Trademark Appeal Case
記述的・慣用商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2013−900364(T2013−900364/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5602390号商標(以下「本件商標」という。)は、「Predictive Coding」の欧文字を標準文字で表してなり、平成24年6月27日に登録出願され、第9類、第35類、第41類、第42類及び第45類に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同25年7月4日に登録査定、同月26日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由(要旨)
(1)本件商標について
ア 記述的商標であること
米国特許商標庁は、「PREDICTIVE CODING」商標出願について,遅くとも2011年5月18日までに,訴訟,行政手続,調査その他法律関連活動の一部として内容を評価,類型化する法的分野で使用されるコンピュータソフトウェアの性質,特徴,機能を単に記述するにすぎないとして登録を拒絶している(甲2)。
イ 慣用されていること
(ア)2012(平成24年)3月7日付けブログ記事において、「世界最大のリーガル・テクノロジーのイベントであるLegalTechがニューヨークで1月30日から2月1日まで開催された」として、そこで議論された大きなトピックの1つとして「予測コード付け−Predictive Coding」を紹介している(甲7)。
(イ)該ブログでは、同月12日付けで「Predictive Coding」について、日本語で詳細に説明している(甲8)。
(ウ)同年5月15日に掲載されたネット記事では、「Predictive Codingとは手短に言うと、電子的に保存されている情報全体を見直すことなく文書の関連性を判断することを可能にする、コンピュータの助力によるコーディングである」と説明し、日本語文書の見直し作業に与える将来の影響について言及している(甲3)。
(エ)2013(平成25)年1月14日掲載のネット記事において、「米国では2012(平成24年)4月にバージニア州の州判事が、いわゆるe−discovery(米国訴訟法上の証拠収集制度において電子保存情報をその対象とすること)においてpredictive codingの使用を認める初めての州裁判所の判断を示した」と紹介されている(甲4)。
(オ)2012(平成24年)4月26日付け連邦地裁決定においてもpredictive codingの語を、あたかも普通名称のごとく慣用している(甲9)。
ウ いわゆるe−discoveryについて知見のある需要者であれば、登録商標を日本語化することなくその意味を認識すること
本件商標は、英語の世界では訴訟、行政手続、調査その他法律関連活動の一部として内容を評価、類型化する法的分野で使用されるコンピュータソフトウェアや該ソフトウェアを用いたサービスの性質、特徴、機能を表示する語として、既に一般的に用いられている。そして、該ソフトウェアを用いたサービス業者による日本進出が平成24年ころから相次いでおり(甲5,甲6,甲10,甲11)、e−discoveryに関心ある需要者は、本件商標が上記の意味に慣用されていると理解している。
(2)商標法第3条第1項第2号及び同項第3号並びに同法第4条第1項第16号について
本件商標を該ソフトウェア、該ソフトウェアを用いたサービスに使用したとしても、これに接する取引者、需要者は、単に当該商品や役務について慣用されている、又はその効能、態様を普通に用いられる方法で表示する語と認識するにとどまるから、該文字は自他商品役務識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。また、該ソフトウェア以外の商品、該ソフトウェアを用いたサービス以外の役務に使用するときは、商品の品質又は役務の質について誤認を生ずるおそれがある。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第2号、同項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し商標登録を受けることができないものであるから、その登録は取り消されるべきものである。
3 当審の判断
(1)「Predictive Coding」の語の我が国における認識の程度について
ア 本件商標は、前記1のとおり、「Predictive Coding」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「Predictive」は「予言する、予測する」などを意味し、「Coding」は「コード(符号)化すること」などを意味する既成の英語であるが、いずれの語も我が国において日常頻繁に使用されている語ではなく、また構成全体としても、特定の意味合いを有する熟語として日常頻繁に使用されている一般的な熟語とは認められないものである。
イ 申立人の提出に係る甲各号証によれば、「Predictive Coding」の文字に関し、以下のような事実が認められる。
(ア)2012(平成24年)3月7日付け「eDiscovery Blog/LegalTech NY 2012年レポート」(甲7)には、例年のごとく世界最大のリーガル・テクノロジーのイベントであるLegalTechがニューヨークで1月30日から2月1日まで開催されたこと、本年度の大きなトピックの1つに「予測コード付け−Predictive Coding」が挙げられ、その話題がホットに議論されており、各種ベンダーが関連テクノロジーを紹介していたこと、「予測コード付け−Predictive Coding」の詳細については、今後のブログ記事で紹介していくことなどが掲載されている。
(イ)掲載日不明の「eDiscovery Blog/Predictive Coding(予測コード付)とは?」(甲8)には、予測コード付(Predictive Coding)とは、Eディスカバリーのレビューを行う際に、コード付を補助する技術のことをいい、先日のLegal Tech NY 2012で話題になったトピックのひとつであること、この手法は、収集した大量のデータ(ドキュメント・電子メールなど)のうち、コンピュータが特定した一部のサンプル・データを人間がレビューしコード付けを行い、その結果に基づきコンピュータが残りのドキュメントをコード付けすること、予測コード付の流れとして、「1.全ドキュメントのうちの一部をコンピュータでランダムに抽出する 2.限定されたサンプルのドキュメントを人間がレビューし、コード付する 3.2のコード付の結果を予測コード付の技術を用いて全ドキュメントに適用する」と掲載され、さらに、この予測コード付のソフトウェァを用いることによって、多大な費用と時間を要したドキュメントレビューの負担が軽減されることなどが掲載されている。
(ウ)カタリストのウェブサイトの米デンバー2012年10月9日付け「eディスカバリ・カタリスト関連ニュース」(甲10)には、カタリストは、本日、日本で高度なプレディクティブ・コーディング・サービスを提供することを発表したと掲載されている。
(エ)トランスパーフェクト合同会社が申立人代理人法律事務所に宛てた平成25年1月29日付け書簡(甲11)には、「トランスパーフェクト E−Discovery製品デモのご案内」と題する製品デモの案内書には、E−Discoveryレビュープラットフォーム「Relativity」の4つある特徴のうちの1つに、「Predictive Coding機能によって、ドキュメントレビューにかかる時間と費用を80%削減できます。」と掲載されている。
(オ)甲第2号証は「PREDICTIVE CODING」商標出願に係る米国特許商標庁の拒絶査定書(写)、甲第3号証は「Predictive Coding and the End of Japanese Document Review?」 と題するウェブサイト記事(写)、甲第4号証は「What is Predictive Coding?:Including eDiscovery Applications」と題するウェブサイト記事(写)、甲第5号証は「Catalyst Releases High−Fidelity,Tokenized Predictive Coding Services to Japanese Market」と題するウェブサイト記事(写)、甲第6号証は「Ediscovery webinar−turning Japanese with predictive coding」と題するウェブサイト記事(写)であって、いずれも英文で掲載されている(抄訳付き)。
ウ 以上を総合すると、我が国において、本件商標の商標法第3条第1項第2号及び同項第3号並びに同法第4条第1項第16号の該当性についての判断基準時である本件商標の登録査定がなされた平成25年7月4日当時、本件商標に係る指定商品及び指定役務の平均的取引者、需要者は取引上の言語として日本語を使用しており、英語を使用するものは少ないと推察されること、甲第7号証ないし甲第11号証において「Predictive Coding」の文字が使用されているのは、主として、米国の民事訴訟においてトライアル(審理)の前のプリトライアルの段階に実施される証拠開示の手続(ディスカバリ)では原則として訴訟案件に関する全ての情報(紙と電子の双方が対象)を開示する必要があるが、企業が保有する情報が膨大になるに伴いディスカバリで実施するレビュー・分析作業に時間と費用がかかるため、最近注目を集めるようになったのが「Predictive Coding/予測コード付」といわれるIT技術を活用したレビュー作業の効率化の手法であると認められるから、このような「Predictive Coding/予測コード付」に強い関心を寄せる者は当該ソフトウェアの開発者、そのサービスの提供者及びこれらを利用する米国で営業活動をする企業や米国で訴訟関連のサービスを提供する弁護士などであり、本件商標に係る指定商品又は指定役務の事業を行う者のうちのかなり限定的な事業者であること、甲第2号証ないし甲第6号証は英文による文書であり、「Predictive Coding」の語が使用されているとしても該語の周知性に及ぼす影響は少ないと解されること、該語が我が国において使用されている分野は米国の訴訟などに関連する分野であることなどが認められ、甲各号証のみによっては、「Predictive Coding」の語が我が国の本件指定商品及び指定役務を扱う業界において広く「電子的に保存されている情報全体を見直すことなく文書の関連性を判断することを可能にする、コンピュータの助力によるコーディング」や「訴訟,行政手続,調査その他法律関連活動の一部として内容を評価,類型化する法的分野で使用されるコンピュータソフトウェアの性質,特徴,機能を単に記述する語」として理解され認識されている事実を認めるに足りない。
(2)商標法第3条第1項第2号及び同項第3号並びに同法第4条第1項第16号の該当性について
ア 商標法第3条第1項第2号該当性について
申立人は、2012年4月26日付け連邦地裁決定においても「predictive coding」の語を、あたかも普通名称のごとく慣用していること(甲9)、本件商標は、英語の世界では訴訟、行政手続、調査その他法律関連活動の一部として内容を評価、類型化する法的分野で使用されるコンピュータソフトウェアや該ソフトウェアを用いたサービスの性質、特徴、機能を表示する語として、既に一般的に用いられていることから、本件商標を該ソフトウェア、該ソフトウェアを用いたサービスに使用したとしても、これに接する取引者、需要者は、単に当該商品や役務について慣用されている語と認識するにとどまり、本件商標は、商標法第3条第1項第2号に該当する旨主張する。
慣用商標とは、我が国において当初識別力を有していたが、同種類の商品・役務について同業者間で普通に使用された結果識別力を失った商標をいうものと解され、普通名称とは当初識別力を有する商標であった点において異なる。
これを本件についてみるに、申立人は、本件商標が、我が国において当初識別力を有していたこと、同種類の商品・役務について同業者間で普通に使用された結果識別力を失ったことの各事実について主張、立証しておらず、これらの事実は認められない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第2号に該当しない。
イ 商標法第3条第1項第3号該当性について
申立人は、本件商標を該ソフトウェア、該ソフトウェアを用いたサービスに使用したとしても、これに接する取引者、需要者は、単に当該商品や役務についての効能、態様を普通に用いられる方法で表示する語と認識するにとどまり、該文字は自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する旨主張する。
しかしながら、「Predictive Coding」の語は、上記(1)ウのとおり、我が国における本件指定商品及び指定役務を扱う業界において広く「電子的に保存されている情報全体を見直すことなく文書の関連性を判断することを可能にする、コンピュータの助力によるコーディング」や「訴訟,行政手続,調査その他法律関連活動の一部として内容を評価,類型化する法的分野で使用されるコンピュータソフトウェアの性質,特徴,機能を単に記述する語」として理解され認識されている事実を認められないものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務に使用したとしても、我が国の取引者、需要者が「訴訟,行政手続,調査その他法律関連活動の一部として内容を評価,類型化する法的分野で使用されるコンピュータソフトウェアの性質,特徴,機能を単に記述する語」として理解するとはいえず、自他商品・役務の識別標識としての機能を十分果たし得るものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
ウ 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、上述したとおり、特定の意味合いを有する語として認識されるものではなく、またその指定商品及び指定役務を取り扱う業界においても商品の品質や役務の質などを表す語として認識されるものでないから、商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務に使用したとしても、我が国の取引者、需要者が商品の品質や役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるとはいえないものである。
(3)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第2号及び同項第3号並びに同法第4条第1項第16号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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