Trademark Appeal Case
「空飛ぶ犬」と「飛行犬」の類似
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900288(T2013−900288/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5597437号商標(以下「本件商標」という。)は,「空飛ぶ犬」の文字と「そらとぶいぬ」の文字とを上下二段に書してなり,平成25年2月13日に登録出願,同年6月4日に登録査定,第9類「インターネットを利用して受信し,及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,映写フィルム,スライドフィルム,電子出版物」,第16類「紙類,文房具類,印刷物,写真」及び第41類「セミナーの企画・運営又は開催,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,写真の撮影」を指定商品及び指定役務として,同年7月12日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5226999号商標は,「飛行犬」の文字を書してなり,平成19年12月13日に登録出願,第41類「写真の撮影及び写真の撮影に関する情報の提供,写真撮影会の企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),写真撮影用・音響用又は映像用のスタジオの提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,図書の貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,デジタル画像データーを記憶させた記録媒体の貸与,写真撮影用機器の貸与」を指定役務として,同21年5月1日に設定登録されたものである。
(2)登録第5410417号商標は,「飛行犬」の文字を書してなり,平成22年5月12日に登録出願,第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て」及び第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル」を指定商品として,同23年5月13日に設定登録されたものである。
(3)登録第5429537号商標は,「飛行犬」の文字を書してなり,平成23年2月3日に登録出願,第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」を指定商品として, 同年8月5日に設定登録されたものである。
以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第11号,同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきであるとして,登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第30号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号について
申立人は,平成18年から現在まで継続して,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」を顧客に提供しており,現在,東京を含む7か所に支部を設置している(甲1)。
本件商標の商標権者は,平成24年(2012年)4月23日には,申立人の「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部に属して活動しており,同25年(2013年)2月28日には退会するとして,同年3月1日に,申立人の飛行犬商標管理者から,本件商標の出願日の後である2月28日に飛行犬ブランドの使用についての契約期間を満了することの通告を受けている(甲3及び甲4)。
さらに,商標権者は,平成25年2月28日に,飛行犬TOKYOのブログで,飛行犬撮影所東京支部の名称変更の権限が無いにもかかわらず,「飛行犬撮影所東京支部は『スタジオ空飛ぶ犬』に名称が変わりました。新ホームページはこちらをクリック」などの記事を更新し,遅くとも同年3月12日に,そのリンク先である「スタジオそら飛ぶ」で,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」を顧客に提供している(甲5及び甲6)。
商標権者は,上記契約期間中であるにもかかわらず,「スタジオそら飛ぶ」を設立し,平成25年2月5日に,顧客に問い合わせ先をWebページで公開しており,同月6日に,「スタジオそら飛ぶ」のスタッフとして企画している(甲7及び甲8)。
すなわち,商標権者は,未だ,申立人の「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部に属しているにもかかわらず,「飛行犬撮影所」で提供している「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」を,他の名称「スタジオそら飛ぶ」という別会社で提供しようとしており,これは,明らかに,申立人に対する背任行為であり,飛行犬ブランドの使用についての契約違反であり,裏切り行為であり,道義や社会正義に反する行為である。
なお,申立人は,商標権者に対して,現在,所有する引用商標及びこれに類似する商標の使用を,当然に,許可していない。
そうすると,本件商標の登録出願時において,「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部に属し,申立人から許諾を得て引用商標を使用していた商標権者が,申立人の「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部の顧客をそのまま奪う目的の下,申立人に係る引用商標と混同を生ずるおそれがある本件商標を登録出願し,商標登録したものと推認される。そのため,申立人は,商標権者が申立人を裏切って,不正競争の目的あるいは不正な目的をもって登録出願したと評せざるを得ない。
したがって,本件商標は,商標登録に至る登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり,その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものといわざるを得ず,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当し,商標法第4条第1項第7号に該当するというべきである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人の未登録周知商標の周知性
引用商標の「飛行犬」という文字は,飛行犬写真家・元祖飛行犬カメラマンである「的場信幸」氏により創出された造語である(甲12)。
そして,申立人は,平成16年(2004年)12月に設立し,それ以降,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」を顧客に継続して提供し,平成19年9月26日に読売新聞にその事業を紹介されている(甲13)。
また,申立人は,引用商標とともに,未登録商標である「空飛ぶ犬」を,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」に使用した結果,平成22年(2010年)10月18日にNHKニュースウオッチ9にその事業と「空飛ぶ犬」,「飛行犬」とを紹介され,さらに,引用商標と「空飛ぶ犬」の使用により,平成23年(2011年)5月10日に神戸新聞にその事業と「空飛ぶ犬の写真集」を紹介されている(甲14ないし甲16)。
また,申立人は,本件商標の出願日より前の平成24年2月(Webページの発売日,実際の発売日は同年1月21日)に,楽天ブックスに,過去に撮影した「あたかも空を飛んでいるような犬の写真」をまとめた「そら飛ぶいぬ」,「ひこうけん写真集」を全国一斉販売し,現在も販売している(甲17)。
したがって,申立人は,平成16年(2004年)12月頃から現在に至るまで,引用商標と,未登録商標「空飛ぶ犬」又は「そら飛ぶいぬ」とを同等に扱って,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の商品,役務に継続して使用しているから,未登録商標の「空飛ぶ犬」又は「そら飛ぶいぬ」(以下「未登録周知商標」という場合がある。)は,本件商標の出願日前には,申立人が取扱う「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の商品,役務であることを表示する商標として一地方又は全国的に周知となっていた。
イ 本件商標と未登録周知商標との関係
本件商標は,「空飛ぶ犬」と「そらとぶいぬ」とを二段併記で横書きしてなるものであるのに対し,未登録周知商標は,「空飛ぶ犬」又は「そら飛ぶいぬ」を書してなるものである。
そのため,本件商標と未登録周知商標の外観は全部又は一部で共通し,「ソラトブイヌ」の称呼と,「空を飛ぶ犬」の観念とは,いずれも全部で一致している。
したがって,本件商標と未登録周知商標の外観,称呼,観念は,全体として同一又は類似しているから,両商標は,同一又は類似するというべきである。
ウ 指定商品が同一又は類似であること
未登録周知商標は,申立人の「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の商品,役務に使用されていることから,本件商標の指定商品及び指定役務と共通している。
したがって,本件商標の指定商品及び指定役務は,未登録周知商標の商品及び役務と同一又は類似である。
そうすると,本件商標は,全指定商品について,申立人(他人)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって,その商品又はこれらに類似する商品について使用するものとして,商標法第4条第1項第10号に該当するというべきである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,「空飛ぶ犬」と「そらとぶいぬ」とを二段併記で横書きしてなるものであり,その観念は,「空を飛ぶ犬」を想起させるものである。
これに対し,引用商標は,「飛行犬」を横書きしてなるものであり,「飛行」は「空を飛ぶ」を意味することは明らかであることから,その観念は,「空を飛ぶ犬」を想起させるものである。
さらに,本件商標は,「空飛ぶ犬」と「そらとぶいぬ」のうち,「飛」及び「犬」の文字を有する一方,引用商標は,「飛行犬」のうち,「飛」及び「犬」の文字を有し,両者の外観は,「飛」及び「犬」の文字を共通して有している。
したがって,本件商標と引用商標とは,「空を飛ぶ犬」の観念を共通にし,「飛」及び「犬」の外観を共通にするものである。
本件商標の商標権者は,現在,「スタジオそら飛ぶ」を運営し,その指定役務は,「撮影会では,お客様の愛犬が元気に走る姿を高速連写し飛んでいるような写真など,なかなか撮る事ができない様々な写真を高画質で撮影します。」等の「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物」等を顧客に提供している。
そうすると,本件商標の指定商品及び指定役務の取引の実情は,引用商標の商品及び役務の取引の実情と同一又は類似している。
したがって,本件商標と引用商標は,少なくとも観念,外観を共通にするとともに,それぞれの商品の取引の実情も同一であることから,両者は,類似するというべきである。
本件商標の指定商品及び指定役務は,引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似である。
そうすると,本件商標は,引用商標と類似の商標であって,その指定商品について,引用商標のいずれかの指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品に使用するものとして,商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は,申立人の未登録周知商標と同一又は類似であり,さらに,引用商標と類似である。
未登録周知商標及び引用商標は,本件商標の出願日の平成25年2月13日前には,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の商品,役務であることを表示する商標として一地方又は全国的に周知となっている。
本件商標の指定商品及び指定役務は,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の商品,役務に対応し,これに対して,未登録周知商標及び引用商標も,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の商品,役務に使用されてきたものであるから,同一又は類似の商品,役務であり,当然に,その需要者層を共通にするものである。
したがって,未登録周知商標及び引用商標と,同一又は類似である本件商標を,商標権者が,その指定商品について使用するときは,これに接する取引者,需要者は,本件商標の外観,称呼,観念のいずれかに強く印象づけられ,該商品が,未登録周知商標,引用商標に係る商品又は同人と営業上何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
そうすると,本件商標は,申立人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせるおそれがあり,申立人の周知商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招来する商標であるから,商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
(5)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は,申立人の未登録周知商標と同一又は類似であり,さらに,引用商標と類似である。
未登録周知商標及び引用商標は,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の商品,役務について一地方又は全国的に周知である。
本件商標の商標権者は,現在,「スタジオそら飛ぶ」を運営し,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」を顧客に提供している。
平成24年4月27日には,商標権者は,申立人の運営する「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部に所属し,平成24年4月29日〜30日に「すいらんグリーンパーク」で「すいらんグリーンパーク撮影会」を「飛行犬撮影会」として開催し,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」を顧客に提供している(甲30)。
一方,飛行犬ブランドの使用についての契約期間満了日(平成25年2月28日まで)の後の平成25年3月12日には,商標権者は,「スタジオそら飛ぶ」のホームページで,同年4月28日〜29日,5月3日〜6日に「すいらんグリーンパーク」で「撮影会inすいらんグリーンパーク」を開催し,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」を顧客に提供している(甲6)。
つまり,「飛行犬撮影会」の開催場所「すいらんグリーンパーク」と,「スタジオそら飛ぶ」の撮影会の開催場所が同一である。
また,申立人が「そら飛ぶいぬ」,「ひこうけん写真集」を販売する際,出版社の株式会社宝島社に対して,商標権者を「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部の窓口にさせていた(甲17)。
一方,商標権者が「スタジオそら飛ぶ」として販売している「空飛ぶ犬たち写真集 2013」の出版社は,株式会社宝島社である(甲20)。
つまり,「飛行犬撮影所」の「そら飛ぶいぬ」,「ひこうけん写真集」の出版社と,「スタジオそら飛ぶ」の「空飛ぶ犬たち写真集 2013」の出版社は,同一である。
すると,需要者,出版社にとって,商標権者と,申立人とは,形式的には別人であるものの,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の提供者として,実質的には同じ主催者,同じ写真集の出版依頼者であるか又は極めて密接な関係にある者と認識されるものである。
さらに,商標権者と申立人は,いずれも「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」の提供を事業目的とし,それらを取り扱っていることから,本件商標の商標権者は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,申立人の未登録周知商標,引用商標に関連する事情に精通し,申立人の存在を熟知していたものというべきである。
特に,商標権者は,「スタジオそら飛ぶ」のホームページで,「※現在,飛行犬撮影所との提携関係はございません。」などを掲載しているものの(甲19),「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部として活動し,「飛行犬撮影会」を開催した同一の場所で,「あたかも空を飛んでいるような犬の写真の撮影,写真,電子出版物等」を提供する撮影会を,時を異にして開催していること,「飛行犬撮影所」の申立人が販売した写真集の出版社と,同一の出版社で「あたかも空を飛んでいるような犬の写真」の写真集を,時を異にして販売していることを考慮すると,商標権者が,「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部における顧客(需要者)を自身の顧客として取り込んでいると推認される。
そうすると,本件商標の商標権者は,申立人の未登録周知商標及び引用商標と酷似した本件商標を採択し,さらには,本件商標を,未登録周知商標及び引用商標に近づけるように変更し,申立人と同様の方法で使用しているものというべきであり,結局,未登録周知商標及び引用商標に蓄積された名声,信用,顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し,不正の利益を得る目的,申立人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって本件商標を使用するものといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている未登録周知商標及び引用商標と類似のものであり,それを不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。
4 当審の判断
(1)申立人について
申立人は,2004年12月に設立された会社であり,2005年4月に兵庫県南淡路市にドッグラン場を開設し,同年秋に,空を飛んでいるかのような犬の写真撮影に成功し,当該写真サービスを開始したものであり,撮影した犬は,前後の足が地面から離れて空中を飛んでいるように見えることから,「飛行犬」命名したものである(甲13及び甲16)。
そして,申立人は,「南あわじドッグラン・飛行犬撮影所」の名称を使用して営業しているものであり(甲1及び甲16),2012年4月27日において,神戸支部,伊豆支部,東京支部,あわじ支部がある(甲30)。
(2)引用商標等の周知性について
ア 引用商標の周知性について,申立人が提出した証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)甲第21号証ないし甲第25号証は,平成20年ないし同24年に開催された「飛行犬撮影所」に係る写真撮影会のパンフレットであり,これらによれば,1日当たり多くても50組程度の参加者による「飛行犬撮影会」が,平成20年には12回,同21年には4回,同22年には5回,同23年には14回,同24年には22回開催されたものであり,大阪府,群馬県,静岡県,熊本県,福岡県等の各地にあるドッグラン場などの施設とタイアップするなどして行われた。
そして,これらのパンフレットには,プロのカメラマンが,犬が飛行する瞬間を撮影する旨の説明がなされ,また,掲載された写真には,「飛行犬」と記載されており,他に,料金,写真撮影の方法として「飛行犬撮影」と表示していることが認められる。
また,甲第16号証は,2011年(平成23年)5月10日付けの神戸新聞であり,申立人は,飛行犬撮影所が撮影した犬の写真を掲載した「飛行犬」の写真集(3000冊)を2010年に発行したものである。甲第17号証は,インターネット上の「楽天ブックス」に掲載された情報であり,申立人は,飛行犬撮影所編集の「そら飛ぶいぬ ひこうけん写真集」を,宝島社から,2012年2月に発売したものである。
(イ)甲第26号証は,「DAIMARU」のウェブサイト(写し)であるところ,2009年1月2日から4日に,大丸梅田店で,「福袋」として「『南あわじドッグラン飛行犬撮影所』出張撮影福袋」が販売されたものである。
上記証拠によれば,申立人は,「飛行犬撮影会」,「飛行犬撮影所」及び「飛行犬撮影」の文字を使用して,多数の県にあるドッグラン場などの施設とタイアップして犬の写真撮影会を開催し,写真の撮影を行っているものであり,該写真撮影会については,パンフレットなどにより広告を行い,また,撮影された犬の写真を用いた写真集が発売されたことが認められる。
そして,「飛行犬撮影会」,「飛行犬撮影所」及び「飛行犬撮影」等の文字は,その構成中の「撮影会」,「撮影所」及び「撮影」の文字部分が,その役務の提供との関係において役務の質を表すものであるから,「飛行犬」の文字部分が独立して出所識別標識としての機能を果たすものと認められる。
しかしながら,申立人が開催する犬の写真撮影会は,その1回当たりの参加はそれほど多いものではなく,パンフレットによる広告も,開催施設の周辺の限られた範囲で行われているとみるのが自然であることからすると,引用商標である「飛行犬」の文字は,申立人の業務に係る「犬の写真撮影,写真,電子出版物等」を表すものとして,この種の役務の需要者,取引者の間で一定程度知られているものと認められるものの,広く認識されているとまではいうことができない。
イ 「空飛ぶ犬」及び「そら飛ぶいぬ」の文字の周知性について
「空飛ぶ犬」及び「そら飛ぶいぬ」の文字の使用について,申立人が提出した証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)甲第14号証は,申立人の飛行犬撮影所がNHKニュースウオッチ9で(平成22年)10月18日に全国放送されたことを示すウェブページ(写し)及び甲第15号証は,その紹介映像の一部を示すウェブページ(写し)であり,紹介映像には,「人気!“空飛ぶ犬”その秘密とは・・・」及び「飛行犬」の文字と,飛んでいるかのような犬の写真が用いられている。
(イ)甲第17号証は,インターネット上の「楽天ブックス」に掲載された「そら飛ぶいぬ ひこうけん写真集」に関する事項であるところ,該写真集の表紙には,大空を飛んでいる犬の写真が大きく用いられている。なお,甲第25号証の2葉目,4葉目,14葉目,21葉目及び23葉目の飛行犬撮影会のパンフレットには,「そら飛ぶいぬ ひこうけん写真集」の販売について記載されている。
(ウ)甲第16号証の神戸新聞に掲載された写真集を紹介する記事には,「“空飛ぶ”犬の写真集」の見出しの下,「犬が滑空しているような躍動感あふれる写真」などと記載されている。
しかしながら,該テレビ放送や該写真集の表紙には,空を飛んでいる犬の写真(場面)とともに,「空飛ぶ犬」,「そら飛ぶいぬ」と表示されていることからすると,それらの表示は,その犬の様子を表したものと認識される場合も少なくないものであり,また,甲第16号証の新聞記事においては,空を飛んでいる犬であることを端的に表すために見出しに使用されているものであるから,これらによっては,「空飛ぶ犬」及び「そら飛ぶいぬ」が,申立人の業務に係る「あたかも空を飛んでいるような犬の写真撮影,写真,電子出版物等」を表示する商標として知られているものということができず,他に,これらの文字が申立人の商品及び役務について使用された証拠は見いだせない。
ウ 小活
前記ア及びイのとおり,申立人が提出した証拠からは,引用商標並びに「空飛ぶ犬」及び「そら飛ぶいぬ」の文字が,本件商標の登録出願時及び査定時に,我が国において,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして広く認識されているものと認めることができない。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,「空飛ぶ犬」の文字と「そらとぶいぬ」の文字とを上下二段に書してなるところ,下段の文字は,上段の文字の読みを表したものであり,その構成各文字からは,「ソラトブイヌ」の称呼を生じ,「空を飛ぶ犬」の観念を生ずるものである。
イ 引用商標について
引用商標は,「飛行犬」の文字を書してなるところ,該文字は,「飛行」の文字と「犬」の文字とを組み合わせたものと容易に理解させるものであるから,引用商標からは,「ヒコウケン」の称呼を生じ,「飛行する犬」程の観念を生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに,外観においては,それぞれ前記ア及びイのとおりであり,その構成態様に照らし,明らかな差異を有するものであるから,両者は,外観上,明確に区別できるものである。
次に,称呼においては,本件商標から生ずる「ソラトブイヌ」の称呼と,引用商標から生ずる「ヒコウケン」の称呼とは,その構成音,構成音数において明らかな差異を有するものであるから,両者は,判然と聴別できるものである。
また,観念においては,本件商標からは,「空を飛ぶ犬」の観念が生じ,引用商標からは,「飛行する犬」程の観念を生ずるものであるから,両者は,やや近似した意味合いを想起させるものであるが,同一の観念とはいえないものである。
そうとすれば,本件商標と引用商標とは,観念において近似した意味合いを想起させるとしても,外観及び称呼において相紛れるおそれはない非類似の商標というのが相当であり,両商標が,空を飛んでいるような犬に関する「写真撮影,写真,電子出版物」等について使用されているとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第10号該当性について
「空飛ぶ犬」及び「そら飛ぶいぬ」の文字は,前記(2)のとおり,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は,「空飛ぶ犬」の文字と「そらとぶいぬ」の文字とを上下二段に書してなり,「空飛ぶ犬」及び「そら飛ぶいぬ」の文字と類似であるとしても,「空飛ぶ犬」及び「そら飛ぶいぬ」の文字は,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,広く認識されているものと認めることができないものである。
また,本件商標と引用商標とは,前記(1)のとおり,非類似の別異の商標であって,かつ,引用商標は,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
そうとすれば,商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務について使用しても,これに接する取引者,需要者が,申立人の引用商標及び未登録周知商標を連想,想起するものではなく,本件商標は,申立人又は申立人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのごとく,商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標並びに「空飛ぶ犬」及び「そら飛ぶいぬ」の文字は,申立人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として,我が国の需要者の間に広く知られていたと認めることができず,かつ,本件商標と引用商標とは,前記(1)のとおり,非類似の商標と認められるものである。
また,申立人の提出した証拠から,申立人と商標権者との「飛行犬ブランド」の使用についての契約期間が満了した後に(甲4),商標権者が,契約期間中に申立人名により「飛行犬撮影会」を開催した施設と,同じ施設において「あたかも空を飛んでいるような犬の写真」の撮影会を開催したこと(甲6及び30),契約期間中に撮影した写真を用いて,「空飛ぶ犬たち写真集 2013」のタイトルの写真集を,契約期間の満了後である2013年4月に発売すること(甲20)が認められるとしても,かかる事実をもって,商標権者が,申立人に係る商標に蓄積された名声,信用,顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し,不正の利益を得る目的を持って本件商標の登録を受けたものとはいえないものであるから,本件商標は,不正の目的をもって使用するものということができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(7)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は,本件商標の登録出願時において,「飛行犬撮影所」の本部兼東京支部に属し,申立人から許諾を得て引用商標を使用していた商標権者が,申立人の顧客をそのまま奪う目的の下,引用商標と混同を生ずるおそれがある本件商標を商標登録したものと推認され,商標権者は,不正競争の目的あるいは不正な目的をもって登録出願したと評せざるを得ない旨主張する。
しかしながら,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であって,申立人提出の証拠によっては,申立人の顧客をそのまま奪う目的,不正競争あるいは不正な目的等,本件商標の商標登録に至る登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり,その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものものとすべき具体的事実を,見いだすことができない。
また,本件商標は,「空飛ぶ犬」の文字と「そらとぶいぬ」の平仮名とを上下二段に書してなるものであるから,その構成自体において公序良俗違反に該当するものでないことは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(8)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第11号,同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録は,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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