sokuhyo

Trademark Appeal Case

ダックス称呼の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2013−890031(T2013−890031/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5132147号商標(以下「本件商標」という。)は,「ダックスくん」の文字を標準文字で現してなり,平成19年7月2日に登録出願,第16類「愛玩動物用ウェットティッシュペーパー,愛玩動物用不織布製又は紙製体ふき,愛玩動物用紙製おしめ,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,印刷物」,第18類「愛玩動物用引き紐,愛玩動物用首輪・胴輪,引き紐を付属してなる愛玩動物用胴着,愛玩動物用レインコート,愛玩動物用おむつパンツ,愛玩動物用生理パンツ,愛玩動物用靴下,愛玩動物用靴,愛玩動物用下げ札,愛玩動物用装飾品,その他の愛玩動物用被服類」,第20類「愛玩動物用カーペット,愛玩動物用マット,愛玩動物用まくら,愛玩動物用クッション,愛玩動物用ベッド,愛玩動物用キャリア,犬小屋,小鳥用巣箱,家具,クッション」,第21類「愛玩動物用トイレ,愛玩動物用ブラシ及びくし,愛玩動物の排泄物処理用砂,愛玩動物の排泄物処理用シーツ,愛玩動物の糞尿処理用シート,愛玩動物用食器,愛玩動物用おり及びかご,愛玩動物用爪とぎ,愛玩動物用給水ホルダー,愛玩動物用おしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤」,第28類「愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,運動用具」及び第31類「愛玩動物用飼料」を指定商品として,平成20年3月14日に登録査定,同年4月25日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人である,ダックス シンプソン グループ パブリック リミテッド カンパニー及び三共生興株式会社(以下「請求人ら」という。)が,本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は,以下のとおりである。

1 商標法第4条第1項第7号,同第10号及び同第15号に該当するとして引用する商標は,別掲に示す態様よりなる商標,及びこれを白色で表示したもの,並びにこれらと色彩を同一にすれば同一の商標といえる複数の商標(以下,これらの商標を総称して「ロゴDAKS商標」という。),「DAKS」の欧文字よりなる商標(「ロゴDAKS商標」以外のもの。以下「DAKS商標」という。)及び「ダックス」の片仮名からなる商標(以下「ダックス商標」という。)である。

2 商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は,以下の6件であり,いずれも現に有効に存続しているものである。

(1)登録第432208号商標(以下「引用商標1」という。)は,「DAKS」の欧文字を横書きしてなり,昭和27年7月11日に登録出願,第36類(大正10年12月17日に農商務省令第36号をもって公布,同11年1月11日より施行された商標法施行規則第15条に基づく商品の類別)に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同28年9月30日に設定登録され,その後,4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ,また,指定商品については,平成16年2月12日に,第14類「カフスボタン,ネクタイピン,宝石ブローチ」,第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,ヘルメット,帽子,運動用特殊衣服,マラソン足袋,地下足袋,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「帯留,こはぜ,ボタン,衣服用ブローチ,腕止め」とする指定商品の書換登録がされ,さらに,平成25年6月11日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(2)登録第1740182号商標(以下「引用商標2」という。)は,「DAKS」の欧文字を横書きしてなり,昭和52年7月7日に登録出願,第17類(昭和35年3月8日に昭和35年政令第19号をもって改正,同年4月1日より施行された商標法施行令第1条に基づく商品の区分)に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同60年1月23日に設定登録され,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ,また,指定商品については,平成17年7月20日に,第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」,第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」,第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,頭から冠る防虫網」とする指定商品の書換登録がされたものである。

(3)登録第2050940号商標(以下「引用商標3」という。)は,「ダックス」の片仮名を横書きしてなり,昭和61年7月14日に登録出願,第17類(昭和35年3月8日に昭和35年政令第19号をもって改正,同年4月1日より施行された商標法施行令第1条に基づく商品の区分)に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同63年5月26日に設定登録され,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ,また,指定商品については,平成20年9月24日に,第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」,第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット,帽子」とする指定商品の書換登録がされたものである。

(4)登録第2706385号商標(以下「引用商標4」という。)は,「DAKS」の欧文字を横書きしてなり,平成2年3月23日に登録出願,第24類(昭和35年3月8日に昭和35年政令第19号をもって改正,同年4月1日より施行された商標法施行令第1条に基づく商品の区分)に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同7年4月28日に設定登録され,その後,同17年5月10日に商標権の存続期間の更新登録がされ,また,指定商品については,同年11月9日に,第20類「揺りかご,幼児用歩行器,マネキン人形,洋服飾り型類,スリーピングバッグ」及び第28類「ゴルフ用具,テニスラケット,その他の運動用具,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,釣り具」とする指定商品の書換登録がされたものである。

(5)登録第3049938号商標(以下「引用商標5」という。)は,「DAKS」の欧文字を横書きしてなり,平成4年4月13日に登録出願,第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん張」を指定商品として,平成7年6月30日に設定登録され,その後,同17年2月1日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(6)登録第4744143号商標(以下「引用商標6」という。)は,別掲に示すとおりの構成からなり,平成15年7月29日に登録出願,第18類「愛玩動物用首輪,愛玩動物用引き綱,愛玩動物用毛布,その他の愛玩動物用被服類,犬又は猫を運搬する為のかばん,その他のかばん類,袋物,かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」,第20類「愛玩動物用ベッド,愛玩動物用クッション,愛玩動物用マット,犬小屋,小鳥用巣箱,個人的に使用されるプラスチック製・木製又は竹製の愛玩動物の運搬に使用する籠状の容器(搬送用のものを除く。),愛玩動物用葬祭用具,その他の葬祭用具,海泡石,こはく,荷役用パレット(金属製のものを除く。),養蜂用巣箱,美容院用いす,理髪店用いす,プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く。),貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く。),輸送用コンテナ(金属製のものを除く。),カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。),クッション,座布団,まくら,マットレス,麦わらさなだ,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,ストロー,盆(金属製のものを除く。),ししゅう用枠,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。),旗ざお,うちわ,せんす,植物の茎支持具,きゃたつ及びはしご(金属製のものを除く。),郵便受け(金属製又は石製のものを除く。),帽子掛けかぎ(金属製のものを除く。),買物かご,家庭用水槽(金属製又は石製のものを除く。),ハンガーボード,工具箱(金属製のものを除く。),タオル用ディスペンサー(金属製のものを除く。),家具,屋内用ブラインド,すだれ,装飾用ビーズカーテン,つい立て,びょうぶ,ベンチ,アドバルーン,木製又はプラスチック製の立て看板,食品見本模型,人工池,揺りかご,幼児用歩行器,マネキン人形,洋服飾り型類,スリーピングバッグ,額縁,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻,きょう木,しだ,竹,竹皮,つる,とう,木皮,あし,い,おにがや,すげ,すさ,麦わら,わら,きば,鯨のひげ,甲殻,人工角,ぞうげ,角,歯,べっこう,骨,さんご」,第21類「愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,愛玩動物用おり及びかご,小鳥かご,小鳥用水盤,愛玩動物の排泄物処理用品,愛玩動物洗浄用のスポンジ,その他の清掃用具及び洗濯用具,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),デンタルフロス,ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家禽用リング,魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,家事用手袋,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,はえたたき,ねずみ取り器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,洋服ブラシ,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),お守り,おみくじ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,化粧用具,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,コッフェル,ブラシ用豚毛」及び第28類「愛玩動物用おもちゃ,スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として,平成16年1月30日に設定登録されたものである。

(以下,引用商標1ないし引用商標6をまとめて「引用商標」という場合がある。)

第3 請求人らの主張

請求人らは,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第61号証(枝番号を含む。ただし,枝番号のすべてを引用する場合は,その枝番号を省略する。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第8号,同第10号,同第11号及び同第15号に該当し,同法第46条第1項第1号により,無効にすべきものである。

2 利害関係

本件商標は,請求人ら及びその使用権者が使用する世界的に著名な商標「DAKS」に類似するものであると共に,請求人らの一人であるダックス シンプソン グループ パブリック リミテッド カンパニー(以下「請求人ダックス」という。)の著名な略称を含むものであるから,本件商標がその指定商品に使用されると,請求人ら及びその使用権者の業務に係る商品と出所の混同を生じるおそれがあり,かつ,前記世界的に著名な商標「DAKS」及びその著名商標「DAKS」の称呼「ダックス」(以下,総称して「ダックスブランド」という。)の出所表示機能が希釈化され,請求人らに経済的及び精神的な損害を与えることは明白である。

したがって,請求人らは,本件商標の登録無効審判の請求について利害関係を有するものである。

3 本件商標の登録を無効とすべき理由

(1)はじめに

請求人ダックスは,1894年に英国ロンドンにおいて開業されたテーラー「S.SIMPSON LTD.」が業務拡大され,1917年ころには,S.SIMPSON LTD.は,3000人もの職人を有する工場を持つまでに発展し,創業以来110年を越える歴史と伝統を有する世界的に著名な法人である。1934年には,ベルトレス・スタイルのスラックスを発表し,そのブランドを「DAKS」と命名し,現在に至っている。そして,請求人ダックスの商品は,伝統と信頼のあるブランドとして英国王室御用達に指名され,現在では3つの紋章を掲げることが許されている。このように,ダックスブランドは,世界を代表する高級ブランドとして定着している。

請求人らの一人である三共生興株式会社(以下「三共生興」という。)は,請求人ダックスの親会社であり,日本におけるマスターライセンシーであって,日本国内におけるサブライセンスを許諾する地位にある。三共生興は,1969年に請求人ダックスよりダックスブランドの婦人服の輸入を開始し,1971年に請求人ダックスとライセンス契約を締結し,1991年に請求人ダックスを買収して現在に至っている。

請求人らは,かかるダックスブランドのイメージを維持するために,請求人ら及びその使用権者が使用するダックスブランドを厳しく管理すると共に,ダックスブランドの商品の品質管理に多大な労力を費やしており,また,多額の費用をかけて広告等を行ってきた。その一方で,請求人らは,ダックスブランド保護のために,2005年3月31日及び2007年3月30日付けにて繊維関係の有名業界紙である「日本繊維新聞」に警告の広告を掲載し,ダックスブランド偽物製品の製造・販売排除の努力をし,また,ダックスブランドの保護強化のために各国で連携体制をとっている(甲2の1ないし4)。

(2)我が国におけるダックスブランドの著名性

ア 雑誌・新聞への広告宣伝

ダックスブランドは,雑誌・新聞に広告や紹介記事として数多く掲載され,2004年以降,約5年間の新聞・雑誌の広告及び宣伝費用は,2億6826万7945円にのぼっている。2003年以前においても,同様に広告及び宣伝活動を行っている。

(ア)記事及び広告を掲載した主な雑誌の概要は,以下のとおりである(本件商標の出願前5年間に配布されたもの)。

(A)年刊広報誌「QUALITY BRITAIN」(駐日英国大使館広報部発行,1回の発行部数1.5万部)及び季刊誌「英国特集」(スチュワード・コミュニケーションズ株式会社発行,1回の発行部数5万部)は,いずれも英国を紹介する権威ある雑誌である(甲3の1ないし甲4の2)。

(B)季刊誌

「Regina」(株式会社ALBA発行,1回の発行部数10万部),「MODEetMODE」(株式会社モートエモード社発行,1回の発行部数16万部),「T−style」(株式会社スカンヂナビア発行),「PASSiO」(株式会社スカンヂナビア発行),「CASSADY」(株式会社祥伝社発行),「SPURLUXE」(株式会社集英社発行,1回の発行部数3万部)は,年4〜6回発行され,いずれも代表的なファッション雑誌である(甲5ないし甲10)。

(C)JALグループ月刊機内誌「SKYWARD」(株式会社JALブランドコミュニケーション発行,1回の発行部数80万部),ANAグループ月刊機内誌「翼の王国」(ANAロジスティクサービス株式会社発行,1回の発行部数84万部)は,航空機内において持ち帰り可能に備えられる外,特別購読されており,幅広い多くの読者に目を通されている雑誌である(甲11の1ないし甲12の21)。

(D)月刊誌

「Men’S EX」(株式会社世界文化社発行,1回の発行部数8万5千部),「STORY」(株式会社光文社発行,1回の発行部数18万部),「家庭画報」(株式会社世界文化社発行,1回の発行部数18万部),「Precious」(株式会社小学館発行,1回の発行部数11万部),「VOGUE NIPPON」(コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパン発行,1回の発行部数5万1千部),「marisol」(株式会社集英社発行,1回の発行部数11万1千部),「OCEANS」(株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア発行,1回の発行部数8万部),「婦人画報」(株式会社アシェット婦人画報社発行,1回の発行部数11万部),「GRACE」(株式会社世界文化社発行,1回の発行部数8万1千部),「LEON」(株式会社主婦と生活社発行,1回の発行部数10万部),「ミセス」(文化出版局発行,1回の発行部数11万部),「Zino」(株式会社KI&Company発行),「メイプル」(株式会社集英社発行),「CLASSY」(株式会社光文社発行,1回の発行部数11万8千部),「Gentry」(株式会社アシェット婦人画報社発行),「VERY」(株式会社光文社発行,1回の発行部数7万7千部),「SevenSeas」(株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア発行,1回の発行部数4万部),「GOETHE」(株式会社幻冬舎発行,1回の発行部数6万部),「Nile’s NILE」(株式会社ナイルスコミュニケーションズ発行,1回の発行部数5万部),「ラピタ」(株式会社小学館発行,1回の発行部数4万4千部),「ビジネス・インテリジェンス」(インテリジェンス出版社発行),「GLAMOUROUS」(株式会社講談社発行,1回の発行部数12万1千部),(月2回発行)「Associe(eにはアクサンテギュ記号が付されている。)」(株式会社日経BP発行),「SPUR」(株式会社集英社発行,1回の発行部数7万3千部),「marie claire」(株式会社アシェット婦人画報社発行,1回の発行部数4万1千部),「ChouChou」(株式会社角川グループパブリッシング発行,1回の発行部数は7万1千部),「highfashion」(文化出版局発行,隔月発行,1回の発行部数4万部),「駱駝」(株式会社小学館発行,隔月発行,1回の発行部数4万9千部),「SymPHOny」(東京交響楽団発行),「TAKASHIMAYA」(株式会社高島屋発行),「InRed」(株式会社宝島社発行,1回の発行部数16万部),「GRACE」(株式会社世界文化社発行,1回の発行部数8万1千部)は,いずれも有名なファッション月刊誌である(甲13の1ないし甲41)。

(E)週刊誌等

「FIGARO」(株式会社阪急コミュニケーションズ発行,月2回発行,1回の発行部数9万部),「pen」(株式会社阪急コミュニケーションズ発行,月2回発行,1回の発行部数8万部),「PRESIDENT」(株式会社プレジデント社発行,隔週発行,1回の発行部数20万8千部),「サライ」(株式会社小学館発行,隔週発行,1回の発行部数12万9千部),「日経ビジネス」(株式会社日経BP発行,1回の発行部数31万7千部),「週刊ダイヤモンド」(株式会社ダイヤモンド社発行,1回の発行部数11万5千部),「週刊朝日」(株式会社朝日新聞出版発行,1回の発行部数17万9千部),「週刊文春」(株式会社文藝春秋発行,1回の発行部数52万6千部),「朝日新聞広告特集」(株式会社朝日新聞社発行),週刊朝日増刊「GOLF L&S」(株式会社朝日新聞出版発行),会報誌「茶山文化塾」(葉山文化園・塾発行),週刊情報紙「シティリビング(フジサンケイ)」(サンケイリビング新聞社発行,1回の発行部数東京19万4千部,大阪神戸12万1千部)は,いずれも数多くの幅広い読者を有する一般的な雑誌である(甲42の1ないし甲50)。

(イ)新聞への記事及び広告掲載の一部(本件商標の出願前5年間のもの)

掲載新聞には,繊維及び服飾ファッション分野の専門誌として有名な日本繊維新聞,繊維ニュース,センイ・ジャアナル,繊研新聞,日本合成繊維新聞,WWD(ウーマンズ(ウィメンズ)・ウェア・デイリー・ジャパン),メンズデイリー及び洋装ロータリー,一般紙として有名な朝日新聞,毎日新聞,讀賣新聞,産経新聞,日本経済新聞,スポーツ紙として有名なスポーツニッポン,サンケイスポーツ,日刊スポーツ,スポーツ報知及びデイリースポーツ,産業新聞として有名な日経産業新聞,日経流通新聞(日経MJ),日本工業新聞,フジサンケイビジネスアイ及び株式新聞,スポーツ用品分野の専門誌として有名な日本スポーツエ業新聞,その他,地方として熊本日日新聞である(甲51の1ないし6)。

イ 総合カタログの発行

請求人らは,毎年春夏・秋冬の2回にわたり,また,臨時に総合カタログを発行しており,その制作費用は,1億922万8828円(日本円換算)に達する。発行したカタログの一部(本件商標の出願日前5年間のもの)を提出する(甲52の1ないし12)。

ウ テレビCM放送

請求人らは,2004年10月1日〜同年10月31日の間に,全国有名百貨店において,ダックスブランド110周年記念フェアを開催すると共に,次の要領でテレビCMを放映した。

・テレビCMの出演者:アダム・クーパーとサラ・ウィルド夫妻

・放映期間:2004年9月10日〜同年10月10日

・放映地区:北海道,仙台,東京,名古屋,大阪,広島,福岡,熊本

・放映局:フジテレビ系列,TBS系列,日本テレビ系列

・放映時間:平日10時台から25時台,土日7時台から25時台

・放送本数:約1,550本

・放送費用:4億2千万円

エ 百貨店フェア

ダックスブランド110周年を迎えた2004年10月1日〜同年10月31日の間,全国の有名百貨店においてダックスブランドの110周年フェアを開催した。当該百貨店フェアに併せて,オープン懸賞を行い,応募総数は,約10万通に達した。上記「ダックスブランド110周年の百貨店フェア」に関する販売促進活動及びその後のアニバーサリー記念フェアの資料を提出する(甲53の1及び2)。

また,毎年,全国の各百貨店においてダックスブランドフェアを開催している(甲53の3)。

オ キャンペーン

請求人らは,毎年,母の日キャンペーン,父の日キャンペーン及びテディベアキャンペーン(クリスマスシーズン)を開催している。キャンペーン支出費用は,6000万円弱に達する。キャンペーンの模様を示す写真を提出する(甲54の1ないし9)。

カ ライセンスの許諾

マスターライセンスを受けた三共生興は,サブライセンス契約において,サブライセンシーに対し,ダックスブランドを付する商品のデザインや品質はもちろんのこと,下げ札やパッケージに至るまで,同人による承認を義務づけ,それ以外のダックスブランドの商品が市場に出回らないようにダックスブランドの商品のデザイン及び品質の管理を徹底している。サブライセンシー及びその許諾商品は,以下のとおりである。

・株式会社オンワード樫山(許諾商品:紳士スーツ・ジャケット・スラックス・コート・ブルゾン・フォーマルウェア・ドレスシャツ・カジュアルウェア・セーター,紳士・婦人ゴルフウェア)

・株式会社エミネント(許諾商品:紳士スラックス,紳士ゴルフスラックス)

・川辺株式会社(許諾商品:ハンカチーフ,スカーフ,婦人マフラー)

・中央帽子株式会社(許諾商品:紳士・婦人帽子,ゴルフ用帽子)

・プレリーシミズ株式会社(許諾商品:紳士・婦人ベルト,紳士スモールレザーグッズ)

・ヨークス株式会社(許諾商品:手袋)

・株式会社シャルマン(許諾商品:眼鏡フレーム)

・栄光時計株式会社(許諾商品:婦人ジュエリー)

・セーラー万年筆株式会社(許諾商品:万年筆,ステーショナリー)

・日登美株式会社(許諾商品:紳士パジャマ・ガウン・バスローブ,リラクシングウェア)

・株式会社ナイガイ(許諾商品:紳士用ビジネス・カジュアルソックス,婦人用カジュアルソックス・ストッキング)

・アングル・ミユキ株式会社(許諾商品:紳士下着)

・エース株式会社(許諾商品:紳士ラゲージ・バッグ・スモールレザーグッズ)

・株式会社クイーポ(許諾商品:婦人ラゲージ・バッグ・スモールレザーグッズ)

・ムーンバット株式会社(許諾商品:紳士・婦人用傘)

・オリエント株式会社(許諾商品:時計)

・内田ゴールド株式会社(許諾商品:メンズジュエリー)

・アラ商事株式会社(許諾商品:ネクタイ,紳士マフラー)

・荒川株式会社(許諾商品:婦人パジャマ・ガウン・バスローブ)

・マドラス株式会社(許諾商品:紳士・婦人靴)

・株式会社ヤマニ(許諾商品:ゴルフバッグ関連製品,ゴルフ用ボストンバッグ,ゴルフ用シューズケース,ヘッドカバー)

・三共生興ファッションサービス株式会社(許諾商品:婦人スーツ・コート・ブルゾン・ジャケット・スカート・ブラウス・セーター)

・三共生興リビング株式会社(許諾商品:タオル,寝装品,ハウスホールドグッズ,愛犬服,愛犬用アクセサリー)

キ 我が国におけるダックスブランド商品の販売実績

ダックスブランド商品の売上は,平成18年度において,520億円(小売上代ベース)に達し,バーバリー,ラルフローレンに次いで国内第3位の売上高を誇るに至っている。この事実を証明するため,平成20年(ネ)第971号商標権侵害差止等請求控訴事件の原審である平成19年(ワ)第4692号商標権侵害差止等請求事件において,三共生興が提出した陳述書を提出する(甲55)。

また,国内各百貨店におけるサブライセンシーの活発な営業活動により,ダックスブランド商品の販売実績は極めて顕著である。平成19年2月時点におけるダックスブランド商品の百貨店別販売先リストを提出する(甲56の1ないし7)。

以上のような積極的な販売活動及び活発な宣伝及び広告活動により,全国主要百貨店においてダックスブランドは売上額が大きく,その伸び率が高いことから,一部のブランドのみが受賞する百貨店バイヤーズ賞を受賞し,主要百貨店のベストメンズブランド・ランキングに登場しており,このような輝かしい実績により,ダックスブランドは,優秀なブランドとして高く評価されていることが明らかである(甲57の1ないし7)。

本件商標は,その指定商品の記載から,主として愛玩動物用の商品に使用される意図があるものと考えられるが,ダックスブランドは,愛玩動物用の商品にも展開されている。このことを証するため,愛玩動物用の商品が掲載されたカタログ及び掲載記事を提出する(甲58の1ないし3)。

ク 周知証明

ロゴDAKS商標が数多くの商品について取引者,需要者の間で広く知られていることを,使用許諾を受けた多数のライセンシーの証明書をもって証明する(甲59の1ないし20)。

ケ 小活

以上のように,請求人らは,上記の多額の宣伝及び広告費をかけた各種宣伝及び広告活動を通じて,世界最高水準のダックスブランドの信頼性の維持・向上に努め,現に世界的に高度の信頼を勝ち得ているものである。その結果,ダックスブランドは,世界的にはもちろん,我が国においても高級ブランドとして評価されており,その商標の社会的信用力は極めて高い。しかも,上記に述べた広告掲載その他の文書においては,各証拠に示すように,請求人ダックスの略称として,また,ロゴDAKS商標及びDAKS商標のカタカナ表記として「ダックス」が頻繁に使用されていることから,ロゴDAKS商標及びDAKS商標はもとより,請求人ダックスの略称としても広く一般に周知されていることが明らかである。

このように,かかる評価及び社会的信用力は,請求人らの長年にわたる不断の努力により得られたものである。このことは,平成19年(ワ)第4692号商標権侵害差止等請求事件の判決及びその控訴審である平成20年(ネ)第971号商標権侵害差止等請求控訴事件の判決においても認められていることである(甲60の1及び2)。その結果,社会的信用を維持するために,侵害者に謝罪文を掲載させたのである(甲60の3ないし9)。

(3)我が国におけるダックスブランドの商標登録

我が国においては,多種多様な商品について,「DAKS」の欧文字からなる商標,「ダックス」の片仮名からなる商標,及び,「DAKS」の欧文字と「ダックス」の片仮名とを2段に併記してなる商標を登録し,全て有効に権利が存続しているものである(甲61の1ないし17)。

(4)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由

前記のように,ダックスブランドは,世界的に権威のある著名なものとなっている。また,我が国においても,請求人ら及びその使用権者が使用するダックスブランドは,請求人ダックスの商号商標であると共にハウスマークとして請求人ら及びその使用権者の取り扱いに係るほぼ全ての商品の出所識別標識として継続使用されている。このように,本件商標の登録出願時には,ダックスブランドは,既に請求人ら及びその使用権者の商品を表示するものとして,我が国を含む世界的に著名な高級ブランドとなっている。

本件商標は,ダックスブランドとして周知著名な商標「ダックス」及び商標「DAKS」の称呼である「ダックス」の文字を看者の注意を最も強く引き付ける語頭部分に含み,かつ,その指定商品は,請求人ら及びその使用権者が実際に取り扱う商品と,同一又は類似の商品を多く含むものである。

以上のことから,本件商標は,ダックスブランドの世界的な名声,顧客吸引力に便乗するものであり,請求人らと全く関係のない被請求人が,本件商標を使用すれば,請求人ら及びその使用権者の著名なダックスブランドの出所表示力が希釈化され,英国発祥の世界的に権威のある著名高級ブランドの信用が失墜することが明らかである。

したがって,本件商標は,商標法の精神に反し,国際信義にも反するものであるから,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある。

よって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものである。

(5)本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当する理由

本件商標は,請求人ダックスの名称「DAKS SIMPSON GROUP PUBLIC LIMITED COMPANY」の著名な略称「ダックス」を含む商標である。すなわち,ダックスブランドは,我が国において著名な商標であることは上述したとおりである。

また,「DAKS」及び「ダックス」は,請求人ダックスの名称の略称であり,かつ,ハウスマークであって,ダックスブランドの著名性と相まって,その称呼「ダックス」と共に広く知られるに至っていることは明らかである。

一方,本件商標は,片仮名「ダックス」と平仮名「くん」とを結合してなるものであり,「ダックス」を含むことは明らかである。

したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号に違反してなされたものである。

(6)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当する理由

ダックスブランドは,本件商標の登録出願時及び査定時に請求人らの業務に係る商品を表示するものとして取引者,需要者の間で広く認識されていたことは,上述したとおりである。

本件商標は,片仮名「ダックス」と平仮名「くん」とを結合させてなる商標であり,「くん」は,愛称を表すものとして「ダックス」に付加されたものと一般に認識されるとみるのが自然である。

したがって,本件商標は,これに接した場合,「くん」が愛称と認識されるところから,人の名称からくる印象と同様の印象を受けるというべきである。

一般に,人の名称において,「Aくん」あるいは「Bくん」といった場合には,「A」及び「B」の部分に識別力があり,「くん」には識別力はなく,「Aくん」と「A」あるいは「Bくん」と「B」は,実質的には同一と認識されるのが普通である。

そうとすれば,たとえ「ダックス」が人の名称でないとしても,「ダックスくん」と「ダックス」とが同一のものを指称する言葉であるという印象を受けるものといわざるを得ず,また,「ダックスくん」という表現の方が,単に「ダックス」というよりも親しみを感じさせる表現であるとしても,このことをもって,「ダックスくん」と「ダックス」とが識別し得るに足る差異を有する理由にはなり得ないものである。しかも,本件商標の後半部の「くん」は,愛称で呼ぶときに,他の語を付してしばしば使用されることから,簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては,語頭部分の「ダックス」の部分をもって取引に資されることも少なくないものといわざるを得ず,「ダックス」に「くん」を付したとしても,本件商標の印象を支配するのは「ダックス」にあることに変わりはないものである。

以上のように,本件商標は,その後半部「くん」が識別力の弱い接尾語にすぎず,これに対し,識別力が強い語頭部分「ダックス」が,本件商標の要部であって,看者の注意を最も強く引き付け,かつ,印象に残る部分であるというべきである。

以上のことから,本件商標は,「ダックスくん」の文字全体から「ダックスクン」の称呼が生じると共に,「ダックス」の称呼をも生じ,「ダックス」を認識させるというべきである。

したがって,本件商標は,ダックスブランドと,称呼上類似するものである。

また,本件商標は,ダックスブランドが使用される商品と,同一又は類似の商品に使用されるものである。

以上により,本件商標は,請求人ら及びその使用権者の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているダックスブランドと類似の商標であって,その商品と同一又は類似の商品に使用をするものであることが明らかである。

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

(7)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由

ア 引用商標が周知著名であることについて

前記したように,請求人ダックスは,1894年に創業したテーラーを前身として創業して以来,110年を越える歴史と伝統を有し,商標「DAKS」は1934年から使用されているものであって,日本国内においては,三共生興が,請求人ダックスからマスターライセンスを受け,国内の多数有名企業にサブライセンスし,それらの国内売上高は,バーバリー,ラルフローレンに次いで国内第3位の売上げ(小売ベースで約520億円)を誇っている。

三共生興は,上記サブライセンス契約において,サブライセンシーに対し,ダックスブランドを付する商品のデザイン,品質を,下げ札やパッケージに至るまで同人による承認を義務づけ,それ以外のダックスブランドの商品が市場に出回らないようにして,ダックスブランドの商品のデザイン,品質の管理を徹底し,さらに多額の宣伝及び広告費をかけた上記各種宣伝及び広告活動を通じて,世界最高水準のダックスブランドの信頼性の維持・向上に努め,現に世界的に高度の信頼を勝ち得ているものである。このことは,平成19年(ワ)第4692号商標権侵害差止等請求事件及び平成20年(ネ)第971号商標権侵害差止等請求控訴事件の各判決においても認められていることである(甲60の1及び2)。

請求人らは,ダックスブランドを請求人ダックスの商号商標,ハウスマークとして,日本を含む世界各国において,衣料品・日用品をはじめとする同人の取り扱いに係るほぼ全ての商品の出所識別標識として継続使用している(甲52の1ないし甲54の9)。

また,請求人らは,雑誌・新聞を中心として,広告や紹介記事を掲載してきた(甲3の1ないし甲51の6)。

さらに,請求人ダックスは,日本において,多種多様な商品についてダックスブランドを登録しており,請求人らから使用許諾を受けた多数のライセンシーによって使用されていることが,取引者,需要者の間で広く知られている(甲59の1ないし20)。

このように,ダックスブランドは,本件商標の登録出願時には,既に請求人ら及びその使用権者の商品を表示するものとして,取引者・需要者間に広く認識されているものである。

イ 出所の混同の可能性

ダックスブランドである,「DAKS」の欧文字表記,「ダックス」の片仮名表記及びそれらの称呼「ダックス」が周知著名となっていること,並びに,本件商標中「くん」の文字部分は,識別力がないか極めて弱い語であることを併せ考えると,本件商標がその指定商品に使用された場合には,需要者・取引者は,該商品がダックスブランドの商品であると誤認し,請求人ら及びその使用権者の製造販売に係る商品であると誤認することは明らかである。

ウ 結論

以上のとおり,本件商標は,その指定商品に使用された場合,請求人ら及びその使用権者の業務に係る商品と混同を生じるおそれが十分に認められる。

したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。

(8)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由

ア 商標が類似することについて

本件商標は,片仮名「ダックス」と平仮名「くん」とを結合させてなる商標であり,「くん」は愛称を表すものとして「ダックス」に付加されていると認識されるものとみるのが自然である。したがって,本件商標は,これに接した場合,「くん」が愛称と認識されるところから,人の名称からくる印象と同様の印象を受けるというべきである。

そうとすれば,本件商標は,「ダックスくん」の文字全体から「ダックスクン」の称呼が生じると共に,「ダックス」の称呼をも生じ,「ダックス」を認識させるというべきである。

引用商標1ないし6は,「ダックス」の称呼を生ずることは明らかである。

したがって,本件商標は,引用商標1ないし6と,称呼において類似の商標である。

イ 商品が類似することについて

本件商標の指定商品と引用商標1ないし6の指定商品は,類似する。

ウ 結論

以上のとおり,本件商標と引用商標1ないし6とは,称呼が類似する商標であるとともに,その指定商品の一部が同一又は類似であることが明らかであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 むすび

したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第8号,同第10号,同第15号及び同第11号に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 本件商標について

(1)本件商標の構成

本件商標は,「ダックスくん」の文字よりなるところ,愛玩動物として我が国において広く知られている「ダックスフント【Dachshund】」を意味する「ダックス」と,「同輩や同輩以下の人の氏名の下に添える語」の意味を有し,しばしば人名以外の事物や物事などの語に付して愛称的に用いられる「くん」の文字を一連に結合した造語であり,全体として擬人化された一つの名称を表したものである。

ア 本件商標中の「ダックス」について

本件商標の語源である「ダックスフント」は,もっぱらアナグマ猟に用いられたドイツ原産の犬種であり,現在では,愛玩用として飼育されているイヌの一品種である(乙1の1)。「ダックスフント」は,日本最多の犬籍登録を有する一般社団法人ジャパンケネルクラブの過去10年間の犬種別犬籍登録頭数において,2005年1月から2007年12月の間,第一位を記録しており,2008年以降も現在に至るまで第三位を維持している(乙2)。また,一般財団法人ペットフード協会がおこなった「平成24年全国犬猫飼育実態調査」においても,現在飼育している犬の種類別ランキングで一位を獲得している(乙3)。この他,アニコム損害保険株式会社がペット保険「どうぶつ健保」に加入した犬を対象として統計した「人気犬種ランキング」では,2007年ランキング(2006年1月1日〜2006年12月31日のデータを集計)及び2008年ランキング(2007年1月1日〜2007年12月31日のデータを集計)で一位となり,その後,2009年から2013年の5年間連続で三位を維持している(乙4)。

かかる状況から,「ダックスフント」は,日本において,人気及び飼育犬種のトップクラスに君臨する愛玩動物であり,本件商標の出願及び査定時である2007年頃は,まさにダックスフントの人気の絶頂期であったことが把握できる。

「ダックス」の語は,「ダックスフント」を意味する語として広く一般に認識されている。たとえば,書籍の通信販売最大手amazon.co.jpでは,「ダックス」に係る題名を付した書籍が多数販売されており(乙5の1),これら書籍がいずれも「ダックスフント」の写真を表紙に掲載していることから,「ダックス」が「ダックスフント」を意味することが明らかである。

また,ダックスフントに関する情報等を掲載したウェブサイトにおいても,「ダックスフント」を「ダックス」と称する記載は,相当数見受けられる(乙5の2ないし6)。前記の書籍は,早いものでは2002年に発行されており,本件商標の出願及び査定時である2007年から2008年の時点において,「ダックス」の語は,本件商標の指定商品である愛玩動物用品の取引者及び需要者にとっては,犬の品種であることが直ちに理解されていたことが把握できる。

上記の実情より,愛玩動物用品に係る指定商品を多数含む本件商標の前半部「ダックス」は,犬の品種ダックスフントを容易に認識させることがわかる。

イ 本件商標中の「くん」について

「くん(君)」の語は,「尊敬すべき目上の人などにつけて呼ぶ語」や「同輩や同輩以下の人の氏名の下に添える語」の意味を有する(乙1の2)。 「くん」,「さま」,「殿」などの敬称が氏名の末尾に付された場合には,通常,氏名だけを指称する場合とは異なり,その人物の有する性格,経済的・社会的地位,さらには「ドクター」や「先生」などのように職業をも想起させ,人物への尊敬,親しみ,寵愛などの念を込めて使用するのが一般的である。これは,人物に付加される場合のみならず,動物等に使用した場合においても同様であり,「くん」などが付加された動物に対する愛着の意を看取することができる。

そして,愛玩動物用の商品等を取り扱う分野においては,「ネコ」や「イヌ」などに「くん」や「ちゃん」を付して擬人化させ,愛玩動物に対する愛着を漂わせた商標を使用するという慣行がある(乙6の1ないし8)。これにより,愛玩動物用品が多く含まれる本件商標にあっては,愛玩動物への寵愛や親しみの念が込められ「可愛いダックスフント」や「親愛なるダックスフント」のような意味合いを想起させる。

(2)本件商標の外観・称呼及び観念について

本件商標は,「ダックスくん」の標準文字からなるところ,その構成各文字は同じ大きさ及び書体をもって,等間隔に表されてなることから,視覚上一体的にまとまりのあるものとして看取,把握され得るものであり,その構成全体から生ずる「ダックスクン」の称呼も,6音と短い称呼であるため,よどみなく一連に称呼し得る。

そして,たとえ,本件商標の構成中の「くん」の文字が,人名に付加されたときは愛称を表すものであるとしても,同じく,その構成中の「ダックス」の文字も,前記のとおり,「ダックスフント」を意味する語として広く一般に知られているものであるから,本件商標は,いずれも一般に広く知られた「ダックス」及び「くん」の各文字を組み合わせて一連にまとまりよく表してなるものであって,該文字間には,動物への親しみの念が込められた強い関連性があるといえるため,その構成全体をもって一体不可分の一種の造語を表すものである。

したがって,本件商標からは,全体を一連として把握し,「ダックスクン」の称呼のみが生じる。

また,本件商標は,愛着のある動物や人物に付される敬称「くん」を含むことから,本件商標全体からは,可愛らしい印象を看取することができ,日本で人気を博する愛玩動物ダックスフントを容易に想起させ,「可愛いダックスフント」や「親愛なるダックスフント」程の一体となった意味合いが生じ得る。

2 請求人らの使用商標について

(1)請求人らの使用商標の著名性について

請求人らは,審判請求書において,請求人らの使用商標として「DAKS商標」,「ロゴDAKS商標」及び「ダックス商標」の3標章を掲げている。

しかるに,請求人らは,ダックスブランドの著名性を立証する書類として,被服等に関する雑誌,新聞を提出しているが(甲3ないし甲50),これらにあらわれる広告等は,ほとんどが「DAKS商標」や「ダックス商標」ではなく,「ロゴDAKS商標」に係るものである。

請求人らが発行する総合カタログ(甲52)においても,表紙に「ロゴDAKS商標」を用いているにとどまる。新聞記事(甲51),販促活動(甲53及び甲54)において散見される「DAKS商標」ないし「ダックス商標」は,「ロゴDAKS商標」製品の表記において,ローマ字ないし片仮名を用いたものにすぎず,ライセンシーによる証明書にあらわれる商標も(甲59)「DAKS SIMPSON」の1件(甲59の9)を除き,全てが「ロゴDAKS商標」に係るものである。

また,請求人らは,件外侵害事件において,請求人らの商標の著名性に係る認容判決を例示しているが(甲60),ここにおける被告販売商品は,「ロゴDAKS商標」等を使用した「英国王室御用達DAKS社リバーシブルベルト」と称するベルトであり(甲60の3ないし9),ダックス商標に係る事案ではない。

そして,請求人らのウェブサイトを見ても,サイト内にあらわれる標章は,「ロゴDAKS商標」に統一されており,請求人らは,「ロゴDAKS商標」を商品の識別標識として用いて人名の頭文字等に由来する独特のつづりからなる語としてブランドの周知を企図していることが明らかである(乙7)。

これらのことから,請求人らは,提出する書証より「ロゴDAKS商標」を使用した事実が見受けられ,造語である「DAKS」のローマ字について,請求人らに係る商標であると認識されるとしても,本件商標「ダックスくん」は,ダックスフントを想起させる片仮名「ダックス」を含むにすぎないから,請求人らの商標に関する周知著名性が,「ダックスくん」にまで及ぶことについて証明されたものではない。

(2)請求人らの使用商標の外観・称呼及び観念について

請求人らの使用商標である「DAKS商標」及び「ロゴDAKS商標」は,欧文字4文字で構成され,いずれの商標も,各文字が外観上まとまりよく一体に表されている。

なお,かかる「DAKS」の語は,イニシャル等に由来する単なる欧文字の羅列であることが請求人らのウェブサイトから確認でき(乙7),辞書に記載された成語ではなく,請求人らが案出した造語である。

また,請求人らが説明的に使用する「ダックス商標」は,前記「DAKS」の表音を示す語句と理解され,片仮名4文字が同じ大きさでまとまりよく一体に表されているため,「ダックス」の称呼が生じる。

(3)本件商標と請求人らの使用商標との比較

そこで,本件商標と請求人らの使用商標を比較すると,本件商標は,「ダックスフント」を意味する語として一般に広く知られた「ダックス」及び「くん」の各文字を組み合わせて一連にまとまりよく表してなるもので,構成文字全体をもって,一体不可分の造語を表したと認識されるものであり,その構成中の「ダックス」の文字部分のみが分離して把握,認識されることはない。

よって,本件商標からは,「ダックスクン」の称呼のみが生じ,請求人らの使用商標から生じ得る「ダックス」の称呼とは,末尾において「クン」の有無の相違があり,その構成音数及び音構成において明らかな差異があるものであるから,称呼上非類似であることは明白である。

また,外観においても,請求人らの商標「DAKS商標」及び「ロゴDAKS商標」と本件商標は,仮名と欧文字という明確な差異を有し,請求人らの商標「ダックス商標」と本件商標においても,「くん」の有無の相違があり,明らかに視別可能であるため,混同を生ずるおそれはない。

さらに,本件商標からは,「可愛いダックスフント」や「親愛なるダックスフント」程の意味合いを暗示させるが,他方,引用商標は,いかなる観念も生じさせず,両者の比較はなし得ない。

このように,「くん」で終わる本件商標の構成は,一体的でまとまりよく,外観上一目で把握できる一体不可分のものとして認識されるものであるから,請求人らの使用商標とは,出所混同を生じるおそれのない非類似の商標である。

前記を裏付ける証拠として,「くん」が付加された商標は,全体を一体不可分とする一種の造語であり,擬人化された語を想起させると判断している異議申立及び審決例を提出する(乙8及び乙9)。

(4)請求人らの主張に対する反駁

ア 商標法第4条第1項第11号該当性について

引用商標1ないし6は,「DAKS」又は「ダックス」の文字からなるところ,本件商標は,全体が一体不可分として把握され,引用商標1ないし6とは,「くん」の有無の相違があり,明らかに視別可能であるため,混同を生ずるおそれがない。

よって,本件商標と引用商標1ないし6とは,その外観,称呼及び観念のいずれからみても混同を生ずるおそれのない非類似の商標であり,本件商標の指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似するものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

イ 商標法第4条第1項第10号該当性について

請求人らの使用商標について,本件商標の指定商品における周知性を支持する証拠として提出した各書証を徴するに,本件商標の指定商品と関連の深い愛玩動物用品については,使用商品の実例が僅か数件見受けられる程度であり,本件商標の指定商品に係る取引者及び需要者において,広く知られているという事実は明確ではなく,また,本件商標と請求人らの使用商標が非類似であることは,前記のとおりであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。

ウ 商標法第4条第1項第15号該当性について

請求人らの商標の著名性を支持する証拠として提出した各書証における使用態様は,「ロゴDAKS商標」が多くみられるが,これらから,仮に「ロゴDAKS商標」に係る請求人らの使用商標の周知性を図ることができたとしても,本件商標と請求人らの使用商標が非類似であることは,前記のとおりであるから,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者及び需要者は,該商品が,請求人らと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有するものの業務に係る商品であるかのように連想,想起することはなく,その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

エ 商標法第4条第1項第8号該当性について

請求人ダックスの会社の名称の略称として著名性を支持する証拠として提出した各書証からは,請求人らの関連会社が「ロゴDAKS商標」等を被服等の商品に多く使用していることが窺えるが,請求人ダックスの会社の名称「DAKS SIMPSON GROUP COMPANY LIMITED」の略称が,「ダックス」として著名であることは明示されていない。

なお,請求人らが実施するキャンペーンやフェアに係る情報等が掲載された記事の問い合わせ先(甲11の21,甲13の6,甲13の27,甲14の4,甲15の7,甲16の2,甲21の3,甲25の1,甲28,甲29及び甲32)及び新聞への警告の広告(甲2の1)には,「ジャパンダックスシンプソン事務局」又は「JDS事務局」と記載しているが,該名称を「ダックス」と称した事実は見あたらない。

また,本件商標と請求人らの使用商標が非類似であることは,前記のとおりであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。

オ 商標法第4条第1項第7号該当性について

請求人らは,本件商標がダックスブランドの世界的な名声,顧客吸引力に便乗するものであり,請求人らの著名なダックスブランドの出所表示力が希釈化され信用が失墜すると主張している。

しかしながら,本件商標は,末尾の「くん」によって全体が一体不可分の一種の造語として認識されるものであり,本件商標中の「ダックス」部分についても,本件商標の査定時において人気絶頂の犬種であったダックスフントに由来するもので,他に準拠するものではない。

よって,本件商標は,請求人らとは何ら関係なく,請求人らの使用商標に化体した信用や名声,及び顧客吸引力に便乗し,不当な利益を得る等の目的のもとに模倣したものでないことは明らかである。

したがって,本件商標は,国際信義に反するものではなく,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれもないため,商標法第4条第1項第7号に該当しない。

(4)まとめ

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第8号,同第10号,同第11号及び同第15号のいずれにも該当しない。

第5 当審の判断

1 請求の利益について

請求人らが本件審判を請求することの利害関係については,当事者間に争いがなく,当審も請求人らが本件審判の請求人適格を有するものと判断できるので,以下,本案に入って判断する。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は,「ダックスくん」の文字を標準文字で現してなるところ,その構成中,「ダックス」の片仮名は,主な辞書類である広辞苑第六版,日本語大辞典,大辞林(第2版),イミダス2007,知恵蔵2007,現代用語の基礎知識2011には掲載されておらず,コンサイスカタカナ語辞典(第3版)において,「→ダックスフント」と記載され,「ダックスフント」の項には,「犬の一品種,ドイツ原産」と記載されている。

そして,「ダックス」の文字をインターネットで検索したところ,請求人ら以外の会社のホームページ情報が検索され(第1画面において多数表示される。),次いで,請求人らのホームページ,ダックフントについてのウィキペディア情報等が表示されるものである。

そうとすれば,「ダックス」の文字からは,必ずしも,請求人らや,犬の一種である「ダックスフント」を認識させるということはできず,むしろ,特定の意味合いを想起させないものとみるのが相当である。

次に,「くん」の文字についてみるに,該文字は,広辞苑第六版(乙1の2)によれば,「尊敬すべき目上の人などにつけて呼ぶ語。同輩や同輩以下の人の氏名の下に添える語。」の意味を有する「君」の語の読みを平仮名で表したものであって,「君」の語と同様に,事物を愛称的にいう場合や擬人化する際にも用いられ,前にある語と一体となって造語を形成するものとしてしばしば使用されるものということができる。

してみれば,本件商標は,「ダックス」と「くん」の文字のそれぞれについて,軽重を意識することなく,その構成全体をもって一体のものと把握され,「ダックスクン」の称呼のみを生ずるものであって,「ダックスくん」の文字は,特定の観念を生じさせない一種の造語といえるものであるから,特定の観念が生じないものである。

(2)引用商標について

引用商標は,前記第2のとおり,「DAKS」の欧文字又は「ダックス」の片仮名を表してなり,これらからは,「ダックス」の称呼を生ずるものであり,「DAKS」の欧文字又は「ダックス」の片仮名は,一種の造語といえるものであるから,特定の観念が生じないものである。

(3)本件商標と引用商標との類否について

本件商標と引用商標との類否について検討するに,本件商標と引用商標の外観構成は,それぞれの構成態様に照らし,外観上十分に区別し得る差異を有するものであるから,互いに相紛れるおそれはない。

そして,本件商標から生ずる「ダックスクン」の称呼と,引用商標から生ずる「ダックス」の称呼とは,語尾における「クン」の音の有無という差異に加え,構成音数が相違するものであるから,それぞれを一連に称呼するときは,全体の音感,音調が明らかに相違し,称呼上明確に区別することができるものである。

また,本件商標と引用商標からは,いずれも特定の観念が生じないものであるから,観念上,類似するとはいえないものである。

したがって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても区別することができる非類似の商標というのが相当であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 請求人らの主張及び同人が提出した甲各号証について

(1)請求人らについて

請求人ダックスは,1894年に英国ロンドンにおいて開業され,以来110年を越える歴史を有する社であり,1934年には,ベルトレス・スタイルのスラックスを発表して,そのブランドを「DAKS」と命名し,該社の取扱商品に使用して,現在に至っているものである。

また,三共生興は,請求人ダックスの親会社であり,日本におけるマスターライセンシーであって,日本国内におけるサブライセンスを許諾する地位にある。該社は,1969年に,請求人ダックスよりダックスブランドの婦人服の輸入を開始し,以降,1971年に,請求人ダックスとライセンス契約を締結し,1991年に,請求人ダックスを買収して現在に至っている。

(2)請求人らによる,使用する商標の保護管理の強化等

請求人らは,請求人らが使用する商標について,2005年3月30日付で「日本繊維新聞」に警告の広告を掲載し,日常的にも,取扱商品の偽造品排除や使用する商標保護のための管理を強化している(甲2の1ないし4)。

(3)我が国における請求人らの商標を使用した雑誌・新聞への宣伝及び広告(本件商標の出願前5年間に発行・配布されたもの。)

ア 駐日英国大使館の年間広報誌「QUALITY BRITAIN」(2006年版及び2008年版)において,ロゴDAKS商標を使用した被服類の宣伝及び広告がされている(甲3の1及び2)。

イ 以下のファッション雑誌において,ロゴDAKS商標を使用した被服類の宣伝及び広告がされている。

(ア)季刊誌

「Regina」(2007年4月25日号),「T−style」(2005年夏号),「PASSiO」(2005年冬号),「CASSADY」(2005年夏号),「SPURLUXE」(2004年11月号)(甲5,7ないし10),「MODEetMODE」(2007年夏号)(甲6,ロゴDAKS商標及びダックス商標の使用)。

(イ)月刊誌

「Men’S EX」(2003年5月ないし2007年6月号)(甲13の1ないし4,6ないし18,20ないし31),「STORY」(2003年4月号ないし2006年11月号)(甲14の1ないし8),「家庭画報」(2003年11月ないし2005年10月号)(甲15の3ないし5),「Precious」(2005年10月及び2006年3月号)(甲16の1及び3),「VOGUE NIPPON」(2006年10月及び2007年6月号)(甲17の1及び4),「婦人画報」(2006年3月号)(甲19号の1),「LEON」(2007年5月号)(甲20の2),「ミセス」(2005年11月号)(甲21の2),「Zino」(2007年6月号)(甲22),「メイプル」(2006年10月号)(甲23の3),「CLASSY」(2004年11月号,2005年6月号及び2006年6月号)(甲24),「Gentry」(2004年11月号及び2005年5月号)(甲25),「VERY」(2003年4月号)(甲26の1),「ラピタ」(2004年11月号)(甲29),「GLAMOUROUS」(2007年4月号)(甲31),「SPUR」(2006年8月号)(甲33),「marie claire」(2006年9月号)(甲34),「駱駝」(2005年6−7月号)(甲37),「SymPHOny」(2005年4月ないし6月号)(甲38),「InRed」(2005年2月号)(甲40)。

(ウ)週刊誌

「PEN」(2003年9月15日号,同年10月15日号及び2005年5月1日号)(甲42),「PRESIDENT」(2006年4月17日号)(甲43の1),「日経ビジネス」(2005年9月12日号,2006年3月13日号及び2006年10月9日号)(甲44),「週刊ダイヤモンド」(2003年9月20日号,同年10月18日号及び2004年3月13日号)(甲45の2,3及び5),「週刊文春」(2004年10月7日号)(甲46),週刊朝日増刊「GOLF L&S」(2005年7月30日号)(甲48)。

ウ 2003年8月ないし2007年3月に発行された,JALグループ月刊機内誌「SKYWARD」及びANAグループ月刊機内誌「翼の王国」(甲11の1ないし24,甲12の1ないし21)。また,甲第11号証の11においては,ロゴDAKS商標を使用した商品「ゴルフ用具」の宣伝及び広告がされている。

エ ファッション雑誌において,ロゴDAKS商標を使用した商品「バッグ」(甲14の4,6,甲24,甲33),「ベルト」(甲24の2),「傘」(甲14の6,甲24の2),「文房具類」(甲14の6,甲39)の宣伝及び広告がされている。

オ ファッション雑誌において,DAKS商標又はダックス商標を使用した,請求人らの取扱いに係る「被服類」,「バッグ」,「時計」,「文房具類」などの商品が宣伝及び広告されている。

(ア)DAKS商標の使用について

「被服類」(甲13の5,9,19,24,29ないし31,甲14の1及び9,甲17の2,甲18の1及び2,甲21の1,甲23の1及び3,甲24,甲25,甲26の2,甲28,甲29,甲31,甲33ないし甲35,甲37,甲43の1,甲44,甲45の2,甲47,甲50),「バッグ」(甲14の9,甲18の2,甲21の1,甲24,甲25の2,甲26の2,甲33),「財布」又は「時計」(甲14の9),「傘」(甲13の9,甲14の9,甲24の2),「文房具類」(甲14の9),「靴」(甲13の9,甲18の1,甲23の1),「ベルト」(甲13の9,甲18の1及び2,甲24の2,甲25の1),「眼鏡」(甲26の2)。

(イ)ダックス商標の使用について

「被服類」(甲13の3,5,8ないし31,甲14の4及び6,甲15の1,2,6及び8,甲18,甲19の2,甲21の1及び2,甲23,甲25の2,甲26の1,甲29,甲33,甲34,甲37,甲39,甲41,甲43の1,甲44,甲45の2及び5,甲47,甲50),「ベルト」(甲13の9,11,12,20及び30,甲15の2及び6,甲18の1及び2),「バッグ」(甲14の4及び6,甲15の1,2,6及び8,甲21の1,甲33,甲41,甲50),「傘」(甲13の9,甲14の6及び8,甲50),「靴」(甲13の9,甲18の1,甲23の1),「文房具類」(甲14の6,甲39)。

カ 本件商標の登録出願前の,繊維及び服飾ファッション分野の専門誌である,日本繊維新聞,繊維ニュース,センイジャアナル,繊研新聞,日本合成繊維新聞,WWD(ウーマンズ(ウィメンズ)・ウェアーデイリー・ジャパン),メンズデイリー及び洋装ロータリー,並びに一般紙である朝日新聞,毎日新聞,讀賣新聞,産経新聞及び日本経済新聞,並びにスポーツ紙であるスポーツニッポン,サンケイスポーツ,日刊スポーツ,スポーツ報知及びデイリースポーツ,並びに産業新聞である日経産業新聞,日経流通新聞(日経MJ),日本工業新聞,フジサンケイビジネスアイ及び株式新聞,並びにスポーツ用品分野の専門誌である日本スポーツ工業新聞によれば,主に「ダックス」の片仮名を,まれに,ロゴDAKS商標やDAKS商標と同一の態様よりなる表示をもって,請求人らの取扱いに係る被服類ほか,ゴルフ用具,バッグ,時計についての情報記事,百貨店や被服販売店における商品のセールの記事が掲載されている(甲51の1ないし6)。

キ 商品カタログの発行

請求人らは,商品カタログを発行しており,2003年ないし2007年の間に発行された被服類等が扱われた商品カタログの末尾頁には,請求人らの商標の使用許諾を受けていると推認し得る販売事業者の名称が日本語で表示されている(甲52の1ないし3,5ないし11)。

ク 百貨店フェアの実施

請求人らは,2004年10月1日ないし同年10月31日の間,全国の百貨店において請求人ら商品の110周年フェアを開催したこと,また,2006年においても三越百貨店において請求人ら商品のフェアが開催されたものであり,このフェアにおいては,主として被服類を中心に,傘,バッグ,スリッパなどの商品が紹介されたものである(甲53の1ないし3)。

ケ 販売キャンペーンの実施

請求人らは,2005年ないし2007年の間において,母の日キャンペーン,父の日キャンペーン及びテディベアキャンペーン(クリスマスシーズン)を開催したものであり,このキャンペーンにおいては,主として被服類を中心に,財布,バッグ,文房具,ベルトなどの商品が紹介されたものである(甲54)。

コ 請求人らの商標を使用した商品の販売実績についての陳述

請求人らが提起した,商標権侵害訴訟事件において,平成19年7月時点において,請求人らの商標を使用した商品の小売りベースでのわが国における売上げが520億円であり,バーバリー,ラルフローレンに次いで,我が国で第3位の売上高である旨の陳述書を提出している(甲55)。

サ 主要百貨店との取引

平成19年2月時点において,全国の百貨店(その支店を含む。)内における,300を超える販売先との取引があり,請求人らの商標を使用した商品が売上高の上位を占め,2005年の百貨店レディースバイヤーズ賞を,及び2006年の百貨店メンズバイヤーズ賞を受賞したものである(甲56及び甲57)。

シ 愛玩動物用品の取り扱い

請求人らは,愛玩動物用の商品を取り扱っている(甲58)。

ス 黒色で表されたロゴDAKS商標についての証明

黒色で表されたロゴDAKS商標について,許諾を受けた会社の代表取締役,役員ないし担当者により,同商標が,被許諾会社が製造・販売する商品について継続して使用した結果,2007年7月以前に,取引者及び需要者の間において周知・著名になっていることが証明されている(甲59の1ないし8,10ないし20)。

なお,各証明について,甲第59号証の5ないし7,同号証の9ないし20の各商品については,被服類以外に係るものである。

4 請求人らが使用する商標の周知・著名性について

(1)ロゴDAKS商標及びDAKS商標について

前記3(3)アないしサ及びスを総合して検討すれば,ロゴDAKS商標は,長年にわたり,請求人らの業務に係る商品「被服類」について使用され,宣伝及び広告された結果,本件商標の登録出願時において,取引者・需要者の間において広く認識され,著名性を獲得しており,それが本件商標の登録査定時においても継続していたと認められる。

そして,請求人らは,ロゴDAKS商標を使用して,「バッグ」,「財布」,「時計」,「傘」,「文房具類」,「靴」,「ベルト」等の商品についても長年販売しているものであるから,ロゴDAKS商標は,これらの商品についても,取引者・需要者の間において,請求人らの業務に係る商品であることが,相当程度知られているものと認められる。

また,請求人らは,DAKS商標を,商品「被服類」,「バッグ」,「財布」,「靴」,「ベルト」等について使用していたといえるものであり,ロゴDAKS商標と同様に,DAKS商標は,これらの商品について,取引者・需要者の間において,請求人らの業務に係る商品であることが,相当程度知られているものということができる。

上記実情からすれば,ロゴDAKS商標及びDAKS商標である「DAKS」の欧文字は,請求人らの業務に係る商品,又は,請求人ダックスの略称を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,我が国において広く知られていたものと認められる。

(2)ダックス商標について

前記(1)のとおり,「DAKS」の欧文字は,請求人らの業務に係る商品,又は,請求人ダックスの略称を表すものとして,我が国において広く知られていること,前記3イ(ア)の甲6及びオ(イ)のとおり,「ダックス」の片仮名は,ロゴDAKS商標又はDAKS商標とともに請求人らの業務に係る商品を示すものとして使用されていること,及び,クないしサのように,請求人らの業務に係る商品について,百貨店フェア又は販売キャンペーンが実施されていること,主要百貨店との取引の実情及び我が国における販売実績等を総合すれば,ダックス商標についても,我が国において相当程度知られているものということができる。

5 商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について

「ダックス」の片仮名は,前記4(2)のとおり,請求人らの業務に係る商品,又は,請求人ダックスの略称の読みを表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,我が国において相当程度知られていたものと認められる。

しかしながら,本件商標は,外観上一体のものとして把握されるものであって,かつ,前記2で述べたとおり,ロゴDAKS商標,DAKS商標及びダックス商標とは,十分に区別し得る別異の商標と認められるものである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。

また,「ダックス」の片仮名が,請求人らの業務に係る商品,又は,請求人ダックスの略称の読みを表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において相当程度知られているとしても,本件商標と,ロゴDAKS商標,DAKS商標及びダックス商標とは,十分に区別し得る別異の商標というのが相当であるから,本件商標の商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても,これに接する取引者,需要者が,請求人ら又は請求人らと何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

6 商標法第4条第1項第7号該当性について

「ダックス」の片仮名は,本件商標の登録出願時において,請求人らの業務に係る商品を表示する商標,又は,請求人ダックスの略称の読みを表すものとして,我が国の需要者の間に相当程度知られていたとしても,請求人ら提出の証拠によっては,本件商標の商標権者が本件商標をその指定商品について使用することが,請求人らの使用商標の世界的な名声及び顧客吸引力に便乗するものであり,請求人らの著名商標の出所表示力が希釈化され,商標法の精神及び国際信義に反し,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとすべき具体的事実を,見いだすことができない。

また,本件商標は,「ダックスくん」の文字を表してなるものであるから,その構成自体において公序良俗違反に該当するものでないことは明らかである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。

7 商標法第4条第1項第8号該当性について

商標法第4条第1項第8号の「著名な略称を含む」について,「他人の氏名や略称等を『含む』商標に該当するかどうかを判断するに当たっては,単に物理的に『含む』状態をもって足りるとするのではなく,その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである。」(知財高裁 平成20年(行ケ)第10074号判決)とされているところ,本件商標は,「ダックスくん」の文字を標準文字で現してなり,外観上一体のものとして把握されるものとみるのが自然であって,構成全体として,一種の造語と理解されるものであるから,特定の観念は生じないものである。

そうとすれば,同書,同大,等間隔でまとまりよく表された本件商標に係る構成においては,「ダックス」部分のみが独立して認識されるとはいい得ず,これに接する者に請求人ダックスを想起・連想させるものということができない。

したがって,「ダックス」の片仮名が,本件商標の登録出願時において,請求人ダックスの略称の読みを表すものとして知られているとしても,本件商標は,「他人の氏名若しくは・・・これらの著名な略称を含む商標」には当たらないというべきである。

確かに,甲各号証(特に甲第51号証)によれば,「ダックス」の文字が,新聞記事中に,被服類との関係で多数使用されていることが認められる。

しかしながら,上記判決に照らせば,提出された証拠からは,「ダックス」の文字が,請求人ダックスの略称を示すものとして使用されているかは判然としないものであるから,請求人ダックスの略称を指すものとして一般に受け入れられていると認めることができない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。

8 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第8号,同第10号,同第11号及び同第15号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項により,無効とすることができない。

よって,結論のとおり審決する。

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