sokuhyo

Trademark Appeal Case

称呼類似性とIDの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2013−900348(T2013−900348/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5599330号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5599330号商標(以下「本件商標」という。)は、「SaPID」の欧文字(標準文字による。)からなり、平成24年11月9日に登録出願され、第35類「経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,印刷物の貸与」及び第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守,電子計算機・自動車その他用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として、同25年6月6日に登録査定、同年7月19日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する登録商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第4669881号商標(以下「引用商標」という。)は、「SAP」の欧文字を横書きしてなり、1999年8月3日にドイツ連邦共和国においてした商標の登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成12年1月19日に登録出願され、第9類「電子計算機用プログラムを記録させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の磁気記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品」、第16類「データ処理プログラムその他のコンピュータソフトウエア用のカタログ・操作説明書・実行マニュアルその他のマニュアル,その他の印刷物」、第41類「コンピュータプログラム及びソフトウェアの作成・設計・開発・使用・応用に関する知識の教授,電子データ処理に関する知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授」及び第42類「金融及び制御管理・生産及び資材管理・品質管理及びプラントの保守・販売及び流通管理・人的資源及びプロジェクト管理・一般事務用(ワードプロセッシング・電子メール・公文書管理等)などの内部目的の範囲で使用する電子計算機プログラムの作成・設計及び開発,その他の電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータプログラム及びソフトウェアの貸与又は最新化,電子計算機プログラムの作成・設計・開発に関する指導及び助言,コンピュータプログラム及びソフトウェアに関する調査,インターネットを利用したコンピュータプログラム及びソフトウェアの開発・設計・作成・変更・保守に関する情報の提供,インターネットを利用したコンピュータプログラム及びソフトウェアの貸与に関する情報の提供」を指定商品及び指定役務として、同15年5月9日に設定登録されたものであり、その後、同25年3月12日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第8号に該当するから、同法第43条の2及び同法第43条の3第2項により、その登録が取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。

1 引用商標の周知著名性

申立人は、ドイツ中西部にあるヴァルドルフに本社を置くヨーロッパで最大級のソフトウェア会社であり、引用商標は、申立人の著名な略称として広く知れ渡っている。日本においても、日本法人であるSAPジャパンが1992年に設立され、従業員は1,000人以上である。

また、申立人は、その製品であるコンピュータソフトウエアのトレーニングも行っており、「知識の教授」との関連でも周知著名であるということができる。

2 商標法第4条第1項第11号

本件商標は、その構成全体から「サップアイディー」の称呼が生じるが、該称呼は、7音からなる冗長なものである。しかも、本件商標の欧文字「ID」の部分は、英語の「identification」の略語として周知なものであり、例えば、身分証明用のカードのことを「IDカード」と呼ぶことは、広く行われている。また、電子計算機及び電子計算機用プログラムに関連しても、「ID」は、「IDアドレス」(識別アドレス)ないしは「IDアルゴリズム」(同定アルゴリズム)といった用語に見られるように、広く用いられている。

したがって、本件商標の構成中の「ID」の欧文字部分は、引用商標の指定商品及び指定役務と抵触する本件商標の指定役務中の第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」(類似群41A01)、第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」(類似群42P02)及び第42類「電子計算機の貸与」(類似群42X11)との関係で識別力が弱いものである。

この点は、類似群41A01をカバーする商標登録において、語尾に本件商標と同様に「ID」の欧文字を有するものが70以上も併存しており、さらに、類似群42X11をカバーする商標登録において、語尾に本件商標と同様に「ID」の欧文字を有するものが140以上も併存していることからも明らかである。

さらに、引用商標は、上記のように、電子計算機用プログラム、該プログラムの設計・作成又は保守等の役務、知識の教授の役務との関係で周知著名なものである。

してみれば、本件商標は、その構成中の欧文字「SaP」の部分が要部を構成し、その構成全体から生じる称呼とは別個に、該欧文字部分から「サップ」の称呼を生じるから、本件商標と引用商標とは、称呼において類似するものといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、引用商標と類似するものであり、商標法第4条第1項第11号に該当する。

3 商標法第4条第1項第8号

引用商標は、申立人の著名な略称であり、本件商標は、その要部に申立人の著名な略称を含むものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

4 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第8号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。

第4 当審の判断

申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第8号に違反して登録されたものであると主張しているので、以下、検討する。

1 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、前記第1のとおり、標準文字をもって「SaPID」の文字を表してなるところ、該欧文字は、その構成全体が欧文字の5文字を同間隔で表す簡潔な文字構成からなり、まとまりよく一連に表してなるものであるから、外観上、その構成中の特定の文字部分が強く印象づけられる、あるいは、捨象されるとみるべき態様ということはできず、その構成全体をもって一体的に看取、把握されるものというべきである。しかも、本件商標の構成全体から生ずる「サピッド」の称呼も、3音節という簡潔なものであり、よどみなく一気一連に称呼し得るものである。

この点について、申立人は、本件商標の構成中の「ID」の欧文字は、英語の「identification」の略語として周知なものであり、例えば、身分証明用のカードのことを「IDカード」と呼ぶことは広く行われており、また、電子計算機及び電子計算機用プログラムに関連しても、「ID」の文字は、「IDアドレス」(識別アドレス)ないしは「IDアルゴリズム」(同定アルゴリズム)といった用語に見られるように、広く用いられているから、本件商標の構成中の「ID」の文字部分は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似の関係にある第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」、第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」及び第42類「電子計算機の貸与」との関係においては、識別力が弱い旨主張している。

しかし、本件商標は、上記したように、外観においてまとまりよく一連に表してなるものであって、その構成中の特定の文字部分が強く印象づけられ、あるいは、捨象されるとみるべき態様ということはできないものであるから、かかる構成態様からなる本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「ID」の文字部分だけを殊更に分離して、把握し、これを識別機能が弱い部分とみて、その前に位置する「SaP」の文字部分のみを本件商標の要部として取引に資するとは考え難いというべきである。

そうとすれば、本件商標は、その構成全体をもって、一体的に看取、把握されるものというべきものであり、これから「サピッド」の一連の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語として認識されるものといえる。

他方、引用商標は、前記第2のとおり、「SAP」の文字からなるものであり、その構成文字に相応して「エスエイピイ」又は「サップ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語として認識されるものといえる。

そこで、本件商標と引用商標との類否を比較するに、外観については、両商標は、「ID」の欧文字の有無などの大きな差異があり、明らかに区別し得るものである。

また、称呼については、本件商標から生ずるのは「サピッド」の称呼であるのに対し、引用商標から生ずるのは「サップ」又は「エスエイピイ」の称呼であるところ、これら称呼は、いずれの比較においても、明らかに異なるものであり、相紛れるおそれがないものである。

さらに、観念については、両商標は、いずれも特定の観念が生じない造語として認識されるものであるから、相紛れるおそれがあるということができないものである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、類似する商標ということはできないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

2 商標法第4条第1項第8号について

申立人は、自身について「ドイツ中西部にあるヴァルドルフに本社を置くヨーロッパで最大級のソフトウェア会社」であり、「引用商標は、申立人の著名な略称として広く知れ渡っている」とした上で、本件商標は、その要部として、申立人の著名な略称を含むものである旨主張している。

しかし、申立人は、その略称の著名性を示す証拠を何ら提出していない。

また、職権をもって調査するも、申立人がヨーロッパにおけるコンピュータソフトウェアの大手企業であるとしても、引用商標を構成する「SAP」の文字が、我が国において、申立人を指し示す略称として一般に著名となっている事実までは、把握することができなかった。

さらに、商標法第4条第1項第8号が、他人の氏名や著名な略称等を含む商標について、その他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人の氏名等に対する人格的利益を保護することにあるところ、商標中に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起、連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられるから、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである(平成21年(行ケ)第10074号 知的財産高等裁判所平成21年10月20日判決言渡、平成24年(行ケ)第10190号 知的財産高等裁判所平成24年1月30日判決言渡)。

この点、本件商標は、上記1で述べたとおり、まとまりよく一連に表してなるものであって、その構成全体をもって一体不可分のものとして看取、把握されるものであるから、殊更に、申立人の略称として「SaP」の文字を含むものとして把握され、当該他人を想起・連想させるとはいい難いものである。

してみれば、本件商標は、たとえ、その構成中に物理的には「SaP」の文字が存在するものであっても、当該文字を申立人の略称として著名であるとはいうことができないのであり、しかも、申立人の略称を「含む」商標ということもできないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。

3 まとめ

本件商標の登録は、以上のとおり、商標法第4条第1項第11号及び同項第8号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。