結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2013−890002(T2013−890002/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
登録第5513696号商標(以下「本件商標」という。)は、「証券情報HERMES」の文字を標準文字で表してなり、平成24年2月15日に登録出願、第42類「コンピュータによる情報処理,コンピュータによる情報処理に関する指導・助言・情報の提供,コンピュータによる情報処理に関するコンサルティング,オンライン又はオフラインによる情報処理,電子商取引又は電子計算機を用いた情報処理システムのための電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守並びにこれらに関する助言・指導」を指定役務として、同年7月30日に登録査定、同年8月10日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、当初、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出したが、その後、当審においてした審尋に応じて、その理由を補足し、証拠方法として、新たに甲第3号証ないし甲第39号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第15号、同項第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(1)エルメス標章の著名性
ア 請求人は、1837年にフランスにてティエリ・エルメスにより創業され、バッグ、高級婦人服、アクセサリー等で知られる高級かつ著名なブランドである。1956年には、モナコ王妃である故グレース・ケリーが愛用していた請求人のバッグを持った姿が世界的写真誌「LIFE」の表紙を飾り、「ケリー・バッグ」として世界的に有名になった。また、1984年には、フランスの女優であるジェーン・バーキンが愛用したことで知られる「バーキン」を発表し、それ以降、バーキンは、絶大な支持を誇っている(甲第3号証)。
イ 日本においては、請求人の商品は戦前から知られていたが、特に1970年(昭和45年)代には、その最高の品質の商品故に人気を博し、請求人の日本子会社であるエルメス・ジャポン株式会社が設立され、積極的な販売活動がなされたこともあり、不動の名声を獲得するに至った。現在、債権者(審決注:「請求人」の誤記と思われる。)は、直営店及び特約店を合わせて、全国に46店舗を有する(甲第4号証)。
ウ 請求人のブランドである「エルメス」商品は、現在、日本で極めて高い人気を誇り、エルメス商品のみを特集した女性誌や、「エルメスのすべて」を特集した女性誌すら存在する(甲第3号証、甲第5号証)。また、エルメス商品ないしエルメス店舗、エルメスブランドは、その著名性、話題性故に、女性向け雑誌、男性向け雑誌を問わず頻繁に特集されており、その頻度は月に約20冊以上にも及ぶ(なお、甲第5号証ないし甲第36号証の広告宣伝資料は、近年の掲載雑誌のごく一部である。)。その中で、エルメスは、「時を超えて人々を魅了し続けるエルメス」(甲第3号証の4頁)、「その美しさの普遍性」(甲第32号証)などと表現され、その商品や店舗が「エルメス」、「HERMES」(5文字目の「E」には、アクサン記号が付されている。以下、請求人の標章に係る記載内容において、同じ。)の各標章とともにカラー写真で紹介されている。
さらに、上記エルメスの代表的な商品である「バーキン」、「ケリー」は、その広告宣伝の量及び売上高の多さから、その名称のみならず、その形状ですら特別顕著性を有するとして商標登録が認められた(甲第37号証、甲第38号証)。
エ 以上のとおり、「Hermes」(5文字目の「e」には、アクサン記号が付されている。以下、請求人の標章に係る記載内容において、同じ。)、「HERMES」及び「エルメス」は、日本において、遅くとも昭和40年代には、請求人の商品又は営業を示す表示として、周知の域を超え、極めて著名となっていたことは明らかである。
なお、特許庁においても、「エルメス/HERMES」は、周知、著名な登録商標であるとされている(甲第39号証)。
(2)商標法第4条第1項第8号該当性
ア 請求人の「Hermes」、「HERMES」及び「エルメス」の各標章は、上記(1)のとおり、皮革製品、衣料品、時計、宝飾品その他の主にファッション関連商品の商標であるだけでなく、請求人の名称の略称として永年使用され、日本のみならず、世界的に著名である。
イ 他方、本件商標は、「証券情報HERMES」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、被請求人は、岡三証券株式会社のグループ会社であり、そのシステム構築、運用を行う会社である(甲第1号証)。このため、本件商標の指定役務は、コンピュータによる情報処理に関する指導・助言・情報の提供等であるところ、これらに証券に関する情報が含まれることは容易に想定される。
また、本件商標は、その構成全体として、熟語的意味合いを生ずるものではなく、不可分一体のものとして把握されるものでないことは明らかである。そして、「証券情報」は証券に関する情報を意味する日本語の普通名詞である一方、「HERMES」は著名であることから、本件商標がその指定役務に使用された場合、一般の取引者、需要者は、「証券情報」を役務の種類を表す普通名詞、「HERMES」を当該役務に係るブランド名と認識するのが通常であって、「証券情報」の文字部分と「HERMES」の文字部分とを分離して把握,認識し、称呼する可能性が極めて高い。
さらに、「証券情報」は、証券に関する情報を意味する普通名詞であるにすぎないことから、特段、取引者、需要者の注意を惹くものではない一方、「HERMES」は、上記アのとおり、請求人の極めて著名な名称であり、かつ、既成語ではないことから、その自他識別力は非常に強い。
したがって、本件商標は、外観上、「HERMES」の文字部分のみが独立して想起されるものであり、かつ、称呼としては、「HERMES」の文字のみに相応する「エルメス」との称呼が生じる。
ウ 「HERMES」及び「エルメス」は、上記アのとおり、皮革製品、衣料品、時計、宝飾品その他の主にファッション関連商品に永年使用されてきたものであるが、これらは、商品を示す商標であるだけでなく、極めて著名なハウスマークであるから、本件商標の指定役務であるコンピュータによる情報処理等との関係を過度に要求すべきではない。
もちろん、請求人の「HERMES」は、極めて著名なハウスマークであることから、ファッション関連商品の需要者のみならず、本件商標の指定役務であるコンピュータによる情報処理等の需要者の間においても等しく著名であるといい得るものであり、また、請求人自身もウェブサイト(http://www.hermes.com)を有し、オンラインブティックによる商品販売も行っているので、「HERMES」及び「エルメス」の標章もコンピュータによる情報処理と無縁ではないということができる。
エ 以上のとおり、本件商標は、取引者、需要者に対して「HERMES」の文字部分のみを想起させるところ、請求人の著名な略称である「HERMES」をそのまま含むものであって、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 商標法第4条第1項第15号の「混同のおそれ」のある商標には、当該著名商標の使用者との間に、親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係が存在すると誤信させるおそれ(いわゆる広義の混同を生ずるおそれ)がある商標を含み、「混同を生ずるおそれ」の有無は、(イ)その他人の標章の周知度、(ロ)その他人の標章が創造標章であるか、(ハ)その他人の標章がハウスマークであるかどうか、(ニ)企業における多角経営の可能性、(ホ)商品間、役務間又は商品と役務との間の関連性を総合的に考慮して判断される。
イ 本件商標は、上述のとおり、取引者、需要者に対して「HERMES」の文字部分を独立して想起させるものであり、また、「HERMES」は、請求人の商品を示す商標であるだけでなく、請求人の極めて著名なハウスマークであり、さらに、「HERMES」は、日本語において何ら意味をもたない創造標章であって、その識別力は極めて強い。
加えて、請求人は、いわゆる伝統的なファッション分野だけでなく、1980年代のテーブルウェアの分野への進出を始め、ファブリック、壁紙、家具の分野に進出する(甲第3号証)など、業務の多角化を進めているところであり、その販売方法についても、従前の店舗販売のみならず、自社ウェブサイトを保有することにより、オンラインブティックによる商品販売を併せて行っている。
してみれば、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が「HERMES」に着目し、請求人の「HERMES」を想起、連想し、極めて著名な「HERMES」とブランドを同じくする本件商標の指定役務が請求人と何らかの営業上又は資本上の関係がある者の業務に係る役務ではないかと混同するおそれは極めて高いといわざるを得ない。そして、請求人がほかの会社と資本関係をもつことにより、情報処理分野に進出することは困難なことではない(株式を取得すれば足りる。)。
なお、無効2006−89179の審決(甲第2号証)は、「Hermes」の文字を構成中に含む商標であって、その指定商品を半導体製造装置等とする商標登録について、該文字部分が独立して看者の注意を強く惹くとし、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとして、その商標登録を無効とする旨判断した。
ウ 特許庁の審査基準によれば、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの(中略)を含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする」と定めているところ、「HERMES」が著名な商標であることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当すると推認されることとなる。
エ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性
「HERMES」及び「エルメス」は、上述のとおり、日本だけでなく、世界的に著名な請求人の商標である。
また、本件商標が、かかる「HERMES」の語をそのまま含んでおり、これに接した需要者が「HERMES」を想起する可能性が極めて高いことは、上記(2)イにおいて述べたとおりである。
そして、本件商標が請求人の著名な「HERMES」と出所の混同のおそれ(広義の混同のおそれ)があることは、上記(3)のとおりであるところ、このような「HERMES」は創造標章であるから、これが他者により偶然採択されるということはあり得ず、また、日本に所在する被請求人が「HERMES」を知らないということも、経験則上、あり得ないから、不正の目的が推認される。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
被請求人は、本件審判の請求書の副本送達に対して答弁するところがなかったが、当審において、被請求人に対し、請求人が補足した本件審判に係る無効原因及び証拠方法を送付し、意見を求めたところ、要旨以下の内容の意見書及び乙第1号証ないし乙第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
したがって、請求人の主張は、妥当性を欠く。
しかしながら、「HERMES」は、上述のとおり、「情報の神」として周知であって、証券業界においては、請求人以外の者により、頻繁に使用されている(乙第2号証ないし乙第12号証)。
してみれば、「HERMES」が直ちに請求人を想像させるものとはいえず、よって、請求人の主張が妥当性を欠くものであることは、明白である。
そうとすると、本件商標は、その構成中の「HERMES」の文字部分が取引者、需要者の注意をより強く惹くといえるものであり、また、該文字部分をもって、請求人の業務に係る商品を表示する商標ないし同人のハウスマークを連想、想起する場合も決して少なくないとみるのが相当である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ないから、その他の無効事由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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