Trademark Appeal Case
周知商標の混同・希釈化
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900349(T2013−900349/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5599557号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成25年2月5日に登録出願され、第44類「美容」を指定役務として、同年6月11日に登録査定され、同年7月19日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第830931号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、2004年2月2日Franceにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して2004年(平成16年)7月9日に国際登録され、第3類「Soaps, perfumery, essential oils, cosmetics, make-up and make-up removing products, make-up, lipstick, powders, hair lotions, shampoos, beauty creams, face and body creams and lotions, toiletry preparations, colorant and bleaching products for the hair, hair dyes, depilatory wax, cosmetic products for slimming, cosmetic suntan preparations, deodorants for personal use, dentifrices.」及び第44類「Hairdressing salons and massage salons, beauty salons, manicure services, pedicure.」を指定商品及び指定役務として平成17年5月13日に設定登録されたものである。
同じく登録第4036276号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成6年5月20日に登録出願、第42類「美容,理容,入浴施設の提供,医薬品又は化粧品の試験、検査又は研究,健康診断,栄養の指導,衣服の貸与」を指定役務として平成9年8月1日に設定登録され、その後、平成19年7月3日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
上記引用商標1及び2は、いずれも現に有効に存続しているものであり、以下、これらをまとめて、単に「引用商標」ということがある。
第3 登録異議申立ての理由の要点
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当する旨主張し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するものであり、引用商標に係る指定役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、申立人の業務に係る役務「美容」を表示する商標として需要者の間に広く認識されている引用商標と類似する商標であり、その役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号、同項第19号及び同項第7号について
(1)引用商標は、周知・著名であり、かつ、申立人のハウスマークであること、申立人は、世界40か国に700店舗を展開し、ヘアケア用・スキンケア用・メイクアップ用化粧品、化粧用はけ、香水等の商品も取扱い、多角経営の可能性があること、「JD」は、「DESSANGE」グループの創設者として著名なJacques DESSANGEのイニシャルであること、本件商標は著名な「JD」を強調するように構成されていることなどからすると、本件商標は、申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と誤認、混同するおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)引用商標は全国的に知られており、これと類似する本件商標は、たとえ出所の混同のおそれまではないとしても、引用商標の出所表示機能を希釈化させたり、その名声等を毀損させたり、また、申立人が永年築き上げた信用にフリーライドする不正の目的によるものと推認される。それは、本件商標が「DESSANGE」グループの創設者として世界的に著名な「Jacques DESSANGE」氏のイニシャルの「JD」を強調するように表示し、「DESSANGE」の開業の地であり、本店の所在地でもある「PARIS」の文字を付加していることからも推認される。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)本件商標は、日本国内において、その名称又は略称の「JD」で著名となっている外国の人物「Jacques DESSANGE」又は有名なサロンを展開する「DESSANGE INTERNATIONAL」とは無関係な者が商標権者となっているものであり、その名声をせん用して不正の利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもって設定登録を受けたものと認められ、商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして公序良俗を害するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、やや図案化されているとしても「Atelier」、「JD」及び「PARIS」の各文字を表したものとして看取されるものといえる。
ところで、本件商標について、それを構成する「Atelier」、「JD」及び「PARIS」の各文字を個別にみると、「Atelier」の文字は「デザイナーなどの仕事部屋。工房」等の意味を有する仏語(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であり、「JD」の文字は商品・役務の規格、品番を表すものとして類型的に使用されている欧文字2字であり、また「PARIS」の文字は、フランスの首都として、世界的な芸術・産業の中心地である地名であって、いずれも、その文字単独では、識別力がないか、極めて弱い語といえるものであるから、本件商標は、それを構成する語一つだけに看者の注意がひかれ、その語をもって取引に資されるとは考え難いものといえる。
そして、本件商標の外観をみるに、その構成中の語尾に位置する「PARIS」の文字が、普通の書体をもって小さく表されているのに対し、その前に位置する「Atelier」及び「JD」の文字は、やや図案化した書体で、大きく顕著に表されているものといえる。
そうすると、本件商標は、全体として「アトリエジェイディーパリス」の称呼を生ずるほか、その構成中、大きく顕著に表された「AtelierJD」の文字部分に相応して「アトリエジェイディー」の称呼をも生ずるものであり、特定の観念を生じないものといえる。
イ 他方、引用商標は、別掲(2)及び(3)のとおりの構成からなるところ、仮に、いずれも「J」及び「D」の文字に由来するものであるとしても、もはや「J」及び「D」の文字を連想、想起し得ないほどに著しく図案化されており、一見して直ちに何を表したものか判別し難いものであるから、全体をもって一種の幾何図形として認識し、把握されるというべきものである。
そうすると、引用商標は、いずれも特定の称呼及び観念は生じないものといわなければならない。
ウ そこで、本件商標と引用商標とを対比するに、両者は、それぞれの構成上記のとおりであるから、外観上、判然と区別し得る差異を有するものである。
また、引用商標は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものである以上、本件商標と称呼及び観念において、相紛れるおそれがあるということもできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
なお、申立人は、本件商標は、「JD」の文字部分に着目して取引に資されるものであり、該「JD」の文字部分と引用商標とは、「J」及び「D」の文字の組合せからなる点において共通し、全体のシルエットが類似する旨、さらに、本件商標と引用商標からは、いずれも「ジェイディー」の称呼及び「JD」の観念が生じ、両商標が類似する旨主張するが、本件商標と引用商標の外観、称呼及び観念は、前示のとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。
(2)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似しないものであるから、その指定役務が引用商標の指定役務と同一又は類似のものであるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用商標の周知・著名性
申立人は、引用商標は、いずれも申立人の業務に係る役務を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されている旨主張し、甲号証を提出している。
そこで検討するに、申立人提出の証拠によれば、申立人の創業者Jacques DESSANGEが1954年にヘアサロン「DESSANGE」を開業したこと(甲4)、日本貿易振興機構(ジェトロ)による「フランスにおけるサービス産業基礎調査」(2011年3月)に申立人が「Dessange」として紹介されていること(甲5)、日本国内における申立人のフランチャイズ店の各ホームページには、「DESSANGE PARIS」(「PARIS」の文字は「DESSANGE」の文字の6分の1程の大きさで付記されている。以下同じ。)又は「デサンジュ・パリ」として各店舗の説明がされていること(甲6ないし甲11)、「インド新聞」と題するウェブページには「仏大手美容院チェーン、デサンジュ・インターナショナルは、今後4年間でインド国内に・・・店舗を20−25店開業する。」、「デサンジュは1954年の創業。世界40か国で2,000店を展開しており、売上高は7億ユーロ(約538億ルピー)に上る。」等の記載がみられること(甲12)、「八代市のカラーならRetreat」と題するウェブページには、「フレンチカットって何ですか?」の見出し下に、「デサンジュカットとは、頭の丸みを活かしカットパネルを縦に取り分けてカットしていく、いわゆる”縦切りカット”で、ジャック デサンジュ氏が考案、・・・」等の記載がみられること(甲13)、「iTunesプレビュー」と題するウェブページには、「DSSANGE」として引用商標1とともにフランス語による説明が付されていること(甲14)、申立人のホームページ内の商品について説明するページには、冒頭に「DESSANGE PARIS」の文字が表示され、ヘアケア用等の化粧品、ヘアブラシ、ヘアドライヤー等の申立人の取扱いに係る商品について説明がされていること(甲15ないし甲20)などが認められる。
しかしながら、上記証拠には、引用商標は、ほとんど掲載されておらず、甲第6号証、甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証及び甲第14号証に散見されるにとどまる。しかも、引用商標が単独で表示されているものは、甲第6号証中の写真の一部に引用商標1が見られるのみで、他は、引用商標1又は2が「DESSANGE PARIS」の文字等とともに表示されているにすぎない。加えて、引用商標が「ジェイディー」と称呼されるものとして記載・説明したものは一切見当たらない。
なお、甲第14号証中に表示された引用商標1は、iPhone/iPadアプリケーションのアイコンに関するものであって、申立人の業務に係る役務等と直接関係するものではない。
その他、引用商標が「ジェイディー」の称呼とともに周知、著名となっていることを具体的に示す証拠の提出はない。
そうすると、申立人の提出に係る甲号証によっては、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時に取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは到底認めることができない。また、引用商標がいずれも「ジェイディー」と称呼されるものとして知られていると認めることもできない。
他に、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めるに足る証拠はない。
(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とが非類似の商標であることは、上記1(1)のとおりである。
(3)小括
以上のとおり、引用商標は、取引者、需要者の間に広く認識されているということはできないものであり、しかも、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、たとえ、引用商標が使用されている役務と本件商標の指定役務とが同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するということはできない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は、「美容」以外の商品又は役務についても引用商標を使用していること、引用商標は周知・著名なものであり、申立人のハウスマークでもあること、申立人は世界40か国に700店舗を展開し、多角経営の可能性があること、引用商標の由来にもなっている「JD」は申立人グループの創設者として世界的に著名なJacques DESSANGEのイニシャルであることを述べた上で、本件商標は、申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく、役務の出所について誤認、混同を生ずるおそれがある旨主張する。
しかしながら、前示のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であり、かつ、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
そして、かかる事情の下においては、本件商標は、その指定役務について使用された場合でも、それに接する取引者、需要者が、その構成中の「JD」の文字部分に着目して、引用商標又は申立人を連想、想起するとは考え難いというべきであるから、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するということはできない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、前示のとおり、申立人の業務に係る役務を表示する商標として我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているということができないものであり、また、引用商標が外国において広く認識されていると認めるべき証拠も提出されていない。さらに、本件商標と引用商標とは、前示のとおり、非類似の商標である。
加えて、申立人は、本件商標について、引用商標の出所表示機能を希釈化させたり、その名声等を毀損させたりする、また、申立人が永年築き上げた信用にフリーライドするなどの不正の目的が推認される旨主張するが、その主張を裏付ける具体的な証拠の提出はなく、また、職権をもって調査するも、そのような事実を見いだすこともできないから、申立人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するということはできない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号の適用において、商標登録を受けるべきでない者からの登録出願であるか否かについては、「商標法は、出願人からされた商標登録出願について、当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、同法4条各号で個別的具体的に定めているから、このことに照らすならば、当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては、特段の事情がない限り、当該各号の該当性の有無によって判断されるべき」と解される。すなわち、同法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号等の条項の該当性の有無と密接不可分とされる事情については、専ら当該条項の該当性の有無によって判断されるべきである(平成19年(行ケ)第10392号 平成20年6月26日判決言渡)。
この点、本件商標は、前示のとおり、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当しないものであるから、かかる観点からは、本件商標を商標登録すべきものでないということはできない。
また、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、指定役務について使用することが社会公共の利益、社会の一般的道徳観念又は国際的信義に反するものでもなく、その他、本件商標を公序良俗に反するものというべき事情も見いだし難い。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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