名大と新装置。 99.02.22 日経朝刊 19頁 写図有(全575字)
東洋エンジニアリングは・・・個々の区画に学習機能を持たせて行き先を判断させる自律分散制御を組み合わせて採用した。・・・
◆000044 (19970626NSS0297)自律分散システムを開発、森欣司氏(下)理解者はユーザー(日本のオリジナリティー) 97.06.26 日経産業 5頁 写図有(全1705字)
自律分散システムの概念を世界で初めて打ち出してから今年三月までの二十年間、森欣司は日立製作所で関連技術の開発や製品化に取り組んできた。その努力が実って、今ではコンピューター関連の企業だけでなく、学術の世界でも「自律分散」の概念が広がっている。・・・その一環として、登録商標の「自律分散」は開放した・・・
◆000037 (19970226NSS0046)<図表>研究開発小史(新産業技術2010年への挑戦) 97.02.26 日経産業 5頁 写図有(全291字)
〈研究開発小史〉1975年=沖縄海洋博に、東工大などが開発した、仲間の動きを見て群れを作る「みつめむれつくり」ロボットが出展される。群ロボットの草分け
77年=日立製作所が自律分散のアイデアを提唱
80年代=分散制御プラントが相次いで登場
80年代後半=東京理科大が合体して動くロボットを試作。各国で自律分散ロボットの研究始まる
90年=文部省の重点領域研究「自律分散システム」始動
92年=理化学研究所で自律分散型ロボットシステムに関する第一回国際シンポジウムを開く
95年=文部省の重点領域研究「創発的機能形成のシステム理論」スタート。自律分散ロボットの理論に関する研究進む
以上によれば、最近のコンピューター関連における業界、学界等において、「自律分散」の文字(語)は、コンピューターの基本的設計構造の概念を表す語として認識し使用されているものというべきである。
そして、請求人の提出した甲各号証よっては、直ちに該文字からなる引用商標が請求人の業務に係る具体的な商品(電気通信機械器具、電子応用機械器具)を表示するものとして使用されていたという事実を見出し得ない。
してみれば、「自律分散」の文字(語)は、もはやそれ自体で単独に請求人に係る当該商品の出所を示す識別標識として機能しているものとはいえないとみるのが相当である。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標中の「自律分散」なる語は、コンピューターの基本的設計構造の概念を表す語であり、これに続く「セル」の文字がコンピュータ用語としての意味を有する語であるとしても、両語がそれぞれ商品の特定機能を具体的に表示するものとはいえないから、本件商標をその指定商品について使用しても商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものとはいえない。
(3)結語
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第16号に該当するものとは認められないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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